「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん-a-05

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 黒服さんからの話を聞いて、空になったジュースの缶をゴミ箱に放りながら俺は呟く。
「接近戦担当が少なくとももう一人ねえ」
 しかも都市伝説に頼らないでも戦える強さの奴だ。
「下手をすればそのうえで何らかの都市伝説と契約している可能性もあるな」
 Tさんがうなずきながら補足を加える。
「でもそうだとしたらなんで都市伝説の能力を使わないで生身で黒服さんの同僚と戦ったんだ?」
「契約している都市伝説が戦闘向けではないか、遠距離用の能力ということになるだろう」
 詳しい情報がない今の状態ではこんな予測も当てにはならんがな。Tさんはそう言ってため息をつく。
 そもそも唯一の目撃情報が『服の上からではわからない程度に、しかし確実に鍛えられたすばらしい筋肉。邪法の流派に囚われさえしなければ、すばらしきブラザーになったであろう』ってのがなー。
「なんつーか、独特過ぎて」
 そう言ってTさんが買ったおかげで当たったもう一本のジュースを開ける。
「すみません、このような不確かな情報で」
「や、黒服さんのせいじゃねえよ」
 まるで自分の不手際のように謝ってくる黒服さんに慌てて言い返す。真面目な人だから、こんなどうでもいい所とかでいらない心労を背負っていくんだろうなー。
 そんなことを思ってジュースを啜っていると、
「元≪組織≫所属の者と≪組織≫の討伐対象が手を組んでいることになるのか」
 ≪13階段≫の契約者と、≪爆発する携帯電話≫の契約者の顔写真を見つめている黒服さんを見てTさんが言った。
「ええ、そうなります」
「奇縁だな」
 そう言ったTさんは黒服さんの顔をしばらく観察すると、深いため息をついた。
 そして唐突に訊く。
「迷っているのか、それとも悩んでいるのか?」
「……?」
 主語を言え! 主語を!
 俺が心の中で叫ぶと、Tさんは質問の理由を口にした。
「その二人について、何か思うところでもありそうに見える」
 そのせいでまた疲労が溜まっているようにも感じる。
 そう言ったTさんに疑問顔だった黒服さんはああ、と答える。
「はい」
 そしてぽつぽつと黒服さんは話してくれた。任務付けの生活を送っていたがそれでも心を無くさずに≪組織≫を嫌って離れていった≪13階段≫の契約者のこと。そして、≪組織≫から討伐対象に指定された≪爆発する携帯電話≫の契約者も調べてみれば彼の起こした殺人事件は正当防衛であったようであるらしいということも。
「同情か?」
 全て聞いたうえで問いかけるTさんに黒服さんはしばし無言。でもやがて、
「……できれば戦わずに分かりあえればいいと、そう思います」
 そう、ややためらいがちに口にした。
「そんなことでは早死にするかも知れんぞ」
 若干厳しい声でTさんが言う。黒服さんはつい数日前に舌戦していた時とはうって変わってTさんに強い反対意見を言おうとしない。
「ですが」
 弱くそう言いかける黒服さんの言葉にかぶるように鞄の中からリカちゃんが言った。
「お兄ちゃんも、そうなの?」
 む? と唸るTさん。リカちゃんは同じ意味を持つ言葉をまた放つ。
「お兄ちゃんも、はやじに、するの?」
 ――ああ、そう言えば、
「そうだよなー。リカちゃんだって、夢子ちゃんだってそうだ。なんだかんだで危なっかしいことやってたのに倒さずに分かりあったじゃねえか」
 そう言うとTさんはまた唸り、
「確かにそうだが……」
「なら意地悪なこと言うなよ」
 めっ。とおどけて言う。Tさんは渋い顔で、
「一応俺はそれで一回死んでいるようなものだから注意しているんだが」
「でも説教くさいのはいけないと思う」
 めんどいし。教師連中思い出すし。
 そう言うと、「まあ確かに」とTさんもうなずいた。やっぱりこの野郎もまともな生徒やってなかったんだな。
「≪組織≫から離れたくなる気持ちも分かるし、≪爆発する携帯電話≫にも――やりすぎだが同情の余地があるか。それに黒服さんには≪夢の国≫の件で多大な恩もあることだし、
 ――もし俺が彼らと対峙することがあったなら」
 そう前置きし、
「出来得る限り、彼らを殺さずに、そうだな――黒服さんの所に届けよう」
 言った。そして、
「ただし、契約者や知り合いに一線を越えて手を出すようなら容赦はせん」
 最後にそう付け加えた。
 あーあ、
「せめてそいつらが男を女に変えるだけで満足するようならここまで話もこじれないんだろうなー」
 空になった二つ目の缶をやっぱり放り投げつつ言うと、
「……はい」
「そうだな」
 応じるように男二人分のため息が空中に溶けて、消えた。



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