bloody bullet
「伶!!」
美鈴が透明な壁を叩く。
「ムダだよ。2cmの特殊強化アクリル板を10枚重ねているんだ。戦車が突っ込んだって、彼は気づかない」
「ーーーッ!」
感情のない声が告げる。
なにが面白いのか、その顔は笑っていた。
「まあそこに座りたまえ」
しぶしぶ趣味の悪いソファに腰をかける。
科学者は笑ったまま、
「何から話そうか。ああ、僕の名前は森本・F・セバスチャン。セバスチャンって呼んでくれ」
と、ムリな注文をしてきた。
「あの、伶は一体…」
「…報告は受けている。ニュースを見たんだろう?彼は死んだんだ」
「なっーーー!?」
「正確には仮死状態に陥っていたわけだがね。」
ワケがわからない。
この男は何を言ってーーー
「簡単に言うとね、彼は生まれ変わったんだよ。そして、もう人間じゃない」
美鈴は言っていることの半分も理解できていなかった。
それでも科学者は口を止めない。
「吸血種になったのさ。血の弾丸によってね」
「き、吸血種…?」
一枚の写真が渡される。
そこに写っているのは、ひどいくせ毛でつなぎを着た男だった。
裏にはbloody bulletと書いてある。
「吸血種は吸血種だよ。人類は世代交代を始めたんだ。彼らは、僕ら旧人類を排除するために創られた。神によって。
あ、ちなみに血の弾丸っていうのは彼を殺した吸血種のことだから」
説明を受けるほどに美鈴は混乱していく。
男はそんなことを気にしない。
「吸血種は人間離れした身体能力をもつんだけど…
まあそんなことはどうでもいいか。彼らの中には、異能の力に目覚めている者がいる。
それと、彼らの血を体内に取り込むことで吸血種になることがある。まるで吸血鬼みたいだろ?」
「そんな話、信じられるわけーーー」
美鈴が声を張り上げたとき、
‘ズゴッ’
という音がした。
壁に目をやると、3mほどにわたって、文字通りズタズタに破壊されていた。
「これは…まさか血のっーー」
‘ ’
音もなく、セバスチャンと名乗った男の体がはぜる。
無数の銃弾をくらったかのように胴体が吹き飛んだ。
腕が落ちる。
脚が崩れる。
そして、
頭が、
美鈴の足元まで転がってきた。
声が出せなかった。
理解が追いつかない。
壊された壁から、一人の男が入ってくる。
その髪はひどいくせ毛で、
その服は使い古したつなぎで、
その顔には見覚えがあって、
その左腕は自らの血で濡れていて、
その存在は、吸血種を証明するものだった。
ソレは血の弾丸。
椎葉伶をころした男。
最終更新:2007年09月21日 23:28