----これは、幼い日の記憶
まだ、彼らが都市伝説と言うこの世の闇について、何も知らなかった頃の記憶
まだ、彼らが都市伝説と言うこの世の闇について、何も知らなかった頃の記憶
ぐすぐすと、弟が泣き続けている
さっきまでテレビでやっていた映画が怖かったのだろう
途中からずっと泣き続けていて、まだ泣き止んでいない
さっきまでテレビでやっていた映画が怖かったのだろう
途中からずっと泣き続けていて、まだ泣き止んでいない
それは、首を刈る、首なし騎士が出てくる話だった
家々をノックし、扉を開けた瞬間、家の中の一人を指差す
そして数年後、指差した相手を殺しに来る…
そんな、外国の民話か何かを元にした映画
家々をノックし、扉を開けた瞬間、家の中の一人を指差す
そして数年後、指差した相手を殺しに来る…
そんな、外国の民話か何かを元にした映画
首なしの馬が引く戦車に乗り、巨大な剣を手に人々を殺す首なし騎士
その姿が、あまりにも恐ろしく
自分と同じ顔した弟は、さっきからずっと泣き続けている
その姿が、あまりにも恐ろしく
自分と同じ顔した弟は、さっきからずっと泣き続けている
「…もう泣くな」
「ふぇ……だって、お兄ちゃん……」
「ふぇ……だって、お兄ちゃん……」
しゃっくりあげながら、弟はこちらを見上げてくる
自分と、外見はどこまでも同じだと言うのに
あぁ言ったものにあまり恐怖を感じないこちらと違って、弟は随分と怖がりだ
ほんの少し、怖い話を聞いただけでも泣き出してしまう
自分と、外見はどこまでも同じだと言うのに
あぁ言ったものにあまり恐怖を感じないこちらと違って、弟は随分と怖がりだ
ほんの少し、怖い話を聞いただけでも泣き出してしまう
「もし、あの首なし騎士が家に来たら……怖いよぉ……」
「……家には来ない」
「……家には来ない」
そう、断言してやる
あれは、外国の話だ
わざわざ、日本になんて来たりしないだろう
そうは言っても、弟はやはり、怖くして仕方ないようで
いつまでも、いつまでも、泣き続けて
あれは、外国の話だ
わざわざ、日本になんて来たりしないだろう
そうは言っても、弟はやはり、怖くして仕方ないようで
いつまでも、いつまでも、泣き続けて
弟が泣いているのが嫌だった
自分は兄なのだから、弟が泣いていたら、助けてやらなければならない
いや、そもそも、弟を泣かせるべきではなかったと言うのに
自分は兄なのだから、弟が泣いていたら、助けてやらなければならない
いや、そもそも、弟を泣かせるべきではなかったと言うのに
小さくため息をついて、弟の頭を撫でてやる
「…大丈夫だ、首なし騎士が来たら、俺がやっつけてやる」
「………え?」
「………え?」
ぐす、と涙を拭きながら
弟が、きょとんとこちらを見あげてくる
弟が、きょとんとこちらを見あげてくる
「さっきの映画でも言ってただろ。首なし騎士に指を指されても、首なし騎士が現れた時に返り討ちにしてやればいい。そうすれば、死なずにすむんだ」
「……っで、でも…相手は、おばけだよ…」
「……っで、でも…相手は、おばけだよ…」
じわり
その目に、また涙が浮かびだす
…だから、泣くな
大丈夫だから
その目に、また涙が浮かびだす
…だから、泣くな
大丈夫だから
「おばけだろうがなんだろうが、俺が追い払ってやる。もし、お前があいつに指差されたとしても、俺が首なし騎士を追い払ってやる。そうすれば、お前は助かるから」
だから、泣くな、と
頭を撫で続けてやっていると
…弟は、ようやく、少し落ち着いてきて
そして、涙で濡れた顔をあげて…こう、言って来た
頭を撫で続けてやっていると
…弟は、ようやく、少し落ち着いてきて
そして、涙で濡れた顔をあげて…こう、言って来た
「…それじゃあ、僕も追い払う。お兄ちゃんが、首なし騎士に指差されたら、僕が首なし騎士を追い払う。僕が、お兄ちゃんを助ける!」
「……お前が?映画だけで泣いてたようなお前が?」
「もう、泣かないもん」
「……お前が?映画だけで泣いてたようなお前が?」
「もう、泣かないもん」
……無理だな
心の中ではそう思った
泣き虫のこいつが、首なし騎士を追い払うなんて、どう考えても無理だろう
だが
心の中ではそう思った
泣き虫のこいつが、首なし騎士を追い払うなんて、どう考えても無理だろう
だが
「…あぁ、それじゃあ、その時は頼んだぞ」
と、そう言ってやると
ようやく、弟は笑ってくれた
ようやく、弟は笑ってくれた
あの頃は本気でそう考えていた
首なし騎士に自分が指差されたとしても、弟が指差されたとしても、自分が首なし騎士を追い払ってやろうと
……まさか、弟が後々あんな性格になるなどとは、夢にも思っていなかったから
……まさか、弟が後々あんな性格になるなどとは、夢にも思っていなかったから
………いや
今でも、そう考えている
たとえ、首なし騎士に狙われたのが自分であれ、弟であれ………自分が、追い払う
今でも、そう考えている
たとえ、首なし騎士に狙われたのが自分であれ、弟であれ………自分が、追い払う
もう、家族の首なし死体を見るのは御免だ
切られた首を見るのは御免だ
切られた首を見るのは御免だ
もう二度と、あの日の悲劇を繰り返させはしないのだ
to be … ?