「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-30i

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○月×日 22:55 二階視聴覚室横階段前


 …突然現れたモフモフの生物と、中年の男性
 不確定要素を前に、黒服Hは小さく舌打ちした
 ……だが、こちらはもう、切り札の一つを使おうとしているところだ
 今更、退ける訳もない

『コードを』

 携帯電話の向こう側から、機械的な声が響く
 途絶える事のない銃撃音にかき消されぬよう、半ば叫ぶように黒服Hはそれに答える

「『アルチメータム』、『サーチ』、『オーガン』、『エイト』、『ゼロ』、『ゼロ』!!」

 音声でコードを入力し、数秒
 ……繋がった!!

『お前か。一体どうし………なんじゃ!?その銃撃音は!?』

 聞こえてきた声は、幼い少女のものだ
 ちらり、窓の向こうから迫ってくるモンスの天使達を睨みつけながら、黒服Hは電話に出た主に答える

「察してくれ!お嬢さん、モンスの天使の契約者をちょっと黙らせてくれ!」
『モンスの天使の?あやつは確か派手に暴れすぎて謹慎中……さては、また無断に出撃しよったか……仕方ない、少し待っておれ』

 ため息と共に、通話が切れた
 ……さて、これで切り札の一つ、見せて……いや、聞かせてやったぞ?
 黒服Hは、Tさんに視線をやって……ニヤリ、笑った


○月×日 22:56 中央高校より500㎞先 建設途中のマンション屋上


「っち……結界系の都市伝説がいたのか」

 まぁ、いい
 自分が契約しているモンスの天使達の火力を持ってすれば、あと数分もすれば突破できる
 そもそも、接近すれば機関銃だけではなく、手榴弾なりなんなり、他の攻撃手段もあるのだ
 ……なんだったら、今の距離からでも、ロケットランチャーを撃たせようか?
 彼は、遠くの己の契約している都市伝説に対し、指示を出そうとしていた

 …彼は、モンスの天使の契約者は、決して頭が悪い訳ではない
 通っていた学校の成績などは、むしろ上から数えた方が早かった方だ
 …しかし、何分、彼は自分の契約している都市伝説の能力を過信しすぎていた
 そして、世の中…「頭がいいが頭が悪い」などと呼ばれる人間は、確かに存在して…このモンスの天使の契約者は、それに該当する人間だった

 彼は、思っても見なかった
 自分の元に、襲撃者が来るなどと


「---全く。困った坊やじゃ」


 背後から、聞こえてきた声に
 彼は、はっと振り返った
 そこにいた……少女の姿に、血の気が引く

「な………何故、ここにあんたが……っ」
「可愛い部下の頼みでな………少し、眠っていてもらう」

 にぃ、と
 少女は、笑みを浮かべて
 次の瞬間……モンスの天使の懐に、少女はもぐりこんできていた
 残酷な笑みを浮かべるその口元から…鋭い牙が、顔を覗かせたのを
 モンスの天使の契約者は、確かに、見てしまった


○月×日 22:57 二階視聴覚室横階段前


 モンスの天使達が、すぐ傍まで接近していてきる
 銃を構えた前衛の天使達の後ろから…手榴弾を構えた天使達が姿を現しだす

 だが、ここまで接近されれば、そろそろこちらからも攻撃できる
 間に合わなかったら、自分も少しは戦わなければなるまい
 黒服Hが、そんな覚悟を決めようとした時

 ぴたり
 銃撃が……止んだ

「……へ?」

 人肉料理店の契約者が、きょとんとした声をあげる
 …モンスの天使達が、動きを止めていて
 途端に、わたわたしだす

「っご、ご主人様!?」
「ご主人様がピンチ!?危ない!?」
「戻らなきゃ、戻らなきゃ!!」

 きゃあきゃあきゃあ!
 騒がしく、モンスの天使達が慌ててUターンしていく
 その、膝上ミニスカートの中身が見られる事など全く気にせず、背後から攻撃される可能性すら気にすることなく
 モンスの天使達は、中央高校から離れていった

「何だぁ…?」
「何とかなったのでしょうか…」

 …やれやれ、間に合ったか
 周囲の声を聞きつつ、黒服Hは体の力を抜いた
 …携帯に、着信が入る

「はいよ」
『不味い』

 …何だ、開口一番

『こやつ、不味いぞ。不健康な生活でも送っとるのか』
「俺が知るかよ」
『不味い物を飲ませた詫びとして、今度、妾をケーキ屋に連れ出す事を要求する』
「俺の権限であんたを仕事以外で外に出すとか無理だろうがよ…」

 まったく
 この上司は、いつも無茶を言ってくれる
 まぁ、こちらとしてもある程度の無茶を聞いてもらっているのだから、文句を言うつもりはないが

「…助かった。今度、甘い物でも持って行ってやる」
『ふむ、まぁ良い……ところで、H-360よ。確か、お前、消息不明状態だったのでは』
「あー、そこら辺は後だ。後。この騒ぎが終わったらかけなおす」

 そう言って、通話を打ち切った
 ついでに、電源も切っておく
 ……後で煩そうだが、仕方ない

「…あいつが少し怪我した以外は全員無事、か」

 ちらり、黒服Hは「13階段」に視線をやった
 …服の背中部分が派手に裂けてしまっているが、たいした怪我ではなさそうだ

 だが
 そのせいで…その背中に刻印されたナンバーが、見えてしまっている

 『H-96』

 その忌々しい数字が…この場にいる全員の前に、さらしだされてしまっていた

「…相変わらず、一枚板じゃねぇんだな、「組織」は」

 「13階段」が、忌々しげにそう、黒服Hに言ってきた
 黒服Hは、肩をすくめて見せる

「それは、お前さんもわかりきってるだろ?…まぁ、モンスの天使の襲撃に関しては上が絡んでない、あいつの独断のようだから勘弁してくれや」
「………」

 油断なく、黒服Hを睨みつけてきている「13階段」だったが…一応は、信用してくれたようである
 だが、一同に対する警戒は解く様子はない
 「爆発する携帯電話」を護るように、その前からどこうとしない

「…つ、や…」
「……大丈夫だ、お前に手は出させない」

 …あぁ、やっぱり、仲間には名前を教えていたか
 さてと……自分は、どうしようか?
 周囲の出方を、黒服Hは窺おうとして

「……あぁ、そうだ、そこのあんた」
「…俺か?」

 「13階段」が、Tさんに声をかけた

「…あんた、俺の背中のシリアルナンバーが何なのか、気にしたな?」
「む…」

 ………?
 まさか
 話すつもりか?

「おい、お前……」
「……知りたいんなら、教えてやるよ」

 「13階段」が、暗く笑う
 …あぁ、そうか
 ナンバーが見られた以上、何かしらの拍子でバレる可能性はある
 それならば、いっそ、自分の口から言ってしまうつもりか

「これは、「組織」の実験体のナンバーだ。俺は「組織」で色々と実験に使われたからな」
「実験……?」

 姫さんの顔に、嫌悪の色が浮かんだ
 「13階段」への嫌悪ではなく…「組織」に対する、嫌悪が

「あぁ、そうさ。訳のわからない薬飲まされたり注射させられたり、同僚同士殺し合わされたり色々殺させられたり…色々と、やらされたよ」
「………」

 …ぎゅう、と
 「爆発する携帯電話」が、「13階段」の服の裾を、しっかりと掴んでいる
 不安そうに、じっと「13階段」を見詰めていた

「他にもそう言う事をされてた連中はたくさんいたが…まぁ、「夢の国」の騒動の時にほとんど死んだからな。少なくとも、俺が受けていたような実験の生き残りは、俺だけだ」
「…っまさか、先ほどのモンスの天使の襲撃は…」
「口封じ、だね?その実験の真相を知っている、君の」

 妹ちゃんの言葉に、ト○ロの契約者が続けた
 だろうな、と「13階段」は投げ槍に答える
 まぁ、実際には、「組織」を裏切った分も含んでいるのだろうが
 ……どちらにせよ、モンスの天使の契約者の独断だった訳だが

「…マッドガッサーの計画がうまくいきゃあ…世界中が、そうなれば。少なくとも俺はもう命を狙われずにすむし、俺のような目に合う奴もいなくなる……こいつだって」

 ちらり、「13階段」が「爆発する携帯電話」に視線をやった
 「爆発する携帯電話」は、それに小さく首をかしげ…しかし、「13階段」に向けている心配そうな視線は、そのままだ

「だから、俺は「13階段」を解除するつもりはねぇ…お前達を、屋上には行かせない」
「…!…………ツヤ」
「…まったく、意地っ張りだな、お前さんも」

 「13階段」の言葉に、「爆発する携帯電話」は慌てて、説得でもしようというのか声をかけ、黒服Hは苦笑する
 …スロープ状にされている階段の下のほうから、足音が聞こえてくる
 まだ、誰か合流しようとしている、か


 …さて、どうなる?
 正直、階段を使わずとも三階や屋上に行く手段は、なりふり構わなければ…ある
 無理に説得する必要もないだろう


 だが
 マッドガッサー達を殺すことなく、これ以上傷つけることなく、止めようというのなら
 恐らく、「13階段」の………の説得も、必要不可欠なのかもしれなかった




to be … ?





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