ココロ
杭が打たれる。
ーードスッ
穴が開く。
ーーズッ
肉が千切れる。
ーーグチッ
「アァアあァァアァアアぁアアア!!」
血が滴る。
ーーピチャ
ココロが崩れる。
ーーァ…
自分が消える。
ーーアア…!
「ァ、アァあアア…」
椎葉伶は殺された。
それは紛れもない事実。
そのことを覚えてはいたが、死というものを正しく認識してはいなかった。
記憶などどうでもいい。
それがつい先ほどまでの考え。
だが黒いスーツを着た男に気絶させられ、気がついたら全てを思い出していた。
正しい記憶は正しい認識をもたらす。
(俺ハ…ァのトき、確かニ死んダ…!)
胸から流れる温かな血。
それとは対照的に、冷えていく体。
(死の感覚ヲ、感じタンだ…)
恐怖。
それは人間の最も単純な感情の一つ。
(…死にタい。
あノとキのこトヲ思い出スすクラいなラ、いッソのコとーーー)
少年のココロは崩れてゆく。
かろうじてつなぎ止めていた精神がボロボロと剥がれ落ちる。
少年は、逃げることを選んだ。
ーーーハズだった。
「んグ!?」
伶の口を、美鈴の唇が塞いでいた。
「大丈夫。大丈夫だから」
互いに腕を背中にまわす。
唇が触れあうだけの軽いキス。
幾度となく行ってきたソレは、確かに伶のココロに安心を与えた。
「美鈴…!」
背中にまわした腕に力をこめる。
(俺は…まだ、死ねない…)
涙が頬を伝うのがわかる。
その短い抱擁は、何時間にも感じられた。
宮野美鈴がいる。
それが椎葉伶の存在理由。
それだけで、十分だった。
最終更新:2007年09月21日 23:29