『アイゼン』一号の表層は混戦としていた。
含有物質を吟味した、都合二十七か所から取り寄せた土を使い、
何十層にも及ぶ特殊な土嚢、土壌を形成したその大地を踏みしめ、
アサシンと名付けられた機体が跳ぶ。
いや、正確にはヘレム・A/アサシンという名の、
どことなく少し小ぶりな機体。
それもそのはず、量産機と謳いながらも、
一機ごとのパーツ互換性が低いジェリスヘレムの中で、
もっとも本体部分が小型化されているのだから。
パイロットは、グレイ・パンサーという名の、一匹の灰色猫だ。
猫科の狩りは鮮やかで素早い。
それでいて強烈。
地の利、いや、自らの狩場で闘う一匹の雌猫は、
今地上でもっとも危険な野生動物だ。
土壌に突きたてられた複合金の遮蔽板を縦横無尽に飛び移り、
あるいは裏へと忍び隠れ、突然の跳躍から敵へと襲い掛かる。
ヘレム・Aに比べれば機動性が大きく劣る羅甲では、
その急激な旋回に追従することもかなわず、
右手に携えたエネルギーブレード『手術刀』の一撃によって袈裟切りにされてしまう。
それも一挙に三機続けてなで斬りされれば、
もはや指揮だの隊列だのが乱れるといった問題以前に、
戦術的にももう後退しか選択肢はないのだが、追従の手は緩まない。
人間でいうところの股間部位に装着された二基のチェーンガンと、
投擲用振動剣『猫の爪』が逃げ出そうと背後を向いた敵へと突き刺さる。
グレイ・パンサーにツイン・ヘッド・ミラクルペニス・マシン・ガンなどと、
とても不名誉な名前を付けられた股間銃だが威力のほどは折り紙つきで、
その銃弾を受けてもろくなった部位にむけて投擲した『猫の爪』が、
敵の機体をばっさりと二分割する。
続けて今度は次なる敵への強襲・・・・と見せかけ、
フェイントを混ぜつつ後退、遮蔽板の裏へと滑り込むように隠れ潜む。
慎重とも、臆病とも呼ばれる行為だが、
自分の縄張りから離れないという意味では、
とても野生的で本能的だ。
あるいは派手な言動、攻撃手段に反して実に堅実だと言ってもよい。
単発的な火力に乏しい分、数をもってして敵にあたるのは基礎の基礎。
それを証明するかのように、次から次へと遮蔽板の裏を移動しつつ、
それらに隠し仕込んでいた『猫の爪』を随時機体へ補充している。
一か所からすべて取るでもなく、回収する間スピードが落ちるわけでもなく、
流れるように、淡々と、同じスピードで動きながらそれを続ける。
補給地点を使い切らないのも戦術の一つといえば一つだが、
徹底しているのはおそらく彼女ぐらいのものだろう。
そういった表に現れない補給行為を終えると、
再び『猫の爪』と『手術刀』を構えつつ、
「ファフ、まだかい?
こっちはもうドンパチ始めちゃってんだけどさ、
あんまり遅いんでもうお手付きしちゃってるんだけど」
「短気め。我慢が足りない。こらえ性がなさすぎだろ。
こっちはあと十秒ほどで着く。隊長も、もうすぐ来る。
・・・・あの女の子を連れた爺様は、モニタ開始といったところか」
「なるほど、了解上等。
じゃ、賭けは今から開始な、負けても文句いうなよー?」
「冗談、ほえ面かくのはお前のほうだ」
憎まれ口を交し合いつつ、敵に追われながら合流した機体、
ヘレム・W/ウォーリアに向けて金属板を投げつける。
受け取ったヘレム・Wはそれを深々と地面に突き立て、
振り返り、しゃがみ込み、敵を十分に自分へ引き寄せたのを確認し、
そして一、二歩と下がりつつ手にした杖を振るう。
『灰色杖』、そう名付けられた武器は、
突き立てられた金属板を瞬く間に粉砕し、
衝撃波を伴って敵へと叩きつける。
それは一定以上の振動を与えられると加熱、分裂し、
ある程度の指向性をもって拡散するデコイの一種。
きらきらと、粉雪が舞い散っているようにしか見えないが、
その一粒一粒が熱を持ち、粘質的で、攻撃性を持ち、
同時にチャフのかわりを果たす一種の煙幕である。
まともにこれに突っ込んだ敵は視力を奪われ、耳をつぶされ、
そして四肢に絡みついた蜘蛛の糸によって自由に身動きが取れない状態だ。
それを逃す二人では、ない。
瞬く間に『猫の爪』が跳び、同時に『灰色杖』が振るわれる。
金属板をいともたやすく粉々にした杖の一撃は、
敵の装甲をくしゃり、ぐしゃりと幾分かの間をおいて、ひしゃぎ砕く。
それを横目にファフ・・・・ヘレム・Wのパイロット、
ファファード・ブラヴドはぽつり、
「相変わらず脆いな」
呆れたような感想を漏らす。
ならばと次の敵機に期待しつつ、
ヘレム・Aから手渡された先ほどのと同じ金属板を受け取り、
くるりくるりとボールを回すように、板を指先で器用に回転させた。
含有物質を吟味した、都合二十七か所から取り寄せた土を使い、
何十層にも及ぶ特殊な土嚢、土壌を形成したその大地を踏みしめ、
アサシンと名付けられた機体が跳ぶ。
いや、正確にはヘレム・A/アサシンという名の、
どことなく少し小ぶりな機体。
それもそのはず、量産機と謳いながらも、
一機ごとのパーツ互換性が低いジェリスヘレムの中で、
もっとも本体部分が小型化されているのだから。
パイロットは、グレイ・パンサーという名の、一匹の灰色猫だ。
猫科の狩りは鮮やかで素早い。
それでいて強烈。
地の利、いや、自らの狩場で闘う一匹の雌猫は、
今地上でもっとも危険な野生動物だ。
土壌に突きたてられた複合金の遮蔽板を縦横無尽に飛び移り、
あるいは裏へと忍び隠れ、突然の跳躍から敵へと襲い掛かる。
ヘレム・Aに比べれば機動性が大きく劣る羅甲では、
その急激な旋回に追従することもかなわず、
右手に携えたエネルギーブレード『手術刀』の一撃によって袈裟切りにされてしまう。
それも一挙に三機続けてなで斬りされれば、
もはや指揮だの隊列だのが乱れるといった問題以前に、
戦術的にももう後退しか選択肢はないのだが、追従の手は緩まない。
人間でいうところの股間部位に装着された二基のチェーンガンと、
投擲用振動剣『猫の爪』が逃げ出そうと背後を向いた敵へと突き刺さる。
グレイ・パンサーにツイン・ヘッド・ミラクルペニス・マシン・ガンなどと、
とても不名誉な名前を付けられた股間銃だが威力のほどは折り紙つきで、
その銃弾を受けてもろくなった部位にむけて投擲した『猫の爪』が、
敵の機体をばっさりと二分割する。
続けて今度は次なる敵への強襲・・・・と見せかけ、
フェイントを混ぜつつ後退、遮蔽板の裏へと滑り込むように隠れ潜む。
慎重とも、臆病とも呼ばれる行為だが、
自分の縄張りから離れないという意味では、
とても野生的で本能的だ。
あるいは派手な言動、攻撃手段に反して実に堅実だと言ってもよい。
単発的な火力に乏しい分、数をもってして敵にあたるのは基礎の基礎。
それを証明するかのように、次から次へと遮蔽板の裏を移動しつつ、
それらに隠し仕込んでいた『猫の爪』を随時機体へ補充している。
一か所からすべて取るでもなく、回収する間スピードが落ちるわけでもなく、
流れるように、淡々と、同じスピードで動きながらそれを続ける。
補給地点を使い切らないのも戦術の一つといえば一つだが、
徹底しているのはおそらく彼女ぐらいのものだろう。
そういった表に現れない補給行為を終えると、
再び『猫の爪』と『手術刀』を構えつつ、
「ファフ、まだかい?
こっちはもうドンパチ始めちゃってんだけどさ、
あんまり遅いんでもうお手付きしちゃってるんだけど」
「短気め。我慢が足りない。こらえ性がなさすぎだろ。
こっちはあと十秒ほどで着く。隊長も、もうすぐ来る。
・・・・あの女の子を連れた爺様は、モニタ開始といったところか」
「なるほど、了解上等。
じゃ、賭けは今から開始な、負けても文句いうなよー?」
「冗談、ほえ面かくのはお前のほうだ」
憎まれ口を交し合いつつ、敵に追われながら合流した機体、
ヘレム・W/ウォーリアに向けて金属板を投げつける。
受け取ったヘレム・Wはそれを深々と地面に突き立て、
振り返り、しゃがみ込み、敵を十分に自分へ引き寄せたのを確認し、
そして一、二歩と下がりつつ手にした杖を振るう。
『灰色杖』、そう名付けられた武器は、
突き立てられた金属板を瞬く間に粉砕し、
衝撃波を伴って敵へと叩きつける。
それは一定以上の振動を与えられると加熱、分裂し、
ある程度の指向性をもって拡散するデコイの一種。
きらきらと、粉雪が舞い散っているようにしか見えないが、
その一粒一粒が熱を持ち、粘質的で、攻撃性を持ち、
同時にチャフのかわりを果たす一種の煙幕である。
まともにこれに突っ込んだ敵は視力を奪われ、耳をつぶされ、
そして四肢に絡みついた蜘蛛の糸によって自由に身動きが取れない状態だ。
それを逃す二人では、ない。
瞬く間に『猫の爪』が跳び、同時に『灰色杖』が振るわれる。
金属板をいともたやすく粉々にした杖の一撃は、
敵の装甲をくしゃり、ぐしゃりと幾分かの間をおいて、ひしゃぎ砕く。
それを横目にファフ・・・・ヘレム・Wのパイロット、
ファファード・ブラヴドはぽつり、
「相変わらず脆いな」
呆れたような感想を漏らす。
ならばと次の敵機に期待しつつ、
ヘレム・Aから手渡された先ほどのと同じ金属板を受け取り、
くるりくるりとボールを回すように、板を指先で器用に回転させた。