マッドガッサーと愉快な仲間たち・似非関西弁女編 03
「そういえばさ」
「んー、なんや?」
スパニッシュフライの契約者が、ふと原稿の手を止めて問い掛けてきた
似非関西弁女もまた、原稿の手を止めてそちらの方を見る
「関西弁、すっごい適当だけど出身どのへんなの?」
「んー、北海道。本職の漫画描きになってから学校町の近場に引っ越したなぁ」
「関西圏ですらない!?」
「いやまあ色々あってなー、なんていうか……昔の自分とは違うんやでーみたいな自己暗示みたいなもん?」
「ふーん……まあ、何があったかは聞かないけど。ちょっと気になったもんだから、ごめんね」
「ん、あんがと」
そう言ってお互いまた原稿の作成作業を再開する
ペンを走らせる音だけが響く中、似非関西弁女がぐっと身体を伸ばしながら立ち上がる
「一段落したしちょっとドリンク取ってくるわ」
「あ、私の分もー」
「おうさー」
マリのための食材や魔女のための薬剤なども入れるために選ばれた、やたらと大きな冷蔵庫を開けて頭を突っ込むようにして中を探る
「こないだまとめて買っといたのが……あっれー?」
大量の食材やよくわからない瓶を押しのけて、手探りで奥の方を探っていく
「お、あったあった」
有名メーカーの高級栄養ドリンクを二本手に取り、ぱたぱたと作業部屋に戻る似非関西弁女
「ほい、よく冷えてるでー」
「わわっ、投げないでよー」
お手玉状態になりながら、なんとかドリンクの瓶を受け取り
「……あれ? ちょっと待って、コレ」
「んー?」
さっさと蓋を開け、腰に手を当ててぐいーっと一気飲みした似非関西弁女
その顔と手にした瓶のラベルを交互に見て、スパニッシュフライの契約者の顔から血の気が引いていく
「黒いラベルに黒のマジックで書いてあるんだけどさ……『媚薬の原液、使う時は水で百倍に薄めてね☆ まじょ』って」
「ぶ―――――――――――――――――――――――っ!? げほっ、がはごほ、がはっ!?」
僅かに口に残っていた分を盛大に噴き出し、思い切りむせる似非関西弁女
「ちょい待ちぃや!? こないだぶっ掛けて使ってたような代物の、しかも原液を、こないな瓶に入れとくとかっ!?」
「原稿のある私の方に噴かなかった漫画家根性に助けられた私!? とりあえず男のキッスで解除できるはずだし、男! 今誰がいたっけ!?」
「ええい、誰でもええわ!? 薬の影響が出る前に唇奪ったるわい!」
どたばたと作業部屋を飛び出し、教会の中をあちこち探し回る
「男衆は何処やーっ!?」
どばーんと開け放たれた扉の向こうにはメンバーのほぼ全員が集まっており、いきなりの乱入者に目を丸くしている
「あの魔女っ子だけおらんって事は感付いて逃げよったんか!? 後でしばいたる……ってそれどころやないっ!」
爆発する携帯電話の契約者――あかん、今は女や!
マリ・ヴェリテ――何でこんな時に幼女モードやねん!
ええい、あとは魔女の一撃の契約者と十三階段の契約者と――
そこまで考えたところで、思考があっという間に熱っぽい感情で埋め尽くされていく
「おい、どうした?」
ぺたり、とその場に座り込む似非関西弁女
不安げに近付いた十三階段の契約者の足に縋り付き、潤んだ瞳で見上げ自らの服を緩め始める
「熱ぅて……切なくて……あかんねん……」
「ちょ、え、何この急なエロ展開!? 据え膳!? 食って良いの合図!?」
「あ、待て! もしかして魔女の媚薬のせいか!」
相方のやらかす事だけあって、すぐに状況を察する魔女の一撃の契約者
「男のキスで解けるって話を前にしてただろ、それで俺達のところに来たわけだ」
「……逆に言えば、キスしなきゃ解けないわけだよな?」
半裸になった似非関西弁女に押し倒され、身体をまさぐられている十三階段の契約者
「ええこといっぱいしよ……な?」
「そりゃもう、折角だから俺はこのおっぱいを選ぶぜ!」
スポーツブラに覆われた形の良い胸に手を伸ばそうとしたところで
横から割り込むように入ってきたマッドガッサーが、ガスマスクを押し上げて似非関西弁女に唇を重ねる
熱を帯びた思考はその口付けを受け入れ、首筋に腕を絡め更なる快楽を求めようとする、が
「んっ……ふ……ん……ふぇ?」
切なげで甘く熱い吐息が、段々と冷静さを取り戻し
「正気に戻ったか?」
眼前には、何かを堪えるように顔を赤くしたマッドガッサーの素顔
「えー、もうちょっといい事してからでも……」
「仲間は助け合わないと、大事なとこで信じあえないと困るだろ。ほらマリもビーストモードやめろ」
「……えー」
「あ、あはははは、あーいや、今回はウチのミスでやな、その……何かあってもしゃあなかったって事で」
何やら妙な空気に、乾いた笑い声を漏らす似非関西弁女
「なんかごめんなー、妙な空気にしてもうて。ちょっと表で頭冷やしてくるわ」
照れのせいか媚薬のせいか、赤くなった顔を手のひらで覆い隠しながら、ぱたぱたと駆け出していく
マッドガッサーはガスマスクを直しながら、無言でその後を追う
「ぶっちゃけどうよ、あの二人」
魔女の一撃の契約者が、ぼそりと呟く
「へ? どうって?」
よくわからないといった感じの十三階段の契約者の反応に、思わず溜息が漏れる
「お前さ、そんなんだから彼女出来ないんだよ」
「余計なお世話だよこん畜生!?」
「んー、なんや?」
スパニッシュフライの契約者が、ふと原稿の手を止めて問い掛けてきた
似非関西弁女もまた、原稿の手を止めてそちらの方を見る
「関西弁、すっごい適当だけど出身どのへんなの?」
「んー、北海道。本職の漫画描きになってから学校町の近場に引っ越したなぁ」
「関西圏ですらない!?」
「いやまあ色々あってなー、なんていうか……昔の自分とは違うんやでーみたいな自己暗示みたいなもん?」
「ふーん……まあ、何があったかは聞かないけど。ちょっと気になったもんだから、ごめんね」
「ん、あんがと」
そう言ってお互いまた原稿の作成作業を再開する
ペンを走らせる音だけが響く中、似非関西弁女がぐっと身体を伸ばしながら立ち上がる
「一段落したしちょっとドリンク取ってくるわ」
「あ、私の分もー」
「おうさー」
マリのための食材や魔女のための薬剤なども入れるために選ばれた、やたらと大きな冷蔵庫を開けて頭を突っ込むようにして中を探る
「こないだまとめて買っといたのが……あっれー?」
大量の食材やよくわからない瓶を押しのけて、手探りで奥の方を探っていく
「お、あったあった」
有名メーカーの高級栄養ドリンクを二本手に取り、ぱたぱたと作業部屋に戻る似非関西弁女
「ほい、よく冷えてるでー」
「わわっ、投げないでよー」
お手玉状態になりながら、なんとかドリンクの瓶を受け取り
「……あれ? ちょっと待って、コレ」
「んー?」
さっさと蓋を開け、腰に手を当ててぐいーっと一気飲みした似非関西弁女
その顔と手にした瓶のラベルを交互に見て、スパニッシュフライの契約者の顔から血の気が引いていく
「黒いラベルに黒のマジックで書いてあるんだけどさ……『媚薬の原液、使う時は水で百倍に薄めてね☆ まじょ』って」
「ぶ―――――――――――――――――――――――っ!? げほっ、がはごほ、がはっ!?」
僅かに口に残っていた分を盛大に噴き出し、思い切りむせる似非関西弁女
「ちょい待ちぃや!? こないだぶっ掛けて使ってたような代物の、しかも原液を、こないな瓶に入れとくとかっ!?」
「原稿のある私の方に噴かなかった漫画家根性に助けられた私!? とりあえず男のキッスで解除できるはずだし、男! 今誰がいたっけ!?」
「ええい、誰でもええわ!? 薬の影響が出る前に唇奪ったるわい!」
どたばたと作業部屋を飛び出し、教会の中をあちこち探し回る
「男衆は何処やーっ!?」
どばーんと開け放たれた扉の向こうにはメンバーのほぼ全員が集まっており、いきなりの乱入者に目を丸くしている
「あの魔女っ子だけおらんって事は感付いて逃げよったんか!? 後でしばいたる……ってそれどころやないっ!」
爆発する携帯電話の契約者――あかん、今は女や!
マリ・ヴェリテ――何でこんな時に幼女モードやねん!
ええい、あとは魔女の一撃の契約者と十三階段の契約者と――
そこまで考えたところで、思考があっという間に熱っぽい感情で埋め尽くされていく
「おい、どうした?」
ぺたり、とその場に座り込む似非関西弁女
不安げに近付いた十三階段の契約者の足に縋り付き、潤んだ瞳で見上げ自らの服を緩め始める
「熱ぅて……切なくて……あかんねん……」
「ちょ、え、何この急なエロ展開!? 据え膳!? 食って良いの合図!?」
「あ、待て! もしかして魔女の媚薬のせいか!」
相方のやらかす事だけあって、すぐに状況を察する魔女の一撃の契約者
「男のキスで解けるって話を前にしてただろ、それで俺達のところに来たわけだ」
「……逆に言えば、キスしなきゃ解けないわけだよな?」
半裸になった似非関西弁女に押し倒され、身体をまさぐられている十三階段の契約者
「ええこといっぱいしよ……な?」
「そりゃもう、折角だから俺はこのおっぱいを選ぶぜ!」
スポーツブラに覆われた形の良い胸に手を伸ばそうとしたところで
横から割り込むように入ってきたマッドガッサーが、ガスマスクを押し上げて似非関西弁女に唇を重ねる
熱を帯びた思考はその口付けを受け入れ、首筋に腕を絡め更なる快楽を求めようとする、が
「んっ……ふ……ん……ふぇ?」
切なげで甘く熱い吐息が、段々と冷静さを取り戻し
「正気に戻ったか?」
眼前には、何かを堪えるように顔を赤くしたマッドガッサーの素顔
「えー、もうちょっといい事してからでも……」
「仲間は助け合わないと、大事なとこで信じあえないと困るだろ。ほらマリもビーストモードやめろ」
「……えー」
「あ、あはははは、あーいや、今回はウチのミスでやな、その……何かあってもしゃあなかったって事で」
何やら妙な空気に、乾いた笑い声を漏らす似非関西弁女
「なんかごめんなー、妙な空気にしてもうて。ちょっと表で頭冷やしてくるわ」
照れのせいか媚薬のせいか、赤くなった顔を手のひらで覆い隠しながら、ぱたぱたと駆け出していく
マッドガッサーはガスマスクを直しながら、無言でその後を追う
「ぶっちゃけどうよ、あの二人」
魔女の一撃の契約者が、ぼそりと呟く
「へ? どうって?」
よくわからないといった感じの十三階段の契約者の反応に、思わず溜息が漏れる
「お前さ、そんなんだから彼女出来ないんだよ」
「余計なお世話だよこん畜生!?」
*
「あ~……」
教会の裏手で、似非関西弁女は壁に頭を押し付けて唸っていた
「あかん、守ったらなあかん仲間やーって考えしとったけど、なんか一度意識してもたら」
真っ赤になってずるずるとその場に座り込み、膝を抱えて丸くなってしまう
「……てか、マッドはんはハーレム作りたいんやしなぁ……それよか、ウチとかやっぱり『仲間』でしかなさそうやし」
土にのの字を書きながらぼそぼそと呟いていたが、やがて意を決したかのように立ち上がる
「うん、頑張って役に立てればそれでええねん! 当初からそういう目的なんやし!」
「大丈夫か? なんか様子が変だったけど」
「のひゃあ!? ま、マッドはん、おったんかいな!?」
「いや、今来たところなんだが……ホントに大丈夫か?」
「嫌やわ、ウチはそんなにヤワな女やないでー? あは、ははははは、それじゃウチ原稿の続きがあるから!」
脱兎の如く逃げ出す似非関西弁女に、マッドガッサーは首を傾げる
「……本当に大丈夫か、あいつ?」
教会の裏手で、似非関西弁女は壁に頭を押し付けて唸っていた
「あかん、守ったらなあかん仲間やーって考えしとったけど、なんか一度意識してもたら」
真っ赤になってずるずるとその場に座り込み、膝を抱えて丸くなってしまう
「……てか、マッドはんはハーレム作りたいんやしなぁ……それよか、ウチとかやっぱり『仲間』でしかなさそうやし」
土にのの字を書きながらぼそぼそと呟いていたが、やがて意を決したかのように立ち上がる
「うん、頑張って役に立てればそれでええねん! 当初からそういう目的なんやし!」
「大丈夫か? なんか様子が変だったけど」
「のひゃあ!? ま、マッドはん、おったんかいな!?」
「いや、今来たところなんだが……ホントに大丈夫か?」
「嫌やわ、ウチはそんなにヤワな女やないでー? あは、ははははは、それじゃウチ原稿の続きがあるから!」
脱兎の如く逃げ出す似非関西弁女に、マッドガッサーは首を傾げる
「……本当に大丈夫か、あいつ?」
無理矢理終わる