小さな少女の背には黄金が宿っている。
その少女を見れば誰もがそう思うだろう。
たとえ、野暮ったい作業着姿だとしても、
はっと目が惹かれる美しさを、その髪は宿している。
屈んだせいで地につきそうなほど、長い長い髪だ。腰ほどもあるだろう。
ややぞんざいな扱いだ。しかしそれでもその黄金は美しい。
流すがままに、あるがままに美しい。そういう曲線を描いている
服を油で汚しながらも、手にレンチを握っていながらも、
決してそんなものは目に入らない。
そんな輝き。
美しい黄金。
少女の特徴。
しいて残念なところを上げるならば、頭頂部が帽子で覆われていることくらいか。
やはりススや油で汚れた保護帽が、少女の黄金にたった一つの汚点を残していた。
だが、ふっと、少女は保護帽のツバをあげ、ふっと目の前を見上げるように首を傾け、
ぴょん、と擬音がなりそうなくらいぴんと身体を立ち上げて、ふっと一息吐きもらす。
作業が一段落したのか、猫のように気ままに、弓のようにぴんと腕を伸ばし、
年相応の、少しばかり可愛らしい声をあげながら身体をほぐす。
そして、ちらりと時計を眺め、今度はあわてたように身をひるがえし、
遅れて黄金の軌跡が宙へと広がる。どうやら時間を忘れて作業に没頭していたようだ。
がちゃがちゃ・がちゃり。金属的に重い音が鳴るのは、きっとレンチのせいか。
足元に散らばった工具を専用ケースに詰めながら、
さっと振り向いて、少女は仕上がりを確かめる。
巨大な、鋼鉄を。
無骨な、鋼鉄を。
黄金の輝きとは比べ物にならない、鈍く、くすんだ鼠色の物体。
小さな少女とはスケールが違いすぎるほどの、巨体。
ロボット。少なくとも、そう呼ばれる存在。
それがそこにはあった。
やがて工具の収納を終わらせた少女が、両手でそのケースをつかみ、
黄金の残滓を残しながら急いでかけ出て行っても・・・・沈黙したまま、そこに聳えていた。
動かず、黙々と、一切の音も出さず。
後には、少女の香りが残った。
その少女を見れば誰もがそう思うだろう。
たとえ、野暮ったい作業着姿だとしても、
はっと目が惹かれる美しさを、その髪は宿している。
屈んだせいで地につきそうなほど、長い長い髪だ。腰ほどもあるだろう。
ややぞんざいな扱いだ。しかしそれでもその黄金は美しい。
流すがままに、あるがままに美しい。そういう曲線を描いている
服を油で汚しながらも、手にレンチを握っていながらも、
決してそんなものは目に入らない。
そんな輝き。
美しい黄金。
少女の特徴。
しいて残念なところを上げるならば、頭頂部が帽子で覆われていることくらいか。
やはりススや油で汚れた保護帽が、少女の黄金にたった一つの汚点を残していた。
だが、ふっと、少女は保護帽のツバをあげ、ふっと目の前を見上げるように首を傾け、
ぴょん、と擬音がなりそうなくらいぴんと身体を立ち上げて、ふっと一息吐きもらす。
作業が一段落したのか、猫のように気ままに、弓のようにぴんと腕を伸ばし、
年相応の、少しばかり可愛らしい声をあげながら身体をほぐす。
そして、ちらりと時計を眺め、今度はあわてたように身をひるがえし、
遅れて黄金の軌跡が宙へと広がる。どうやら時間を忘れて作業に没頭していたようだ。
がちゃがちゃ・がちゃり。金属的に重い音が鳴るのは、きっとレンチのせいか。
足元に散らばった工具を専用ケースに詰めながら、
さっと振り向いて、少女は仕上がりを確かめる。
巨大な、鋼鉄を。
無骨な、鋼鉄を。
黄金の輝きとは比べ物にならない、鈍く、くすんだ鼠色の物体。
小さな少女とはスケールが違いすぎるほどの、巨体。
ロボット。少なくとも、そう呼ばれる存在。
それがそこにはあった。
やがて工具の収納を終わらせた少女が、両手でそのケースをつかみ、
黄金の残滓を残しながら急いでかけ出て行っても・・・・沈黙したまま、そこに聳えていた。
動かず、黙々と、一切の音も出さず。
後には、少女の香りが残った。
「すみません、少し遅刻しちゃいました」
手早く油汚れを落とし、服を着替えた少女は、
しかし遅れた割にはあまり悪びれた表情も浮かべず、さらりと男たちに言ってのけた。
今、少女の目の前にいるのは三十人からなる強面の男たち。
筋肉に絶大な自信をもつ超マチョズムの申し子たちを相手に、
臆することなく言ってのけるあたり、ずいぶんと神経が図太い。
きっと黄金を支えるために、支柱がダイアモンドでできているのだろう。
その態度が気に入らないのか、いや、そもそも小娘に軽んじられたとでも感じたか、
男たちは鼻息も荒く少女をにらみつける。
あるものは腕を組み、あるものは三白眼をぎらつかせ、そしてあるものは・・・
「おい、嬢ちゃん」
ひときわ筋肉の発達した大男が、詰め寄るように一歩二歩と踏み出す。
「はい?なんでしょうか?」
質量差が四倍はあろうかという、二メートルの巨漢を前にして、
対する反応は無防備そのもの。
少し大型の犬が近寄ってきた。そのくらいの反応しか、少女は浮かべていない。
いや、訂正をしたほうがいいだろうか。
少し大柄で、とびきり不細工な狂犬だ。
「遅れておいてスミマセンネーの一言で済ますってのはだ、教育がなってねーんじゃねーの?
態度ってもんがあるんじゃねーの態度ってもんがよォ?わかってねェなあお嬢ちゃんよォ。
こんな小娘が試験官だなんて信じらんねェなあ。パパと変わってもらったらどうだい?
ハッハ、そもそもお嬢ちゃんみたいなロリータ体型がこういうトコロに来てるんじゃ・・・・」
言葉は、続かない。
胸をもんでセク・ハラでもしようと思ったのか、あるいは押して突き飛ばそうとしたのか。
今となってはわからないが、少なくともからかおうとしたのだけは確かだが、
しかし突き出した手はさらりとかわされ、直後に黄金が弾むように宙に広がる。
同時に、伸ばされた右腕に添えられる右腕。
ひじの内関節、尺骨に向け人差し指をかけ、舞い上がる肢体。
不用意に向けられた敵意に対する強烈なカウンターとして、
膝を駆け上り全力の左膝が腋の真芯に突き刺さる。
脚力と遠心力、次いで小柄ながらも体重をかけた一撃は、
男を苦悶させるに十分な威力を持っている。
しかもその打撃の反動は、すべからく少女の右手・・・・尺骨にあてた、指にかかっている。
どうしても鍛えることのできない場所だ。
おそらくは、蹴り飛ばされた腋よりも、苦痛は激しいことだろう。
脂汗をにじませながら崩れ落ちる男をよそに、
少女は実に涼しげに膝を払い、小首を可愛らしく傾げながら周りを見渡した。
「あー・・・・お騒がせしてすみません。ちょっと、びっくりしちゃって・・・・
ほんと、ごめんなさい。あと、それから言い忘れていたんですけれども、
ココの基地の人って、いちおー全員形式上軍属なんですよね。
そんなわけでみんな色々と基礎訓練だけは受けてるわけでして・・・・
まああたしも自分が小娘ってことは知ってますけど、ハラスメントはココじゃNGですよ?」
両手を顔の高さにまであげ、ぷらぷらと揺らすことで自分に敵意がないことを少女は示す。
「ま、そんなわけでして、ほどほどにしておいてくださいねホント。
・・・・っと、紹介が遅れました。えー、あたし、もとい本官は、
ジェリスヘレム整備班第二チーム担当、ホァン・ケロウィン・ムラカミです。
えーっと・・・・階級は確か、予備二等技師曹だったかな?
ただし機密兵器の担当なんで、実際の扱いはもう二、三等ほど高いとかどうとかなんで、
一応みなさんとは同等くらいの階級になります。
そんなわけでして、まあ、なんていえばいいんでしょう・・・・あんまり、ナメないでくださいね?」
そう言って、にこり、少女は微笑むのだった。
手早く油汚れを落とし、服を着替えた少女は、
しかし遅れた割にはあまり悪びれた表情も浮かべず、さらりと男たちに言ってのけた。
今、少女の目の前にいるのは三十人からなる強面の男たち。
筋肉に絶大な自信をもつ超マチョズムの申し子たちを相手に、
臆することなく言ってのけるあたり、ずいぶんと神経が図太い。
きっと黄金を支えるために、支柱がダイアモンドでできているのだろう。
その態度が気に入らないのか、いや、そもそも小娘に軽んじられたとでも感じたか、
男たちは鼻息も荒く少女をにらみつける。
あるものは腕を組み、あるものは三白眼をぎらつかせ、そしてあるものは・・・
「おい、嬢ちゃん」
ひときわ筋肉の発達した大男が、詰め寄るように一歩二歩と踏み出す。
「はい?なんでしょうか?」
質量差が四倍はあろうかという、二メートルの巨漢を前にして、
対する反応は無防備そのもの。
少し大型の犬が近寄ってきた。そのくらいの反応しか、少女は浮かべていない。
いや、訂正をしたほうがいいだろうか。
少し大柄で、とびきり不細工な狂犬だ。
「遅れておいてスミマセンネーの一言で済ますってのはだ、教育がなってねーんじゃねーの?
態度ってもんがあるんじゃねーの態度ってもんがよォ?わかってねェなあお嬢ちゃんよォ。
こんな小娘が試験官だなんて信じらんねェなあ。パパと変わってもらったらどうだい?
ハッハ、そもそもお嬢ちゃんみたいなロリータ体型がこういうトコロに来てるんじゃ・・・・」
言葉は、続かない。
胸をもんでセク・ハラでもしようと思ったのか、あるいは押して突き飛ばそうとしたのか。
今となってはわからないが、少なくともからかおうとしたのだけは確かだが、
しかし突き出した手はさらりとかわされ、直後に黄金が弾むように宙に広がる。
同時に、伸ばされた右腕に添えられる右腕。
ひじの内関節、尺骨に向け人差し指をかけ、舞い上がる肢体。
不用意に向けられた敵意に対する強烈なカウンターとして、
膝を駆け上り全力の左膝が腋の真芯に突き刺さる。
脚力と遠心力、次いで小柄ながらも体重をかけた一撃は、
男を苦悶させるに十分な威力を持っている。
しかもその打撃の反動は、すべからく少女の右手・・・・尺骨にあてた、指にかかっている。
どうしても鍛えることのできない場所だ。
おそらくは、蹴り飛ばされた腋よりも、苦痛は激しいことだろう。
脂汗をにじませながら崩れ落ちる男をよそに、
少女は実に涼しげに膝を払い、小首を可愛らしく傾げながら周りを見渡した。
「あー・・・・お騒がせしてすみません。ちょっと、びっくりしちゃって・・・・
ほんと、ごめんなさい。あと、それから言い忘れていたんですけれども、
ココの基地の人って、いちおー全員形式上軍属なんですよね。
そんなわけでみんな色々と基礎訓練だけは受けてるわけでして・・・・
まああたしも自分が小娘ってことは知ってますけど、ハラスメントはココじゃNGですよ?」
両手を顔の高さにまであげ、ぷらぷらと揺らすことで自分に敵意がないことを少女は示す。
「ま、そんなわけでして、ほどほどにしておいてくださいねホント。
・・・・っと、紹介が遅れました。えー、あたし、もとい本官は、
ジェリスヘレム整備班第二チーム担当、ホァン・ケロウィン・ムラカミです。
えーっと・・・・階級は確か、予備二等技師曹だったかな?
ただし機密兵器の担当なんで、実際の扱いはもう二、三等ほど高いとかどうとかなんで、
一応みなさんとは同等くらいの階級になります。
そんなわけでして、まあ、なんていえばいいんでしょう・・・・あんまり、ナメないでくださいね?」
そう言って、にこり、少女は微笑むのだった。