誰か教えてください
何故、こうなってしまったのか
何故、こうなってしまったのか
誰か教えてください
何故、こんな事が起きてしまったのか
何故、こんな事が起きてしまったのか
誰か、教えてください
どうすれば、この悲劇を止められますか?
どうすれば、この悲劇を止められますか?
Red Cape
泣き声が聞こえたような気がした
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん、と、それは蟲の羽音にかき消されているような
しかし、どこか、聞こえてくるような…
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん、と、それは蟲の羽音にかき消されているような
しかし、どこか、聞こえてくるような…
「…っ花子さん!」
「う、うん!」
「う、うん!」
ごぽ、と
トイレから引っ張り出した水で、花子さんはそれを攻撃した
迫ってくる、黒い虫の塊
……蝿だ
やかましく音をたて、それはこちらを食らい尽くそうとしてくる
トイレから引っ張り出した水で、花子さんはそれを攻撃した
迫ってくる、黒い虫の塊
……蝿だ
やかましく音をたて、それはこちらを食らい尽くそうとしてくる
「…くそっ…」
あぁ、くそったれが
戦いにくい相手だ、と思う
少なくとも俺にとって、この手の都市伝説相手は苦手である
戦いにくい相手だ、と思う
少なくとも俺にとって、この手の都市伝説相手は苦手である
悲劇から生まれた都市伝説
ありそうで、しかし、実際にはなかった事件
しかし、ありそうだ、と思わせる悲劇
どこにも救いがない、どこまで悲しさしかない、嫌悪感すら感じさせる都市伝説
ありそうで、しかし、実際にはなかった事件
しかし、ありそうだ、と思わせる悲劇
どこにも救いがない、どこまで悲しさしかない、嫌悪感すら感じさせる都市伝説
乳飲み子を抱えた女がアパートに入居してきた
訳ありそうなその女、心配した管理人が色々と声をかけたが、ほとんど返事を返さない
会話を、避けているかのように
訳ありそうなその女、心配した管理人が色々と声をかけたが、ほとんど返事を返さない
会話を、避けているかのように
家賃の支払い時期になって
女は姿を現さない
数週間前から、姿すら現さなくなっていた
女は姿を現さない
数週間前から、姿すら現さなくなっていた
管理人はベルを鳴らす
何度も
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
何度慣らしても応答はない
何度も
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
何度慣らしても応答はない
嫌な予感がした管理人
合鍵で中に入った
家財のほとんどないその部屋
しぃんと静まり返って誰も居ない
随分前から、誰も住んでいなかったかのように
合鍵で中に入った
家財のほとんどないその部屋
しぃんと静まり返って誰も居ない
随分前から、誰も住んでいなかったかのように
部屋の片隅見て、管理人は気付く
そこには人形が一つ、ぽつんと取り残されていて
そこには人形が一つ、ぽつんと取り残されていて
…でも
その人形は、真っ黒だった
真っ黒なお人形
どうしてこんなに、真っ黒なのか?
その人形は、真っ黒だった
真っ黒なお人形
どうしてこんなに、真っ黒なのか?
管理人は気付いてしまった
それは、人形ではない
それは、人形ではない
それは、あの時の乳飲み子
女が抱いていた赤ん坊
それに…蝿が、たかっていた
赤ん坊が見えなくなるくらい、びっしりと
それが、真っ黒な人形に見えたのだ
女が抱いていた赤ん坊
それに…蝿が、たかっていた
赤ん坊が見えなくなるくらい、びっしりと
それが、真っ黒な人形に見えたのだ
捨てられた赤ん坊
見捨てられた赤ん坊
部屋の中でひっそり死んで
蝿にたかられ、食い荒らされる
見捨てられた赤ん坊
部屋の中でひっそり死んで
蝿にたかられ、食い荒らされる
わぁぁぁん、わぁぁぁん
蝿の羽音に混じって
赤ん坊の泣き声が聞こえたのは、気のせいか?
蝿の羽音に混じって
赤ん坊の泣き声が聞こえたのは、気のせいか?
…以上が、「黒い人形」の都市伝説である
「黒いキューピーさん」と語られる事もあるが…この都市伝説は、真っ黒な人形、と言う点が重要なのであって、キューピー人形である必要性はない
「黒いキューピーさん」と語られる事もあるが…この都市伝説は、真っ黒な人形、と言う点が重要なのであって、キューピー人形である必要性はない
そう、真っ黒な、人形
今、自分たちが対峙している、人形のような
今、自分たちが対峙している、人形のような
語られた為に生まれた都市伝説
母親に捨てられた赤子の都市伝説
わぁぁん、わぁぁん
蝿たちがやかましく羽音を立て続ける
その生まれからだろうか?
この都市伝説は、女を憎む
それも、子供を捨てた女を
子供を産む事を拒絶した女を
そうして、この憐れな都市伝説は女たちを殺してしまった
何人も、何人も
この、古ぼけた、壊れたアパートに住み着いて
何度も何度も、殺し続けた
母親に捨てられた赤子の都市伝説
わぁぁん、わぁぁん
蝿たちがやかましく羽音を立て続ける
その生まれからだろうか?
この都市伝説は、女を憎む
それも、子供を捨てた女を
子供を産む事を拒絶した女を
そうして、この憐れな都市伝説は女たちを殺してしまった
何人も、何人も
この、古ぼけた、壊れたアパートに住み着いて
何度も何度も、殺し続けた
水が、こちらに向かってくる蝿たちを防いでいる
花子さんが防ぎ続けるのにも、時間の限界があるだろう
…けれど
俺は、決定的な攻撃の指示を、出せない
…同情しているのだろうか
あの、都市伝説相手に
悲惨な都市伝説から生まれてしまった相手に、同情しているのか
花子さんが防ぎ続けるのにも、時間の限界があるだろう
…けれど
俺は、決定的な攻撃の指示を、出せない
…同情しているのだろうか
あの、都市伝説相手に
悲惨な都市伝説から生まれてしまった相手に、同情しているのか
「…っけーやくしゃ!」
「………あぁ」
「………あぁ」
あぁ、わかっているのだ
黒い人形は、もう何人も殺してしまっている
狂ってしまったのか
それとも、生まれた時、既に狂っていたのか
罪悪感など、カケラも持たず
そもそも、感情らしい感情もあるのかわからぬ相手
敵対してきた俺達のことも殺そうとしている
…こちらとて、殺されるつもりはなく
だからといって、この黒い人形を、放置する訳にも行かず
黒い人形は、もう何人も殺してしまっている
狂ってしまったのか
それとも、生まれた時、既に狂っていたのか
罪悪感など、カケラも持たず
そもそも、感情らしい感情もあるのかわからぬ相手
敵対してきた俺達のことも殺そうとしている
…こちらとて、殺されるつもりはなく
だからといって、この黒い人形を、放置する訳にも行かず
「…花子さん、あいつを、楽にしてやってくれ」
「……うん!」
「……うん!」
こっくりと、花子さんは頷いた
開けっ放しのトイレのドア
水道が流れぬはずのそこから、無限に湧き出続けている、水が…花子さんの意思に従い、動く
狭いアパート
トイレしかなく、女子トイレと言うテリトリーは存在しないが
…だが
すぐ傍にトイレがある
それだけで、充分だ
まるで海蛇のように動く水が、黒い人形を捕らえる
わぁぁ、ぁんっ
蝿ごと飲み込まれ、黒い人形は動きを止めた
黒い人形を動かしているのは、人形が操る蝿だ
…水に飲まれては、蝿はまともに動くこともできまい
黒い人形は水の中で、物のように流されていく
一瞬、それが俺の横を通り過ぎていって
開けっ放しのトイレのドア
水道が流れぬはずのそこから、無限に湧き出続けている、水が…花子さんの意思に従い、動く
狭いアパート
トイレしかなく、女子トイレと言うテリトリーは存在しないが
…だが
すぐ傍にトイレがある
それだけで、充分だ
まるで海蛇のように動く水が、黒い人形を捕らえる
わぁぁ、ぁんっ
蝿ごと飲み込まれ、黒い人形は動きを止めた
黒い人形を動かしているのは、人形が操る蝿だ
…水に飲まれては、蝿はまともに動くこともできまい
黒い人形は水の中で、物のように流されていく
一瞬、それが俺の横を通り過ぎていって
「………っ」
…目が
一瞬、それと、目があったような気がした
びっしりと、蝿に覆われた黒い人形
けれど、その隙間から、一瞬だけ…目が、見えた
死んだ赤子の目
それが、ぐさり、こちらの心を抉るかのように、俺を見つめてきていた
一瞬、それと、目があったような気がした
びっしりと、蝿に覆われた黒い人形
けれど、その隙間から、一瞬だけ…目が、見えた
死んだ赤子の目
それが、ぐさり、こちらの心を抉るかのように、俺を見つめてきていた
「……御免な」
小さく、呟く
黒い人形には届かないだろう、声で
黒い人形には届かないだろう、声で
…一瞬
黒い人形が、笑ったように見えたのは
俺の心が見せた、幻でしかないだろう
水に包まれたまま、蝿を操り人を襲う以外、特別な能力がなかった黒い人形は…そのまま、トイレに飲み込まれていった
ごぽごぽごぽ、と音をたて
……この世から、消滅した
黒い人形が、笑ったように見えたのは
俺の心が見せた、幻でしかないだろう
水に包まれたまま、蝿を操り人を襲う以外、特別な能力がなかった黒い人形は…そのまま、トイレに飲み込まれていった
ごぽごぽごぽ、と音をたて
……この世から、消滅した
「終わったよ、けーやくしゃ!」
にぱ、と花子さんがこちらを見上げてきた
無邪気な笑顔
そんな花子さんの頭を、俺はもふもふと撫でてやる
無邪気な笑顔
そんな花子さんの頭を、俺はもふもふと撫でてやる
「あぁ、お疲れ様」
「…けーやくしゃ?悲しいの?」
「…けーやくしゃ?悲しいの?」
かっくん、と首を傾げてきた花子さん
そうかもな、と俺は苦笑した
そうかもな、と俺は苦笑した
…この手の都市伝説は多いのだ
一々同情していては、キリがないだろう
それは、わかっている
わかっている、けれど
一々同情していては、キリがないだろう
それは、わかっている
わかっている、けれど
…しかし、同情せずにはいられない
この手の話を聞いて、「あ、そう。それで?」と言うような冷血漢には、なりたくなかった
悲しいと思う
そんな事が、実際に起きないでほしいと思う
悲しいと思う
そんな事が、実際に起きないでほしいと思う
…だが、現実に、似たような事件が起きてしまうことがあるからこそ
この手の都市伝説は生まれてしまう
その事実が、ひたすら悲しくて
この手の都市伝説は生まれてしまう
その事実が、ひたすら悲しくて
「…みー…」
ぎゅう、と
花子さんが、こちらの手を握ってきた
心配そうに、心配そうに、こちらを見上げてくる
花子さんが、こちらの手を握ってきた
心配そうに、心配そうに、こちらを見上げてくる
「…大丈夫だよ」
「ほんとー?」
「…大丈夫だ」
「ほんとー?」
「…大丈夫だ」
これは、花子さんに言い聞かせているのか
それとも、俺が俺自身に言い聞かせているのか?
…正直、俺にもわからなかった
それとも、俺が俺自身に言い聞かせているのか?
…正直、俺にもわからなかった
「帰るぞ、花子さん。帰りに、あのルーモアって喫茶店で、パフェでも奢ってやるからな」
「…!うん!」
「…!うん!」
ぎゅう、としっかり花子さんと手を繋ぎ
俺は、帰路についた
俺は、帰路についた
……わかっている
都市伝説は、人々が噂する限り生まれ続ける
たとえ、都市伝説同士の戦いに敗北し、死んだとしても
…噂される限り、また都市伝説は生まれるのだ
特に、類似する話が多く存在する都市伝説は
都市伝説は、人々が噂する限り生まれ続ける
たとえ、都市伝説同士の戦いに敗北し、死んだとしても
…噂される限り、また都市伝説は生まれるのだ
特に、類似する話が多く存在する都市伝説は
黒い人形
いくつもの類似したパターンがある都市伝説
…だが、願わくば
こいつが、再び生まれ出る事がありませんように
もし、生まれたとしても
いくつもの類似したパターンがある都市伝説
…だが、願わくば
こいつが、再び生まれ出る事がありませんように
もし、生まれたとしても
…今回のような、殺戮者になってしまわない事を
俺は、祈る事しかできないのだった
俺は、祈る事しかできないのだった
私たちは死にません
私たちは死ねません
私たちは生まれ続けるのです
私たちは死ねません
私たちは生まれ続けるのです
どうすれば、私たちは死ねますか
どうすれば、私たちは生まれずにすみますか
どうすれば、私たちは生まれずにすみますか
どうすれば、私たちは人々に語られずにすみますか?
そうすれば、私たちは生まれずにすむのだと
そうすれば、私たちは死なずにすむのだと
そうすれば、私たちは死なずにすむのだと
私たちはわかっていても、生み出される私たちに、それを止める事はできないのです
Red Cape