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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん-復讐-06

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 黒服さんとの連絡が済んだのかTさんが帰ってきた。厳しい顔をしているのを見ると特にこの状態をどうにかする方法は分からなかったみたいだ。
「なあTさん」
「どうした?」
「あの嬢ちゃん、さっちゃんだけどさ」
「?」
 無言で先を促すTさん。俺はん、と応じて話す。
「能力の増幅をしてるって話なんだけど……」
 ああ、とTさんは相槌を打って、
「多少緩めても何万人規模で呪殺出来るようブーストされているとスーツの男が言っていたからな。その通りに増幅されているんだろう」
「おいおい……」
 何万って……。
「それってやっぱり無茶なんじゃねえのか? あのちっちゃい嬢ちゃんにそんな大きな力が収まるとは思えねえんだけど」
「都市伝説は見ためとその能力が釣り合わない者も多いが、まあ、彼女のあの能力に限って言えばそうだろうな。元々はさっちゃん一人が罹っている病を相手に与えるはずのところを何万人規模などに膨れ上がらせているんだ。相当な無茶だろう、それはあのスーツの男の方にしてもそうだ。力を使うのはさっちゃんだろうが、力を増幅するモノと契約をしているのはあの男の方なのだしな」
 なんつー話だよ……。
「……そこまでして」
 言葉は切れた。「そこまでして夢子ちゃんを殺したいかよ」と、その先を本人の前では言いたくない。
「……T、さん」
 何と言ったらいいものか分からなくて黙ってうつむいていると、ケホケホ咳き込みながら夢子ちゃんがTさんに話しかけた。
「なんだ?」
 夢子ちゃんは話をするために深く何度も深呼吸をしている。荒かった呼吸がいくらかマシになるけど顔色は蒼白を通り越して土気色になってる……まるで死んだ人間のように見える。
 もしかしたら俺なんかじゃ気付かない間に何回も死んでるのかもしれない。
「呪いの元からは離れていますから、まだ楽ですよ」
 心配の表情が読まれたのか夢子ちゃんが俺に笑って言った。……説得力無えよ、ばか。
「もし」
 夢子ちゃんはTさんを見据える。そして聞き捨てならない事をぬかしやがった。
「もし私がまた歪んでしまったら、その時は私の始末をお願いできますか?」
「ゆめのお姉ちゃん!?」
「おい夢子ちゃんどういうことだ!?」
 あまりの言葉に胸倉を引っ掴んで寝ている夢子ちゃんの上体を引き上げる。夢子ちゃんは薄く笑んで、
「このままの状態が長く続けば、私はたぶん壊れてしまいます」
 どこか諦めたように言った。
「何言ってんだよ!?」
 夢子ちゃんは、すみませんと謝りながら、
「町を発ってから、何人かの方々から復讐を受けました。話し合いや、場合によっては戦いもしましたが、最後には分かってくれたんです。でも、あの二人は……私を赦さないと言い、そしてここまでする力があります。それだけの力を求めてしまう程に、私を怨んで……失ったものを、失わせてしまったものを哀しんでいるんです。
 そして、このままでは私は、彼らの思いに壊されてしまいます……」
 そして顔を上げた。その瞳はまるで暗闇を怖がる子供のように揺らいでいる。その目を見て、俺は気勢を削がれる。
「私が壊れたら、きっとまた子供たちを攫って……、っ殺すような存在になります。そうはなりたくありません。≪夢の国≫の皆をまた、そんな悪夢に溺れさせたくは、ないです」
 そうなるのなら、私は消えた方がずっといい。
 咳に詰まりながら言われた言葉に、俺は何も言えずに、でも自分を消せなんていう夢子ちゃんの胸倉を離す気も起きなくてただ睨みつけて、
「こら契約者。病人なんだ、放してやれ」
「でも」
 反論しようとしたけど、Tさんに無言で手を離すよう重圧じみた視線で訴えられる。
「……わかったよ」
 視線に圧されてしぶしぶながら手を離して一歩下がった。
 Tさんはさて、と一息入れて、重圧じみた視線の矛先を、上体を起こして、だけど視線は伏せている夢子ちゃんへと変えた。
「夢子ちゃん」
「……はい」
 Tさんの言葉に夢子ちゃんは顔を上げる。Tさんは周囲の気配たち――≪夢の国≫の住人たちの気配を腕を軽く広げて示しながら、
「王がそんなに簡単に諦めを語るな。お前を慕うモノたちが悲しむ。それに――」
 俺とリカちゃんの頭を軽く叩くと、
「お前が居なくなると悲しむ者がいる」
「ですが」
「あの二人が望む復讐、その対象は最早居ないんだ」
「……でも私は確かにこの手で殺しました……」
「手を下したのが夢子ちゃん自身だとしても、そこに夢子ちゃんの意思はない」
「それでも、彼らの復讐には正当性があります」
「そうだ、確かに彼らには理がある。だが、それでも」
「それで、も?」
「今の≪夢の国≫は彼らに歪められる謂われはない。そう言い切るがいい。王にはそれぐらいの思い切りがあった方が好ましい。
 そして、もし夢子ちゃんが壊れたらという場合の事などはまずそうならないように最善の手を打った後で言えばいい」
 そう言って強気な笑みを浮かべた。
 夢子ちゃんは困惑したような、どうしたらいいか迷っているような顔をしていて、それを見てTさんはため息を一つ吐き、
「一生をかけて償うのだろう? 簡単に消えることができると思うな」
 たぶん、ワザと厳しく言ったその言葉に、夢子ちゃんも決心が固まったみたいだった。
 夢子ちゃんは俺、リカちゃん、Tさんをそれぞれ見て、小さく言葉を発した。
「……じゃあ」
 次いで、深呼吸を一つ。言い直すように言葉を作る。
 それは力がこもった言葉で、
「では、≪夢の国≫の王として、Tさん、貴方に頼みがあります」
「聞こう」
 Tさんが応えた。夢子ちゃんはTさんを見据える。顔色も悪く、疲れきってはいるけど、意思だけははっきりと感じられる。そんな声で、
「私を、そして≪夢の国≫を再び歪むるに至る呪いの元を止めて頂きたく思います」
 自分が壊れないために、俺から見たらたぶん最大限の方策を口にした。
 Tさんは満足そうに笑み、
「承知した」
 深く頷いた。

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