占い師と少女 マッドガッサー決戦編 17
○月×日 22:49
「…………んぅ……」
小さな話声だけが聞こえる静かな空間。
その中で、その声は少しだけ大きく響いた。
その中で、その声は少しだけ大きく響いた。
「黒服さん、ですかね……」
見ると、教室の一角に寝かせていた黒服さんがみじろきをしている。
ゴスロリの服が絶妙なチラリズムを形成してるけど……うん、大丈夫、見えてない。
ゴスロリの服が絶妙なチラリズムを形成してるけど……うん、大丈夫、見えてない。
「起きたのかな?」
不良教師さん達と話しをしていた弟さんが立ち上がり、黒服さんの側へと寄って行った。
私と占い師さんも、その後を追う。
私と占い師さんも、その後を追う。
「んー、まだ気絶したままだね」
そう言って、黒服さんの頬っぺたをむにむにと両手で引っ張った。
「……何してるんですか?」
「うん? 何だか、こうしなくちゃいけないような気がして……」
「うん? 何だか、こうしなくちゃいけないような気がして……」
その間も、むにむにと頬っぺたをこねくり回す弟さん。
何となく私も止められず、少しの間黒服さんの頬っぺたをむにむにとしていると――――
何となく私も止められず、少しの間黒服さんの頬っぺたをむにむにとしていると――――
「…………ぅん?」
――――黒服さんが、うっすらと目を開けた。
途端、弟さんがぱっと手を離す。
途端、弟さんがぱっと手を離す。
「んー……?」
黒服さんは軽く体を起こす。
そのまま周囲を見回して、ああ、とため息を漏らした。
そのまま周囲を見回して、ああ、とため息を漏らした。
「そっか、戻ってきちゃったんだっけ……」
「あの……大丈夫ですか?」
「あの……大丈夫ですか?」
何かを呟いている黒服さんに、声をかける。
能力を使って読み取ってみたけれど、もうスパニッシュフライは排出されているはずだ。
能力を使って読み取ってみたけれど、もうスパニッシュフライは排出されているはずだ。
「うん? ……ああ、さっきの子か。うん、もう大丈夫だよ」
そう言ってから、ぴとっと頬に手をあてる。
「…………ちょっと、頬が痛いけど」
最後の言葉に、弟さんが目を逸らした。
それには気付かずに、黒服さんが立ち上がる。
それには気付かずに、黒服さんが立ち上がる。
「っと……うん、体の方も問題ないし、大丈夫かな」
パタパタと体に付いた埃を払って、黒服さんは私たちの方を向いた。
そして、ちょっとだけ気まずそうな顔をしてから、頭を下げる。
そして、ちょっとだけ気まずそうな顔をしてから、頭を下げる。
「ごめん、あなた達に迷惑をかけてしまった、ごめんなさい」
きちんと腰を折った姿勢でのお辞儀。
それを見た占い師さんは手をパタパタと振って
それを見た占い師さんは手をパタパタと振って
「少なくとも、被害が出てない以上俺は構わないさ。……まぁ、あちらさんがどうかは分からないが」
ちらり、と占い師さんの視線が弟さんと不良教師さんを捉える。
「どこか怪我をさせられた訳でもなし、むしろ俺が殴ったわけだからな。何も言う事はない」
「兄さんがそう言うなら、僕も何も言わないけど……」
「兄さんがそう言うなら、僕も何も言わないけど……」
視線を受けた不良教師さんは肩をすくめる。
不服そうだったけれど、弟さんもそれ以上は何も言わなかった。
何か言いたそうだった白骨標本さんや人体模型さんも、それを見て弟さんのように口をつぐんだ。
不服そうだったけれど、弟さんもそれ以上は何も言わなかった。
何か言いたそうだった白骨標本さんや人体模型さんも、それを見て弟さんのように口をつぐんだ。
「本当に、ごめんなさい。許してくれてありがとう」
改めて腰を曲げ、顔を上げる黒服さん。
起きたてだからか、まだ少し弱々しかったが、その顔は微かに微笑んでいた。
起きたてだからか、まだ少し弱々しかったが、その顔は微かに微笑んでいた。
「……起き抜けの所悪いが、取りあえず幾つか確認しなきゃいけない事がある」
軽く肩をほぐすような動作をして、占い師さんが黒服さんを見つめる。
一見すると分からない程自然な動作。しかし、私には占い師さんが「リーディング」の能力を使っている事が分かった。
一見すると分からない程自然な動作。しかし、私には占い師さんが「リーディング」の能力を使っている事が分かった。
「うん。僕に答えられる範囲なら」
占い師さんの視線。その意味に黒服さんは気付かず、こくりと頷いた。
それを確認してから、占い師さんが矢継ぎ早に質問を投げかけていく。
Tさんの時にも行った自身の都市伝説についてや、持っている情報についてなど、多岐に渡る質問。
それらの確認は滞りなく進んで行いき――――
それを確認してから、占い師さんが矢継ぎ早に質問を投げかけていく。
Tさんの時にも行った自身の都市伝説についてや、持っている情報についてなど、多岐に渡る質問。
それらの確認は滞りなく進んで行いき――――
「これは質問と言うより疑問なんだが……あんたは誰にスパニッシュフライを飲まされたんだ?」
「ん……多分同じようにスパニッシュフライに操られてたと思うんだけど、同じ組織の人に、ちょっと」
「ん……多分同じようにスパニッシュフライに操られてたと思うんだけど、同じ組織の人に、ちょっと」
その時の事を思い出したのか、黒服Yさん(名前もさっき教えてもらった)は、軽く頬を赤らめた。
「組織の人間……?」
怪訝そうな顔をして、占い師さんが弟さんを見る。
「僕じゃないよ? もちろん」
「うん、黒服Hさんって言うんだけど」
「ああ、あの黒服か…………」
「面識、あるの?」
「一応な」
「うん、黒服Hさんって言うんだけど」
「ああ、あの黒服か…………」
「面識、あるの?」
「一応な」
言葉と共に、占い師さんがため息を漏らした。
その他の人たちも、どことなく「ああ、あいつね……」というような雰囲気を醸し出している。
うん、まぁ……何となく、答えた時に黒服Yさんが顔を赤らめた理由が、分かったような気がする。
その他の人たちも、どことなく「ああ、あいつね……」というような雰囲気を醸し出している。
うん、まぁ……何となく、答えた時に黒服Yさんが顔を赤らめた理由が、分かったような気がする。
「……まぁ、それはいい。次で最後の質問だな。あんたは、俺達と一緒に来る気はあるのか?」
「うん、もちろんあるよ。そもそも、それがここに来た目的だしね」
「うん、もちろんあるよ。そもそも、それがここに来た目的だしね」
黒服Yさんが頷き、小さく何かを呟いた。
その時、もしももっと黒服さんが大きな声で、それか私の耳がもっと良かったなら、次のように呟いたのが聞こえたはずだった。
その時、もしももっと黒服さんが大きな声で、それか私の耳がもっと良かったなら、次のように呟いたのが聞こえたはずだった。
「…………それに、ここで逃げたら君に怒られちゃうもんね」
しかし、その声は本当に小さく、私の耳には届かなかった。
そのまま黒服Yさんは微笑み
そのまま黒服Yさんは微笑み
「よろしくね」
そう言って黒服Yさんが差し出した手を、占い師さんは取ろうとする。
――――その時だった
――――その時だった
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!
静寂を破るように、どこか遠くから響いた銃声。
同時に、人の怒号や、驚きの声、窓が割れる音。それらが、私たちの教室にまで響いてきた。
同時に、人の怒号や、驚きの声、窓が割れる音。それらが、私たちの教室にまで響いてきた。
「戦闘……?」
誰かがまた、マッドガッサー一味の誰かと戦い始めたのだろうか。
そう呟き、首をかしげる私に、占い師さんが呟いた。
そう呟き、首をかしげる私に、占い師さんが呟いた。
「……いや、違うみたいだな」
銃声のした方角の壁を見ている占い師さんの目。
その目には、壁ではない何かが映っていた。
その目には、壁ではない何かが映っていた。
「襲われてるのは13階段を含むマッドガッサー一味が2人に、さっき13階段を説得しに行った奴らと、Tさん達が数人……どうやら、完全に無差別らしいな」
「え? でもそれじゃ……誰が銃撃を仕掛けてきているんですか?」
「え? でもそれじゃ……誰が銃撃を仕掛けてきているんですか?」
マッドガッサー一味でもなく、私たちの味方でもない……じゃあ一体、誰が、何の目的で攻撃をしているんだろうか。
私の言葉に、占い師さんは目を細め、さらに遠くへと視界を伸ばしていく。
私の言葉に、占い師さんは目を細め、さらに遠くへと視界を伸ばしていく。
「ここからじゃ遠くて姿までは見えないが……銃撃をしているのは『モンスの天使』だな」
「…………モンスの天使?」
「モンスの天使って何だっけ、兄さん」
「第一次世界大戦中、英軍が敵に包囲され孤立した時にどこからか現れた弓兵達の事……だったか」
『そやけど、今のは弓やなくて銃だったんとちゃいますか?』
「契約者を得れば都市伝説の能力は飛躍的に進化する。元々の武器なんて何の縛りにもならないだろう」
「…………モンスの天使?」
「モンスの天使って何だっけ、兄さん」
「第一次世界大戦中、英軍が敵に包囲され孤立した時にどこからか現れた弓兵達の事……だったか」
『そやけど、今のは弓やなくて銃だったんとちゃいますか?』
「契約者を得れば都市伝説の能力は飛躍的に進化する。元々の武器なんて何の縛りにもならないだろう」
議論を始めた不良教師さん達をよそに、占い師さんはじっと戦況を見ている。
「狙われているのは恐らく黒服Hと13階段、加えて13階段の背には『H-96』の焼印、か……おい、組織の黒服」
「どうしたの?」
「『組織』に『モンスの天使』の契約者はいるのか?」
「うーん……僕も一応『組織』の黒服なんだけど、『組織』も一枚岩じゃないんだよね。どんな都市伝説の契約者が所属しているのかは僕にもわからないよ」
「……そう、か」
「ごめんね、役に立てなくて」
「いや、構わない」
「どうしたの?」
「『組織』に『モンスの天使』の契約者はいるのか?」
「うーん……僕も一応『組織』の黒服なんだけど、『組織』も一枚岩じゃないんだよね。どんな都市伝説の契約者が所属しているのかは僕にもわからないよ」
「……そう、か」
「ごめんね、役に立てなくて」
「いや、構わない」
手を軽く振って黒服Yさんに答え、占い師さんは視線を壁から外した。
そのまま振り返り、周囲を見渡す。
そのまま振り返り、周囲を見渡す。
「さて……俺たちも13階段の説得班に合流するか」
周囲の視線がある程度集まったのを見て、占い師さんが言った。
その言葉に、白骨標本さんが反応する。
その言葉に、白骨標本さんが反応する。
『ですが先程、あの黒服さんに『大勢で行くと身構えられる』と言われてましたが……」
「その黒服Hも13階段も銃撃を受けている以上、今は例外だろう」
「その黒服Hも13階段も銃撃を受けている以上、今は例外だろう」
そう言って、大将へと視線を移す。
「恐らく廊下にも大量のゴ(ピー)がいると思うが、大将の能力で操れるか?」
「なーに、さっき不良教師の兄ちゃんに色々と教えてもらったからよ、もうゴ(ピー)でも何でもどんど来い、ってもんだ」
「なーに、さっき不良教師の兄ちゃんに色々と教えてもらったからよ、もうゴ(ピー)でも何でもどんど来い、ってもんだ」
笑う大将を見て、占い師さんは頷き
「それで、どうする? ここで待つのも一手だとは思うが、誰か待っていたい奴はいるか?」
その質問に、手を上げる人はいなかった。
それを見て、小さく占い師さんがほほ笑む。
それを見て、小さく占い師さんがほほ笑む。
「じゃ、行くか」
言葉と共に、皆が動き始めた。
時計を見ると、今の時刻は22時54分。
時計を見ると、今の時刻は22時54分。
(多分、あの人たちなら大丈夫だと思うんだけど……)
一抹の不安を持ちながら、私は占い師さん達と一緒に教室を後にした。