アットウィキロゴ

the 6th drop

殺意のままに




タンッ

跳ぶ。
5mの高さをものともせず、少年は舞台に上がってきた。
復讐という名のステージへ。

「伶ッ!」

一人の少女が駆け寄る。
震えながら抱きついてくるその瞳は、涙で濡れていた。

永遠とも思える数秒の後、
少年は、
少女のか細い腕を引き剥がした。

その口が告げるは残酷な現実。

「誰だよ、お前」

「え…?」

少女の驚いた顔を気にもとめず、少年は自らを殺した男に歩み寄る。

「おいおい、お前なんで生きてんだよ」

「‥‥‥」

その言葉を無視し、少年は駆ける。

「!?」

それはまさに一瞬の出来事。
少年はすでに、男の後ろにまわっていた。

「チッ!」

男は身体を引き裂かんとする少年の腕からすばやく逃れる。
その姿もまた、人間ではなかった。

左腕を振って血を飛ばす。

‘ズッ’

少年の足元がくり貫かれた。

だが、人間離れした身体能力の前にそんなことは意味をなさない。

「オラァッ!」

少年の腕がふるわれる。
何かを鷲掴みにするかのようなその手は、えぐっていく。

真新しい床を。

無機質な壁を。

まだ温かいソファを。

ふるわれるたび、その手は自らの血に染まってゆく。

(コイツーー硬化か!?)

「よく聞け!俺はお前を迎えに来たんだ。黙ってついてこい!」

「ハッ!
 知るかよ、んなこと!」

(クッソ!殺すわけにもいかないしな…
 って、待てよ!?)

男は歪んだ笑みを浮かべると、呆然としていた少女を掴まえる。

「オイッ!コイツがどうなってもいいのか?」

「きゃっ!?」

少女が気づいたときには遅かった。
少年が動きを止める。

うつむいて、
その顔に男と同じ笑みを浮かべるとーーー

「だから、知るかっつうの」

一瞬の後には、少女たちの目の前に現れていた。

「チィッ!!」

男が少女を突き飛ばす。血にまみれた少年の腕が、ついさっきまで少女がいたところを通った。
その行いに迷いはない。

「ガッ…」

男が押さえている左腕から、血が滴っている。
先ほどより血が多い。

「ハッ!殺人鬼がなに女なんか庇ってんだよ!!」

少年がまた動きを止める。
まだ笑っている。
この状況が楽しくて仕方がないかのように。



「‥‥‥」

男が下を向いて、何かつぶやいた。

そして、

その場の空気が変わった。

「あー、もういいや。別に無傷にこだわることねぇか」

少年は動かない。
否、動けなかった。

「調子にのってんじゃねーぞ、クズが」

男の左腕が差し出される。
その血は男のものか、少年のものか。

「散ってろ」

‘   ’

音もなく。
全てを貫く血の弾丸が解き放たれた。



新しい血が飛び散る。

それはーーー
ーーその血は、人の道を外れた者たちの証。



最終更新:2007年09月21日 23:28