○月×日 22:00 クラブハウス・武道場
「…あれ、大丈夫なのか?」
「悪魔の囁きは引き剥がした。ただ…かなり、無茶な動きをしていたからな。しばらく、身動きはとれんだろう」
「悪魔の囁きは引き剥がした。ただ…かなり、無茶な動きをしていたからな。しばらく、身動きはとれんだろう」
ひょこんっ
ボロボロになった武道場に、Tさんの契約者が入り込んだ
…もはや、武道場とすら呼べる状態ではない場所
その、ほぼ中央で…魔女の一撃の契約者は、眠ったように気を失っていた
「日焼けマシン」の契約者と黒服が、その容態を確認している
ボロボロになった武道場に、Tさんの契約者が入り込んだ
…もはや、武道場とすら呼べる状態ではない場所
その、ほぼ中央で…魔女の一撃の契約者は、眠ったように気を失っていた
「日焼けマシン」の契約者と黒服が、その容態を確認している
……魔女の一撃の契約者は、その手にしっかりと、あの戦いの最中、鎖が引き千切れてしまった首飾りを、しっかりと握り緊めていた
あれが、魔女の一撃契約者にとってどう言う意味を持つ物なのか……ただ、あの首飾りが、魔女の一撃契約者を狂気から引き上げる一因となった
それは、確かな事実だ
あれが、魔女の一撃契約者にとってどう言う意味を持つ物なのか……ただ、あの首飾りが、魔女の一撃契約者を狂気から引き上げる一因となった
それは、確かな事実だ
「…命に、別状はないようです」
「良かった…」
「良かった…」
黒服の診断に、「日焼けマシン」の契約者がほっとしたような声を出す
長い間、悪魔の囁きに取り憑かれてしまっていた魔女の一撃の契約者
引き剥がした事で、何らかの影響が体に現れている可能性もあったのだが…ひとまずは、その心配もないようだ
長い間、悪魔の囁きに取り憑かれてしまっていた魔女の一撃の契約者
引き剥がした事で、何らかの影響が体に現れている可能性もあったのだが…ひとまずは、その心配もないようだ
「まずは、相手の戦力を一つ潰せたか」
ふぅ、と壁にもたれかかりつつ、厨2病が呟いた
姫さんも同じように、壁にもたれかかって腰をおろし、休んでいる
あれだけの激戦の後だ
少し休まない事には、体が持たないだろう
姫さんも同じように、壁にもたれかかって腰をおろし、休んでいる
あれだけの激戦の後だ
少し休まない事には、体が持たないだろう
「外は……相変わらず、みたいね」
黒服の傍に居たはないちもんめの少女が呟き、壊れた壁から空を見上げる
空では、巨大な鳥と巨大ロボットが戦い続けていた
…何か、他にも飛んでいるような気がするが気のせいだ
あれが何なのか、確認してはいけない
見てはいけない、知ってはいけないのだ
全裸筋肉兄貴が翼を生やして空を飛んでいるなど、「あってはいけない」のだ
空では、巨大な鳥と巨大ロボットが戦い続けていた
…何か、他にも飛んでいるような気がするが気のせいだ
あれが何なのか、確認してはいけない
見てはいけない、知ってはいけないのだ
全裸筋肉兄貴が翼を生やして空を飛んでいるなど、「あってはいけない」のだ
「あの巨大な鳥は…雷が鳥のせいであるとしたら、サンダーバードでしょう。あの巨大ロボにサンダーバードの意識は向けられていますから、魔女の一撃にさえ気をつければ…」
「……私が、どうかしたかい?」
「……私が、どうかしたかい?」
響いた、声
ふわりと……小さな魔女が、壁の穴から入り込み…箒に乗ったまま、降り立った
警戒する一同の様子に、魔女の一撃は笑う
見れば、彼女もまた誰かと交戦した後なのだろうか
治療は終えているようだが、怪我をした形跡がある
ふわりと……小さな魔女が、壁の穴から入り込み…箒に乗ったまま、降り立った
警戒する一同の様子に、魔女の一撃は笑う
見れば、彼女もまた誰かと交戦した後なのだろうか
治療は終えているようだが、怪我をした形跡がある
「ひっひっひ…そう、警戒しないでおくれ。主が倒れた今…わたしゃ、あんた達と戦う気はないさ」
「…あなた、私たちの足止めも、本気ではしていませんでしたね?…何を企んでいるのですか?」
「…あなた、私たちの足止めも、本気ではしていませんでしたね?…何を企んでいるのですか?」
妹ちゃんが、いつでも結界をはれるよう警戒しながら、魔女の一撃に訪ねた
ひっひっひ……と、魔女の一撃は箒から、降りる
ひっひっひ……と、魔女の一撃は箒から、降りる
「べぇつにぃ?企んだつもりなんてないわぁ」
すたすたと、魔女の一撃は…己の契約者に、近づいていく
気を失ったままの、魔女の一撃の契約者……その傍らに、腰を下ろし
気を失ったままの、魔女の一撃の契約者……その傍らに、腰を下ろし
----慈悲深い母親の顔で、笑った
「ようやっと…悪魔の囁きから解放されたんだねぇ……主」
「…っお前、こいつがとり憑かれてるの…」
「知ってたさ…だぁって、私の主様なんだもの。契約した瞬間に、相手の状態はわかるさね」
「…っお前、こいつがとり憑かれてるの…」
「知ってたさ…だぁって、私の主様なんだもの。契約した瞬間に、相手の状態はわかるさね」
「日焼けマシン」の契約者の批難する声にも、魔女の一撃は笑うだけだ
そっと、彼女は己の契約者に手を伸ばす
その頬を撫でる手は、酷く優しかった
そっと、彼女は己の契約者に手を伸ばす
その頬を撫でる手は、酷く優しかった
「三年前…主が、大学ってとこに通い始めて、三ヶ月目くらいだったらしいねぇ……私は、主と契約した。その時、主の心にはもう、悪魔の囁きが憑いていたよ」
でも、どうする事もできなかった
魔女の一撃は、自嘲気味にそう笑う
魔女の一撃の力では、悪魔の囁きを契約者から引き剥がす事はできずに
---ただ、その心が歪み続けるのを、見ている事しかできなかったのだ
魔女の一撃は、自嘲気味にそう笑う
魔女の一撃の力では、悪魔の囁きを契約者から引き剥がす事はできずに
---ただ、その心が歪み続けるのを、見ている事しかできなかったのだ
「…マッドガッサー達は、この件には関係ないのですね?」
「あぁ。皆はこのことを知らないよ…私が、話さなかったからねぇ」
「あぁ。皆はこのことを知らないよ…私が、話さなかったからねぇ」
心の奥深くに憑く悪魔の囁きの気配は、通常感じる事など不可能だ
ーーそれこそ、契約により「絆」でも生まれていなければ
もしくは、都市伝説感知能力がよっぽど高くない限りは、不可能だから
だから、マッドガッサー達は知らない、と魔女は笑う
ーーそれこそ、契約により「絆」でも生まれていなければ
もしくは、都市伝説感知能力がよっぽど高くない限りは、不可能だから
だから、マッドガッサー達は知らない、と魔女は笑う
「あんたたち、ガスを撒き散らすのを、どうしても邪魔するのかい?」
「当たり前だ」
「当たり前だ」
Tさんが、しっかりと言い切る
それは、この場にいるほぼ全員の共通認識である
マッドガッサーの野望を阻止する
…その為に、この高校まで集まったのだから
それは、この場にいるほぼ全員の共通認識である
マッドガッサーの野望を阻止する
…その為に、この高校まで集まったのだから
「…参ったねぇ。私達、誰かを殺そうってんじゃないのよぉ?ただ、男をみぃんな女に変えて、ハーレム作ろうってだけさね……人間も都市伝説も、区別なくねぇ」
「大迷惑よ」
「おやおや、そうかぁい?」
「大迷惑よ」
「おやおや、そうかぁい?」
姫さんの突っ込みに、ひっひっひ……と、魔女の一撃は再び意地悪く笑い出した
それでも、己の主の頬を撫でる手は、優しいままだ
それでも、己の主の頬を撫でる手は、優しいままだ
「悪い話じゃあないと思うんだけどねぇ?ハーレムはさておくとして…うまくいけば、みぃんな仲良しこよしさね。人間も都市伝説も、そんな事まったく関係なく仲良くできるんだよぉ?」
「……それは、ある意味で素晴らしい世界かもしれませんね」
「……それは、ある意味で素晴らしい世界かもしれませんね」
ですが、と
黒服は、静かに告げる
黒服は、静かに告げる
「方法が間違っています。あなた達のやり方では、たとえそれが実現できたとしても…いつか、破綻します」
「…残念だねぇ。あんたとは別の黒服は、わかってくれたんだがねぇ」
「……別の?」
「…残念だねぇ。あんたとは別の黒服は、わかってくれたんだがねぇ」
「……別の?」
はないちもんめの少女が、眉をひそめる
そうさ、と魔女の一撃は笑った
そうさ、と魔女の一撃は笑った
「髪の伸びる黒服が……まぁ、スパニッシュフライを飲み込んだせいもあるんだろうけど、私たちの目的に共感してくれたよぉ?『人間と都市伝説の境界を取っ払えるんだとしたら素晴らしい』ってねぇ?」
「髪の伸びる……」
「あのおじさんー?」
「髪の伸びる……」
「あのおじさんー?」
…数名、ピンポイントで、そんな事をのたまった人物に心当たりを感じる
その中で、黒服のみが微かに疑問を感じた
あの同僚が、スパニッシュフライの影響下にあったとしても、そんな事を言うだろうか?と
その中で、黒服のみが微かに疑問を感じた
あの同僚が、スパニッシュフライの影響下にあったとしても、そんな事を言うだろうか?と
「……まぁ、止めるつもりなら、急ぐんだねぇ?11時半には、ガスの精製が終わる…そして、その25分後にミサイルは発射。その丁度5分後には、ミサイルが炸裂してガスが噴出されるよ」
「いいのか?そんな事を俺らに話しても」
「いいのか?そんな事を俺らに話しても」
一同の中で、一番疲労の色が濃い様子の厨2病が疑問の声をあげた
…疑っている、と言うのもあるのだろう、魔女の一撃の言葉を
魔女の一撃が、ますます意地の悪い笑みを浮かべてきた
…疑っている、と言うのもあるのだろう、魔女の一撃の言葉を
魔女の一撃が、ますます意地の悪い笑みを浮かべてきた
「主を悪魔の囁きから解放してくれた、その礼さね。まぁ、私の言葉を信じるも信じないも自由だけどねぇ?」
「だとしても」
「あんたたちなら、皆を殺さないでくれそうだしねぇ?」
「だとしても」
「あんたたちなら、皆を殺さないでくれそうだしねぇ?」
…それが一番の理由か、と黒服は気づく
マッドガッサーの一味は、仲間同士を酷く大切にしている
どうせ誰かに止められるのなら…仲間を殺すことがないだろうあいてに止めて欲しい
そう言う、事か
マッドガッサーの一味は、仲間同士を酷く大切にしている
どうせ誰かに止められるのなら…仲間を殺すことがないだろうあいてに止めて欲しい
そう言う、事か
「とにかく、黒服、早く止めに行こ………っ!?」
ーーーぐら、と
立ち上がろうとした「日焼けマシン」の契約者の体が、ふらついた
倒れそうになった体を、黒服は慌てて抱きとめる
立ち上がろうとした「日焼けマシン」の契約者の体が、ふらついた
倒れそうになった体を、黒服は慌てて抱きとめる
「…あ、あれ?」
「ちょっと、大丈夫なの?」
「大丈夫だよ」
「ちょっと、大丈夫なの?」
「大丈夫だよ」
はないちもんめに「日焼けマシン」の契約者はそう答えているが…顔色が、悪い
やはり、「厨2病」との特殊な多重契約によるあの炎の力は、体力の消耗が激しすぎる
今日、これ以上戦えない訳ではないが…あまり、無理はできないだろう
「日焼けマシン」の契約者の体を抱きとめたまま、黒服は皆に告げる
やはり、「厨2病」との特殊な多重契約によるあの炎の力は、体力の消耗が激しすぎる
今日、これ以上戦えない訳ではないが…あまり、無理はできないだろう
「日焼けマシン」の契約者の体を抱きとめたまま、黒服は皆に告げる
「…私達もマッドガッサーを止めには向かいますが、この子の体の事もありますので…少し、遅れていきます」
「俺、大丈夫だぞ?」
「俺、大丈夫だぞ?」
大丈夫じゃないだろう
その場にいる全員が、心の中で突っ込んだ
かなり顔色が酷いし、体もふらついている…とてもじゃないが、大丈夫な状態には見えない
黒服は小さく苦笑し、皆に向き直った
その場にいる全員が、心の中で突っ込んだ
かなり顔色が酷いし、体もふらついている…とてもじゃないが、大丈夫な状態には見えない
黒服は小さく苦笑し、皆に向き直った
「……見ての通りの、状態ですので。どうか皆さん、お先に屋上へと向かってください」
「あなた達だけでここに残って、大丈夫なの?」
「あなた達だけでここに残って、大丈夫なの?」
すくり、姫さんが立ち上がる
はい、と黒服と…はないちもんめが、頷いた
はい、と黒服と…はないちもんめが、頷いた
「敵戦力は、校舎の方に集中してるみたいだしね」
「魔女の一撃に戦う意思はありませんし、大丈夫です」
「……わかった。だが、気をつけるんだぞ」
「魔女の一撃に戦う意思はありませんし、大丈夫です」
「……わかった。だが、気をつけるんだぞ」
Tさんの言葉に、はい、と黒服は頷いた
外では、雷雲が立ち込めている
次から次へと雷が落ち続け…戦いの激化を嫌と言うほど知らしめてきていた……
次から次へと雷が落ち続け…戦いの激化を嫌と言うほど知らしめてきていた……
「……あんたは、何も悪くないよ」
「………え」
「………え」
ぽつり
魔女の一撃が呟いた言葉に…「日焼けマシン」の契約者は、彼女を見詰めた
皆に背を向けた状態で、己の契約者に膝枕をしてやりながら…魔女の一撃は、ゆっくりと続ける
魔女の一撃が呟いた言葉に…「日焼けマシン」の契約者は、彼女を見詰めた
皆に背を向けた状態で、己の契約者に膝枕をしてやりながら…魔女の一撃は、ゆっくりと続ける
「主は、悪魔の囁きに心の隙を付け入られた……確かに、その隙が生まれたのは、あんたや、そこの黒服が原因かもしれない」
ぴくり
「日焼けマシン」の契約者は、微かに動揺する
---己が考えていた事を、魔女の一撃に言い当てられてしまったから
「日焼けマシン」の契約者は、微かに動揺する
---己が考えていた事を、魔女の一撃に言い当てられてしまったから
けれど、と
魔女の一撃は、ゆっくりと続ける
魔女の一撃は、ゆっくりと続ける
「でも、ね。あんたも、その黒服も、何も悪くないのさ……主を思って、都市伝説の事を黙っていた。それが、事実なんだから……主はちょぉっと、それに気づくのが遅かった、だけ」
……そして
魔女の一撃は…この場にいる全員に告げるように、こう言った
魔女の一撃は…この場にいる全員に告げるように、こう言った
「---主を悪魔の囁きから解放してくれて……ありがとう」
それは、この魔女の一撃がこの世に生み出されて、数百年
生まれてはじめての…心からの、感謝の言葉だったのである
生まれてはじめての…心からの、感謝の言葉だったのである
to be … ?