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バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ
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バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

艱難辛苦(前編)

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kyogokurowa

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ゴオオオオオオオオ―――!!

鼓膜を震わせる轟音を伴って、地平線の彼方にて、立ち昇るは炎柱。
夜天を衝くが如く、その紅蓮の勢いは、遠目から見ても、鮮烈なものであり、遺跡を発った一行の足を止めるには十分であった。
その絶大な出力から察せられるは、戦闘。すなわち、殺し合いの気配―――

「随分と派手な花火が上がってるなぁ、おい」

にもかかわらず、呑気に声を漏らすのは、金髪のホスト風の青年―――垣根帝督。
片腕をポケットに手を突っ込んだまま、ぼんやりと、それこそ遊園地のアトラクションを鑑賞するような気楽さで、遠方で生じる業火を眺めている。

「――あれは……」

「……ヴライ……!!」

垣根と対照的な反応を示したのは、業炎の担い手に心当たりがある、咲夜とムネチカ。
同じヤマト八柱の将軍であり、帝より、共に仮面(アクルカ)を賜っているムネチカは言うまでもないが、咲夜もまた病院での災害の記憶が新しく、否応なしに、あの武人の姿を想起するのであった。

「ヴライってのは、お前らが言ってたデカブツか。
炎を操るとは聞いてたが、随分と出鱈目な出力じゃねえか。
ありゃあ、付近一帯は焼け野原だな」

「……いや、ヒトの身であれば、限度はある。
平常の奴の火神(ヒムカミ)では、仮面(アクルカ)を以ってしても、あの火力は成し得ない。
恐らく、あれは……」

ムネチカの脳裏に過るは、仮面の者(アクルトゥルカ)としての、真なる力の解放。
己が魂魄を対価に、根源から供与される力を以ってして、その身を巨獣に昇華させることがあれば、都市一つを灰塵に帰すことも可能である。
恐らく、ヴライはその扉を抉じ開け、闘争に臨んでいるのだろう―――

ド ゴ ン ッ!!


「――っ!?」

「次から次へと、騒がしいな」

そんなムネチカの懸念など意に介さぬと言わんばかりに、轟音が鼓膜を震わせる。
それは先程の炎の爆炎とは異なる種類の音。
何かとてつもなく大きな力が二つぶつかり合い、大気を震わせたような重低音が連続して響いてくる。

「垣根殿、次に向かうは研究所とのことであったが……」

「ああ、そのつもりだが?」

「小生は彼の地に向かおうと思う。
あの漢―――ヴライが仮面(アクルカ)を用いて、暴虐を為しているとなれば、同じ仮面(アクルカ)の担い手として、これを捨ておくわけにはいかぬ」

ムネチカは、自身の面貌を覆う仮面に手を添えながら、先程炎柱が立ち上がった方向に視線を向ける。
その蒼色の瞳には、確固たる意志が宿っていた。
ヴライは、此の地においても、幾多の者を手に掛けていると聞き及んでいる。
例え、相手が女たるムネチカでは成し得ない仮面(アクルカ)の真なる解放に至っていたとしても、これ以上の犠牲を出すわけにはいかない―――
故に、『ヤマトの盾』とうたわれる女将軍は、戦禍に背を向ける選択肢はないのであった。

「そうかよ」

そんなムネチカの決意を受けた垣根はというと、つまらなそうに鼻を鳴らした。
さらに、少しだけ間を置いてから言葉を続ける。

「俺も行く。別に構いやしねえよな?」

思いがけない同行の申し出だったが、

「無論。小生に拒む理由はない」

ムネチカは静かにそう答え、小さく頷いてみせた。

垣根としては、わざわざ難敵と事を構える必要性はないのだが、その難敵と相対しているであろう勢力が気に掛かっていた。
果たしてそれが、ブチャラティ達や、クオン一行なのかは定かではない。しかし、そこに利用できる価値のある参加者がいようものなら、回収しておきたいというのが垣根の本音であった。

「お前は、どうするんだ?」

「悪いけど、私は遠慮させてもらうわ」

垣根の問いに、咲夜は迷わず即答した。
紅魔館のメイドにとっての最優先事項は、あくまでも、早急な主の元への帰還である。
成り行き上、今は脱出の流れに乗った方が効率が良いと判断してはいるものの、必要あらば、再び優勝を目指す方針に切り替えるのも厭わない。
効率を重視してるが故、ヴライの脅威を身を以って味わった身としては、今一度あの災害と対峙するのは御免被りたいし、あの災害によって誰が生きようが死のうが知ったことではない。

「だったら、お前は先に研究所で、解析屋達と合流しておけ。
俺たちは、用を済ませてから、すぐに向かう」

「そう。なら、お先に失礼させてもらうわ。精々頑張って」

咲夜の返答内容は想定内だったのようで、垣根はさして興味もなさげに指示を出すと、それを咲夜もまた承諾。
咲夜が研究所の方へと、駆け出すのを尻目に、垣根は背中に白い翼を発現。その姿は、まるで神話に登場する天使の如く。

「それじゃあ、こっちも行くとするか」

「承知……!!」

垣根とムネチカは短く言葉を交わすと、地面を蹴り上げた。未だ衝突音絶えぬ戦場目指して、垣根は宙を滑空し、ムネチカは大地を駆けていくのであった。




「……。」

クオンさん達と合流してから、付近にいる参加者を探すため、私達はひたすらに歩き続けた。

隣に並んでいるクオンさんも、ロクロウさんも、後ろから付いてきている早苗さんも、特に何も話さずに歩き続ける。

非常に気まずい雰囲気が、沈黙という形で私達を包み込むが、それも無理はない。
クオンさんは、愛していた人を亡くしているし、その彼を早苗さんが殺してしまったと聞いている。和気藹々としていた方が、不自然だろう。
それに、私だって麗奈を失ってしまった。
とてもじゃないが、軽口をたたく気力など起きない。

今はただ、目標にだけ向かって突き進むしかないのだ。

何でもなく部活にのめり込んでいた、あの日々を。
麗奈を。
みぞれ先輩を。
希美先輩を。
あすか先輩を。

取り戻すために。

その為には、ロクロウさんも、クオンさんも利用させてもらう。
早苗さんは、まだ迷っているみたいだけど、取り込んでみせる。クオンさんの大事な人を奪ったという罪の意識を突いていけば、いずれは陥落してくれるだろう。
そして、ヴァイオレットさんも、あかりちゃんも、まだ生きていれば仲間にして―――

「あっ…」

そんな私の思考は、対向より現れた、複数の影によって中断された。

「やぁ、君たちは無事だったみたいだね。良かったよ」

ヴァイオレットさんに、あかりちゃん---そして二人を代表するように前に出た、黒コートの男性が、ニコニコしながら、私達の前に姿を現した。

再会は思ったよりも、あっさりと実現した。




「……オシュトル様が……」

久美子達との邂逅を以って判明した、一連の騒乱の顛末―――。
その中でもオシュトルの死は、彼と早い時期から死線を共にしていたヴァイオレットの心を深く抉り、その端正な面貌を深く曇らせた。

意見の食い違いなどあったのは事実だ。
だが、それと同時に、仕える主君を失い、人知れず苦悩をしていたことも、ヴァイオレットは知っていた。
それでも尚取り乱すことなく、平静を保ち、皆の取りまとめに苦心していたオシュトルに、出来れば寄り添ってあげたいとさえ思っていた。
かけがえのない人を失った辛さは、痛いほど分かるから―――。

「俺としても、オシュトルさんとは、もっと仲良くしたかっただけに、非常に残念だ」

ヴァイオレットの隣に並び立つ、臨也もまた、大きな溜息をついて、オシュトルの死を惜しんだ。側から見れば、わざとらしい仕草この上なかったが、発した言葉に偽りはない。

まるで時代劇の登場人物かのような古めかしい出立ちや言葉遣いとは裏腹に、巧みにコンピュータを操作し、主催陣営へのハッキングをこなす、その卓越した情報処理能力には、情報屋を生業としていた臨也ですら舌を巻くほどのものであった。
また、考察面においても、冷静沈着に状況を把握し、的確に判断を下すその様は、まさに将の器に相応しかった。
協力関係を結ぶ相手としては、非常に有益であったのは言うまでもなかったが、それと同時に、『観察』の対象としても、非常に興味深い存在であった。

当人は否定していたが、臨也の見立てでは、オシュトルは『人間』であった。
『人間』の身でありながら、何故『人間』を模倣した存在である亜人を装っていたのか―――是非とも、その経緯を、その胸の内を、根掘り葉掘り聞き出したいと、好奇心が大いに刺激されていた。

恐らくは、己が仲間の亜人を護る為だったのだろう―――オシュトルは、自ら前線に出て、あの大猿を相手取り、大奮戦したと聞く。
その覚悟に至る過程、その心中、そして、彼に訪れた無情すぎる最期-――それらを見届けられなかったのは、痛恨の極みと言っても過言ではない。

「そういうことか……」

一方で、ロクロウはというと、臨也達との情報交換によって、静かに納得した様子をみせた。
久美子から断片的にしか伝えられていなかった、岩永琴子とスドウカナメの死―――その経緯を大まかに把握することが出来たからである。

「――……。」

ロクロウは、チラリと横に並び立つ久美子に視線を送るが、彼女は、沈痛な面持ちで佇んでいる。
臨也達と邂逅した後も、クオンと早苗は変わらず、俯いたまま口を噤んでいたこともあり、こちら側の情報の供給は、久美子とロクロウによって行われた。
その後は、早苗達と同じく、だんまりを貫き、ただ臨也から齎される情報に耳を傾けていた。

岩永琴子に関しては、謂わば見殺しで、スドウカナメに関しては、致命傷を与えた張本人ともなりえるが、ロクロウがそれを責めることはない。無力であるが故、自分の罪から目を背向け、あまつさえ他人にそれを転嫁しようとしたのも、彼女の無力さ故であり、そんなか弱い彼女から離れて護ることの出来なかったロクロウが責める道理は、何処にもないからだ。

ロクロウだけではない。
元より皆、精神的にも体力的にも、その余裕すらないのか。この場にいる誰もが、か弱すぎるが故、他者の悪意に翻弄されたが故の、久美子の所業を糾弾はおろか言及することはなかった

「うん、安心して良いよ、久美子ちゃん―――」

かのように見えたのだが。

「君に見捨てられたであろう岩永ちゃんも、君に致命打を浴びせられたカナメ君も―――」

たった一人―――

「君に対して恨み言は漏らしてなかったから、さ」

自らを「情報屋」と称する青年は、柔和な笑みを張りつかせて。
如何にも、安堵させるような優しい口調で以って。
それでいて、無慈悲な言の葉を、栗色の少女に容赦なく浴びせたのであった。

「臨也様、それは―――」

場の空気が、凍った。
人間を愛する『情報屋』にとっては、いつも通りに、『観察』のための燃料を投下したに過ぎない。
しかし、わざわざ、少女の過ちを掘り下げて、再認識させようとする、無遠慮なその言い様は、ヴァイオレットのみならず、業魔のロクロウですら、眉を顰めた。

「……お気遣い、ありがとうございます、折原さん……」

しかし、当の久美子はというと、一瞬だけその瞳が激しく揺れ動いたものの、すぐに平静さを取り戻し、ペコリと頭を下げて応じてみせた。
そして、下げた頭を戻すと―――

「結果的に、私の行動が、岩永さんとカナメさんの死を招いてしまったのは、疑う余地はないと思います。
だからこそ、私は責任を持って、二人の死を『無かったこと』にしようと思っています……」

未だ好奇の視線を浴びせてくる情報屋を睨み返すよう、真っ直ぐ見据えたのであった。

「……? お二人の死を、『無かったこと』に……?」

臨也が「へぇ…?」と面白そうに目を細めるのと対照的に、その隣に控えていたヴァイオレットは、思わず反芻した。
あまりにも突拍子もない物言いに、さしもの自動手記人形も、目を丸くする。

「はい。二人だけじゃありません―――私たちは、この殺し合いで失くした全てのものを取り戻したいと思っています……。
あ、あかりちゃんは、既に知っていると思うけど―――」

久美子の視線が、臨也とヴァイオレットの奥に佇む白髪の少女のものと交わる。
瞬間、肩をビクリと震わせるも、すぐにその視線を逸らして、少女は持ち堪える。

「折原さんとヴァイオレットさんにも、聞いて欲しい。
私と麗奈が、何を目指していたのかを……」

そして、最弱たる少女は語りだす。
彼女と彼女の『特別』だった少女が、この絶望塗れの世界で見出した唯一の光を――。
その光に託さんとする想いと、願望を――。




「―――と、これが、私達が目指していることです……」

ロクロウ、クオン、早苗、そして、あかり―――既にそれを認知している皆が見守る中で、久美子は、自身と麗奈が立てた目標を、臨也とヴァイオレットに、語り聞かせた。

μはヒト型の楽器であり、願望機であるはずだという推測―――。
そして、彼女の力を強奪することが出来れば、この殺し合いで起こった全てを『無かったことにする』事が、出来るかもしれないということ―――。

勿論これらは、あくまでも久美子と麗奈の憶測でしかない。
しかし、久美子は、全てを『無かったこと』に出来れば、この殺し合いで体験したあらゆる惨劇も記憶から取り除くことも出来るし、死んだ人達も皆生き返すことも出来ると熱弁し、あたかも確実性を帯びた事実であるかのように、二人に伝えたのであった。

「いやぁ……中々面白いことを考えるね。
確かに、それが実現すれば、久美子ちゃんの言うとおり、俺達はこの悲劇に満ちた殺し合いの檻から、完全に『解放』されることなるね」

そんな久美子の説明に、時折相槌を打ち、質問を挟むなどをしてきたのは、臨也。
興味津々に、此方の話を聞き入るその態度に、久美子は、彼の興味を引くことが出来たと感じた。
しかし、だからといって、眼前の青年の前のめりな姿勢に、安心感を覚えることはなかった。

―――何なんだろう、この人……。

纏わりつくは、何とも言い難い、違和感。
柔和な笑みと、整った顔立ち、醸し出される理知的なオーラは、側から見ればコミュニケーションに長けた好青年そのものだ。
だけど、それは、只のハリボテであり、その奥には得体の知れない『何か』が蠢いていて……。
そして、その『何か』は、恐らく、久美子が苦手とするもの―――そんな気がしてならなかった。

「はい、だから皆さんにも、協力して欲しいんです! ここで失くした全てを、取り戻すために!」

沸々と込み上げてくる違和感を振り払うように、久美子は力強く、臨也に訴えかけた。
ともかく今は、『こちら側』に引き込むのが先決---違和感の正体を探るのは、その後でも良いと、考えたからだ。

「ヴァイオレットちゃんは、どう思うんだい?」

しかし、臨也は、そんな久美子の気勢に、目を細めたかと思うと、自身の意見を述べることもなく、あっさりと、隣に佇む金色の少女に話を振った。
まるで、久美子の訴えなど、取るに足らないとでも言わんばかりに、涼やかに流したのであった。

「――私は……」

臨也の態度に、久美子は、一瞬面食らうも、すぐに気を取り直し、ヴァイオレットに視線を移した。
臨也に話を振られたヴァイオレットであったが、少しの間だけ、目を伏せて、間をおいた。
そして、僅かな沈黙を経て、顔を上げると-――

「私は、久美子様達の考えには、賛同できません」

申し訳なさそうに、しかし、それでいて確固たる意思を孕んだ瞳で、そう答えたのであった。

「……理由を訊いても、良いですか?」

ヴァイオレットの答えは、ある程度予測は出来ていた。
やっぱりか、と落胆の溜め息をつきそうになるのをぐっと堪え、久美子は、問いを投げた。

「――久美子様、こちらを……」

「……これ、は……?」

そっと手渡されたのは、一枚の便箋。
不意を突かれた久美子は、便箋とヴァイオレットを交互に見やる。

「そちらは、お嬢様のご依頼により、記したものとなります」

「麗奈、の……?」

促されるままに、久美子は便箋の封を開き、中身を取り出した。
そこに綴られていたのはーーー

「これは……滝先生への……」

所謂恋文というものになるだろう。
トランペットにありったけの情熱を捧げていた少女の、恥ずかしさ半分、熱い恋心半分が、そこにはしたためられていた。
締めの言葉が記されていないが為、内容的には未完成ではあった―――しかし、そこに込められた、読んでいる此方が小っ恥ずかしくなるほどの、麗奈の純然たる『想い』と、それを形容する美しく流暢な文章も相まって、とても綺麗なものだと思えた。

「僅かな時間ではございましたが、私は、代筆を通じて、お嬢様の『想い』に触れさせて頂きました。
お嬢様の『想い』は、此の場所に確かに存在していました―――」

僅かな間が空いた。
ヴァイオレットは視線を伏せ、まるで記憶の中の光景を一つずつ確かめるように、ゆっくりと息を整える。

「お嬢様だけでは、ございません……。
オシュトル様、新羅様、アリア様、岩永様、カナメ様……。皆様きっと、それぞれ『想い』を抱いていたはずです―――」

オシュトルとアリアの名に、一連の流れを傍観していたクオンとあかりの身体が、僅かに反応した。
対照的に、臨也はというと、唯一世間基準での「友人」と呼べる存在だった男の名が上がっても、表情一つ変えることはない。ただただ、興味深そうに、久美子とヴァイオレットの問答に耳を傾けているだけであった。

「久美子様の仰る通り、此処で起こった全てをなかったことにしてしまえば、結果として皆様全員が救われることになるでしょう。
恐ろしかったことも、悲しかったことも、何もかも忘れ去り、元の日常に戻ることが出来るでしょう。
恐らく、それはきっと皆さまにとって、最善の結末になるかもしれません……」

「……。」

「ですが―――」

そこで、ヴァイオレットは、言葉を切ると。
辛辣な表情を浮かべる久美子の瞳を、真っ直ぐに見据えて、こう続けた。

「ですが、それでは、同時に、此処で犠牲となった皆様が遺された『想い』が否定されてしまうような気がして……どうしても踏み切れないのです……」

手袋のついた両の手を自らの胸に当てながら、自動手記人形は悩ましげに、そして辛そうに表情を歪ませながらも、言葉を紡いでいく。

「私は、此の場所に間違いなく存在した、皆様の『想い』を切り捨てたくない……。皆様の『想い』を無碍にしたくないのです……」

その声音には、いつも淡々と受け答えを行う彼女らしからぬ、微かな震えと、悲壮感のようなものを孕んでいた。

――きっと、自分が下した結論は合理的でないことは解っている。
――しかし、それでも譲りたくない。

多くの『想い』に触れてきたヴァイオレットだからこそ、『想い』に対する信念は強く根付いている。
それが如何に不合理であろうとも、如何に独善的と非難されようとも、ヴァイオレットは、『想い』を否定することを良しとはしなかったのだ。

「――あははっ…、何ですか、それ……?」

しかし、そんなヴァイオレットの主張に対して、久美子は乾いた笑いを以って応えてみせた。

「遺された『想い』が、なかったことになるのが嫌だから、当人の犠牲は諦めようって……? それ、本気で言ってますか、ヴァイオレットさん?」

「……久美子様……、私は---」

「ヴァイオレットさんは、麗奈を護るって、言ってたんですよね?
なのに、その責任を果たさなかった挙句、麗奈の死を受け入れろ---諦めろって言うんですか……? こんなモノの為に……!!」

グシャリと、鈍い音と共に、握り締められた便箋が歪な形に折れ曲がった。

「……っ!? 久美子様っ!?」

「勝手に、麗奈を、『過去』にしないでよ!!」

紙屑と化してしまった「想い」を、久美子はヴァイオレットに投げつけた。

「――私は違う……!! 私は麗奈を諦めたりなんかしない……!!」

クシャクシャになったそれを、慌てて拾い上げるヴァイオレットに、久美子は激情を叩きつけていく。

「『想い』がどうだかなんて知ったこっちゃないっ!!
私は、麗奈にまた会いたい。触れ合いたい。笑い合いたい。一緒に演奏したい!!
そんなモノなんかよりも、麗奈の方が、ずっとずっと『特別』なんだからっ!!」

久美子とて、自分でも、やっていることは最悪だと理解していた。
最初から、ヴァイオレットとは相入れることはないとも、解っていた。
それでも、自分にはヴァイオレットを糾弾する権利があると思っていた。

「麗奈は、最期に私に言ったんです、私達の『いつも』を取り戻して欲しいって……!!
分かりますか、ヴァイオレットさん……? これが麗奈の遺志なんですよ!!」

―――約束、だから……、裏切ったら、きっと殺すから……

脳裏に過るは、自分にとっての何よりの『特別』が、今際の際に託した願い。
その願いを叶える為には、どんな代償を払うことになっても構わないと---麗奈を失って、そう決意したのだ。

「だから、私は、私達の『いつも』を取り戻します……!! 麗奈との約束を果たすためにも……!!
これだけは、絶対に譲れない……!!」

「―――久美子様……」

悲鳴や絶叫に近しい声で、久美子は己が内にある激情を露にした。
久美子が示した覚悟に、ヴァイオレットのみならず、その場にいる誰もがは押し黙り、静寂が辺りを支配した。
久美子の荒々しい呼吸のみが、虚しく響く空間において――

パチパチパチパチ……

静寂を破ったのは、場違いなまでに軽快な拍手の音。

「素晴らしいね、久美子ちゃん。
君のその覚悟と、君と麗奈ちゃんの友愛に、俺は心から敬意を払うよ」

ニコニコと、柔和な笑みを張りつかせたまま、久美子を讃えた臨也。
そんな称賛と喝采を受けても、久美子の表情は晴れることはなく、眉を顰めるのみ。
訝しむ久美子を他所に、臨也は、柔らかながらもどことなく鋭さを孕む視線を、ヴァイオレットへと移す。

「でもさ、今の久美子ちゃんの訴えを聞いても、やっぱり、ヴァイオレットちゃんは考えを改める気は、ないんだよね?」

「……。……はい……」

ヴァイオレットは、沈んだ表情で、己が手中にあるクシャクシャの手紙を大事そうに抱えながら、小さく首肯した。
苦渋に満ちたヴァイオレットの返答に、臨也は、感慨深そうに頷く。

「そうだよね、ヴァイオレットちゃんの、人間の『想い』に対する信念もまた、ある種の『愛』だよね。俺としては、本当に素晴らしいと思うし、その考えを尊重したいと思うよ―――」

「結局、あなたは……」

「うん?」

どこか他人事のような、一線を引いて、それでいて、久美子とヴァイオレットの衝突を愉しんでいるように振る舞う臨也。
ペラペラと久美子とヴァイオレットの意思を讃え、批評していく―――そんな態度に苛立ちを覚えた久美子は、彼の紡ぐ言葉を遮り、問いを投げかけた。

「結局、折原さんは、私達に協力してくれるんですか? それとも反対の立場なんですか?
ヴァイオレットさんが、私達の考えに賛同しないのは解りました……。
でも、折原さんは、私とヴァイオレットさんの両方に共感じみたことを言ってるけど、自分の立場を表明していませんよね……?
あなたは、結局どうされたいんですか……?」

眼前で、未だ笑みの張り付いたままの青年を、久美子は鋭く睨み付けた。
未だ真意を見せない臨也。
その真意が、果たして自分達に利するものか、それとも不利益なものかと、久美子は見定める必要があったのだ。

「ああ、久美子ちゃん達が目指すものについての、俺の立場ね……。
そうだね、この際だから、はっきり言わせてもらうけど--」

久美子の剣幕に、臨也は笑みを崩すことはせず、しかし、その瞳に鋭利な光を宿したまま、言ってのけた。

「俺からしたら、君たちがやろうとしていることは、『自殺』だよ」

「……じ、さつ……?」

臨也の放った、思いもよらないワードに、久美子は面食らったように目を見開いた。
久美子だけではない。
ロクロウ、クオン 、早苗、あかり、ヴァイオレット―――皆それぞれ程度の差こそあれど、揺らいだ様子を示した。

「勿論久美子ちゃんが、考えて、悩んで、苦しんで、もがいてから下した決断が、この『自殺』であって、その達成のために、これから頑張っていこうってことなら、その意思は尊重するし、応援してあげたいんだけど、さ。
それでも、一緒に『心中』するのは、ゴメン被りたいんだよなぁ」

「わ、私達が目指すものの、どこが『自殺』なんですか……!? 麗奈を、皆を、蘇らせて、全てを取り戻すっていう試みの、どこがっ!!」

「結局のところ、久美子ちゃんはさぁ---」

狼狽える久美子を余所に、臨也は僅かに目を細めた。

「楽になりたいだけなんでしょ?
皆救われるとか大層な建前を掲げてはいるけど、さ」

「……っ!?」

臨也の指摘に、久美子は言葉を詰まらせた。
そんな久美子の様子を、臨也は愉快そうに観察する。

「確かに、久美子ちゃんの願望が実現すれば、俺達は全てを取り戻すことが出来て、辛かったこと、悲しかったことから解放されるのは事実だ。
それは認めるよ。でもさ―――」

臨也は、そこで一呼吸置くと、自身の胸に手を当てる。

「今この場にある俺達の自我は、その解放を知覚して、喜びを分つことは叶わない。
なぜなら、全てがなかったことにされるから―――言い換えるなら、ここにある俺達という自我もまた、なかったことにされる……。
つまりは、今この場で、久美子ちゃんや俺の話に耳を傾けている、現在進行形の俺達の存在は、消失することになる―――これって『自殺』と言えるんじゃないかな?」

「――それは……」

「俺も、趣味の一環で、自殺志願者の子と話したことあるんだ、『一緒に死にませんか?』って誘ってね。
彼女らはさ、それぞれ悩みを抱えていて、死後の世界に救いを求めていたよ。今自身に降りかかっている不幸や理不尽からの逃避先として、さ」

久美子の話をきっかけに、頭の片隅にあった記憶を想起させて、感慨深げに浸る臨也。
最終的には、「君達の死には愛が感じられない」と切って捨てたのだが、あの時の彼女らが、今どうなっているかは、知らない。
今はただ、眼前の興味深い観察対象に、言の葉を紡いでいく。

「これってさ、今の久美子ちゃんの状況と似ているよね?
久美子ちゃんもさ、たくさんの辛いことを経験して、大切な友達も失って、罪悪感も抱え込んじゃって……。そんな今の自分という存在を放棄して、その後の世界に救いを求めてるんだよね? 今の君が決して認知することのできない、その遡った世界にさ」

「――……。」

久美子は、言い返せなかった。
臨也の放った言葉は、的を得ていたからだ
確かに自分は、『全てを無かったことにする』という己が計画に、希望を見出している。
しかし、それは、辛くて、苦しくて、逃れようのない、ここに在る絶望からの逃避の裏返しに他ならない。

「ああ、一応断っておくけど、俺は君自身の『自殺』に関しては、肯定するよ。
他者の悪意によって、理不尽に身体も心までズタボロにされて、絶望のドン底に堕とされた君には、その権利は間違いなくあるさ……。それは、俺が保証する。胸を張って良いよ。
だから、君自身が『自殺』を選ぶのであれば、俺は止めたりはしないよ」

臨也は、そこで一旦言葉を区切ると。

「でもね」

柔和な笑みを保ったままではあるが、その双眸に鋭い光を宿して、こう続けた。

「その『自殺』を、他の参加者に強いるのは、頂けないかなぁ。
君は自分が苦しいからといって、他の皆も巻き込んで集団自殺を図ろうとしている」

「……っ!? ち、違うっ!! 私は、ただ皆を―――」

臨也の指摘に、慌てたように食って掛かる久美子。
しかし、情報屋は、そんな彼女の反応を嘲笑うかのように、肩を竦めて、言葉を被せていく。

「皆を助けてあげたいから、と言いたいのかな? 皆もきっと、ここに在った自我を殺してでも、楽になりたいって、思ってるはずだと……?
死んでしまった麗奈ちゃんだけでなく、君達以外の全員、皆も望んでいるのだと……そう言い切れるのかい?」

「そ、それは……」

心配そうに此方を伺うヴァイオレットに視線を移して、久美子は口ごもる。
既に反対を表明している彼女がいる以上、反論に転じるのは難しい状況だ。

「結局、君は、君の物差しで他人を測って、自分勝手な理想を押し付けて、勝手に納得しているだけなんだよ―――俺にも、ヴァイオレットちゃんにも、それにカナメ君や、岩永ちゃんに対しても、さ。
自分の『自殺』に巻き込むための大義名分のためにね―――」

グサリ、グサリ、グサリ―――。
久美子は、自分の内側に刃のようなものが、突き刺さったような気がした。
カナメや琴子の名前が挙がった瞬間には、身体が震え、心臓が早鐘を打つ感覚を覚えた。
情報屋の青年は、そんな久美子の様子を眺め、クツクツと愉しげに笑みを深める。

「駄目だよ、それじゃ。全然駄目。
君には、君が殺そうとしている俺達という自我に対しての、敬意がない。俺達の死に対する『愛』がない。人間の営みを愚弄しているよ。
そんなんじゃ、君と一緒に死んであげることはできない」

「っ……」

暴かれた心の弱さと、その本質―――。
そして、明確に突き付けられた拒絶の意思に、久美子は押し黙り、改めて自分の弱さと醜さを噛み締める他なかった。

(どうしよう……、このままじゃ……)

そして、焦りも覚える。
臨也とヴァイオレットに関しては、交渉は完全に決裂―――。
更に、この場にいる他の者―――特に、久美子達の目指すものに対して、これまで態度を保留としてきた、あかりや早苗にしても、自分に対する心象は悪くなったのではないだろうか……。
少なくとも、臨也の糾弾によって、旗色は相当に悪くなったと言える。
どうにかして、反論を紡ぎたいものの、言葉が上手く出てこない。

「―――自分勝手だと……、我儘だと……、言われたって、別に良い、かな………」

ボソリと、背後から呟かれた声に、久美子の思考は中断された。
声の方向に振り返ると、幽鬼のような表情で俯くクオンがいた。

「私には、もうそれに縋るしかないから……」

久美子だけではない。
その場にいる全員の視線が、獣耳の少女に注がれる。

「折角ハクと、また会えたのに……。
こんな形で、ハクがいなくなった後の世界に、私は希望を見出すことなんて出来ない……」

絶望、後悔、悲哀、諦念――様々な負の感情が渦巻くクオンは、声を振るわせながら、心情を吐露していく。

「私はまた、ハクに会いたい……。会いたいよ――」

「……クオンさん……」

クオンの紡ぐ言葉に、早苗は胸を締めつけられていく。
元はといえば、自分のせいだ。
自分の過ちのせいで、オシュトルを死なせてしまい、それが元でクオンを絶望に堕としてしまい、臨也のいう『自殺』という手段を選ばざるを得なくなってしまった。
その責任の一端は、間違いなく自分にあるだろうのだろうと、罪悪感を感じざるを得なくなる。

「ハクだけじゃないかな……。
ハクがいて、マロがいて、アンジュがいて、サコンもいて―――他の皆もいて、賑やかに過ごしていた、あの騒がしくも、楽しかった日々を、私は取り戻したい……」

クオンの脳裏に過ぎるは、白楼閣での、何気ない日常―――。
朝起きれば、二度寝をしようとするハクの布団を剥ぎ取り、皆と朝餉を共にする。
昼には、オシュトルの隠密として働きつつ、空いてる時間には、ルルティエと菓子作りに励んだり、政務をサボり遊びに来たアンジュが、ムネチカに追いかけ回されるところを、ネコネらと一緒に眺める。
夜になれば、皆で夕餉を囲み、そして、皆で酒宴を催す。
宴会芸を披露するウルゥル、サラァナ。ウコンやサコン、ヤクトワルトの豪快に響く笑い声や、酒に潰れたマロロをオウギとともに介抱し、あたふたするキウルの悲鳴、ノスリやアトゥイの楽しげな笑い声。
そんな些細な日常が、今となっては、どうしようもなく懐かしく、愛おしく思えてくる。

「ふーん、人間みたいなことを言うんだね、アンタ」

しかし、そんなクオンの思考とは裏腹に、臨也はというと、呆れたような様子で肩を竦めていた。
冷ややかで、そしてどこか茶化すような臨也の反応に、クオンは顔を上げると、刃のような鋭い視線を以って、彼を睨みつけた。

「アンタにとって、オシュトルさんは、大事な存在だったって事なんだよね?
でもさ、そんな大事な存在だったはずの彼を、アンタさっきまで思いっきり、ぶん殴ってたよね?
オシュトルさんの話を聞こうともせず、襲いかかってさぁ―――」

やれやれといった具合で、飄々した調子で以って、臨也はクオンに語りかけていくと、最後に冷たい声で、こう締め括った。

「まさに、“獣”そのものだったよ」

久美子と応対していた時に垣間見せた、好奇且つ悪戯な様子は何処へやら。
臨也は、これっぽちの関心も感じられない、無機質な声でクオンを突き放した。

「そんな言い方―――」

「ううん、私が、浅はかだったのは、間違いないかな……」

あまりにも、無慈悲且つ無礼。
そんな臨也の物言いに、早苗が怒りを覚え、抗議の声を上げようとするも、それを遮ったのは他ならぬクオンであった。
陽だまりを失った少女は、早苗に振り向くこともなく、臨也を見据えたまま、言葉を続ける。

「――悔やんでも、悔やみきれないかな……。
まさか、ハクがオシュトルに成り代わってたなんて、思いもしなかったから……」

此の地に来る前より、心の内に積もっていた、ハクを護りきれなかった、オシュトルという漢に対する不信と怨み---。
そして、此の地にて、マロロや早苗より齎された彼の悪評---。
その二つの要素が合わさり、クオンから冷静な思考を奪い、偽りの仮面の真実を看破できず、あろうことか彼に殺意を向けてしまったのは、痛恨の極みとしか言いようがない。
巡り合わせが悪かったと、言うにはあまりに残酷な現実―――彼女が想いを寄せた青年が戻ってくることはない。

だから―――

「だから、久美子の言うように、全てを無かった事に―――ハクを取り戻せることができるなら、私は、そちらに懸けてみたい……。
例え、何を犠牲にしたとしても……。例え、今いる私自身が抹消されるとしても……。
こんな理不尽、認めたくないから……!!」

神の子は、声高に『今』を否定した。
過去に縛られ、未来を失った少女は、己が愛する男の為に『今』を擲とうとしているのだ。

「ふーん、『理不尽』ねぇ……」

クオンの悲痛な叫びに、臨也はというと、先ほどまでの無機質な表情から一変。今度は、口角を吊り上げ、ほの暗く笑って、クオンの言葉を反芻してみせた。
さも小馬鹿にするような、挑発的な態度に、クオンは、その視線をより鋭くさせる。

「――何が、可笑しいの……?」

「その『理不尽』っていうのは、アンタが犯してしまった一連の失態と、それによって齎された悲劇的な結末のことを言っているんだよね?
でもさ、元はと言えば、それも全部アンタが蒔いた種―――自業自得じゃないのかな。
自分がやらかしたヘマの尻拭いに、俺達『人間』を巻き込むのは迷惑極まりないんだよね―――」

クオンの表情が強張った。
その様子を冷ややかに認めながら、臨也は、わざとらしく溜め息をつくと、呆れ果てたと言わんばかりの口調で続ける。

「それに、仮にさ。
アンタ達の悲願が達成したとして、全て元通りになったとして―――アンタは果たして、オシュトルさんと上手くやっていけるのかな?」

「――どういう意味、かな?……」

空気が張り詰める。
挑発じみた情報屋の投げかけた問いに、クオンの表情はますます険しくなり、久美子や早苗、その他周囲の者達の間にも、緊張感が走る。

「いやさ。さっきも言ったけど、アンタはオシュトルさんの言葉に、その無駄にデカい耳を貸すことせず、獣みたいに襲いかかって暴れ回ってたよね?
オシュトルさんが、アンタの大事な人……ハクさんだっけ? その人と見抜くことも出来なかった訳で―――」

クオンの肩が震える。
ぎゅっと、彼女の拳が握り締められるのを、久美子は見逃さなかった。

「俺から言わせれば、アンタの彼に対する『愛』は、所詮その程度だったってことさ」

ピシリーーー。
その瞬間、空気に亀裂が走ったような、そんな錯覚を久美子は覚えた。
と同時に、クオンがふらりと、大きく身体を揺らすのを視認した。

「あの時の自分は、愚かで浅はかだった―――でも、いつも通りに理性的に動いていれば、こんな結末を迎えることは無かった筈、だって? 馬鹿馬鹿しい……。
単純に、アンタの『愛』が、薄っぺらいだけなんだよ」

―――止めろ……。

顔を俯かせ、わなわなと震えるクオンの姿から、マグマのような激情が、今にも溢れ出そうとしているのを、久美子は感じ取った。
しかし、臨也が紡ぎ出す、その無慈悲な言葉は、止まることはない。

「結局のところ、そんな薄っぺらい『愛』では、アンタがオシュトルさんと『再会』できたとしても、また同じような茶番を、繰り返すのが関の山でしょ―――」

「もう良い、その不快な口を閉じよ」

臨也の言葉を遮るように、クオンは面を上げた。
その口元は固く結ばれ、鋭く細められた眼には、今にも破裂しそうなほど、憤怒が漲っている。

「……汝らが、我らに賛同せず、敵対する道を選ぶというのは、よく分かった」

ゾッとするような、冷たい声色。
それでいて、全てのものを押し潰すような威圧感を纏いながら、クオンはゆらりゆらりと肩を揺らした。
先程まで悲哀に満ちていた少女の姿は、もはやそこにはない。

「ならば、我も容赦はしない……。
汝らが、我らの悲願成就を阻むというのなら――」

瞬間、クオンは地を蹴り上げた。
次の刹那には、風を裂くような速度で以って、臨也に肉薄する。

「我は、汝らを排除する……!!」

「クオンさんっ!?」

久美子の制止の声など届く筈もなく、クオンの拳が、臨也の顔面を穿たんと、振るわれた。
しかし、臨也はというと、特に動じる素振りは見せず。
むしろその動きを待っていましたと言わんばかりに、口角を吊り上げると同時に、身体を捻り、右方向に飛び退き、拳撃を躱わす。
更に、回避だけに留まらず、反撃のため、懐からナイフを投擲せんと試みる。

「逃さぬっ……!!」

しかし、そこは神の子、クオン。
空を切った拳を引っ込めると同時に、俊敏に態勢を整え直すと、さらに大きく地を踏み抜き、滑るようにして臨也との距離を一気に詰める。
迎撃の投擲は間に合わず、今度こそ、殺意宿す拳が、その端正な顔面を捉えんとする―――

「おやめくださいっ、クオン様!!」

が、側面より金色の影が、クオンの元に飛び込んでくるのを察すると、彼女はターゲットを変更。
臨也に向けていた拳を引っ込め、身体を大きく捻り、その金色の影---ヴァイオレット・エヴァーガーデンに対して、回転蹴りを見舞った。

「……っ!!」

ヴァイオレットは瞬時に上体を反らすと、風を帯びた蹴撃を、紙一重で回避。尚も前進し、クオンを取り押さえんとする。
しかし、自身に掴みかかろんとする、その無機質な手を、クオンは咄嗟に払い手で流す。そのまま、もう片方の手にて拳を握ると、ヴァイオレットの鳩尾目掛けて、カウンターを放つ。
だが、その動きも自動手記人形に予測されていたのか、彼女は自身の鳩尾目掛けて迫る拳を、自身の両手で包むようにキャッチ。そのまま、関節を固定して制圧すべく、力を込める。
クオンはというと、慌てることなく、即座に足払いを放ち、ヴァイオレットの体勢を崩した。そして、彼女の両手を振り払いながら飛び退くと、地を蹴り、再び接敵する。

「クオン様っ……、私はクオン様と争いたくありませんっ……!!」

「黙れ。もはや汝らと、言葉を交わすつもりはない……!!」

クオンとヴァイオレット―――。
共に、優れた身体能力と卓越した瞬発力、そして幾多の戦場を潜り抜けてきた経験を兼ね備えた女傑同士の争いは、普段の彼女らの麗しい風貌からは想像もできないほど、苛烈を極めていた。
両者とも、己が四肢をふんだんに稼働させ、クオンはヴァイオレットを撲殺するため、ヴァイオレットはクオンを制圧するため、一進一退の攻防を続ける。

―――ヒュン!!

そんな女達の戦いに介入するは、一筋の銀色の閃光。臨也の投擲だ。
クオンは、ヴァイオレットの攻防の最中に、そのナイフを一瞥すると、寸前で顔を反らせる。そのお陰で、ナイフはクオンの黒髪を掠めるにとどまるも、二撃目、三撃目と、臨也はナイフを投擲すると、クオンは後方に大きく跳躍し、ヴァイオレットから距離を取り、これを回避する。

「っ……!? 臨也様っ……!!」

ヴァイオレットが、臨也に抗議の声を上げる。
金色の自動手記人形はあくまでも、暴走したクオンを鎮めるために、彼女を拘束せんとしていたに過ぎず、そこに害意はなかった。
しかし、今しがたの臨也の攻勢は違う。
池袋の情報屋による、正確無比な投擲―――それは、明らかにクオンの眉間を穿つ軌道で放たれていた。

「残念だけど、ヴァイオレットちゃん。
そこにいるオシュトルさんのペットと、俺たちは、もはや相容れない―――」

臨也は、クオンに向けて追撃の投擲を放っていく。
銀色の閃光が、夜闇を切り裂くように、クオンに殺到する。
クオンは、俊敏にこれを回避していき、漆黒の大地に無数のナイフが生えていく。

「そして、彼女が俺達を抹殺するというなら、俺も全力で彼女を排除するよ。
他ならぬ俺と、俺が愛する『人間』のために、さ」

「そんな……」

剥き出しにされる純然たる敵意―――。
そして、それに呼応する研ぎ澄まされた殺意―――。
衝突する二つの害意に板挟みとなるヴァイオレットだが、悲観する猶予は彼女には与えられない。
クオンが、差し迫るナイフを器用に回避しつつ、臨也に向けて突貫するのを察知すると、地を蹴り上げて、これを阻む。
舌打ちを一つ吐き捨てると、クオンはヴァイオレットへと対象をシフトし、拳撃を繰り出し、肉弾戦を展開していく。

―――ヒュン!!

「……っ!!」

銀色の閃光が、クオンの頬を掠めて、一筋の紅色が、白い柔肌に浮かび上がった。
臨也は、鋭い眼差しで、クオンとヴァイオレットの攻防を観察しては、隙あらば、弾丸の如くナイフを投擲―――ヴァイオレットを援護しているのだ。
この投擲によりクオンの神経は、ナイフの投擲と回避行動に注力せざるを得なくなり、眼前のヴァイオレットに割く余裕が削られていき、自身に迫る、彼女の義手を捌ききれなくなる。
ヴァイオレットにとっては、不本意になるかもしれないが、臨也とヴァイオレットの二人がかりの攻勢によって、確実に趨勢は傾きつつあった。

―――バ ァ ン !!

だが、クオンに差し迫る銀の凶器が、彼女の背後より発せられた光弾によって撃墜されると、戦況はまたしても一変する。

「早苗様っ……!?」

「……。」

翠色を靡かせる巫女は、怯えるような表情を張り付かせて、佇んでいた。
そして、ヴァイオレットの呼び掛けに応えることもなく、震える手に持つお祓い棒を、再び構え直す。

―――ヒュン!!
―――バ ァ ン !!

直後、風を切る音と炸裂音が、ほぼ同時に響いた。
臨也は、早苗の参戦を認めて目を細めるも束の間、ナイフをクオン目掛けて再び投擲。早苗がそれを阻まんと撃墜したのだ。

「――ク、クオンさんは、傷つけさせない……!!」

挑発的に口角を吊り上げる臨也に対して、ボコボコに腫らした顔で睨みつける早苗は、尚も光弾を放射。
両者による弾幕の衝突音が、乾いた夜宵に奏でられていく。

「――はぁあっ!!」
「っ……!!」

二つの射撃が交錯する一方、クオンとヴァイオレットの攻防も尚続いていく。
しかし、早苗の参戦前と打って変わり、戦況は一方的な様相となっていた。
早苗が臨也の投擲を殺すことにより、クオンは眼前のヴァイオレットに意識を集中―――拳打と蹴り技を織り交ぜた怒涛の猛撃を、彼女に浴びせんとする。
ヴァイオレットは、その整った面貌を歪ませながら、クオンの繰り出す猛攻を、どうにかして捌き、躱し、いなすも、確実に追い詰められていく。もはや、先のように停戦を呼び掛ける余裕などはない。

「いい加減、目障りだっ!!」
「かはっ……!?」

遂に神の子の拳は、防御せんとする義手を掻い潜り、ヴァイオレットの腹部を強打する。
その衝撃に自動手記人形の口からは、血反吐とともに苦悶の声が漏れる。
それまで俊敏な動きで、クオンの猛攻を凌いでいた彼女の身体はこの一瞬、静止してしまう。そこで生じた隙を、ウィツァルネミテアの天子が見逃すはずもない。
クオンは渾身の回転蹴りを、ヴァイオレットの顔面に叩き込むと、鈍い衝突音とともに、その華奢な身体が大きく弾き飛ばした。

「――くっ……!!」

だが、ヴァイオレットとて、かつては「ライデンシャフトリヒの戦闘人形」の異名で、うたわれていた女子少年兵。
一瞬、頭の中で無数の星が散りながらも、歯を食いしばり、これを抑制。空中で態勢を立て直すと着地し、直ぐさまクオンに対峙する。

「――まだ抗うか……!!」

未だ不倒を貫き、迎撃の姿勢をとるヴァイオレットに向けて、歩を進めるクオン。
その双眸は苛立ちと嫌悪感が混ざり合い、激情の炎が煌めいている。
何も知らないくせに、ハクとの日々を平然と卑下した折原臨也は、勿論許すことは出来ない。
そして、ハクを取り戻さんとする彼女にとって、それを阻まんとする輩は「敵」以外の何物でもない。
故に、自分たちの理想を拒絶したうえで、今こうして不倒を以って、決して引かぬ意思を示す、ヴァイオレットもまた、自身を苛立たせる害敵に他ならなかった。

―――ヒュン!!
―――バ ァ ン !!

しかし、クオンの神経を逆撫でする要素は、二人の「敵」だけに在らず。

クオンの視界の隅にて捉えるは、臨也と弾幕の応酬を繰り広げている、巫女の姿―――。
ハクの命を奪った、その光弾で、援護を受けているという現実もまた、クオンの苛立ちを増長させていた。

無論、早苗が本意で、ハクを殺したのではない、ということは承知している。
恐らく、今もその罪悪感に苛まれており、それが故、こうしてクオンに加勢したのであろうことも窺える。

だが、それでも、クオンは、早苗の所業を真っ新に水で流して、改めて己が同志として迎え入れる---そんな寛大な心持ちには到底至れずにいた。

(……不快だ、何もかも……)

故に、クオンは願った。
己が内に眠る、母より継いだ類稀なる血に。
一刻も早く、この極めて煩わしい戦線を、一掃するための力を―――。

瞬間。

――ゴオッ!!!

フィールドに、突風のようなものが迸った。

「……ク、オン……様……?」

金色の粒子が舞い踊るかの如く。
クオンの全身を包むようにして、眩い輝きが噴出していた。
それは陽の光のようでいて、どこか冷徹な威厳を帯びた黄金色。
眼前のクオンの身に生じた変化に、ヴァイオレットの瞳孔は、大きく見開かれていた。

「……クオンさん、それは……」

ヴァイオレットだけではない。
クオンのその変化に覚えのある早苗は、臨也との弾幕の応酬の手を止めた。それに呼応するように臨也もまた、訝しげに眉を顰めて、投擲を止めた。
その場にいる誰しもが、少女の変化に釘付けとなり、一瞬の静寂が訪れた。

刹那。

ドゴォッ!!

「――かはっ……!?」

地を蹴り上げ、弾丸の如く飛び出したクオンの拳が、ヴァイオレットの鳩尾を抉る。
黄金に燦然と煌めく神の子の一撃に、自動手記人形の身体は、くの字に折れ曲がると、勢いよく吹き飛び、地面をバウンドしながら転がる。
一瞬の出来事―――反応することも叶わず、ヴァイオレットは、再び口腔に鉄の味を感じながら、咳き込む。

「次は―――」

地に沈み、悶えるヴァイオレット。
クオンは、そんな彼女の姿を一瞥すると、その視線を遠方に移す。
怒りに揺れ動く、その瞳が移すは、黒の情報屋の姿。

「貴様だ」

クオンの標的は、ヴァイオレットのみに在らず。
金色を纏う女傑は、次なるターゲットを臨也と定めて、疾駆。
黄金の流星と化したクオンに、臨也は忌々しげに舌打ちを零しながら、ナイフを投擲。
しかし、その悉くはクオンの肌を裂くことなく、彼女の身に纏う、金色の闘気が鎧となって阻み、弾かれていく。

「――化け物が……」

肉薄するクオンに、臨也はその表情を歪めて、パルクールの動きを以ってして、彼女の放つ拳打を躱さんとする。
しかし、己が力を解き放ったクオンの速度に、『ただの人間』であるはずの臨也の動体視力は、追随しきれるわけもなく―――。
鈍い打撃音とともに、その胸部に掌底を叩き込まれると、臨也の全身は、宙高くに舞い上がった。

「――っ……!?」

背中を地面に打ち付け、肺の中の空気を紅色の液体とともに吐き出して、僅かながらも呻き声を漏らす臨也。
当初の憎たらしい皮肉的な笑みは、既になく、身体の内から齎される激痛で、表情がひきつっているのが見て取れる。
そんな彼に向けて、クオンは止めの一撃を放たんと、再び疾駆する。

――ザザッ!!

しかし、その進路に一つの影が唐突に飛び出すと、クオンは咄嗟に後方へと跳躍し、距離を取った。

「……何の真似だ……?」

「いやまあ……。もうこの辺で良いんじゃねえか、と思ってな―――」

クオンから鋭い眼光を向けられる、その影の正体は、これまで蚊帳の外で、事の推移を見守っていたロクロウ。
銀色に煌めく刃を、隻腕で携えたまま、人斬り業魔は諭すような口調でクオンを宥めるようにして言葉を紡ぐ。

「お前らとヴァイオレット達の目指すところは、違う。だから、もう手を取り合うのは、難しいだろうさ……。
だが、だからといって、わざわざ命まで奪りにいく必要はあるか?
向こうから仕掛けてきたのなら、話は別だがな―――」

とそこで、ロクロウは、自身の背後に剣先を向け、地面の上で荒々しく呼吸する臨也を指し示す。

「まぁ、あいつに怒りを覚えたのも無理はないと思うぜ?
だが、ここらで手打ちとしとかないか? あの通り、報いは受けて貰った訳だしな……」

ロクロウとしては、一連の喧騒は、臨也が悪意を以てクオンを煽ったことに、端を発したという認識であった。
故にクオンには、臨也に応える権利があると考え、ヴァイオレットや早苗を巻き込む形となったとしても、敢えて、戸惑う久美子の側を離れず、傍観に徹した。
しかし、趨勢が決した今、臨也とヴァイオレットに止めを刺すといこうというならば、看過は出来なかった。
仮にここで二人を仕留めてしまえば、「自分たちの理想を拒絶した二人を殺した」という事実は、後に久美子や早苗にも、火の粉と化して降りかかる可能性がある。
故に、ここが落としどころだと、ロクロウは判断したのだ。

だが―――

「邪魔をするなぁっーーー!!」

「……っ!?」

ロクロウの提案と目論みは、クオンの咆哮をもって一蹴される。
憤怒の形相とともに、振り下ろされた拳を、ロクロウは咄嗟に剣で受け止めるも、その拳圧によって大きく仰け反り、後退。
間髪入れず、間合いを詰めたクオンは、ロクロウの大きな体躯を穿たんと、神速の如き猛打を繰り出していく。
それに対して、ロクロウもまた応戦するも、『力』を解放したクオンは、先に早苗を巡って交戦した時のものとは訳が違う。そして、彼の得物を握るのは左手一本のみ――超常の域で展開される攻防では、自然と隻腕であるハンデが露骨に反映される格好となり、防戦一方に陥ってしまう。

「……お前―――」

「我は、『我ら』に立ちはだかるもの全てを排除する!!」

クオンの覚悟が、揺らぐことはない。
今のクオンにとって、明確に「同志」と呼べるのは、同じ悲願の成就を目指す、久美子のみ。
それ以外の者に対するスタンスは、態度を保留としてきたが、臨也との問答をきっかけに、明確に己が悲願を拒絶したものについては、後顧の憂いを絶つという意味でも、「敵」として排除しようと心に決めた。
そして、それを庇わんとする者についても、同様―――例え、形式上は同陣営にいたとしても、容赦はせず……。故に、クオンはロクロウを「敵」として、躊躇なく屠らんとする。

「――チィ……ッ!!」

降り止まぬ、怒涛の猛打に舌打ちを返す、ロクロウ。
本来であれば、戦闘狂の類として見做される彼ではあるが、この場面において、心躍らされることもなければ、喜悦を漏らすこともない。
最後の抵抗とばかりに振るわれた剣撃は、虚しくもクオンの拳に打ち払われた。
鈍い金属音と共に、夜叉の剣がクオンの黄金の闘気に弾かれ、くるくると宙を舞って地面に突き刺さる。
弾き飛ばされたそれが、自身を育て上げた養父の物だとは、クオンは知る由もなく―――これで、ロクロウは完全に丸腰となった。
瞬間、クオンはその眼光をより鋭くさせ、仕留めに掛かる。

ドガッ!!

「――ッ……!?」

最初の一撃は右肩に入った。
ロクロウの表情が、苦悶に歪んだ。
骨が軋む音と共に、人斬り夜叉の巨体が浮き上がる。

「はああああああっ!!!」

クオンの怒号と共に、黄金に輝く拳が雨霰と降り注ぐ。
胸、腹、左腕の肘、脇腹――。
防御の術を失ったロクロウは、されるがまま、その暴威を受け続けるしかなかった。

「ごふっ……!!」

クオンの猛攻は止むことを知らず、むしろ勢いを増していく。
まるで精密機械のような正確無比な連打は、満身創痍となっていた肉体を穿ち、その生命を削っていく。
そして、ダメ押しとばかりに、クオンが必殺の掌底を放たんとした、刹那―――

ヒ ュ ン !!

迸る白光とともに、風を切る音が響き渡った。
次の瞬間、クオンの拳打は飛来してきた”それ"に弾き返され、彼女の華奢な体躯は、後方へと勢いよく吹き飛ばされた。

「そうか―――汝も、"そちら側"についたという訳か……」

即座に体勢を整えて、大地に足を付け、ブレーキをかけて踏み止まるクオン。
黄金色に燃えるその眼光が捉えるは、ロクロウを庇うようにして立つ、白き閃光―――その正体は、月を背にして、己が拳を突き出すようにして構える、間宮あかりであった。


前話 次話
因果応報 投下順 艱難辛苦(中編)

前話 キャラクター 次話
『01(ゼロイチ)』 黄前久美子 艱難辛苦(中編)
『01(ゼロイチ)』 ロクロウ・ランゲツ 艱難辛苦(中編)
『01(ゼロイチ)』 クオン 艱難辛苦(中編)
『01(ゼロイチ)』 東風谷早苗 艱難辛苦(中編)
所詮、感情の生き物 間宮あかり 艱難辛苦(中編)
所詮、感情の生き物 折原臨也 艱難辛苦(中編)
所詮、感情の生き物 ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン 艱難辛苦(中編)
眼光紙背に徹す 垣根帝督 艱難辛苦(中編)
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