「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん-19a

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 ≪首塚≫の宴が開始されてしばらく。
 Tさんと呼ばれる青年は一人で、片手に酒の入ったグラスを持ち、会場の料理をつまんで回っていた。まあ彼の契約者に「女だけの話し合いをしてるから野郎は出てけ」と言われてつまみだされたからなのだが。
 青年はため息をひとつ、
「どうせ碌な事を吹き込んでないな」
 あの子が旅立つ前に自作の問題集『常識』をプレゼントしてやらねば。
 そう思いつつ皿に置いてあるチョコレートに手を伸ばすと、
「うー、あげる」
 そう言って横からコアラが描かれたお菓子を差し出す小さな手があった。
 視線をお菓子の持ち主に向けると、そこには小学校低学年くらいの少年がいて、彼を見上げており、
「うー」
 少年はずい、とお菓子を再び青年に差しだしていた。
 誰か契約者の子供だろうか? 青年は思い、
「ん、ありがとう」
 そう言ってお菓子を受け取った。そのまま口に放り込むと、
「む」
 そのお菓子の味以外の何かが身体に広がるのを感じた。
 これは、同種の力か?
 青年がそう思っていると、
「うー、しあわせのおすそわけ!」
 少年は青年を見上げて楽しそうに言った。その表情に青年の顔も自然とほころぶ。
 少年も何らかの都市伝説の契約者なのだろうか。
 少年がこちらを警戒している様子がない今、己の能力で少年の能力を知ろうと思えばできなくもない。が、別に積極的に知る気もない青年は少年の契約している都市伝説の謎を脳内で転がし楽しんでいた。そうしながら青年が少年を見ていると、少年は部屋の隅に並べられている休憩用の椅子の一つにトテトテと歩いて行き、座り、青年の方を見て、
「うー、うー」
 と言いながらぺちぺちと隣の椅子を叩いた。
 座れ。ということか?
 青年が苦笑して少年の隣に座ると、少年は青年を見、笑った。
 きひひ、と。

 ――きひひひひ
 一種不気味で異様な笑い方をする少年は青年を見て言う。
「おにーちゃんががんばらなくても歪んだ≪夢の国≫は将門様が憐れんで消してくれたのに」
 お疲れ様。と。
「どうしてこんな宴に少年のような子が来たのかと思ったら、将門公のところの構成員か?」
 青年は勘が外れたなぁと思いつつグラスを呷る。
 そして一息つき、
「将門公が動いていたら≪夢の国≫を倒せるかどうかは関係なく、まず契約者だった子が消されていた」
「将門様は≪夢の国≫なんかに負けなかったよ。だから将門様に任せておけば≪夢の国≫は消えていたんだよ?」
 何一つ残さずにね。
 将門を信じきっている少年はそう告げ、きひひ、と笑う。
「でも生き残ってしまって、これから大きな罪を背負っていく≪夢の国≫はその罪の重さに耐えられずに潰れちゃうかもしれないよ? また歪んでしまうかもしれないよ?」
 きひひひっ、と笑う少年に青年も緩く笑み、
「彼女はそんなに弱くはないさ。それに、住人たちも王の乱心を黙って見ているような無能でもない」
 それは、絶対的な支配を受けていたにも関わらず抗って見せたあのネズミのように。
「それに、あれは一人じゃない」
 いざとなれば俺や契約者を頼ってくれるだろう、そのくらいには信頼を得ているはずだ。と青年は思う。
「住人たちも支え続けるだろうし、それに――」
 そう言って少年の目を見、
「少年、君みたいに彼女が罪に潰されてしまうんじゃないかとその身を案じてくれる者がいるならば、それもあの子の力になるだろう」
 青年は言い、少年を見つめる。少年は分かったような分からないような顔をし、
「うー?」
 結局首をかしげた。
「難しいか?」
 青年は笑い、少年の背後を指差す。
「君を護るソレと同じようなものだ」
 青年は己の指が示す先を見る。まるで少年の背後に何かが視えるかのように、
「うー……」
 警戒か、驚きか、そんな顔をする少年を見て、
「ここまであからさまな力にはならんがな」
 言いつつ青年は苦笑、少年の頭にぽん、と手を乗せた。その頭を撫でながら、
「少年が健やかであれば俺も幸せだ」
 と発せられた言葉と共に青年の手から淡い光が発生し、一瞬少年を包みこんだ。
「お菓子のお返しだ」
「う?」
 突然光った自分にびっくりしている少年を見ながら青年は効果は一日程、まぁ先程いくつか見かけた悪食から腹を守るくらいの力はあるだろう。と考え、席を立つ。
 手に持ったグラスが空だった。
「じゃあな、少年。将門公によろしく」
 次の酒を求めて青年は歩きだす。
「うーばいばい、ありがとー」
 少年の声は嬉しそうに響いた。

「あーこんなところにいた。もう、離れちゃいけないじゃないですか! 迷子になったら大変ですよ!?」
「そうよ、お姉ちゃんに迷惑かけちゃいけないでしょ?」
「うー、ごめんなさい」
 背後で少年が謝る声が聞こえる。振り返ると二十代前半くらいのハーフの女性と、長い髪の派手な服を着た女性のような男性が、少年を捕まえて説教していた。
 将門公のところの構成員でありつつ彼の子なのか。
 勘は半分当たっていた。少年の背後の存在を視てなんとなく思ってたことが当たったことに青年は微笑を浮かべ、説教を食らっている少年の先程の異様な笑いを上げる姿との落差に思わず吹き出しながら次の酒を手に取った。



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