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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 喫茶ルーモア・隻腕のカシマ-40

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rumor

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喫茶ルーモア・隻腕のカシマ


サチ


ある寒い朝のことだった

いつもの様に、カシマさんとの稽古をする沼へ行く
カシマさんは既にそこにいた
このヒトは遅刻をしないどころか、ボクよりも遅く来たことは無い
「おはよう」
「おはよう、カシマさん」
いつも通りの挨拶
だが、その次の言葉は予想だにしないものだった
「すまないが、今日の稽古は昼までとする」
「ぇ?」
「実はな……昨夜、サチ殿が倒れたのだ」
「?!」
さっきの驚きを遥かに越えられ、言葉が出ない
「今は入院している」
「……病気なの?」
「そう心配するな、ただの過労だそうだ」
カシマさんは心配するなというが……言った本人も心配そうな表情を隠せずにいる
「過労……」
「今朝の話では、今日の昼には退院するそうだ」
「……そうか……良かった」
マスターを失い、更にサチまで失ったとしたら……
そう考えると、体が震える
「迎えに行こうと思うのだが……君もどうだ?」
「うん、一緒に行く」

*



でも、ボクらが迎えに行ったとして……サチの家族と顔を合わせることになるのだろうか
それとも家族は来ないのだろうか?
サチから聞いている家族の感じだと、娘が倒れたとしたらずっと付いていそうな気もする
「サチの家族は?」
「……来ない」
何故か、カシマさんの口調は重い
「ああ、仕事とかあるんだよね?」
「いや」
「?……どういうこと?」
「サチ殿に……家族は……いない……昨夜もワタシが消防署に電話をかけた」
「?!……何言ってるんだよ……そんなこと……」
サチに聞いていた話と違う
優しい母、心配性の父……じゃあ、友達は?仲の良さそうな友人は?
「家族どころか……友人もいないのだ」
「そんな……馬鹿な……」
「彼女は殆ど食事を摂らない……」
確かに……夕食も通常の半分くらいだった様に思う
年頃の娘だし、ダイエットをしているのだろうと思っていた
そういえば……あの夏のプールでも……バナナを半分しか食べていなかった
「……まさか、都市伝説の?!」
「サッちゃんの歌のことか?」
「うん」
「……ワタシも最初はそれを疑った……だが、違ったよ」
「ぇ?……じゃあ……一体……」
「あれは都市伝説などではない……単純に拒食症なのだよ」

*



サチは小さい頃に親から虐待を受けていた
虐待といっても、暴行を加える様な虐待ではなく……
食事を与えられないことや、具合が悪くても病院へつれていってもらえない
そういった"ネグレクト"という消極的な虐待だった

初めは誰も気付かなかった
ようやく祖母が気付いた時には……サチは痩せこけ、殆ど意識がなかった
強引に、祖母がサチを引き取る……優しい祖母だった
それ故に、自分の娘を甘やかしすぎたのかもしれない……祖母は悔やんだ
地獄は続いた
あまりにも食事を与えられずにいたため、サチは食事を殆ど受け付けられなくなっていたからだ
それでも、祖母は諦めなかった
祖母とサチ本人の努力により
流動食から半固形、固形へと徐々に食べられる様になっていったらしい
サチは学校へも通える様になったが
その名前と彼女の家庭に対する噂からか、親しい友人は出来なかった
優しい言葉をかけてくれる者もいたが、サチ自身が心を開けないでいた
そして、サチは自分を主張することも無く……次第に隠れる様に生活する様になっていく
名は変えることが出来たかもしれない
だが、そんな知識も頼れる人も周りにはいなかった
ただ、それだけのことだ
その祖母も昨年亡くなったそうだ

これは現実だ
作り話……都市伝説であってくれたら良かったのに……とさえ思ってしまう様な現実

*



「ワタシが彼女との契約以降に、繋がった夢の中で知った過去は、これで全てだ」
「じゃあ……ボクに話していたことは……」
「嘘……と言えばそうなのかもしれん……だが」
「自分の精神を保つための……偽の記憶だったってこと?」
「ああ、恐らく自分でも嘘をついているという自覚は無かっただろう」
「そんな状態で今まで……」
「いや、それは……マスターが亡くなるまでの話だ」
「ぇ?どういうこと?」
「ヒトは守るべきモノが出来ると強くなるものだ」
「……ボクを守るために……」
「ああ、君を支える為に……現実と向き合い……偽りの記憶を捨て、ただただ君を助けている」

そもそも……話に聞いていた様な心優しい親が
自分の子に幸が薄い──碓氷 サチ──などという意味の名前を付けるだろうか
今にして思えば、気付くチャンスは無数に存在していたのかもしれない……

「そんな……じゃあ、今回の過労は……」

ボクがサチの負担になっていたから……

「間違っても、自分が負担をかけたなどと考えるな」
そんなボクの思考を見透かした様にカシマさんが声を掛ける
「でもッ……」
「負担ではない……これは恩だ……恩ならば……返せるだろう?」
そこでカシマさんはニヤリと笑う
「恩は……返せる……うん、そうだ……これは恩だ」
ボクもカシマさんにならってニヤリと笑った

*



そして昼
退院するサチを迎えに行く
病院の入り口で、サチが出てくるのを待つ

「ぁ……輪くん……カシマさん」
驚くサチ
誰かが迎えに来る
そんなことなど考えもしなかったのだろう
「迎えに来たよ」
「……うん……ありがとう」
全く……こんなことくらいで……泣かないで欲しい
「今日はボクとカシマさんが夕飯を作るよ」
「ぇ?そんな……いいよ」
「サチ殿、何か食べたいものはあるかね?」
「寒くなってきたし、暖かいものがいいよね?サチ?」
「……何でも……いいよ……なんだって……暖かいもん」
「ん~……じゃあ、鍋焼きうどんにしようか」
「うむ、消化も良いし体も温まる……何よりも……簡単だ」
「だね」
そう言ってボクらは笑った

手を繋ぎ家路につく

「ぁ……雪……」

空からは真っ白な雪
季節は既に、その全てを冬に飲み込まれていた



*


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