三面鏡の少女 28
「うーん、これだけ人がいると探すのは大変だなー。Hさん、見つけれたかな?」
人探しをしているという話を聞いていたため、三面鏡の少女は仕事の合間にちょこちょこと境内を歩き回って件の少女を探していたのだが
なにせ元旦の初詣、アルバイトを雇わなければいけないほどの参拝客が訪れるのである
人探しの心得があるわけでもない彼女には、偶然でもない限りは荷が重い事であった
「……んー、寒っ」
人が多いとはいえ一月の寒空、白い小袖に緋袴という服装だけでは身体も冷えるというもの
少女はふるりと身を震わせて、人の波をすり抜けながら社務所の奥へと駆けて行った
人探しをしているという話を聞いていたため、三面鏡の少女は仕事の合間にちょこちょこと境内を歩き回って件の少女を探していたのだが
なにせ元旦の初詣、アルバイトを雇わなければいけないほどの参拝客が訪れるのである
人探しの心得があるわけでもない彼女には、偶然でもない限りは荷が重い事であった
「……んー、寒っ」
人が多いとはいえ一月の寒空、白い小袖に緋袴という服装だけでは身体も冷えるというもの
少女はふるりと身を震わせて、人の波をすり抜けながら社務所の奥へと駆けて行った
―――
「はふー」
社務所の奥にある職員用トイレで、少女は一息ついていた
表にある参拝客用のトイレは混み合っているし、巫女の姿で並んだり入ったりするのは非常に居心地が悪い
もっとも、元よりそのような事はしないでこちらを使うようにと仕事の説明の折に聞いていたので、人が少なくてもこっちに来ていたのだが
「ホント役に立たないなーあたし。アルバイトしてても何の問題もないぐらいだし」
他の契約者達も別に四六時中事件に遭遇したり対処したりしてるわけではないのだが
彼女が良く会うのが何かとアクティブに動いている黒服Hや過労死が心配されるほど働いている黒服Dなどなため、どうしても自分が何もしてないように感じてしまうようだ
実際、戦闘も調査もできるような能力ではないので組織からはあまりお呼びが掛からないし、囮などの仕事も彼女には回らないよう黒服Hが手を回しているせいもあるのだが
「能力の向上ってどうすればいいのかなぁ……鏡のあたし達は全然教えてくれないし」
あれこれ頭を悩ませながらトイレットペーパーをからからと引き出したところで
「ふぇ?」
洋式便器に座っているそのお尻に、なにかが触れる
トイレ関係の都市伝説――今までそれなりに都市伝説について学んだ経験から、即座にトイレから飛び出そうと立ち上がろうとするが
「んにゃ!? ちょ、なんかここしばらくこんなのばっかりな気がー!?」
お尻に触れていた何かが太股の間をすり抜け、身体と腕に絡みつき便器の方へと引き戻される
「落ち着いて話を聞け! 我は汝に危害を加えるつもりは無い!」
絡みつく何かが何事か語りかけてくるが
「説得力無いー!? はーなーしーてー!」
少女は涙目で喚きながら、わたわたと手足をばたつかせて暴れている
「ぬう、逃げられたり人を呼ばれたりしては困る。済まぬが少々手荒ながらも大人しくしてもらうぞ!」
身体に絡み付いていたそれは、更にその身体を伸ばして少女の身体を縦横無尽に這い巡り、四肢を拘束し口すらも押さえ込んでしまう
「我の接触に気付いた汝の助けが必要なのだ、大人しく話を聞いてはもらえぬか」
「もがー!?」
返事も何もできたものではないのだが、相手はお構いなしに語りその姿を少女に晒す
それはとても大きな大きな、白い蛇
「汝を我の姿が見える巫女と見込んで頼みがあるのだ。せめて話だけでも聞いてゆかぬか」
その白い大蛇が全身の肌に食い込むように巻きついている状態では、少女には抵抗はおろか声すら出す事が出来ない
「せめて返事なり頷くなりして欲しいものだが」
「うー、うーむーぐー!」
「おお、そういえば我がしっかりと押さえ込んでいたのだったな。あい済まん」
そう言うと白蛇は首から上だけの拘束を僅かに緩める
「どうだ、話を聞き我を助ける気になったか」
「人に助けを乞う態度じゃないよね!?」
「そもそも人と触れ合う機会が少ない。汝も巫女ならば多少の齟齬は寛大な心で許すがよい」
「……アルバイトの巫女に何か求められてもなぁ」
「あるばいと? 良く判らぬが格は低くても巫女は巫女。我の姿が見え声が聞こえるだけで充分よ」
そう言うと白蛇は、爬虫類だというのに器用に鎮痛な表情を作る
「あのー……語るのは良いんだけど、この格好をどうにかしたいなーって」
愛想笑いを浮かべ、怖々と声を掛ける少女
その姿は膝まで下ろした緋袴と下着、前をはだけた小袖、そして股の間から現れた白蛇が全身に巻きついたという色々とアレ過ぎる有様だった
「白蛇である我は、神聖なる存在として神の御使いの役目を……」
「語る前にちょっと緩めて!? まだ拭いてないし!」
「それがある日を境にこの町に溢れる都市伝説とやらの力も増していき……」
「語りに力入れて身体を動かさないで!? 食い込む! 擦れる!?」
「それらが神聖である我の存在と混じり合い、あろうことか……」
「にゃ、んんっ! ちょ、話を聞くからこっちの話も……ふぁ!?」
白蛇の説明混じりの自分語りは、アルバイト勤務における休憩時間いっぱいまで続き
色んな意味で力尽き果てた少女は、訳もよくわからないまま白蛇の問いに頷くだけしかできなかった
社務所の奥にある職員用トイレで、少女は一息ついていた
表にある参拝客用のトイレは混み合っているし、巫女の姿で並んだり入ったりするのは非常に居心地が悪い
もっとも、元よりそのような事はしないでこちらを使うようにと仕事の説明の折に聞いていたので、人が少なくてもこっちに来ていたのだが
「ホント役に立たないなーあたし。アルバイトしてても何の問題もないぐらいだし」
他の契約者達も別に四六時中事件に遭遇したり対処したりしてるわけではないのだが
彼女が良く会うのが何かとアクティブに動いている黒服Hや過労死が心配されるほど働いている黒服Dなどなため、どうしても自分が何もしてないように感じてしまうようだ
実際、戦闘も調査もできるような能力ではないので組織からはあまりお呼びが掛からないし、囮などの仕事も彼女には回らないよう黒服Hが手を回しているせいもあるのだが
「能力の向上ってどうすればいいのかなぁ……鏡のあたし達は全然教えてくれないし」
あれこれ頭を悩ませながらトイレットペーパーをからからと引き出したところで
「ふぇ?」
洋式便器に座っているそのお尻に、なにかが触れる
トイレ関係の都市伝説――今までそれなりに都市伝説について学んだ経験から、即座にトイレから飛び出そうと立ち上がろうとするが
「んにゃ!? ちょ、なんかここしばらくこんなのばっかりな気がー!?」
お尻に触れていた何かが太股の間をすり抜け、身体と腕に絡みつき便器の方へと引き戻される
「落ち着いて話を聞け! 我は汝に危害を加えるつもりは無い!」
絡みつく何かが何事か語りかけてくるが
「説得力無いー!? はーなーしーてー!」
少女は涙目で喚きながら、わたわたと手足をばたつかせて暴れている
「ぬう、逃げられたり人を呼ばれたりしては困る。済まぬが少々手荒ながらも大人しくしてもらうぞ!」
身体に絡み付いていたそれは、更にその身体を伸ばして少女の身体を縦横無尽に這い巡り、四肢を拘束し口すらも押さえ込んでしまう
「我の接触に気付いた汝の助けが必要なのだ、大人しく話を聞いてはもらえぬか」
「もがー!?」
返事も何もできたものではないのだが、相手はお構いなしに語りその姿を少女に晒す
それはとても大きな大きな、白い蛇
「汝を我の姿が見える巫女と見込んで頼みがあるのだ。せめて話だけでも聞いてゆかぬか」
その白い大蛇が全身の肌に食い込むように巻きついている状態では、少女には抵抗はおろか声すら出す事が出来ない
「せめて返事なり頷くなりして欲しいものだが」
「うー、うーむーぐー!」
「おお、そういえば我がしっかりと押さえ込んでいたのだったな。あい済まん」
そう言うと白蛇は首から上だけの拘束を僅かに緩める
「どうだ、話を聞き我を助ける気になったか」
「人に助けを乞う態度じゃないよね!?」
「そもそも人と触れ合う機会が少ない。汝も巫女ならば多少の齟齬は寛大な心で許すがよい」
「……アルバイトの巫女に何か求められてもなぁ」
「あるばいと? 良く判らぬが格は低くても巫女は巫女。我の姿が見え声が聞こえるだけで充分よ」
そう言うと白蛇は、爬虫類だというのに器用に鎮痛な表情を作る
「あのー……語るのは良いんだけど、この格好をどうにかしたいなーって」
愛想笑いを浮かべ、怖々と声を掛ける少女
その姿は膝まで下ろした緋袴と下着、前をはだけた小袖、そして股の間から現れた白蛇が全身に巻きついたという色々とアレ過ぎる有様だった
「白蛇である我は、神聖なる存在として神の御使いの役目を……」
「語る前にちょっと緩めて!? まだ拭いてないし!」
「それがある日を境にこの町に溢れる都市伝説とやらの力も増していき……」
「語りに力入れて身体を動かさないで!? 食い込む! 擦れる!?」
「それらが神聖である我の存在と混じり合い、あろうことか……」
「にゃ、んんっ! ちょ、話を聞くからこっちの話も……ふぁ!?」
白蛇の説明混じりの自分語りは、アルバイト勤務における休憩時間いっぱいまで続き
色んな意味で力尽き果てた少女は、訳もよくわからないまま白蛇の問いに頷くだけしかできなかった
―――
「つまり、都市伝説と混ざりトイレに存在を縛られたから、他所へ連れ出して欲しいって事だったのね」
「理解が遅いぞ。厠で何度も説明したではないか」
「あんな事されながら説明されて、まともに話を聞いてられるかー!?」
着衣を正しながら真っ赤になって叫ぶ少女
小袖の襟元、胸の間から顔を出しながら小首を傾げる白蛇
「多少手荒に締め上げた事は詫びよう。ようやくの機会に我も必死だったのだ」
話をまとめると、元々は神聖な存在であった『白蛇』が、都市伝説の台頭と共に蛇繋がりで『トイレから出てくる蛇』、爬虫類繋がりで『下水道の白鰐』等が混ざってしまいトイレに存在を縛られていたというのだ
トイレから離れれば自浄作用も働いて元に戻れるだろうという事で、姿が見え話しができ触れられる存在を待ち続けていたという
「しかしそれほど長話をしたわけでもなく、既に用足しも終えていたというのにまた漏らすとは。我が蚯蚓であったら摩羅が腫れておったぞ」
「んなもん無いわー!? あれだけされて連れ出すのに協力するだけでもありがたく思ってよ!?」
「ぬう、契りを交わせば我もすぐに力を取り戻せるのだが……仕方あるまい」
「あたしはもう契約してる都市伝説があるって言ったでしょ。多重契約は危ないからダメだって言われてるんだから」
緋袴の帯をきゅっと締め
「それより、もうちょっと小さくなれたりしないの? 流石に身体に巻きつけて連れ出すのは無理があるんだけど」
「誰かに触れておらぬと厠に引き戻されてしまうのだ。しっかりと触れておらんといかんのだが……これでどうだ」
そう言うと白蛇は、ぐいと少女の肌に身体を密着させ
まるで刺青のようにその身体に平面になって張り付いた
「む、布が邪魔で身体が一部平面化できぬ」
「ちょ、こら!? 下着の下に潜り込むんじゃないってば!」
「仕方あるまい、こうしなければ汝の身体に我の身体を隠せぬのだ」
「うーにゃー!?」
「理解が遅いぞ。厠で何度も説明したではないか」
「あんな事されながら説明されて、まともに話を聞いてられるかー!?」
着衣を正しながら真っ赤になって叫ぶ少女
小袖の襟元、胸の間から顔を出しながら小首を傾げる白蛇
「多少手荒に締め上げた事は詫びよう。ようやくの機会に我も必死だったのだ」
話をまとめると、元々は神聖な存在であった『白蛇』が、都市伝説の台頭と共に蛇繋がりで『トイレから出てくる蛇』、爬虫類繋がりで『下水道の白鰐』等が混ざってしまいトイレに存在を縛られていたというのだ
トイレから離れれば自浄作用も働いて元に戻れるだろうという事で、姿が見え話しができ触れられる存在を待ち続けていたという
「しかしそれほど長話をしたわけでもなく、既に用足しも終えていたというのにまた漏らすとは。我が蚯蚓であったら摩羅が腫れておったぞ」
「んなもん無いわー!? あれだけされて連れ出すのに協力するだけでもありがたく思ってよ!?」
「ぬう、契りを交わせば我もすぐに力を取り戻せるのだが……仕方あるまい」
「あたしはもう契約してる都市伝説があるって言ったでしょ。多重契約は危ないからダメだって言われてるんだから」
緋袴の帯をきゅっと締め
「それより、もうちょっと小さくなれたりしないの? 流石に身体に巻きつけて連れ出すのは無理があるんだけど」
「誰かに触れておらぬと厠に引き戻されてしまうのだ。しっかりと触れておらんといかんのだが……これでどうだ」
そう言うと白蛇は、ぐいと少女の肌に身体を密着させ
まるで刺青のようにその身体に平面になって張り付いた
「む、布が邪魔で身体が一部平面化できぬ」
「ちょ、こら!? 下着の下に潜り込むんじゃないってば!」
「仕方あるまい、こうしなければ汝の身体に我の身体を隠せぬのだ」
「うーにゃー!?」
※
『白蛇』
富をもたらすものであり、水神としての側面も持つ
住み着いた家の家主や抜け殻を与えた者に財を為す幸運を与える事ができる他、水を操る事もできる
ただし力が弱っているため、天然水(川や海の水や雨水)でないと干渉できない
富をもたらすものであり、水神としての側面も持つ
住み着いた家の家主や抜け殻を与えた者に財を為す幸運を与える事ができる他、水を操る事もできる
ただし力が弱っているため、天然水(川や海の水や雨水)でないと干渉できない