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〝其れは狂い嗤う鮮血の美酒〟

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惑いて惑う、其れは光。
狂いて狂う、其れは闇。

ひとつの刃で現を断てば。
ふたつの盃の出来上がり。

ずるり、すすり。
今宵の美酒は愛しい甘さ。

ひたり、つつつ。
凍える血肉に祝杯を。

紅は全ての歎きを乗せて。
――……ふわり、ふらりと嗤うのだ。



†其れは狂い嗤う鮮血の美酒――Bloody Mary


夜。其れは〝大人の時間〟だ。
大凡の家庭では、子供はとっくに夢の中に居る頃だろう。
そして大人は、緩やかな時間を、お気に入りの酒と共に。
そうして閑雅な時間は巡り、心の弛みは朝を気だるく受け入れる。

――だがこの街では、全てが違っている。

「……さ、今日はどうしよっかな?」
「人が此処に来れば……だけど。」

一人ごちる少女の表情は、暗くもなく明るくもなく。
ただ手慰みに抛り続ける空き缶を、目で追うだけの表情の変化。
暗がりの中、月光に濡れて光る銀髪は、少女を夜から切り離したかのようで。
――其の全てが、少女を精巧な人形のように感じさせる。

『この街の何処かに車を止めると、〝血塗れ女〟を見る羽目になる』――――。
〝血塗れ女<ブラッディ・マリー>〟……其れが、少女の名だった。

「……。……、来たようね。」

ぴたり、手を止めて。
一つ笑うと――少女は、立ち上がる。

狩りの時間は花火のよう。
激しく爆ぜて、虚しく消える。
ならば精々――酔おうじゃないか。

―――――――――――――……。

この街は、一本のメインストリートを中心として、周囲に細く入り組んだ路地裏が広がっている。
ただ街を出たいだけなら、真っ直ぐ真っ直ぐ進めば良い。
簡単に言えば……入り口と出口は、同じメインストリートで繋がっているのだ。だから、迷うはずも無い。
だがあえて冒険しようとすると――間違いなく深みに嵌ってしまう。裏路地でちょっと気を抜けば、迷子は確実。
そんなこんなでこの街は、「かくれんぼ」にはもってこいなのである。

昔からの遊び、かくれんぼ。
其れは、子供の笑い声と共に伝わって。
昔からの遊び、かくれんぼ。
其れは、劈く様な銃声と共に廃れて。
昔からの遊び、かくれんぼ。
今は――……。

……そんなこんなでこの街は、今も昔も閑散としているようで、人が居ない訳では無いのだ。


――この街には、一つの話が伝わっている。
『この街の何処かに車を止めると、〝血塗れ女〟を見る羽目になる』……という物。
だが、其れ以外は一切明らかにされていないのである。
……だからこそ、この眉唾物の話は〝都市伝説〟たりえているのだが。
そして、其の恐怖が如何ほどか――伝説は真実か――〝血塗れ女〟とは何奴か――知りたがる者や、何も知らない者は、此処に車を止めるのだ。


そう――〝あえて冒険しようとすると、間違いなく深みに嵌ってしまう〟のに。

―――――――――――――……。


今宵の獲物は、黒い車に乗った男だ。
夜は暗い。身を隠すのは簡単だが、此方から相手を見る事も工夫無しでは等しく難しい。
だから、この拾い物――という名の戦利品――の暗視スコープは、十二分に役に立つ。
表情や動作から察するに――〝伝説を信じていない、存在しない事を照明しようとする〟タイプの奴らしい。
……つまりだ。こうやって、手榴弾か何かで脅かしてやれば――、そう、簡単に驚いて、車を飛び出す。
当たり前だ。ある筈の無い一撃が、降って湧いたように出てきたのだから。

「どう、驚いた?〝血塗れ女<ワタシ>〟なんて居ないと思ってたでしょ。――ネエ、チガウ?」
『ひ、や――やめろ!近付くな!』

滑稽な台詞を吐く男へ、くすりと嗤って。近くにあった……間違い、近くに置いておいた缶を男に向かって蹴り飛ばす。
焦って乱射される拳銃。でもちっとも怖くない。慣れっこだし――缶にも私にも当たる訳が無いもの。

お返しとばかりに、指で拳銃の形を作って――〝撃つ〟と、缶は思い切り爆発した。
勢いで弾かれる銃。唖然とする男の身体に、鉄片は刺さり、斬り、裂く。
しゃがみ込み、悶絶する男。……上手い具合に足を潰す事が出来たようだ。
だったら――口惜しいが、狩りの時間は此処まで。

「――私の名前は〝マリー〟……今夜の酒は、其れなりね。」
『……や、めろ!来るな!来るなァァァア!!』

ナイフを取り出し、掲げて、月の光を孕ませて。

「じゃ、またね。」
『――――ッッ!!』

振り下ろそうとした――其の時。

お腹に、鋭い感覚。

『……あ、おぉ!?』
「――!?」

……まさか真逆マサカ。〝奴が隠し持っていたナイフで、腹に一撃を貰って〟――?
ある訳のない、降って湧いた一撃だった。

「あ、はは……。」

はは。
痛い。

『……ケ、ケッ!化け物みてーな力を持ってても、所詮はチビ助か!ヒャ、ハハ、ハハハハハハッッ!!』

痛い。イタイ。イタイイタイイタイ。
イタイいたいイタイいたい――イタイ!!

「……あ、ハハは、あははははハハ!きゃははは!!」

嗚呼如何しよう――笑いが止まらないよ。つまらない、痛い、面白い、キモチイイ、最悪で最高だ。
だから。奴を殺す。
至極簡単だ。〝二度と血塗れ女をナメないように、これ以上無い位グロテスクに殺してしまえ〟!!

『ケケケッ――死ね!!』
「キャハ――ッッ」

ぞぷり。私に向けて振り下ろされるナイフは、〝形を変えて、男へと伸びて〟――。

『――……!?』

ずどん。訳の分からない表情をしている男は、其の表情さえ残す事は叶わないまま、〝内から、爆ぜた〟――――……。

「―――――ハァ、ッ、……!!」

脳内麻薬という物は厄介で、切れた瞬間ダメージが一気に転がり込んでくる。
無論、私もご多分に漏れず。……痛い、気持ち悪い、間違いなく最悪だ。
……でも。コレで、〝血塗れ女〟の面目は保たれたのではなかろうか。
そう、其れなら良い。
――自分にとって命よりも大事な〝コレ〟を守れたのなら、痛みなど物の数じゃあ、無い。


血肉を一口、口に含む。
……不味い。もう一杯。

狩りの時間は花火の様。
……何かがあれば、火の粉が降りかかる事だって、充分に有り得る。


路地裏から振られる手に笑顔で応え、私は暫しの安息の為――塒へと帰る事にした。


夜。其れは〝大人の時間〟だ。
大凡の大人は、子供の狂気の為に安息を奪われ。
子供は現を制して嗤い、酒を煽る。
そうして酔狂な時間は巡り、朝への怯えを暫し忘れる。

――この街では、全てが違っている。

†其れは狂い嗤う鮮血の美酒――Bloody Mary†
――To be continued

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