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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ビター・スウィート・ビターポイズン-05

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だれでも歓迎! 編集
 毒にも、ランクと言うものが存在する
 毒の強さは千差万別、殺し方も千差万別
 そんな中でも、誰もが最強の、最悪の毒として思い浮かべるのは、やはり「カンタレラ」だろうか

 カンタレラ…その毒の名前の由来は諸説あるが、ラテン語で「小さな杯」を意味する「カンタリス」からきているらしい
 ルネッサンス期の名家 ボルジア家の人間が活用した毒だ
 「ルネッサンス期の悪の華」とまで言われたそいつがカンタレラを使った事により、数え切れないほどの人間の命が奪われたと言われている
 形状は雪のように白く、味のいい粉末とされている
 主な症状は急激な倦怠感、肌荒れ、呼吸困難に悪寒
 服用量を加減する事により、その死期すら調整できたと言われている
 使用者すらも、一度手違いにより命を落としかけたほどの、最悪の毒……それが、「カンタレラ」だ

 何故、突然こんな話をしたかと言うと、俺自身が最近「カンタレラ」と遭遇したからだ
 いや、「カンタレラ」と契約した人間と、というわけではない
 そいつは、ビター・ポイズンだ
 俺が狩るべき、忌むべき相手
 だが、俺はそいつに逃げられてしまった
 その結果、一時的にそいつに名付けた「カンタレラ」と言う名称は、俺の中でそいつ自身を指す名前となっている

 そう、「カンタレラ」
 あのビター・ポイズンを言い表すには、それが一番適しているだろう
 自分自身を猛毒であると自覚しながら、猛毒である事をやめようとしない
 あの強い意志は、スウィート・ポイズンに侵されないビター・ポイズンらしいだろう
 自分は正しいとも思っておらず、だからと言って、間違っているとも思っていない
 ビター・ポイズンとして飛び切り変り種で、同時に最悪最強
 そんなビター・ポイズンと、俺は久々に帰ってきたこの街で出会ったのだ
 あの夜、カンタレラと遭遇できた事を、俺は幸運に思っている
 なぜならば、俺がまだまだ力不足で修行不足である事を、カンタレラは自覚させてくれたからだ
 だからこそ、俺はまだまだ、強くならなければならない
 世界中のビター・ポイズンを、一人残らず狩り続けるという、その目的のために



「歌え踊れや鳥たちよ 祝福の歌を囀れ 彼の者が生まれ出るその日を祝え」

 夜、人通りの少ない道を、祐樹は一人、即興の詩を口ずさみながら歩いていた
 夜の散歩は、彼の日課のようなものだ
 夕方から夜、そして夜は、都市伝説が出現しやすい時間帯だ
 …それ即ち、彼が言う所の「ビター・ポイズン」もまた、現れやすいと言う事
 だから、彼は街を歩く
 ビター・ポイズンを探す為に
 ビター・ポイズンを狩るために

「誰もが気づかぬその瞬間を 気づくが故に歌うのだ 世界の産声伝えしは その鳥たちの役目なり……」

 ……ピィィィィ……
 かすかに聞こえてきた、笛の音
 祐樹は、一瞬、脚を止めて…
 ……しかし、そのまま歩き出す

「……笛の音合わせて踊りしは 小さき群れの道化達 道化は笛に操られ 己を忘れて踊り狂い…」

 …気配が
 ゆっくりと、近づいてくる
 その気配は隠れもせずに、祐樹の前に現れた
 20代と思われる青年と、少女
 祐樹は足を止めて、その二人を見詰めた

「…笛の音。噂に聞くハーメルンの笛吹き、か?」
「ほぅ?…随分と有名になれたものだ」

 うんうん
 青年が、何やら満足げに頷いている
 …ハーメルンの笛吹き男
 その話を、祐樹は彼が言う所のスウィート・ポイズンから聞いていた
 久々に顔を合わせた後、あの黒服は改めて祐樹とククージィの前に姿を現し、今現在学校町に存在する危険とされる都市伝説の事を、色々と教えてくれたのだ
 ……ついでに、祐樹が学校に通っていない事についても色々と言われたのはさておき
 だからこそ、祐樹はハーメルンの笛ふきを知っていたし、いつか、戦わなければ行けないと感じていた
 黒服の話を聞いた限り、このハーメルンの笛吹きは…

「…その笛で子供を操り、連れ去り、殺すのか」

 少女が持つ笛に視線をやって、祐樹は呟く
 そうさ、と青年が笑った

「こんな夜中に街を出歩く悪い子にお仕置きを、な」

 死ぬ程のお仕置きはお仕置きではない
 少なくとも祐樹はそう思うのだが、ハーメルンの笛吹きは違うようである

 …あぁ、やはりそうだったのか、と
 祐樹は一人、納得した

「そうか、やはり、お前は………ビター・ポイズンだな」

 ハーメルンの笛吹きと、ハーメルンの笛吹き男を睨みつけ……祐樹は、そう二人に言い放った

「はん、良薬口に苦しって言うだろう?」

 祐樹の言葉に、少女の方はきょとん、としていたが…青年の方は、そう言い返してきた

 良薬?
 どの口が、それを言うのだ
 祐樹は最大級の警戒を抱えたまま、続ける

「良薬?……いいや、違う。ビター・ポイズンは薬とか、そんな優しい存在じゃない」

 そう、ビター・ポイズンは薬にはならない
 ビター・ポイズンの効能はただ一つ
 …人を殺すこと、ただそれだけなのだから

「スウィート・ポイズンに侵されない唯一の存在。人を殺す毒そのもの。それがビター・ポイズン。お前のような奴の事だ」

 そう、だから
 俺は、このビター・ポイズンを狩らなければならない
 ビター・ポイズンを生かしていては、いつか、スウィート・ポイズンの身に危険が及ぶ
 ビター・ポイズンを狩る事は、スウィート・ポイズンを護る事に繋がるのだ
 だから、ビター・ポイズンを見逃すわけにはいかない

 祐樹の言葉に、少女はますます、きょとんとして
 …しかし、青年は笑って、告げてくる

「ほほぅ?…それじゃあ、お前はなんだ?お前は毒じゃあないのか?」
「…俺は」

 自分は…スウィート・ポイズンの中毒になりかかり、ビター・ポイズンを狩る為に、それに接触し続けている、自分は…

「…あぁ、そうだな。俺も毒かもしれないな。スウィート・ポイズンの中毒になりかけているスウィート・ポイズン・ホリック。俺にはスウィート・ポイズンの成分が混ざりかけている。 だが、同時に、俺はビター・ポイズンを狩る為にそれに接触し続けているから…きっと、ビター・ポイズンの成分も、混じりかけているだろうからな」

 それくらいは、自覚している
 だが、自分はビター・ポイズンに侵されたりしない
 自分はビター・ポイズンにはならない
 自分の中のスウィート・ポイズン中毒の部分が、ビター・ポイズンになる事を阻止している
 祐樹はそう、信じて疑っていない
 自分のしている事が何一つ間違っておらず、自分だけができる事をしている
 そう、信じきっているから

「…面白い、じゃあ俺というカンタレラを以て貴様という毒をせいしてやろう!」
「…カンタレラ、か。いいだろう、ビター・ポイズン…俺はお前を「カンタレラ」と呼ぼう。カンタレラ、スウィート・ポイズンが望む世界に、お前のようなビター・ポイズンはいらない…死んでもらうぞ」
「良かろう、懸かってこい!毒二つ、どちらか消えたところで悲しむ者などいはしない!」

 祐樹の言葉に、青年は笑って懐から銃を取り出した
 日本は安全と水はタダ同然の国のはずだったのだが、この街では少々違うようだ
 ……いや、これでもまだ、日本は安全も水もタダ同然だ、と考える
 銃を突きつける事が最大のコミュニケーションの国と比べれば、ずっといい

 撃ちだされる銃弾を、脇道に入り込むことで避けた
 祐樹は、武器らしい武器は所持していない
 ナイフなら念のための護身用で持ってきてはいるが、銃を使う相手を前に、ナイフでは分が悪い
 …マジメにナイフ投げの鍛錬でも積むべきだったか、少し後悔する
 とにかく、相手の隙を見つける為にも時間を稼ごう、そう考えて

 ピィィィィィィィッィィィ

 聞こえてきた、笛の音

 ちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅう

 暗闇の中、無数の目が………光った

「…っ鼠か!」

 ちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅう

 灰色の群れが、一斉に、祐樹に群がろうとして

「…なるほど、ハーメルンの笛吹きは鼠を操るんじゃったな」

 頭上から聞こえてきた、声
 どこからともなく現れた、もう一つの灰色の群れが……祐樹に襲いかかろうとしていた鼠の群れを、飲み込んだ

「わしも、そう言う事ができるんじゃよ」

 ばさり
 空から、蝙蝠の群れが姿を現した
 それは、祐樹の頭上を通り抜け、ハーメルンの笛吹きに襲い掛かる

 銃を構えた青年は、慌てる事なくその群れを睨みつけ……
 …群れの中の、一番大きな蝙蝠に向かって、発砲した

 ばさり
 小さな蝙蝠が、大きな蝙蝠を庇うように、その銃弾を身に受ける

「----ほぅ!」

 ばさばさばさばさばさ
 蝙蝠たちが、一箇所に集まって……それは、一人の異国人の老人に、姿を変えた

「すぐに本体を見抜いたか。さすがじゃのぅ」
「蝙蝠に変身した辺りを見るに、吸血鬼か?」
「まぁ、そう言う事じゃ」

 契約者である祐樹の危険を感じ取り、即座に駆けつけたのだろう
 祐樹が入り込んだ路地の前に立ち、ククージィは笑う
 …祐樹に襲い掛かろうとしていた鼠達は、ククージィの操る鼠たちに、完全に飲み込まれてしまっていた

「…ククージィ、早く決めよう」
「わかっておる」

 ちゅうちゅうちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅう
 ククージィの操る鼠達が、ハーメルンの笛吹き達に襲い掛かる!

「メル!」
「っく、支配が………。…………!!マ、マスター、この鼠、近づいちゃ駄目です!」

 ピィィィィィィィィィィ
 少女が笛を吹き鳴らす
 新たに現れた鼠が、ククージィの操る鼠達とぶつかり合った
 …気づいたのか
 ククージィの操る鼠に、ククージィが与えた能力に

「…物騒なことをするんですね。こんな鼠が解き放たれたら、マスターがやってる事より外道ですよ?」
「ほっほっほ。なぁに、鼠達に与えたそれは一時的なものじゃよ。お前さんたちだけがペストにかかってくれれば、わしもわしの契約者も満足じゃからのう」

 ククージィは、世界中に病をばら撒く
 コレラ、ペスト、チフスなど
 …ペストをばら撒くのは鼠だ
 だから、ククージィは鼠を操れるし…その鼠に、ペストを預ける事ができる

「…そう言う訳だ、カンタレラ。大人しく死んでくれ」
「それはこっちのセリフだ。あまり時間を食いたくなんだ、抵抗しない方が楽に死ねるぞ?」
「……死ぬ訳にはいかない。スウィート・ポイズンが望む世界を作る手伝いは…終わっていないんだ」

 ちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅうちゅう
 しばし、鼠同士が争う声が周囲を支配する

 …沈黙を打ち破ったのは、銃声
 青年が、祐樹に向かって銃を撃ち放つ
 祐樹はすぐに路地裏に逃げ込んだが…その祐樹の目の前に
 青年の傍らにいたはずの少女の姿があった

「-----っ!?」
「ちょろちょろ逃げ回らないでください」

 じゃきり
 向けられた銃口
 ---避けきれない!?

「っの!」
「きゃっ!?」

 懐に仕舞いこんでいたナイフを取りだし、投げつけた
 だが、一瞬、間に合わず
 ナイフを投げつけられた事により、少女が向けた銃の狙いは、当初の目的を外れて……祐樹の右肩に、命中した

「ぐ…っ」
「…ビックリさせないでくださいよ」

 改めて、少女が祐樹に銃を向ける
 痛みで、利き腕である右腕が上がらない
 今度こそ、避けきれない

 ----ばさり
 羽音と共に、祐樹の体が持ち上がる

「--ククージィ!」
「ふむ、なるほど…ハーメルンの笛吹きの正体は悪魔、ゆえにそれはレギオン…一人ではないのか」

 ばさり
 祐樹の体は蝙蝠の翼を生やしたククージィによって持ち上げられていた
 地上にいるハーメルンの笛吹きの姿が、どんどん小さくなっていく
 …少女の姿が二人、いる事に気づき、祐樹は舌打ちした
 てっきり、転移系能力で目の前に移動してきたと思っていたら…違ったのか

「ククージィ!カンタレラを見逃すわけには…」
「見逃すのではない、一時撤退じゃ。あれは、しっかりと対策を考えんと勝てん」

 ククージィのその言葉に、祐樹は苦虫を噛み潰したような表情浮かべた
 …撤退?
 違う、そうじゃない
 自分達は、今、逃げようとしているのだ
 ハーメルンの笛吹きというビター・ポイズン…カンタレラから
 勝てぬからと、逃げようとしている

「--逃げるのか!?少年!」

 ハーメルンの笛吹きが、挑発するように言ってくる
 祐樹は、ギロリ、ハーメルンの笛拭きを睨みつけた

「…撤退、だ。逃げるんじゃない」

 自分に、そう言い聞かせる
 わかってしまったからだ
 今の自分では勝てぬ、と
 自分も強くならなければ、ハーメルンの笛吹きというカンタレラに勝つ事はできない

「…カンタレラ!次に会ったら…その時、お前がまだ「カンタレラ」であり続けるなら!その時は、改めて俺がお前を狩る!!」

 せめて、まるで負け惜しみのようなセリフを言い放って
 祐樹はそのまま、ククージィに抱えられて夜空へと姿を消していった





 …撤退、逃亡
 あんな経験は、初めてだった
 今まで、ビター・ポイズン相手に撤退に追い込まれた事はない
 大体が、ククージィがいれば打ち勝てた相手だった

 だが
 ハーメルンの笛吹きというカンタレラだけは、違った 
 あれは、ククージィの力だけでは勝てない
 自分も強くならなければならない
 俺は、そう自覚させられたのだ

 だから、俺はその点についてだけ、カンタレラに感謝をしている
 故に…今度、遭遇した時、あいつがまだ「カンタレラ」であり続けるならば
 俺は、全力を持って、あいつを狩らなければならないのだ






to be … ?












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