「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん-19d

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 青年――Tさんは黒服が示してくれた≪パワーストーン≫の契約者のもとへと歩を進める。
 黒服さんは若干慌ただしく離れて行ってしまったな。普段の彼なら紹介などしてくれるところなのだが、俺から離れてすぐキョロキョロしていたところを見ると、
「何かあの人が気になるものでも見つけた、か?」
 そんなことを考えながらホールの隅でロングスカートの裾を空調の風にゆらゆら揺らしながら宴を眺めるようにして酒を飲んでいた≪パワーストーン≫の契約者に近づく。彼女も青年が自分に近づいてきているのを察しているようで、先程から青年に視線を固定していた。
「こんばんは」
「ええ、こんばんは」
 ≪パワーストーン≫の契約者は多少青年を警戒しているように青年には思われた。
 これでは話しづらいな。
 思い、一つ頷き、
 よし、警戒を解こうか。
 そう考え、手に持ったグラスを近くの机に置くと、ワンターンを決めつつ≪パワーストーン≫の契約者との距離を一気に詰めた。
 ≪パワーストーン≫の契約者はビクリと反応したが青年は構わず、
「今宵この宴にて貴女のような方に出会えたことを光栄に思います。あぁ、そのどこか神秘的な雰囲気、貴女はまさか今宵の月が使わした彼の月の欠けた一部ではなかろうか!?」
 言って窓の外の月を指差す。
 1秒、2秒、3秒――
 数秒その姿勢のままで待ち、青年が月から視線を外して見てみると、≪パワーストーン≫の契約者が若干引いていた。
 おかしい、そう青年は思う。ほめちぎって一気に初対面から「あ、この人良い人なのではないか?」と思わせる作戦だったのだが、
「……距離が開いた気がする」
 まあ確かに俺が似たようなことをやられたら引くが。
「あの?」
 ≪パワーストーン≫の契約者は戸惑っているようだ。
 そうだな、この作戦に対する考察は後においておいてサクッと用件を済まさねば。
 思い、≪パワーストーン≫の契約者に向き直る。
「はじめまして。あの黒服さんの知り合いなんだが、貴女が≪パワーストーン≫の契約者でいいのか?」
「あ、はい」
 その返事と共に≪パワーストーン≫の契約者の緊張や猜疑心が一気に払われるのを青年は感じた。
 面妖な。
 女心はたまによく分からなくなる。そう思いつつ青年は話を続ける。
「ん、では本題だが、あの石のお代はいくら程だろう?」
「え?」
「ん? もしかしてお代は黒服さんが既に払ってたりする?」
 先に訊いておけば良かったか。青年が思っていると、
「いえ、パワーストーンでお代を頂くようなことはしていませんが」
 ≪パワーストーン≫の契約者は言った。
 青年は頭をグシャグシャと掻きつつ、
「あー、だがな、≪夢の国≫戦で湯水のように使ってしまったし、あれだけあれば金額もばかにならんと思うんだが」
「パワーストーンを、湯水のように、ですか?」
 ≪パワーストーン≫の契約者の言葉に青年はうなずき、
「黒服さんに効用を聞いてな、当初は俺の力だけで≪夢の国≫を正気に戻そうとしてたんだが、一度失敗しているしおあつらえ向きに万能浄化の力を持つ水晶なんてものがあったからな。そっちの効能と俺の力とで≪夢の国≫の契約者を正気に戻したり、≪夢の国≫の契約者をとらえるためにありったけの隠密用のデンドリティック・クォーツを使ったりな……」
 それに、どうも≪首塚≫所属の人間に呪いもかけられていたらしい。それすらも一気に浄化できたのは僥倖だった。呪いで夢子ちゃんが動けなかったら≪夢の国の創始者≫に抗しきれなかった可能性が高い。
 結論として、
「かなり助かった」
 深く事情を知らない≪パワーストーン≫の契約者には言葉の半ば程は意味不明だったろうが、青年の話の全体のニュアンスを感じ取り、
「石が正しく使われたのなら私に言うことはありません」
 お代も要りませんよ、と言った。
「しかしな」
「私があげたくて皆さんにあげているものです。ですからお代はいただきません」
「む」
 変に強情だ……
 俺の周りにはこんなタイプの人間が多いなぁ。
 青年はどうしたものかと思案し、一つ妥協案が浮かんだ。
「ならこれを」
 そう言って自分の携帯の連絡番号を渡す。
「何かあったら連絡をくれ。助けられる範囲で助けようと思う」
「はい」
 うなずき、≪パワーストーン≫の契約者は青年の連絡番号を受け取った。
 受け取ってくれた。
 そのことに青年は安堵しつつ、
「そう言えば」
 偶然かと思っていたことを何とは無しに訊ねてみた。
「さっき黒服さんを見てたか?」
 一瞬の間、
「……いえ、そんなことは――」
 ――パキン、と何かが壊れる音。
 音の発生源に目を向けると、≪パワーストーン≫の契約者の手から、割れた石が彼女の足もとに落ちた。
「…………」
「…………」
 改めて青年は問う。
「黒服さんを見てたか?」
「……はい」
 意地悪、と≪パワーストーン≫の契約者は呟いた。


            ●


「――あぁ、貴女が黒服さんが助けた……」
「はい」
 全てを聞き出しておいてなんだがいらんことを訊いたな。とうつむきがちに全てを話してくれた≪パワーストーン≫の契約者を見て青年は思う。
 彼を慕っているのだろうか?
 そう思うが、
 やぶへびだな。
 訊かぬが華と彼は結論する。
「黒服さんは貴女に気づいては」
「いないでしょうね。私も変わりましたし」
「正体を明かす気は?」
「今は、ありません」
「そうか」
 遠くから見守り時に手助けをする。それが彼女のスタンスなのだろう。きっと。
 青年は思い、ん、分かったと言い、
「なら俺も黙っておこう」
 宣言する。
「お願いします」
 ≪パワーストーン≫の契約者の言葉に青年は了解。と頷き、
「あー、そうだ。貴女が≪夢の国≫にそこまで関わっているなら」
 さっき余計なことを訊いたお詫びに、と心の中で付け足し、
「あの時のことを少し詳しく話そうか」
「は、はい」
 ≪パワーストーン≫の契約者が姿勢をわずかに正した。彼女もやはり興味がある話題のようだ。
 そうして青年は≪夢の国≫の一件について自らが知っていることを≪パワーストーン≫の契約者に話した。途中で正体の隠匿もなにもあったものではないので自分の正体も明言し、
「――と、いうわけで、元≪夢の国≫の契約者は今はうちの契約者の安直なネーミングで夢子と名乗っている。どうも人だった時の記憶が支配を受ける前後からしか無いらしくてな、彼女はそれでも前向きに≪夢の国≫の王として生きていくことを決めた」
「そうなんですか」
「もし彼女に会う……いや、なんでもない」
 用はこれで終わりだ。と言って背を向けるが、
「あ」
 と振り返り、
「一つ、あの子のためにパワーストーンをいただきたいんだが」
 少し気まずそうに青年は言う。≪パワーストーン≫の契約者が≪夢の国≫に恨みを持っていないとも限らないのだ。
 しかし彼女は笑顔で、
「はい、お代は結構ですよ。全てはあの人の心残りを解決してくれたお礼です」
 あ、私から謝礼を別途お支払いしましょうか?
 更に笑って言う≪パワーストーン≫の契約者に、
「……いや、自分がやりたくってやったことだ、謝礼はいらん。パワーストーンだけでいい」
 なるほど、俺も人のことを言えん。
 苦く笑った。

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