○月×日 22:55 二階視聴覚室横階段前
…突然現れたモフモフの生物と、中年の男性
不確定要素を前に、黒服Hは小さく舌打ちした
……だが、こちらはもう、切り札の一つを使おうとしているところだ
今更、退ける訳もない
不確定要素を前に、黒服Hは小さく舌打ちした
……だが、こちらはもう、切り札の一つを使おうとしているところだ
今更、退ける訳もない
『コードを』
携帯電話の向こう側から、機械的な声が響く
途絶える事のない銃撃音にかき消されぬよう、半ば叫ぶように黒服Hはそれに答える
途絶える事のない銃撃音にかき消されぬよう、半ば叫ぶように黒服Hはそれに答える
「『アルチメータム』、『サーチ』、『オーガン』、『エイト』、『ゼロ』、『ゼロ』!!」
音声でコードを入力し、数秒
……繋がった!!
……繋がった!!
『お前か。一体どうし………なんじゃ!?その銃撃音は!?』
聞こえてきた声は、幼い少女のものだ
ちらり、窓の向こうから迫ってくるモンスの天使達を睨みつけながら、黒服Hは電話に出た主に答える
ちらり、窓の向こうから迫ってくるモンスの天使達を睨みつけながら、黒服Hは電話に出た主に答える
「察してくれ!お嬢さん、モンスの天使の契約者をちょっと黙らせてくれ!」
『モンスの天使の?あやつは確か派手に暴れすぎて謹慎中……さては、また無断に出撃しよったか……仕方ない、少し待っておれ』
『モンスの天使の?あやつは確か派手に暴れすぎて謹慎中……さては、また無断に出撃しよったか……仕方ない、少し待っておれ』
○月×日 22:56 中央高校より500㎞先 建設途中のマンション屋上
「っち……結界系の都市伝説がいたのか」
まぁ、いい
自分が契約しているモンスの天使達の火力を持ってすれば、あと数分もすれば突破できる
そもそも、接近すれば機関銃だけではなく、手榴弾なりなんなり、他の攻撃手段もあるのだ
……なんだったら、今の距離からでも、ロケットランチャーを撃たせようか?
彼は、遠くの己の契約している都市伝説に対し、指示を出そうとしていた
自分が契約しているモンスの天使達の火力を持ってすれば、あと数分もすれば突破できる
そもそも、接近すれば機関銃だけではなく、手榴弾なりなんなり、他の攻撃手段もあるのだ
……なんだったら、今の距離からでも、ロケットランチャーを撃たせようか?
彼は、遠くの己の契約している都市伝説に対し、指示を出そうとしていた
…彼は、モンスの天使の契約者は、決して頭が悪い訳ではない
通っていた学校の成績などは、むしろ上から数えた方が早かった方だ
…しかし、何分、彼は自分の契約している都市伝説の能力を過信しすぎていた
そして、世の中…「頭がいいが頭が悪い」などと呼ばれる人間は、確かに存在して…このモンスの天使の契約者は、それに該当する人間だった
通っていた学校の成績などは、むしろ上から数えた方が早かった方だ
…しかし、何分、彼は自分の契約している都市伝説の能力を過信しすぎていた
そして、世の中…「頭がいいが頭が悪い」などと呼ばれる人間は、確かに存在して…このモンスの天使の契約者は、それに該当する人間だった
彼は、思っても見なかった
自分の元に、襲撃者が来るなどと
自分の元に、襲撃者が来るなどと
「---全く。困った坊やじゃ」
背後から、聞こえてきた声に
彼は、はっと振り返った
そこにいた……少女の姿に、血の気が引く
彼は、はっと振り返った
そこにいた……少女の姿に、血の気が引く
「な………何故、ここにあんたが……っ」
「可愛い部下の頼みでな………少し、眠っていてもらう」
「可愛い部下の頼みでな………少し、眠っていてもらう」
にぃ、と
少女は、笑みを浮かべて
次の瞬間……モンスの天使の懐に、少女はもぐりこんできていた
残酷な笑みを浮かべるその口元から…鋭い牙が、顔を覗かせたのを
モンスの天使の契約者は、確かに、見てしまった
少女は、笑みを浮かべて
次の瞬間……モンスの天使の懐に、少女はもぐりこんできていた
残酷な笑みを浮かべるその口元から…鋭い牙が、顔を覗かせたのを
モンスの天使の契約者は、確かに、見てしまった
○月×日 22:57 二階視聴覚室横階段前
モンスの天使達が、すぐ傍まで接近していてきる
銃を構えた前衛の天使達の後ろから…手榴弾を構えた天使達が姿を現しだす
銃を構えた前衛の天使達の後ろから…手榴弾を構えた天使達が姿を現しだす
だが、ここまで接近されれば、そろそろこちらからも攻撃できる
間に合わなかったら、自分も少しは戦わなければなるまい
黒服Hが、そんな覚悟を決めようとした時
間に合わなかったら、自分も少しは戦わなければなるまい
黒服Hが、そんな覚悟を決めようとした時
ぴたり
銃撃が……止んだ
銃撃が……止んだ
「……へ?」
人肉料理店の契約者が、きょとんとした声をあげる
…モンスの天使達が、動きを止めていて
途端に、わたわたしだす
…モンスの天使達が、動きを止めていて
途端に、わたわたしだす
「っご、ご主人様!?」
「ご主人様がピンチ!?危ない!?」
「戻らなきゃ、戻らなきゃ!!」
「ご主人様がピンチ!?危ない!?」
「戻らなきゃ、戻らなきゃ!!」
きゃあきゃあきゃあ!
騒がしく、モンスの天使達が慌ててUターンしていく
その、膝上ミニスカートの中身が見られる事など全く気にせず、背後から攻撃される可能性すら気にすることなく
モンスの天使達は、中央高校から離れていった
騒がしく、モンスの天使達が慌ててUターンしていく
その、膝上ミニスカートの中身が見られる事など全く気にせず、背後から攻撃される可能性すら気にすることなく
モンスの天使達は、中央高校から離れていった
「何だぁ…?」
「何とかなったのでしょうか…」
「何とかなったのでしょうか…」
…やれやれ、間に合ったか
周囲の声を聞きつつ、黒服Hは体の力を抜いた
…携帯に、着信が入る
周囲の声を聞きつつ、黒服Hは体の力を抜いた
…携帯に、着信が入る
「はいよ」
『不味い』
『不味い』
…何だ、開口一番
『こやつ、不味いぞ。不健康な生活でも送っとるのか』
「俺が知るかよ」
『不味い物を飲ませた詫びとして、今度、妾をケーキ屋に連れ出す事を要求する』
「俺の権限であんたを仕事以外で外に出すとか無理だろうがよ…」
「俺が知るかよ」
『不味い物を飲ませた詫びとして、今度、妾をケーキ屋に連れ出す事を要求する』
「俺の権限であんたを仕事以外で外に出すとか無理だろうがよ…」
まったく
この上司は、いつも無茶を言ってくれる
まぁ、こちらとしてもある程度の無茶を聞いてもらっているのだから、文句を言うつもりはないが
この上司は、いつも無茶を言ってくれる
まぁ、こちらとしてもある程度の無茶を聞いてもらっているのだから、文句を言うつもりはないが
「…助かった。今度、甘い物でも持って行ってやる」
『ふむ、まぁ良い……ところで、H-360よ。確か、お前、消息不明状態だったのでは』
「あー、そこら辺は後だ。後。この騒ぎが終わったらかけなおす」
『ふむ、まぁ良い……ところで、H-360よ。確か、お前、消息不明状態だったのでは』
「あー、そこら辺は後だ。後。この騒ぎが終わったらかけなおす」
そう言って、通話を打ち切った
ついでに、電源も切っておく
……後で煩そうだが、仕方ない
ついでに、電源も切っておく
……後で煩そうだが、仕方ない
「…あいつが少し怪我した以外は全員無事、か」
ちらり、黒服Hは「13階段」に視線をやった
…服の背中部分が派手に裂けてしまっているが、たいした怪我ではなさそうだ
…服の背中部分が派手に裂けてしまっているが、たいした怪我ではなさそうだ
だが
そのせいで…その背中に刻印されたナンバーが、見えてしまっている
そのせいで…その背中に刻印されたナンバーが、見えてしまっている
『H-96』
その忌々しい数字が…この場にいる全員の前に、さらしだされてしまっていた
「…相変わらず、一枚板じゃねぇんだな、「組織」は」
「13階段」が、忌々しげにそう、黒服Hに言ってきた
黒服Hは、肩をすくめて見せる
黒服Hは、肩をすくめて見せる
「それは、お前さんもわかりきってるだろ?…まぁ、モンスの天使の襲撃に関しては上が絡んでない、あいつの独断のようだから勘弁してくれや」
「………」
「………」
油断なく、黒服Hを睨みつけてきている「13階段」だったが…一応は、信用してくれたようである
だが、一同に対する警戒は解く様子はない
「爆発する携帯電話」を護るように、その前からどこうとしない
だが、一同に対する警戒は解く様子はない
「爆発する携帯電話」を護るように、その前からどこうとしない
「…つ、や…」
「……大丈夫だ、お前に手は出させない」
「……大丈夫だ、お前に手は出させない」
…あぁ、やっぱり、仲間には名前を教えていたか
さてと……自分は、どうしようか?
周囲の出方を、黒服Hは窺おうとして
さてと……自分は、どうしようか?
周囲の出方を、黒服Hは窺おうとして
「……あぁ、そうだ、そこのあんた」
「…俺か?」
「…俺か?」
「13階段」が、Tさんに声をかけた
「…あんた、俺の背中のシリアルナンバーが何なのか、気にしたな?」
「む…」
「む…」
………?
まさか
話すつもりか?
まさか
話すつもりか?
「おい、お前……」
「……知りたいんなら、教えてやるよ」
「……知りたいんなら、教えてやるよ」
「13階段」が、暗く笑う
…あぁ、そうか
ナンバーが見られた以上、何かしらの拍子でバレる可能性はある
それならば、いっそ、自分の口から言ってしまうつもりか
…あぁ、そうか
ナンバーが見られた以上、何かしらの拍子でバレる可能性はある
それならば、いっそ、自分の口から言ってしまうつもりか
「これは、「組織」の実験体のナンバーだ。俺は「組織」で色々と実験に使われたからな」
「実験……?」
「実験……?」
姫さんの顔に、嫌悪の色が浮かんだ
「13階段」への嫌悪ではなく…「組織」に対する、嫌悪が
「13階段」への嫌悪ではなく…「組織」に対する、嫌悪が
「あぁ、そうさ。訳のわからない薬飲まされたり注射させられたり、同僚同士殺し合わされたり色々殺させられたり…色々と、やらされたよ」
「………」
「………」
…ぎゅう、と
「爆発する携帯電話」が、「13階段」の服の裾を、しっかりと掴んでいる
不安そうに、じっと「13階段」を見詰めていた
「爆発する携帯電話」が、「13階段」の服の裾を、しっかりと掴んでいる
不安そうに、じっと「13階段」を見詰めていた
「他にもそう言う事をされてた連中はたくさんいたが…まぁ、「夢の国」の騒動の時にほとんど死んだからな。少なくとも、俺が受けていたような実験の生き残りは、俺だけだ」
「…っまさか、先ほどのモンスの天使の襲撃は…」
「口封じ、だね?その実験の真相を知っている、君の」
「…っまさか、先ほどのモンスの天使の襲撃は…」
「口封じ、だね?その実験の真相を知っている、君の」
妹ちゃんの言葉に、ト○ロの契約者が続けた
だろうな、と「13階段」は投げ槍に答える
まぁ、実際には、「組織」を裏切った分も含んでいるのだろうが
……どちらにせよ、モンスの天使の契約者の独断だった訳だが
だろうな、と「13階段」は投げ槍に答える
まぁ、実際には、「組織」を裏切った分も含んでいるのだろうが
……どちらにせよ、モンスの天使の契約者の独断だった訳だが
「…マッドガッサーの計画がうまくいきゃあ…世界中が、そうなれば。少なくとも俺はもう命を狙われずにすむし、俺のような目に合う奴もいなくなる……こいつだって」
ちらり、「13階段」が「爆発する携帯電話」に視線をやった
「爆発する携帯電話」は、それに小さく首をかしげ…しかし、「13階段」に向けている心配そうな視線は、そのままだ
「爆発する携帯電話」は、それに小さく首をかしげ…しかし、「13階段」に向けている心配そうな視線は、そのままだ
「だから、俺は「13階段」を解除するつもりはねぇ…お前達を、屋上には行かせない」
「…!…………ツヤ」
「…まったく、意地っ張りだな、お前さんも」
「…!…………ツヤ」
「…まったく、意地っ張りだな、お前さんも」
「13階段」の言葉に、「爆発する携帯電話」は慌てて、説得でもしようというのか声をかけ、黒服Hは苦笑する
…スロープ状にされている階段の下のほうから、足音が聞こえてくる
まだ、誰か合流しようとしている、か
…スロープ状にされている階段の下のほうから、足音が聞こえてくる
まだ、誰か合流しようとしている、か
…さて、どうなる?
正直、階段を使わずとも三階や屋上に行く手段は、なりふり構わなければ…ある
無理に説得する必要もないだろう
正直、階段を使わずとも三階や屋上に行く手段は、なりふり構わなければ…ある
無理に説得する必要もないだろう
だが
マッドガッサー達を殺すことなく、これ以上傷つけることなく、止めようというのなら
恐らく、「13階段」の………の説得も、必要不可欠なのかもしれなかった
マッドガッサー達を殺すことなく、これ以上傷つけることなく、止めようというのなら
恐らく、「13階段」の………の説得も、必要不可欠なのかもしれなかった
to be … ?