始まりの死
~7月31日 23:50~
少年は仰向けに倒れていた。
草の匂いがする。
好きになれない。
これだから夏は嫌いなんだ。
鉄の匂いがする。
………。
なぜだろう。
この匂いも嫌いだったはずなのに。
今ハ、トテモ心地イイ。
「ーーーハッ」
自然と笑みがこぼれる。
目の前のナニカがちらりとこっちを見た。
その視線はすぐにそらされる。
少年の胸には穴が開いていた。
銃で撃たれたかのような、小さな穴。
そこから溢れ出る温かな血は、大地に染み込まず少年を包む。
ナニカが立ち去ろうとする。
「ォ ハ、俺ガ 殺シ ャル」
喋ろうとしても言葉にならない。
いつの間にか、そこにいるのは少年だけになっていた。
薄れゆく意識の中、少年の目に月が映る。
どこにでもある満月。
ただ、それは赤かった。
胸に開いた穴から血を吐き出しながら、手を伸ばそうとする。
(アァ、ナンテキレイナ、 ナンダ)
伸ばしかけた手が血の海に沈んだ。
たった一つの想いだけを抱いて少年の意識は閉ざされてゆく。
そのまどろみは、温かい血に誘われるかのよう。
深く、
深く、
ただ、
堕ちてゆく。
その満月の夜、
ある少年が死んだ。
最終更新:2007年09月21日 23:44