八月一日
~8月1日 7:25~
その日、少女はいつもより早く起きて鼻歌混じりに身支度をしていた。
整った顔立ちに大きな瞳。
そのモデルのような少女の名は宮野美鈴〈ミヤノミスズ〉。
「今日、彼と出かけてくるから」
母親に声をかけて二階にあがり、自分の部屋に入る。
「そろそろ付き合い初めて1年かぁ…」
八月一日。
この日は特別な日だった。
一年前のその日から、美鈴は幼なじみと付き合い始めた。
「ふぅ、こんな感じかな。
いつも支度に時間かけすぎかなぁ…でもまあいっか、彼も喜んでくれることだし♪」
そうこうしているうちに身支度が終わった。
後は彼からの連絡を待つばかりだ。
「んん…それにしても連絡まだかな」
少年につながっていると信じて、窓から空を見る。
雲一つない晴れ空。
その下には、見慣れた町並みが広がっている。
その町並みを、男は歩いていた。
道が狭い。
実際はそれほど狭いわけではないが、男の身長がゆうに2mを越えているためである。
その大男は、夏にもかかわらず黒いスーツを着ていた。
彼は二つの命令を受けている。
一つ目はすでに処理済み。
二つ目はこれから実行することになっている。
男は商店街に入る手前の道に入り、タバコ屋を左に曲がり、向かいの花屋の脇の道に入った。
その道を歩いていく。
そして突き当たりで右に曲がる。
とある一軒の家の前で男は足を止めた。
赤い屋根によく手入れされている庭。
そこには、
「宮野」という表札。
少女はまだ知らない。
少年が草むらに倒れたことを。
少女はまだ知らない。
少年が死んだことを。
少女はなにも知らずに少年を待つ。
八月一日。
この日は、特別な日になった。
最終更新:2007年09月21日 23:27