迎え
~およそ一時間前~
暗い室内。
うっすらと輝いているのは、大きなテレビの画面のみ。
その光は部屋の主を照らしだしていた。
腰まで届く美しい髪に、透き通るような白い肌。
その幼さが残る顔は少女としか言いようがなくてーーー
『ーーーまた、椎葉さんは胸を貫かれておりーー』
画面には中性的な顔立ちをした少年の写真が写っていた。
何を思ったのか、少女はある人物を呼ぶ。
「ユッピー!!ちょっと来てー!」
しばらくして男が入って来る。
その髪はひどいくせ毛で、男は使い古したつなぎを着ていた。
「はいはい~っと。どうかしたか?」
「この椎葉ってコ、ユッピーが殺したんだよね?」
「ああ、多分そうだけど…」
ユッピーと呼ばれた男は少し顔をしかめる。
あまり自信がないからだ。
自分が殺した人間の顔などいちいち覚えてはいない。
「これさっき録画したニュースなんだけどさー、逃げ出したみたいだよ。このコ」
「へぇ~」
嫌な予感がする。
しかも悪いことに、この男の嫌な予感はよく的中する。
「このコタイプだからさー、覚醒してたら連れてきて♪」
「‥‥‥」
「ダメ?」
少女が上目づかいで訴えかけてくる。
やっぱり。
めんどくさいことになった。
「わかりましたよ、我らが女神さま」
それだけ言って、男は部屋から出ていく。
「ありがとーユッピー!!」
残されたのは一人の少女。
それはもっとも神に近く、もっとも神からかけ離れた少女。
その微笑みは、まさに女神そのものだった。
そして一時間ほど経ち、ユッピーと呼ばれた男はとある研究所にいた。
「お取り込み中悪いね、お嬢ちゃん。
俺は由良〈ユラ〉。ていうか、血の弾丸って言った方がいい?」
言葉が出ない。
セバスチャンの頭がこっちを見つめているような気がする。
「あー、どうも部外者っぽいな。まあ俺のことは気にすんな。あんたに用はないし」
血の弾丸は美鈴の横を通って、透明な壁の前で立ち止まった。
「うわホントに生きてるよコイツ」
言いながら、男が自らの血に濡れた左手をかざすとーーー
(無理だ。だってーー)
‘ズッ’
(ーーだってあの壁は、戦車が突っ込んだってーーー)
3mほど、壁が崩れ去った。
それはまるで、紙をマシンガンで撃ち抜いたかのように。
「迎えにきたぜ、椎葉伶。」
そして、少年は初めてこちらに目を向ける。
一瞬の戸惑いの後、その口は大きく歪んだ。
「お前は…」
部屋と同じように。
輝いて、
ーー白く
濁って、
ーー白く
狂って、
ーーひたすら白く
少年は告げる。
あのときと同じ言葉を。
「お前は、俺が殺してやる!」
最終更新:2007年09月21日 23:28