ザボン先生の教育的指導
マスク・ド・サンキスト"ザボン"。打倒・百文字を掲げるサンキスト一族の一人である。
彼はまず、自らがより有利に動ける立場を得られる様に、同族のマスク・ド・サンキスト"ハーモニー"に己を売り込んだ。その結果・・・。
(ここまで、SS作品『異郷を選びし果実達』参照)
彼はまず、自らがより有利に動ける立場を得られる様に、同族のマスク・ド・サンキスト"ハーモニー"に己を売り込んだ。その結果・・・。
(ここまで、SS作品『異郷を選びし果実達』参照)
~ マスク・ド・サンキスト"ハーモニー"の書斎 ~
「キィーッス! 早速、お仕事ってかい?」
書斎に入ると同時に問いを放ったのは、柑橘類を模した覆面に上半身裸の偉丈夫、マスク・ド・サンキスト"ザボン"である。
「あぁ。今回はブラック・クロスの兵士達に格技を教える臨時講師を引き受けて貰おう」
「・・・臨時講師?」
「そうだ。ブラック・クロスにも我々をナメてる連中が居てね。そこで彼らを『教育』して欲しい。君の手腕を揮うのに打ってつけと思うが、どうかね?」
「キィーッス! キスキス! 無論だっ! そんな奴らは俺が『優しく』教えてやるぜっ!」
「・・・臨時講師?」
「そうだ。ブラック・クロスにも我々をナメてる連中が居てね。そこで彼らを『教育』して欲しい。君の手腕を揮うのに打ってつけと思うが、どうかね?」
「キィーッス! キスキス! 無論だっ! そんな奴らは俺が『優しく』教えてやるぜっ!」
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~ 某所・ブラッククロス支部 トレーニングルーム ~
凶悪な顔付きをした10数名の男女が、部屋中央に設置されたプロレスのリングを背にした覆面男を睨んでいる。
覆面男は無論、マスク・ド・サンキスト"ザボン"。今日は覆面に裸の上半身、下半身はゆったりしたズボン(いわゆるガウチョパンツ)といういでたちである。
覆面男は無論、マスク・ド・サンキスト"ザボン"。今日は覆面に裸の上半身、下半身はゆったりしたズボン(いわゆるガウチョパンツ)といういでたちである。
「キィーッス! 良い面構えだなぁ~、おめぇら。今日、俺ぁお前らに格闘を教える事になってンだが・・・何か質問はあるか?」
こう言って、一同を見渡すザボン。前に立っていた4名程の面々が『待ってました』とばかりに、ニヤニヤと笑いながら応える。
「テメェ、百文字とかいうジジイ一人に勝てない一族の出だろ。俺は詳しいんだ。そんな奴が俺達に何を教えるってんだ?」
「地下プロレスの出だか何だか知らねーが、闘いを教えるのはテメェじゃ無ぇ。むしろ俺達が教育してやる」
「蜜柑好きの田舎モンなんざ、お呼びじゃ無いってねぇ!」
「カポエイラ使いがそんなズボン履いてちゃ、ロクに闘えないだろうが馬鹿め!」
「地下プロレスの出だか何だか知らねーが、闘いを教えるのはテメェじゃ無ぇ。むしろ俺達が教育してやる」
「蜜柑好きの田舎モンなんざ、お呼びじゃ無いってねぇ!」
「カポエイラ使いがそんなズボン履いてちゃ、ロクに闘えないだろうが馬鹿め!」
そう口々に応えるなり、その4名が隠し持っていたナイフを構える。
「失せろ、カスがっ!」「教育してやる!」「お呼びじゃ無いよ!」「土下座すれば許してやらんでもないぜ」
彼らの過激な反応を見たザボンは口をあんぐりと開け、間延びした口調でこう返した。
「・・・キィース。思ってた以上に単細胞だな、おめぇら」
次の瞬間! 目にも留まらぬ速さで改造ガウチョパンツに突っ込まれたザボンの両手が抜き出したのは、二挺の違法改造ガス拳銃!!
ズ パ パ パ パ パ パ パ !! ズ パ パ パ パ パ パ パ !! ズ パ パ パ パ パ パ パ !! ズ パ パ パ パ パ パ パ !!
ズ パ パ パ パ パ パ パ !! ズ パ パ パ パ パ パ パ !! ズ パ パ パ パ パ パ パ !! ズ パ パ パ パ パ パ パ !!
ズ パ パ パ パ パ パ パ !! ズ パ パ パ パ パ パ パ !! ズ パ パ パ パ パ パ パ !! ズ パ パ パ パ パ パ パ !!
弾丸はプラスティック製(いわゆるBB弾)だが、違法改造により弾速は強化されており、人体に当たれば皮膚にめり込み血が出る程の威力がある。
その弾丸の雨がナイフを持った四人の手に降り注いだのだ。
その弾丸の雨がナイフを持った四人の手に降り注いだのだ。
「グワァッ!!」「ギャアッ!!」「ギエッ!!」「グゥゥ・・・サンキストの癖に・・・」
「・・・アァッ? サンキストが銃を使って、何が悪いんでぇ」
「・・・アァッ? サンキストが銃を使って、何が悪いんでぇ」
ナイフを取り落とし、傷付いた手を庇って呻く4名。その目の前で悠々と二挺拳銃のマガジン交換を済ませてガウチョパンツの隠しポケットに収めるザボン。
そして太い人差し指を立て、彼らを諭す様に講義する。
そして太い人差し指を立て、彼らを諭す様に講義する。
「キィーッス! キスキス! レッスンその1。見た目の優位を過信するんじゃネェ」
「おめぇらの暴言はまぁ、井の中の蛙がほざいてたと見なして許してやろう。俺ぁ寛大なんだ」
「おめぇらの暴言はまぁ、井の中の蛙がほざいてたと見なして許してやろう。俺ぁ寛大なんだ」
そう言いながら"チッチッチ"と、立てたままの人差し指を左右に振る。
「だーが、地下プロレスの死合を何十年も続けて、それでも生きてる奴に挑む努力は察して欲しいネェ。老衰待ちなんてケチな勝ち方はしたくねぇんだよ。判るか?」
「念の為に言っとくが、百文字がジジイなのは俺の所為じゃねぇ。奴が俺より早く産まれ過ぎただけだから、そこに文句付けられても困る」
「それからな、このガウチョパンツは見た目よりも動き易いぜ。カポエイラにはチト向いてないが、まぁそこはちょっとしたハンデだ」
「念の為に言っとくが、百文字がジジイなのは俺の所為じゃねぇ。奴が俺より早く産まれ過ぎただけだから、そこに文句付けられても困る」
「それからな、このガウチョパンツは見た目よりも動き易いぜ。カポエイラにはチト向いてないが、まぁそこはちょっとしたハンデだ」
そう言うと中指も伸ばし、そのまま2本の指で勝利の証・Vサインを示す。
「で、だ。まずは俺様が素手でおめぇら全員を相手してやろう。格闘授業の入門編だ。安心しな、そっちが武器を使わない限りは素手で受けてやるから」
次の瞬間、ひらりと身を翻してリングを囲むロープを掴み、軽やかにリング上に陣取ったザボンは、凶悪な生徒達に呼び掛ける。
「キィース! キスキス! リングに上がるまで待ってやる。さっ、挑みたい奴から来な」
「野郎っ!」「舐めやがって!」「黙って聞いてりゃ何様だ貴様っ!」
「野郎っ!」「舐めやがって!」「黙って聞いてりゃ何様だ貴様っ!」
その挑発に乗って、まずは6名ばかり続々とリングに上がって来た。さっき手を撃たれた奴も1名混じっている。
目敏くそいつに気付いたザボンが、嬉しそうな口調で言う。
目敏くそいつに気付いたザボンが、嬉しそうな口調で言う。
「おっ。フルーティ(闘争心溢れる)で鍛え甲斐があるねぇ~」
リング中央に移動したザボンに対し、リング上の6名は円弧を描く様に包囲する。様子見の数名と傷付いた手を抑えた3名はリング外で観戦中。
「キィース。レッスンその2。闘いは自分が有利な状況に持ち込むのがベストだ。例えば・・・こうだ!」バ ァ ン ッ !!
その言葉と共にザボンはその場で大きく跳躍し、床を思い切り踏み付ける。するとリングの床が大きく撓んだ!
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リングの床は木の板、ゴムシート、フェルト、キャンバスの層から構成されている。(詳細はSS作品『響鐘ゥ!地下プロレス編!!5話』を参照されたし)
更に土台の骨組みの構造次第で、硬い床にもトランポリンの如く弾力のある床にもなる。その辺の設定は地域によって異なる。
更に土台の骨組みの構造次第で、硬い床にもトランポリンの如く弾力のある床にもなる。その辺の設定は地域によって異なる。
では、『地下プロレス』におけるリングの床はどうかと言うと。『厚手』で『スプリングが利いた』柔らかい構造である。
決着が大体『殺害』や『再起不能』で付けられる地下プロレスなのに、何故そんな優しい構造なのかと言えば答えは簡単。『一撃一投で死なせない為』
鍛えられたレスラーがそういう環境で闘えば、長く死闘が続くという事を意味する。つまり、血に飢えた観客をより満足させられるという訳だ。
決着が大体『殺害』や『再起不能』で付けられる地下プロレスなのに、何故そんな優しい構造なのかと言えば答えは簡単。『一撃一投で死なせない為』
鍛えられたレスラーがそういう環境で闘えば、長く死闘が続くという事を意味する。つまり、血に飢えた観客をより満足させられるという訳だ。
なお、このリングの構造。地下プロレスの特異性を最もクレバーに利用としたのは、とてもスティッフな地下プロレスラー『マスク・ド・サンキスト』である。
彼は本領であるカポエイラで鍛えた脚力とルール無用の残虐ファイトにより、あらゆる面で不慣れな新人(グリーンボーイ)をブッコロ死する事を得意としていた。
彼は本領であるカポエイラで鍛えた脚力とルール無用の残虐ファイトにより、あらゆる面で不慣れな新人(グリーンボーイ)をブッコロ死する事を得意としていた。
とはいえ・・・例外もある。サンキスト一族の怨敵である『ジ・ハンドレッド』(耐撃の百文字)がまさにそれだ。
彼の繰り出すプロレス技は文字通りの一撃必殺を誇り、上記のマスク・ド・サンキストを筆頭に屈強なレスラー達を一撃の下に屠って来た。
「あれっ? 死闘は長く続いた方が観客喜ぶんじゃないの?」と思われる向きもあろうが、そこはそれ。
彼の繰り出すプロレス技は文字通りの一撃必殺を誇り、上記のマスク・ド・サンキストを筆頭に屈強なレスラー達を一撃の下に屠って来た。
「あれっ? 死闘は長く続いた方が観客喜ぶんじゃないの?」と思われる向きもあろうが、そこはそれ。
今まで新人の屍を築いていたサンキストが、そのデビューしたての新人(ジ・ハンドレッド)にあっけなく返り討ちに遭うサプライズ。
続いて、その兄弟や他のレスラーも次々と一撃死するに至って、観客達も「こいつスゲェ」と注目するのは無理もなかろう。
何というか、鍛えたレスラー達がダンプカーに轢かれたが如く次々と頓死する光景というのは、血みどろの死闘に慣れた彼らに新たな娯楽を生んだとも言える。
続いて、その兄弟や他のレスラーも次々と一撃死するに至って、観客達も「こいつスゲェ」と注目するのは無理もなかろう。
何というか、鍛えたレスラー達がダンプカーに轢かれたが如く次々と頓死する光景というのは、血みどろの死闘に慣れた彼らに新たな娯楽を生んだとも言える。
流石に『ジ・ハンドレッド』とて苦戦した時もあったが、それはそれで激しい死闘を意味するので、やはり観客達のテンションは跳ね上がるのだった。
少々話は逸れたが。ザボンもサンキスト一族の系列に並ぶ者である。
つまり、ここに築かれた地下プロレス仕様のリング構造も当然、熟知している!
つまり、ここに築かれた地下プロレス仕様のリング構造も当然、熟知している!
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リングの床全体が大きく撓む。予想外の揺れに足元を取られた6名は、嵐の海に甲板に出た新人水兵の様にその場でよろめく。
次の瞬間、ザボンの背後に居た者は視界を覆う逞しい裸の背中に戸惑う・・・暇も無かった。
次の瞬間、ザボンの背後に居た者は視界を覆う逞しい裸の背中に戸惑う・・・暇も無かった。
バ チ ィ ィ ン !! 「 ゴ ボ ー ッ !! 」
床を踏んだ勢いで背後へと思い切り飛び跳ねたザボンの背中で顔面を強打され、1名が鼻血を吹きながらリング外へ吹き飛んで気絶。
バ イ ィ ー ン ! 「Let it go~♪」 バ シ バ シ ベ キ ッ !!
バ ウ ゥ ー ン ! 「Let it go~♪」 バ シ ベ キ バ シ ッ !!
バ オ ォ ー ン ! 「Can’t hold it back any more~♪」 ベ キ バ シ バ シ ッ !!
往年の映画音楽のサビ部分を口ずさみながら、リングの床弾力を活用して楽しげに飛び回るザボン。
その戦法はまさに『蝶の様に舞い、蜂の様に刺す』・・・ボクシングっ?!
その戦法はまさに『蝶の様に舞い、蜂の様に刺す』・・・ボクシングっ?!
バ イ ィ ー ン ! 「Let it go~♪」 バ シ バ シ ベ キ ッ !!
バ ウ ゥ ー ン ! 「Let it go~♪」 バ シ ベ キ バ シ ッ !!
「Turn away and slam the door~♪」 ゲ シ ッ ! ゲ シ ッ ! ゲ シ ッ ! ゲ シ ッ ! ゲ シ ッ !
リング縦横に飛び回り、揺れで足元が定まらぬ残り5名に次々と鉄拳を浴びせて倒したザボンは、そのまま転がった面々をリング外へと蹴り出す。
「キィーッス! キスキス! さっ、残りの連中も上がって来いや。猪突猛進しなかったのは褒めてやるが、どこまでそれを活かせてるかテストしてやろう」
その誘いを受けた残りの面々も、リング中央で軽くステップを踏みながら待つザボンを取り囲む様にリングインする。
先の一戦を見て警戒しているのか。腰を落としてベタ足気味に歩み寄り、形成したザボン包囲網を徐々に縮めて行く。
先の一戦を見て警戒しているのか。腰を落としてベタ足気味に歩み寄り、形成したザボン包囲網を徐々に縮めて行く。
「キィーッス。そうだ、見極める事は大事だ・・・がっ、レッスンその3!」
いきなりザボンの身体が沈み、掃腿(プロレスで言う処の『水面蹴り』。百文字ならば「レスラーへの賛歌その17」と言ってたろう)を繰り出した。
丸太の様な脚で周囲を薙ぎ払い、包囲して居た面々はその直撃を受けて次々と転倒する。
丸太の様な脚で周囲を薙ぎ払い、包囲して居た面々はその直撃を受けて次々と転倒する。
「アレだ。『足元がお留守ですよ』ってな。バランスは大事だぜ」 ボ ゴ ォ !(倒れてた一人が、首筋にエルボードロップを受けて悶絶)
「キィース! それに俺ぁレスラーだぜ? 誰がボクシングで闘うと言った?」 ゴ キ ィ !(もう一人が、キャメルクラッチを食らって悶絶)
「可能な限り、勝てる闘いに持ち込むのが鉄則。そうだろ?」 バ キ ィ !(立ち上がりかけた一人も、顔面に飛び膝蹴りが炸裂して再び倒れ気絶)
「だーが、背中向けて逃げるのは感心しねぇ!」 ズ バ ー ン ッ !(リングから降りようとした一人の背に、ダイビングヘッドバッドが炸裂。あっさり気絶)
「背後からだって気ぃ抜くな阿呆!」 ガ シ ィ ッ !(前後から殴り掛かられるも、身を沈めて背後の奴の腕を掴み、そのまま一本背負い)
「烏合の衆じゃ意味無いぜっ!」 バ ッ シ ー ン ッ !(前から殴り掛かる奴に一本背負いした後ろの奴をぶつけた。両者ノックアウト!)
気付くと、訓練生のブラッククロス団員達全員がリング内外で戦闘不能と化していた。
ザボンはワザとらしい溜息を一つ吐くと、ガウチョパンツからライターを取り出して天井の火災報知機を炙る。
すると非常ベルと共に訓練室のスプリンクラーが作動して、室内にシャワーが降り注ぐ。
ザボンはワザとらしい溜息を一つ吐くと、ガウチョパンツからライターを取り出して天井の火災報知機を炙る。
すると非常ベルと共に訓練室のスプリンクラーが作動して、室内にシャワーが降り注ぐ。
「キィーッス! キスキス! 起きたかおめぇら。なら続きをやるぞ、まずは基礎訓練からだ!」
・・・気絶から覚めてヨロヨロと起き上がる団員達に、ザボンに逆らうという選択肢はもう存在して居なかった・・・。
従順に基礎訓練に励むブラッククロス団員達を見ながら、ザボンは色々と思案していた。
(「肉体鍛錬もだが、どうせなら俺も専用機が欲しいネェ。確かボギヂオ大佐とか言うんだっけ? 百文字と交戦した司令官ってのは」)
(「こりゃ、ハーモニーの旦那に頼んで奴の戦闘記録を閲覧させて貰わなきゃナァー。まずは敵を良く知らなきゃならん」)
(「・・・と、言うか。今までの伝聞だけでもテメェは既に、俺の理想像なんだがよ・・・」)
(「こりゃ、ハーモニーの旦那に頼んで奴の戦闘記録を閲覧させて貰わなきゃナァー。まずは敵を良く知らなきゃならん」)
(「・・・と、言うか。今までの伝聞だけでもテメェは既に、俺の理想像なんだがよ・・・」)
「 M o s t K i l l s s !!(殺したい程、敬愛する。故に殺す!!)」
思わずザボンが口走った叫びに、驚いて彼を見やるブラッククロス団員達。しかしその叫びの意味は誰にも判らなかった。
だがそれは団員達にとって幸運だった。その意味を理解されたと思った瞬間、ザボンはその者を殺していたろうから。
だがそれは団員達にとって幸運だった。その意味を理解されたと思った瞬間、ザボンはその者を殺していたろうから。