ドクター32
「さて、お腹も落ち着いたところで今後の行動についてであります」
「食べかすだらけの顔で言っても真面目さが伝わりませんよ、お姉」
事前に予約してあったホテルの一室で、エニグマ姉妹は顔を付き合わせて苦悩していた
通りすがりの親切にしてよくわからない人達に貰った料理を、二人はすっかり綺麗に平らげていた
「本日の到着という事は既にドクターには伝わっているであります。これをどうにか誤魔化してあの少女を確保しなければいけないのでありますが」
「リミットは多分、今晩まででしょうね。ホテルに宿泊して明日の昼頃には日本支部のホームに辿り着かないと怪しまれるでしょう」
「問題は例の少女が何処にいるかであります。通信の傍受は簡単でありますが……どこに情報を絞るかであります」
「やはり警察関係ではないでしょうか。地元の都市伝説組織を探るには情報が足りませんし、何よりリスクが大きいです」
「では、小官は駅周辺の捜索を再開するであります。何か有力な情報があったら連絡を」
「わかりました。でも、町についた途端にあの光景です。トラブルに巻き込まれないよう、充分気をつけて下さいね」
「勿論でありますよ。正直、小官では遭遇てしまったら対応できそうにないであります」
「そりゃそうです。火力がとんでもないドイツやアメリカ、ロシアの都市伝説とは違う……なんというか、非常にアレな危険さですから」
エニグマ妹は頭痛を堪えるように眉を顰めながら、未だ窓の外、聖夜の夜空で繰り広げられる三つ巴の聖戦から視線を逸らす
「あと、くれぐれもドクターに察知されないように気をつけて下さいね。いくら優しいドクターとはいえ仕事上のミスには厳しいですし、ばれたら貞操の危機ですからね」
「うう、何でこんな事になってしまったのやら……聖夜にこんな目に遭うなんて、小官が何か悪い事をしたでありますか」
「食べかすだらけの顔で言っても真面目さが伝わりませんよ、お姉」
事前に予約してあったホテルの一室で、エニグマ姉妹は顔を付き合わせて苦悩していた
通りすがりの親切にしてよくわからない人達に貰った料理を、二人はすっかり綺麗に平らげていた
「本日の到着という事は既にドクターには伝わっているであります。これをどうにか誤魔化してあの少女を確保しなければいけないのでありますが」
「リミットは多分、今晩まででしょうね。ホテルに宿泊して明日の昼頃には日本支部のホームに辿り着かないと怪しまれるでしょう」
「問題は例の少女が何処にいるかであります。通信の傍受は簡単でありますが……どこに情報を絞るかであります」
「やはり警察関係ではないでしょうか。地元の都市伝説組織を探るには情報が足りませんし、何よりリスクが大きいです」
「では、小官は駅周辺の捜索を再開するであります。何か有力な情報があったら連絡を」
「わかりました。でも、町についた途端にあの光景です。トラブルに巻き込まれないよう、充分気をつけて下さいね」
「勿論でありますよ。正直、小官では遭遇てしまったら対応できそうにないであります」
「そりゃそうです。火力がとんでもないドイツやアメリカ、ロシアの都市伝説とは違う……なんというか、非常にアレな危険さですから」
エニグマ妹は頭痛を堪えるように眉を顰めながら、未だ窓の外、聖夜の夜空で繰り広げられる三つ巴の聖戦から視線を逸らす
「あと、くれぐれもドクターに察知されないように気をつけて下さいね。いくら優しいドクターとはいえ仕事上のミスには厳しいですし、ばれたら貞操の危機ですからね」
「うう、何でこんな事になってしまったのやら……聖夜にこんな目に遭うなんて、小官が何か悪い事をしたでありますか」
―――
一方その頃、迷子の少女はというと
賑やかなアパートの一室で、満たされたお腹のお陰でうつらうつらと船を漕いでいた
「そういえば、結局その子は何者なんだ? 居候だっていうなら、ある意味もう諦めてるから良いんだが」
「先程少し身の上話を聞いてみたのですが、どうやらドクターという方を訪ねてこの町へ来たそうです」
「ドクターって……もしかしてアレか」
「多分そうですわ、少なくとも都市伝説絡みでそう呼ばれている方は他には存じ上げませんもの」
マッドガッサー騒動で遭遇した、性におおらかというか奔放とようかフリーダムというか、そんな女の存在を思い出す
「駅で保護者の方とはぐれて、寒かったのでたまたま見かけた焚き火に混ざっていたそうですわ」
「なるほど。その保護者は誰かわからないけど、ドクターになら連絡が付くだろう。心配させると悪いし電話ぐらいしておくか」
特に連絡先を教え合ってはいなかったが、北区に診療所を開いているという事もあり、電話帳を調べればすぐに連絡先は判明した
そして連絡に使われたのは、エニグマ妹が町中を必死に電波傍受している携帯電話ではなく、有線の家庭電話であった
賑やかなアパートの一室で、満たされたお腹のお陰でうつらうつらと船を漕いでいた
「そういえば、結局その子は何者なんだ? 居候だっていうなら、ある意味もう諦めてるから良いんだが」
「先程少し身の上話を聞いてみたのですが、どうやらドクターという方を訪ねてこの町へ来たそうです」
「ドクターって……もしかしてアレか」
「多分そうですわ、少なくとも都市伝説絡みでそう呼ばれている方は他には存じ上げませんもの」
マッドガッサー騒動で遭遇した、性におおらかというか奔放とようかフリーダムというか、そんな女の存在を思い出す
「駅で保護者の方とはぐれて、寒かったのでたまたま見かけた焚き火に混ざっていたそうですわ」
「なるほど。その保護者は誰かわからないけど、ドクターになら連絡が付くだろう。心配させると悪いし電話ぐらいしておくか」
特に連絡先を教え合ってはいなかったが、北区に診療所を開いているという事もあり、電話帳を調べればすぐに連絡先は判明した
そして連絡に使われたのは、エニグマ妹が町中を必死に電波傍受している携帯電話ではなく、有線の家庭電話であった
―――
「……わざわざ連絡をありがとう。何かと面倒事ばかりに関わらせて申し訳ない」
受話器を置いたドクターは、小さく溜息を吐いて苦笑を浮かべる
「到着しているはずなのに何の連絡も無いと心配していれば、なるほどそういう事だったか」
「そっちの子は明日にでも迎えに行くとして。同行者の『エニグマ暗号機』の二人はどうしましょうか。あの子ら携帯とか持ってないでしょう、自前の電波があるからって」
すっかり看護婦姿が板についてしまったバイトちゃんの言葉
ドクターはさほど気にした様子もなく、軽く肩を竦めて見せる
「どうするも何も、素直に連絡してくれば何も言うまい。だが、いつぞやの君のように独断で行動しミスを隠そうとするならば」
笑顔の中で笑っていない目は、マッドガッサー騒動の折に再会した時のそれによく似ており
「まあ、それなりに組織というものの在り方について教育する必要があるだろうな」
その視線を向けられただけで、裸にひん剥かれて全身を舐め回されたかのような錯覚に陥るほどだった
受話器を置いたドクターは、小さく溜息を吐いて苦笑を浮かべる
「到着しているはずなのに何の連絡も無いと心配していれば、なるほどそういう事だったか」
「そっちの子は明日にでも迎えに行くとして。同行者の『エニグマ暗号機』の二人はどうしましょうか。あの子ら携帯とか持ってないでしょう、自前の電波があるからって」
すっかり看護婦姿が板についてしまったバイトちゃんの言葉
ドクターはさほど気にした様子もなく、軽く肩を竦めて見せる
「どうするも何も、素直に連絡してくれば何も言うまい。だが、いつぞやの君のように独断で行動しミスを隠そうとするならば」
笑顔の中で笑っていない目は、マッドガッサー騒動の折に再会した時のそれによく似ており
「まあ、それなりに組織というものの在り方について教育する必要があるだろうな」
その視線を向けられただけで、裸にひん剥かれて全身を舐め回されたかのような錯覚に陥るほどだった