影狼隊徒然記【阿弗利加南部戦線】中編
~ ツムウロゴ王国・国境付近の軍事基地内 ~
ツムウロゴ王国の軍事基地内には、ジャングルを模した広大な運動スペースがある。訓練にも用いるのだが、夜間はコングマンの寝所ともなる。
その擬似ジャングルの中で、コングマンは寝付けずに居た。それは昼間の激闘の興奮が冷め遣らぬ所為もあったろう。
その擬似ジャングルの中で、コングマンは寝付けずに居た。それは昼間の激闘の興奮が冷め遣らぬ所為もあったろう。
だが・・・コングマンは野生の勘で感じ取っていた。夜の闇に潜み、蠢く異様な気配を。
しかし未だ、人間達は気付いていない。色々な仕掛けで警戒しては居るのだろうが、それでも未だ、気付いて居ないのだ!
しかし未だ、人間達は気付いていない。色々な仕掛けで警戒しては居るのだろうが、それでも未だ、気付いて居ないのだ!
寝床から起き上がったコングマンは、野外の闇に向けて目を凝らす。
幸い、今日は月明りや星明りがある夜だ。そのつもりで視れば気配の元も・・・あれだ! あの巨大すぎる影だ!
幸い、今日は月明りや星明りがある夜だ。そのつもりで視れば気配の元も・・・あれだ! あの巨大すぎる影だ!
その存在の巨大さを認識した瞬間。コングマンは踵を返して『ドラミング・A・GOGO!』のある格納庫へと駆け出していた。
~ 格納庫への道中 ~
コングマンにとっては幸いな事に。ナックルウォーキングでドタドタと格納庫へ向かう最中、飼育員達が彼の行動に気付いてくれた。
普段は温厚なコングマンが見せた振舞いに戸惑う飼育員達だったが、それ故に非常事態だと悟って行動を起こした。
普段は温厚なコングマンが見せた振舞いに戸惑う飼育員達だったが、それ故に非常事態だと悟って行動を起こした。
~ そして基地の外 ~
「 ウ ゥ … ッ ! ホ ォ ォ ォ オ オ オ オ オ !! 」
コングマンの雄叫びと共に、ドラミング・A・GOGO!が起動。そのまま格納庫から飛び出して、夜の闇の中へと向かう。
それに呼応して基地からも複数のサーチライトが照射され、ドラミング・A・GOGO!と、その行く手を照らし出す。
それに呼応して基地からも複数のサーチライトが照射され、ドラミング・A・GOGO!と、その行く手を照らし出す。
そして、サーチライトに照らされた影は! 大きさは羅甲と同程度だが、無貌の頭と胸部に隻眼、そして長い腕を持つ異形の機体であった。
その姿を見たコングマンは戸惑う。大きさは良く見掛ける金属人(羅甲)と同程度なので、あの金属犬人(狂犬客)ほどの脅威では無いのか?
だが、モニター越しに見えるその黒い影は、強い光で照らされている筈なのに何故かぼやけて見える。
顔の無い頭、ハイエナを思わせる胸部と鈍く光る単眼、鉤爪を持つ異様に長い腕・・・その全てがコングマンの不安を掻き立てる。
だが、モニター越しに見えるその黒い影は、強い光で照らされている筈なのに何故かぼやけて見える。
顔の無い頭、ハイエナを思わせる胸部と鈍く光る単眼、鉤爪を持つ異様に長い腕・・・その全てがコングマンの不安を掻き立てる。
彼我の距離はざっと2,3百メートル程度の微妙な距離。少し走れば接近出来る間合いだが、接近戦を挑むにはまだ遠い。
そもそも相手は未だ、徘徊しているだけだ。しかしソレは肉食獣の様子見を思わせる不穏な雰囲気を漂わせている。
コングマンは、その異形の金属獣に対する対応を決めた。がに股で足を踏ん張り、バンザイでもするかの如く両腕を斜め上へと振り上げ・・・
そもそも相手は未だ、徘徊しているだけだ。しかしソレは肉食獣の様子見を思わせる不穏な雰囲気を漂わせている。
コングマンは、その異形の金属獣に対する対応を決めた。がに股で足を踏ん張り、バンザイでもするかの如く両腕を斜め上へと振り上げ・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~ 妖爪鬼のコックピット ~
影狼隊隊長はコングマンに発見される前から、その行動を観察していた。
(「やはり気付かれたか・・・だがまぁ、細工は流々。後は仕上げを御覧じろ、と」)
ドラミング・A・GOGO!が格納庫から駆けて来るも、そのまま接近するにはやや距離の開いた間合い。
ゆっくりと歩む妖爪鬼を警戒しつつ、がに股の姿勢で立ち止まる。そして両の腕を高々と振り上げて胸を張った!
ゆっくりと歩む妖爪鬼を警戒しつつ、がに股の姿勢で立ち止まる。そして両の腕を高々と振り上げて胸を張った!
(「・・・読み通りだ!」)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「 ウ ッ … ホッ?! 」
ドラミング・A・GOGO!が、胸を叩くドラミングで妖爪鬼を威嚇しようとした瞬間!
妖爪鬼は地を這う様な猛ダッシュで、ドラミング・A・GOGO!との距離を急速に詰める!!
妖爪鬼は地を這う様な猛ダッシュで、ドラミング・A・GOGO!との距離を急速に詰める!!
「 ウ ホ ー ッ!! 」
ドラミング・A・GOGO!は咄嗟に身体を仰け反らせ、直ぐに前屈。その勢いで両腕を一対のハンマーナックルとして足元に叩き付けた!
ド ガ ス ッ ! ギ ャ リ ィ ィ ッ !! ・・・ ズ ゴ ォ ォ ン ッ !!
そのタイミングは完璧。妖爪鬼の高速ダッシュをカウンター攻撃で潰す最速のハンマーナックル・・・だったが、その拳は大地を叩いていた。
何故なら妖爪鬼は、ドラミング・A・GOGO!の手前20メートルそこそこで右の手刀を大地に打ち込み、それを軸に旋回したからである。
何故なら妖爪鬼は、ドラミング・A・GOGO!の手前20メートルそこそこで右の手刀を大地に打ち込み、それを軸に旋回したからである。
妖爪鬼の身体は時計回りに旋回し、ドラミング・A・GOGO!の拳は、眼前を横切る妖爪鬼の脚よりも手前の大地に虚しく叩き込まれる。
しかし真の攻撃はここからであった。ドラミング・A・GOGO!がナックルウォーキングの体勢から再び身体を起こそうとした刹那!
しかし真の攻撃はここからであった。ドラミング・A・GOGO!がナックルウォーキングの体勢から再び身体を起こそうとした刹那!
ブ ウ ゥ ン ッ !! … ズ ガ シ ュ ッ !! … ズ ガ シ ュ ッ !!
遠心力の勢いが乗った妖爪鬼の左腕が異様に伸び、その鉤爪で大地に拳を着けたドラミング・A・GOGO!を強襲したのだ!
鋭い鉤爪はドラミング・A・GOGO!の右肘の上、次いで左肘の上にめり込み、その太い両腕を半ばから掻き切った!
鋭い鉤爪はドラミング・A・GOGO!の右肘の上、次いで左肘の上にめり込み、その太い両腕を半ばから掻き切った!
「・・・これが『黒荊』の切れ味か。凄まじい威力だ」(※『黒荊』、『煉獄』については『僕私のアムステラ設定スレ』No49より)
ズ ッ ! ウ ゥ ゥ ゥ ン ッ ッ !!
両腕を失ったドラミング・A・GOGO!が横転し、仰向けになる。そこに妖爪鬼が追撃を繰り出した。
真っ直ぐに頭上へ振り上げた右腕を、まるで棒で叩くかの様にドラミング・A・GOGO!目掛けて振り下ろしたのだ!
真っ直ぐに頭上へ振り上げた右腕を、まるで棒で叩くかの様にドラミング・A・GOGO!目掛けて振り下ろしたのだ!
ブ オ ォ ン ッ !! … バ シ イ ッ !!
成す術無くその一撃を受けるかと思われたドラミング・A・GOGO!だが、まだ打つ手が・・・いや、『足』があったのだ!
両足を振り上げ、その両足裏で妖爪鬼が振り下ろした右腕を、まるで真剣白刃取りの如く挟み止める!
両足を振り上げ、その両足裏で妖爪鬼が振り下ろした右腕を、まるで真剣白刃取りの如く挟み止める!
「中々やるな・・・だが、それも予測済みだ。今度は『煉獄』の実験台となって貰おう」
影狼隊隊長がそう呟くのと同時に。妖爪鬼の右腕が肩から外れ、ドラミング・A・GOGO!の脚に大蛇の如く絡み付く。
部位自爆装置『骸破』の改良版である『煉獄』は焼夷型であり、対象部位を赤熱化させて周囲を巻き込み確実に自壊する。
部位自爆装置『骸破』の改良版である『煉獄』は焼夷型であり、対象部位を赤熱化させて周囲を巻き込み確実に自壊する。
流石にこれは、コングマンの理解を超えていた。伸縮する異様な腕が、今度は蛇の如く脚に絡み付いた上、脚を巻き込んで爆発したのだ。
手足をもがれて、仰向けに転がっているしか無い彼だったが。その体勢が故に、星明りを遮る希望をいち早く見つける事が出来た。
手足をもがれて、仰向けに転がっているしか無い彼だったが。その体勢が故に、星明りを遮る希望をいち早く見つける事が出来た。
「・・・ぬっ。もう来たのか? 読みよりも少し速かったな」 ヒ ュ ル ル ル ・・・ ズ ウ ゥ ゥ ゥ ゥ ン ッ ッ !!
優勢な筈の妖爪鬼が、数歩後退して踵を返したその眼前! 先ほどからサーチライト群に照らされている空間に、巨大な影が舞い降りた!!
そう。この機体こそが! アフリカ南部同盟軍の旗印たるスーパーロボット・・・ ギ ガ ン ト 2 8 号 で あ る !!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
激闘の傷跡を残すギガント28号が、隻腕の妖爪鬼の前へ威圧的に立ちはだかる。
「その声は・・・影狼隊隊長と言ったな。ココを貴様の終焉の地とする覚悟は出来ているか?」
百文字の宣告を受けるも、妖爪鬼のコックピット内では影狼隊隊長が不敵な笑みを浮かべる。
「いや? これだけ有益なデータを頂いたのだ。帰ってゆっくり吟味する暇ぐらいは欲しいのだがね?」
み し り 。 ギガント28号のバネ仕掛けが軋む。
「虚、焼沼(うろ、やけぬま)」 影長が呟くと同時に、ギガント28号の足元周辺 ― 最初に妖爪鬼が立っていた辺り ― の地面全体が深紅に光る。
ズ ボ ッ ッ !!
次の瞬間。ギガント28号の両足が、一瞬で溶けて赤熱化した大地に脛の半ばまで咥え込まれる!
いきなり足元を掬われた形になったギガント28号はよろめくが、無様に転倒するのは免れた。百文字による身体制御の賜物である。
いきなり足元を掬われた形になったギガント28号はよろめくが、無様に転倒するのは免れた。百文字による身体制御の賜物である。
「それでは、さらばだ。次回は貴公が来る前に逃げる様、心掛けよう」 冗談めかしてそう言い捨てると、妖爪鬼は闇の奥へと遁走した。
「・・・つくづく逃げ足の速い男だ・・・まぁ良い。大丈夫だったか、コングマン」
ギガント28号は大地に埋まった両足をズボリと抜き、地上に降りた百文字は大破したドラミング・A・GOGO!へと歩み寄った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
影狼隊隊長は、逃走しながら呟く。
「やはり生半可な妨害策では、奴の能力と『赤飛』の性能を完全に誤魔化すのは無理か。まぁ、やらんよりはマシだが」
「そしてコングマンと言ったか。獣であるが故に迷いは無い・・・だが、逆に無さ過ぎるのが狙い目だったな」
そう。だから初手はドラミングで威嚇してくるだろうと予測が出来たし、その威嚇行動を誘発する状況にしていた。
相手の手を予測するのは影長の十八番だが、実はそれ以上に彼が得意とするのは、『相手に【予測できる行動】を取らせる事』であった。
相手の手を予測するのは影長の十八番だが、実はそれ以上に彼が得意とするのは、『相手に【予測できる行動】を取らせる事』であった。
そしてあの状況下、あの体勢で咄嗟に繰り出すとしたらハンマーナックルが最良。それ以外の手では間に合わず、結局は隙を生むだろう。
しかしハンマーナックルが来ると判っていれば、それに合わせたカウンター技を狙って繰り出せば良いのだ・・・。
しかしハンマーナックルが来ると判っていれば、それに合わせたカウンター技を狙って繰り出せば良いのだ・・・。
無論、事前に高熱融解剤を浸透散布して『虚、焼沼』を仕込んだのも想定内。
闇の中を降下するギガントが、足元を視認して着地出来る開けた場所と言えば、自ずとあの位置になるのだから。
仕込み時間的に足の一部を捉える程度の効果しか無かったが、逃走の隙を作るだけなのでそれで充分。
闇の中を降下するギガントが、足元を視認して着地出来る開けた場所と言えば、自ずとあの位置になるのだから。
仕込み時間的に足の一部を捉える程度の効果しか無かったが、逃走の隙を作るだけなのでそれで充分。
「この交戦で、コングマンには異形の機体に対する恐怖を植え付けた。恐怖を律する事が出来ぬ限り、その動きは精彩を欠く」
「恐怖は抑えられるかもしれんが、過剰な警戒心は隙を生む。有効性の是非を問われても困るが、それなりに効果はあるだろう」
「恐怖は抑えられるかもしれんが、過剰な警戒心は隙を生む。有効性の是非を問われても困るが、それなりに効果はあるだろう」
「まっ、威圧偵察に戦力分析、新兵装の実戦テストまで一度に済ませたのだから上出来だな。後はケリーオ氏救出作戦の成功報告を待つとするか」
夜の闇を疾駆する鋼の魔獣は、静かに闇の中へと溶け込み、その姿を消した。