控え室で、化粧と衣装を調える
出番までは先ではあるが、今からきちんと、準備をしておかなければ
先輩のディナーショーに出演させていただくのだ
失礼があってはいけない
出番までは先ではあるが、今からきちんと、準備をしておかなければ
先輩のディナーショーに出演させていただくのだ
失礼があってはいけない
「…やぁ、綺麗になったね」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
先輩である大物歌手に、彼女は丁寧に微笑みかけた
今夜、彼のクリスマスディナーショーで、彼女も少し歌わせてもらえる事になったのだ
仕事をくれた先輩に、感謝しなければ
今夜、彼のクリスマスディナーショーで、彼女も少し歌わせてもらえる事になったのだ
仕事をくれた先輩に、感謝しなければ
「しかし、良かったのかい?クリスマスなのだから、予定の一つや二つ、あったんじゃないのか?」
「いいえ。むしろ、お仕事を探していましたから」
「いいえ。むしろ、お仕事を探していましたから」
くすり、彼女は微笑む
「組織」からの仕事の依頼もないし、暇だったところだ
一人寂しいクリスマスより、仕事の方がずっといい
「組織」からの仕事の依頼もないし、暇だったところだ
一人寂しいクリスマスより、仕事の方がずっといい
「君なら、恋人くらいいてもおかしくないと思うのだがな…周囲には、女性を見る目のない男が多いらしいな」
「あら…そんな事はありませんわ」
「あら…そんな事はありませんわ」
お世辞が上手、と彼女は笑う
きらり、彼女の胸元で、美しい首飾りが揺れる
きらり、彼女の胸元で、美しい首飾りが揺れる
「おや、それは…」
「今朝、プレゼントで頂きましたの」
「今朝、プレゼントで頂きましたの」
彼女のその言葉に
大物歌手は、何やら納得した様子で
大物歌手は、何やら納得した様子で
「…なるほど、お相手はクリスマスでも仕事で忙しい、といった様子か?」
「えぇ、あの方は、いつだって忙しい方ですから」
「えぇ、あの方は、いつだって忙しい方ですから」
…それでも
自分に、このプレゼントを贈ってくれた
彼女は、それだけで満足なのだ
黒服Hが、自分を気にかけてくれている
自分に、このプレゼントを贈ってくれた
彼女は、それだけで満足なのだ
黒服Hが、自分を気にかけてくれている
---ただそれだけで、彼女にはこの世に生きる理由ができる
「はは、そのお相手に一言申し上げたいものだ。こんな美人をクリスマスに放っておいては、誰かに取られてしまうぞ、と」
「あらあら…」
「あらあら…」
くすくすと、彼女は笑う
…きっと、この人は、この首飾りを送った相手が、彼女の恋人であると、そう考えているのだろう
しかし、彼女は知っている
この首飾りを送ってくれた黒服Hにとって、自分はそう言う存在ではないだろうと
むしろ、彼が恋をする事など、あるのか?
かつて、大切な人を失い、その拍子に心を壊してしまった彼が…今更、誰かに恋愛感情など抱くのか?
しかし、彼女は知っている
この首飾りを送ってくれた黒服Hにとって、自分はそう言う存在ではないだろうと
むしろ、彼が恋をする事など、あるのか?
かつて、大切な人を失い、その拍子に心を壊してしまった彼が…今更、誰かに恋愛感情など抱くのか?
きっと、自分は恋愛感情を抱かれてはいないだろう
だが、それでもいいのだ
だが、それでもいいのだ
ほんの少し、気にかけられるだけでいい
ただ、ほんの少しでも、彼の役に立てればいい
ただ、ほんの少しでも、彼の役に立てればいい
------ただ、それだけが、彼女がこの世に生きる理由なのだから
fin