「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 不良教師と骨と模型-01

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
『あの~…ここは、禁煙ですよ?火気厳禁ですよ?』
「………?」

 聞こえてきた女の声に、振り返る
 誰もいない
 放課後の理科室
 生徒たちももう帰った時間帯で、誰もいないはずだ
 この理科室にいるのは、自分だけのはず
 振り返っても、そこには白骨標本があるだけだ

『あの、あの。理科室で、タバコは吸っちゃいけないと思います!』
「………」

 カタカタ
 白骨標本が、ひとりでに動いて音を立てる
 ぐしゃり、タバコを握りつぶし…ゆっくりと、男は立ち上がった
 無造作に白骨標本に近づき…周囲を探る

『…?どうしたんですかぁ?』
「……おかしいな、妙な仕掛けの類がない」
『え?あ、あの、えっと、せ、生徒たちの悪戯で声が出てるとかじゃないですよ!?』

 カタカタカタ!
 白骨標本は、抗議するように続けてきた
 …ふむ
 どうやら、本気で白骨標本が話しているようだ
 タバコの吸いすぎで頭がイカれたのだろうか

『あの…びっくり、しないんですか?』
「悲鳴でもあげて逃げて欲しかったか?」
『…それはそれで、ちょっと寂しいです』

 カタカタ
 白骨標本は、途惑った様子で続けてくる
 女の声、この話し方
 …そうか、この白骨標本、女だったのか
 妙な感想を抱き、どうでもいい事に脳細胞を使った事を後悔する

「…で、何だ?人が自分の城でタバコ吸おうが、どうでもいいだろう?」
『えっと、あの、理科室って言っても、化学の先生の所有物って事じゃないと思いますけど…』

 っち、白骨標本の癖に良識派め

『あの、その…お、お願いがあるんです』
「断る」

 即答した
 えぇっ!?とショックを受けた様子の白骨標本
 あぅう、と言葉を飲み込んでくる

『あの、まだ、最後まで言ってませんけど…』
「断る。多分、ロクな事じゃない」

 いきなり白骨標本に話し掛けれ、頼み事をされるなど 
 絶対、厄介ごとに巻き込まれるに違いない
 …否
 こんな、非日常な、非常識な事態が起こっている時点で、自分はとっくに厄介ごとに巻き込まれているのだ
 厄介ごとなど御免である
 …ならば、さっさと解放されたい

「俺ぁ帰るぞ。頼み事なら、もっと物好きな奴を探せ」
『あぁああ、待ってくださいぃいい!!!』

 がっし!!
 白骨標本が、腰に抱きついてきた
 ずりずりずりカタカタカタ
 …さて、ここで問題だ
 腰に白骨標本をくっつけた状態で帰れるか?
 否
 帰れるはずもない
 どう見ても不審人物だ
 こんな状態で自転車なんぞ漕いでいたら、確実に職務質問される

「離れろ。重たくは無いが鬱陶しい」
『か、帰らないでくださいよぅ!お願いですから、話を聞いてください!!』

 必死な様子だが、本当、厄介事は御免なのだ
 じろり、白骨標本を睨みつけようと、振り返った…
 …その時

「………な!?」

 それ以上の厄介ごとが、視界に飛び込んできた
 窓の、その向こう側
 そこを…何かが、落下していく
 それは、確かに……人間、だった

『っきゃ!?』

 白骨標本を振り払い、窓に向かう
 …飛び降り自殺か!?
 よりによって、自分が学校に残っている時に、洒落にならん!!
 窓をあけ、下を確認しようとして…

『見ちゃ駄目です!!』

 白骨標本の悲鳴を聞いて…ふと、気付く
 確かに、さっき、窓の外を落ちていったのは、女だった
 セーラー服を着た、女子高生…に、見えた
 こちらを、じっと睨んでいるような、そんな表情の
 だが、妙に冷静になった思考が、気付く

 …この学校の制服は、セーラー服じゃ、ない
 ブレザーだったはず?

 それに気付いた、その瞬間

「……っが!?」

 がし、と
 伸びてきたそれに、首を締められた
 そのまま、窓の外に引きずり出されそうになり…何とか、窓枠につかまって、堪える
 …ッ冗談じゃない!
 ここは、三階だ
 こんな場所から落ちたら、死ねる!

「な……っ」

 じ、と
 こちらを睨んでくる、眼
 セーラー服を着た、女子高生が…じっと、じっと、こちらを睨みつけている
 首をしめてきているのは、この少女の手
 こちらの首をしめながら…ぶらり、ぶらさがってきていて

「………ろ」

 ぱく、ぱく、と
 口が、ゆっくりと、動き出す

「お、ち、ろ」

 それは、呪詛の言葉

「落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちてしまえぇええええええ!!!!」

 ずる、ずるっ、と
 体が、外へと引きずり出されていく
 ぎり、ぎり、と
 首を締められているせいで、呼吸も苦しくなってきた
 これは…もう、駄目か

『諦めちゃ、駄目です!』

 がし
 骨ばった…いや、骨そのものの指が、首をしめてくる女子高生の指を、掴んだ
 白骨標本が、必死にその指を外そうとしている

『諦めちゃ、駄目です!私があなたを助けます!!ですから…私と、契約してください!!』
「けい……やく…?」

 白骨標本に、たいした腕力は無いのだろう
 女子高生の指を、外せないでいる
 その間も、女子高生は、ぶらぶらと、ぶら下がり
 落ちろ、落ちろと叫び続ける

『その子は、都市伝説です。「ふと窓の外を見たら、飛び降り自殺の少女と目が合った」…そんな、都市伝説なんです!』

 ずる、…と
 最早、体が半分以上、外に出てしまっている
 …このままでは、自分は確実にこの少女もろとも、地面に叩きつけられる

「…それ以来、窓を見るたび…飛び降りるそいつの姿見えるって、あれか…っ」

 何故、そんな事を口走る余裕があるのか
 正直、自分でもわからない
 こちらの言葉に、白骨標本は頷いてきた

『そうです…その子、いつからか、目が合った相手を、今みたいにして、殺そうとするようになっちゃって…っ
 でも、そんな酷い事、もうやめさせてあげたいです。ゆっくり眠らせてあげたいんです!!』

 だから、と
 白骨標本は、半ば叫ぶように、続けてくる

『…私と、契約してください!あなたを助けます、その子を、眠らせます!!』
「……わかった」

 つまるところ
 自分が助かる手段は、一つしかないのだ

「…契約してやる!」
『っはい!!』

 ぐ、と
 白骨標本の力が増したのを…確かに、感じた

「!?」

 ぐい、と
 その、細い細い指先が、首を閉めてきていた女子高生の手を、引き剥がす

「っか……」

 げほげほと、咳き込み、何とか、理科室に体を戻す
 ぐい、と
 白骨標本は、逆に相手の手を掴み…女子高生を、引きずり込む!

『あなたのテリトリーは、窓の外……他のテリトリーに引きずり込まれやすいのが、あなたの弱点です!』
「っぎ………!」

 ぎょろり
 女子高生が、怨念の篭った眼差しで、こちらを睨みつけてくる
 ぽぉん、と理科室内に放り投げられた、その体
 その体目掛けて…白骨標本は、腕を振るう
 刹那
 その腕の先の手が…鋭い刃に、変わった

『ゆっくり……眠ってください!』

 っざん、と
 まるで、必殺の居合切りのように、白骨標本は、女子高生の体を切り裂いた
 絹を引き裂くような悲鳴をあげて、女子高生の体は崩れ落ち…
 まるで、最初から、存在などしていなかったかのように
 すぅ……と、その場から消えうせた

『ふぅ……』

 ぺたん
 白骨標本が、その場に座り込む
 ………
 …………
 立ち上がらない

「…どうしたんだ?」
『…腰が抜けちゃいました』

 もじもじしている
 正直、白骨標本にそんな事をされても、可愛くない

『えぇと、あの、その…』

 もじもじもじ
 動作の一つ一つが、ムカつくほどに乙女だ
 …骨盤とか、どう見ても男の癖に、何故人格が乙女なんだ、こいつは

『あの、私…都市伝説「理科室の白骨標本」です、よろしくお願いします』

 そう言って、白骨標本は、ぺこり
 正座して、三つ指突いて、頭を下げてきたのだった




「…とまぁ、そんな出会いでな」

 ふぅ、と
 不良教師が、タバコの煙を吐き出す

『あぁっ!?ここは禁煙ですってば!!』


 おろおろカタカタ
 お茶を淹れてくれていた白骨標本が、わたわたと注意するが、不良教師は知ったこっちゃない、と言わんばかりにタバコを吸い続けている
 理科準備室で、生徒の前でタバコ吸うなや、教師

「うんめー的な出会いだったんだね!」

 きらきら
 俺の膝の上に座っている花子さんは、無邪気に瞳を輝かせている
 そうだな、と不良教師は、小さく頷いた

「運命って言えば、運命だな。間違っても恋には落ちないが」
『…酷いです』

 いじいじ
 いじけている白骨標本
 それを見て…不良教師はニヤり、笑った

「まぁ、いじりがいのある玩具が手に入ったと思うさ」
『ひ、ひひひひ、酷すぎますぅ~!!!』

 …この二人を見ていて思う
 実は、結構お似合いなんじゃね?と
 思ったが、怒られそうなので、黙っておく事にしたのだった


fin


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