黒いスーツの男
穴が開く。
その体に、無数の小さな穴が開く。
生きるために必要な器官を避け、的確に体が貫かれる。
だがソレは倒れない。
「ハァ?」
由良は思わず口にしていた。
予想外。
由良と少年の間に、血まみれになった黒いスーツの男がいた。
「フゥ…ちょっと失礼するぞ」
全身から血を吹き出しながらも、男はそれを気にとめてはいない。
「てめぇ何の用だ、熊沢」
「いやなに、彼を貴様らに渡すわけにはいかないのでな」
熊沢と呼ばれた男が答えた。
今はそれどころではないはずなのに。
滴る血。
明らかに致死量だ。
早く血を止めないとーー
ーーー?
「ウソ…」
止まっている。
あれほど流れていた血が、今は確かに止まっている。
ウィーン
扉から大勢の人が入ってきた。
彼らは皆、映画でみるような重装備をしており、一斉にその得物を由良に向ける。
「チェックメイトだ。今回はあきらめることだな」
「ーーーチッ」
由良は走って自分が壊した壁から出て行った。
パララララッ
その足音を追うように、サブマシンガンの軽快な銃声が聞こえる。
次第にその音も遠くなり黒いスーツの男が口を開いた。
「間に合ったようだな。とりあえずここを離れるぞ。ついて来い」
「あ、あの!」
「B班とC班はプラン16に従って森本博士を処理しろ。A班はオロナミンBを三本もってこい」
前を歩く男はこっちの話を聞こうともせずになにやら指示をだしている。
(…さっきもこんなことあったな)
「おっといかん。君のことを忘れていたよ」
「あ゛?」
言いながら伶に近くとーー
ドスッ
ーーその腹に拳を叩き込んだ。
「伶!!」
「気絶させただけだ。行くぞ」
男は銀色の筒を受け取りその中身を一気に飲み干した。
伶を肩に担ぎ、歩き出す。
ついて行くしかない。
信用できないが、今は他に選択肢がない。
たとえそれが引き返すことのできない道だとわかっていても。
最終更新:2007年09月21日 23:28