≪赤い靴≫たちとも黒服さんたちとも別れて自分の部屋に帰ってきた。
晩飯も終わり、見たいテレビも終わったんで食器を流しでだらだら洗いながら現状の確認をしてみることにする。
今日の食事当番はTさんだったから片付けは俺の役だ。
「薬関係は全滅で≪マッドガッサー≫の女体化ガスは治す目処立たずなんだよな……」
なんかめんどそうだなぁおい、
「黒服さん何かに呪われてないよな?」
薬の当てが軒並み全滅とかやばいんじゃないか? 何かに憑かれてるとしか思えん。
あー、黒服さんと言えば、
「黒服さんがキレるとあんなに怖いなんてな」
昼間のことを思い出してぼやく。あれはヤバかった。
「すごかったの」
「あれには驚いた」
と机の上のリカちゃんと風呂から出てきたTさんが同意する。
「でも、お兄ちゃんもこわかったの」
「……そうか?」
リカちゃんの言葉にTさんは疑問顔だ。
ああ、きっとこんな感じで黒服さんも自分がどれほど怖いのか正確には分かってないんだろうな……。他に誰かあれを見た人がいるんならめちゃくちゃ同情するぜ。
「まああの人を怒らせる程の事をする人間なんてそういないか」
「契約者もこれからはあの青年にはもう少し気を使った方がいいな」
黒服さんを怒らせるのは流石に避けたい。と言うTさん。激しく同意だ。
「おう、だけどちょっと手を打ったから少しは無茶できるぜ!」
「手を打った?」
にっ、と笑いながら言うと疑問が返ってきた。それに対する答えは机の上のリカちゃんから出される。
「あ、しゃしんなのっ!」
「正解!」
俺は親指を立ててリカちゃんに向けた。
黒服さんの女体化していた時の写真、とっさに渡して買収したんだけど、たぶんアレの価値はチャラい兄ちゃんの中ではかなりのもののはずだ。
「しばらくはアレの効果で無茶をしてもチャラい兄ちゃんの方から勝手に黒服さんにとりなしてくれる、と思う!」
「……あまりやり過ぎんようにな」
半ば呆れたようなTさんの声。
「分かってるって。――んじゃ風呂入ってくる!」
食器の泡を水で流して水切り用のアミカゴに突っ込むとリビングを出る。
「Tさんとリカちゃんが来てからやらきゃならん家事が半分以下に減って嬉しい限りだ。――ほぼ全ての家事スキルが俺よりTさんのが高いっつうのがなんか納得いかねぇけど」
それに、リカちゃんがものを食わなくても大丈夫なのがまた良い。実家からの仕送りの間隔を早めてもらうことなく生活回るからな。
「最近は不本意ながら勉強もしてるおかげで成績上がってるしなー」
やらないとTさんがうるさい。まったく、学生なんてサボってなんぼだろうに。
「とは言っても問題はあるんだよなー」
町にはまた変なのが湧いてるし。
「≪マッドガッサー≫か、」
洗面所で服を脱ぎ、洗面台の鏡に映る自分の薄い胸を見つつ思う。
……≪赤い靴≫も≪赤マント≫のおっさんも、あまつさえチャラい兄ちゃんも俺よかでかかったよな。
「別に殊更気にする気はねえけどなんかむかつくな」
あのガス、女には豊胸効果だけある、とかならまだ笑い話なのにな。
それが、
「女には媚薬効果、ねぇ」
頬がひくつく、
「くそ、せめて記憶がなくなってればああああぁっ!」
思わず頭を抱えて唸る。アレから数時間経った今思い出してもめちゃくちゃ恥ずかしい。
「あーくそ、」
脱いだ服を勢い付けて放りこもうとすると洗濯機の中には、
「Tさんの服……」
思わず止めていた動きを再開、服を放りこみ、
「……」
おもむろにTさんが今日一日身に纏っていた服を取り出した。
あの時すげえ安心感とかあったんだよな~。
思い、
「ん」
服を掻き抱き、顔を服の中に埋めて、
「――――っ」
その匂いを嗅いだ。
あぁ、なんか落ち着くな。
そう思ったところで――
「お姉ちゃん、なにしてるの?」
リカちゃんに声をかけられた。
「ぅをっとおおおおぉっ!?」
抱いていた服を洗濯機に叩き込み、声のした方へとすぐさま振り向く。
視線の先ではリカちゃんが首をかしげてこっちを見ていた。
「ど、どうしたんだ?」
ばくばくする心臓の音をうるさいと思いながら訊くと、
「なにかさけびごえがきこえたからいちおーみてこいって、お兄ちゃんが」
ああそういえば叫んだなと思い、
「何でもない、ほんと、なんでもない」
片手で額を抑え、もう片手の掌をリカちゃんに向け、首を振りつつ言う。
「? かおあかいの」
「いや、気のせいだ、リカちゃん」
「そうなの?」
疑問にああ、とうなずいて、
「一緒に風呂に入ろうか」
リカちゃんに声をかけると、
「うん、はいるの!」
嬉しそうにうなずいてくれた。
「よし、こっち来い」
きっとガスが残ってたんだな。うん。
リカちゃんを手招きしながら思っていると、
「お姉ちゃん、お兄ちゃんのふくをだいてなにしてたの?」
ド直球な質問が来た。
「……リカちゃん、そのことは俺とリカちゃんだけの秘密な」
「ひみつ?」
頭の上から降ってくる疑問の声にうなずき、
「そう、昼の仕返しってことで」
適当な理由を付ける。
「うん、わかったの!」
その答えによし、と応じ、リカちゃんを頭にしがみつかせると、俺は浴室への扉を開け放った。
晩飯も終わり、見たいテレビも終わったんで食器を流しでだらだら洗いながら現状の確認をしてみることにする。
今日の食事当番はTさんだったから片付けは俺の役だ。
「薬関係は全滅で≪マッドガッサー≫の女体化ガスは治す目処立たずなんだよな……」
なんかめんどそうだなぁおい、
「黒服さん何かに呪われてないよな?」
薬の当てが軒並み全滅とかやばいんじゃないか? 何かに憑かれてるとしか思えん。
あー、黒服さんと言えば、
「黒服さんがキレるとあんなに怖いなんてな」
昼間のことを思い出してぼやく。あれはヤバかった。
「すごかったの」
「あれには驚いた」
と机の上のリカちゃんと風呂から出てきたTさんが同意する。
「でも、お兄ちゃんもこわかったの」
「……そうか?」
リカちゃんの言葉にTさんは疑問顔だ。
ああ、きっとこんな感じで黒服さんも自分がどれほど怖いのか正確には分かってないんだろうな……。他に誰かあれを見た人がいるんならめちゃくちゃ同情するぜ。
「まああの人を怒らせる程の事をする人間なんてそういないか」
「契約者もこれからはあの青年にはもう少し気を使った方がいいな」
黒服さんを怒らせるのは流石に避けたい。と言うTさん。激しく同意だ。
「おう、だけどちょっと手を打ったから少しは無茶できるぜ!」
「手を打った?」
にっ、と笑いながら言うと疑問が返ってきた。それに対する答えは机の上のリカちゃんから出される。
「あ、しゃしんなのっ!」
「正解!」
俺は親指を立ててリカちゃんに向けた。
黒服さんの女体化していた時の写真、とっさに渡して買収したんだけど、たぶんアレの価値はチャラい兄ちゃんの中ではかなりのもののはずだ。
「しばらくはアレの効果で無茶をしてもチャラい兄ちゃんの方から勝手に黒服さんにとりなしてくれる、と思う!」
「……あまりやり過ぎんようにな」
半ば呆れたようなTさんの声。
「分かってるって。――んじゃ風呂入ってくる!」
食器の泡を水で流して水切り用のアミカゴに突っ込むとリビングを出る。
「Tさんとリカちゃんが来てからやらきゃならん家事が半分以下に減って嬉しい限りだ。――ほぼ全ての家事スキルが俺よりTさんのが高いっつうのがなんか納得いかねぇけど」
それに、リカちゃんがものを食わなくても大丈夫なのがまた良い。実家からの仕送りの間隔を早めてもらうことなく生活回るからな。
「最近は不本意ながら勉強もしてるおかげで成績上がってるしなー」
やらないとTさんがうるさい。まったく、学生なんてサボってなんぼだろうに。
「とは言っても問題はあるんだよなー」
町にはまた変なのが湧いてるし。
「≪マッドガッサー≫か、」
洗面所で服を脱ぎ、洗面台の鏡に映る自分の薄い胸を見つつ思う。
……≪赤い靴≫も≪赤マント≫のおっさんも、あまつさえチャラい兄ちゃんも俺よかでかかったよな。
「別に殊更気にする気はねえけどなんかむかつくな」
あのガス、女には豊胸効果だけある、とかならまだ笑い話なのにな。
それが、
「女には媚薬効果、ねぇ」
頬がひくつく、
「くそ、せめて記憶がなくなってればああああぁっ!」
思わず頭を抱えて唸る。アレから数時間経った今思い出してもめちゃくちゃ恥ずかしい。
「あーくそ、」
脱いだ服を勢い付けて放りこもうとすると洗濯機の中には、
「Tさんの服……」
思わず止めていた動きを再開、服を放りこみ、
「……」
おもむろにTさんが今日一日身に纏っていた服を取り出した。
あの時すげえ安心感とかあったんだよな~。
思い、
「ん」
服を掻き抱き、顔を服の中に埋めて、
「――――っ」
その匂いを嗅いだ。
あぁ、なんか落ち着くな。
そう思ったところで――
「お姉ちゃん、なにしてるの?」
リカちゃんに声をかけられた。
「ぅをっとおおおおぉっ!?」
抱いていた服を洗濯機に叩き込み、声のした方へとすぐさま振り向く。
視線の先ではリカちゃんが首をかしげてこっちを見ていた。
「ど、どうしたんだ?」
ばくばくする心臓の音をうるさいと思いながら訊くと、
「なにかさけびごえがきこえたからいちおーみてこいって、お兄ちゃんが」
ああそういえば叫んだなと思い、
「何でもない、ほんと、なんでもない」
片手で額を抑え、もう片手の掌をリカちゃんに向け、首を振りつつ言う。
「? かおあかいの」
「いや、気のせいだ、リカちゃん」
「そうなの?」
疑問にああ、とうなずいて、
「一緒に風呂に入ろうか」
リカちゃんに声をかけると、
「うん、はいるの!」
嬉しそうにうなずいてくれた。
「よし、こっち来い」
きっとガスが残ってたんだな。うん。
リカちゃんを手招きしながら思っていると、
「お姉ちゃん、お兄ちゃんのふくをだいてなにしてたの?」
ド直球な質問が来た。
「……リカちゃん、そのことは俺とリカちゃんだけの秘密な」
「ひみつ?」
頭の上から降ってくる疑問の声にうなずき、
「そう、昼の仕返しってことで」
適当な理由を付ける。
「うん、わかったの!」
その答えによし、と応じ、リカちゃんを頭にしがみつかせると、俺は浴室への扉を開け放った。