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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 占い師と少女-09

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uranaishi

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占い師と少女 日常編 09



「はっ……はっ……はっ……」

 私は走っていた。
 小さな小道や路地裏を右に左にと進んでいく。
 久々の全力疾走だ。
 別に何もスーパーの特売が近いとか、家に帰るのが遅くなったとかそんな事ではない。
 その原因は目の前の猫……ではなく、子ライオンである。

「これっ……もうっ……散歩じゃないってっ!」

 占い師さんの知り合いの家に子ライオンを預けてから数日。
 毎日子ライオンの散歩をするのが私の日課になっていた。
 と言うより、頼まれたのだ。
 日中はあの家に誰もいなくなるとかで、誰も子ライオンの世話ができないらしい。
 かと言って一日中家の中に置いておくのも可哀そうだ、と。
 そんなわけで子ライオンの様子を見に行った私に「散歩の付き添い」と言う役割を任されたわけなのだけれど……。

 ふしゃー

 目の前の子ライオン。やはりネコ科なのかやたらめったら奇妙な所に登りたがる。
 路地を抜け、塀を登り、屋根を伝って。
 正直これはもう「走る」と言うより「アスレチック」な気がしなくもない。 
 しかし、私も山育ちである。
 さすがに人の家の屋根に登るのこそ躊躇するが、その躊躇さえ乗り越えればそんなに難しいコースでもない。
 山中の天然アスレチックコースに比べれば、ある程度足場のしっかりしているこちらの方が幾分やりやすい……と思う。

 ぎしゃー

 子ライオンが再び塀へと飛び乗る。

「うわっ、ちょっとっ!」

 慌てて私も、少し高さの低い塀へと飛び乗った。
 近くにいたおじいさんがぎょっとしたような顔でこちらを見てるけど……うん、気にしないでおこう。
 現在の私と子ライオンの差は、離されず、しかし全く追いつけない微妙な距離。
 実を言えば今まで一度も、私は子ライオンを捕まえられなかった。

「うあーっ、何だか遊ばれてるような気が……」

 時折こちらを見ては「ぎゃしゃー」とか言ってる子ライオン。
 ……うん、これは間違いなく遊ばれている。

 しかし、これでめげる私ではない。
 今日と言う今日こそ、子ライオンを捕まえるのだ。
 そのための秘策もちゃんと用意してきた。

 塀を渡り、反対側の道路へと出る。
 子ライオンがそう言った道を選んでいるのか、車の通りは全くなかった。
 安全を確認して、とんっと塀から降りる。
 その音に反応したのか、それともちゃんと付いてきているか確認するためか、子ライオンがこちらを振り向いた。

(…………チャンスッ!)

 すかさず、私は長時間のアスレチックでくたくたになったポケットから「それ」を取りだした。
 ぴくり、と一瞬子ライオンが警戒するように後ずさる。
 しかし、「それ」は別に子ライオンを捕まえるための遠距離攻撃用の機械でも何でもない。
 私の右手にあるのは小さな袋。
 大体文庫本くらいのサイズの袋の表面には「ビーフジャーキー」と書かれていた。
 早い話がペット用フードである。

 ここ数日、何となく徒競争まがいの事をしていて分かったのだが、どうにもこの子ライオン、食い意地が張っているらしい。
 時々商店街で餌をもらっている場面を何度か目撃しているし、この徒競争も夕飯時になるまでには必ず終わる。
 そもそも私がこの子ライオンを拾った時も、確か空腹でフラフラになっていたはずだ。
 だったら、と用意してみたのがこのビーフジャーキーである。

(ちゃ、ちゃんと反応してるのかな……)

 こちらをじっと凝視しているのは分かるのだが、ちゃんとこのビーフジャーキーを見ているのかどうかがよく分からない。
 試しに、軽くビーフジャーキーの袋を振ってみる。

 しゃー

 と、その動きに合わせて子ライオンの首が揺れた。

(………………これは)

 振ってみる。

 しゃー

 振ってみる。

 しゃー

 振ってみ……と見せかけてちょっと逆に傾けてみる。

 しゃ……しゃー

(…………うわ、これ面白い)

 はたから見ればただの変人にしか見えないような行動に、しかし私は熱中した。
 今まで翻弄されるだけだった子ライオンに逆襲する機会を得たからかもしれない。
 袋を振っては、子ライオンの首が動く。
 私は、少しの間それに夢中になって

 とととと

 しかし、子ライオンが少しずつ近づいているのに気が付けなかった。
 首を振ると見せかけて、小さく、本当に少しずつ近づいてくる子ライオン。
 それに全く気付かず、私はビーフジャーキーの袋をひらひらと振って

「うあっ!?」

 唐突に、それが飛びかかってきた子ライオンに奪われた。
 袋を咥え、一目散に逃げる子ライオン。
 私は一瞬茫然として、けれどすぐに我に返った。

「それ三食分っ! 全部食べたら駄目だってーっ!」

 慌てて追いかけ始めるも、子ライオンには既にかなりの距離を取られていた。

「うあーっ、何だかさっきより状況が悪化した気がする―っ!?」

 食べ物で釣る作戦も失敗に終わり
 その日一日、私はまた子ライオンに振りまわされる事になった……。


【終】




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