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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 恐怖のサンタ-b10

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uranaishi

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恐怖のサンタ クリスマス編 10



 あの事件の後、俺は町から町へと彷徨っていた。
 ただ行くあてもなく、ぶらり、ぶらりと。
 幸い俺の顔が事件の前と比べて大分やつれ、尚且つ髭や髪が伸び切っていた関係で、道中誰も俺が俺である事に気づかれることはなかった。

 道すがら、俺は何度も考えた。
 考えずには、いられなかったのだ。
 俺のしたことは、果たして正しかったのか。
 彼女を殺した事は、果たして正しかったのか。
 何度も考えて、考えて、考えて
 その度に、結論は出なかった。
 出るはずもない。
 あの時の彼女が正気だったのかどうかなど、俺に分かるはずもないのだから。
 だから、俺の思考は結論が出ないまま、ただただ深く掘り進んでいく。

 ――――彼女は、いつから憑かれていたのか。
 それは、俺には分からない。
 ――――彼女は、付き合ってすぐい憑かれたのか。
 そうかも、しれない。
 ――――彼女は、付き合う前から、憑かれていたのか。
 そうかも……しれない……。

 段々と、深くなる疑念。
 段々と、猜疑で一杯になる心。
 何を、信じればよいのか。
 何を、信じるべきなのか。
 俺には何も、分からなかった。
 ……そしてその内、その思考はある一つの点に……決して触れてはならない点にまで、到達した。

 ――――彼女が俺を好きになったのは、本心か? 憑かれたからか?

 俺に、その答えは出せない。
 出せるはずが、ないのだ……。

*********************************************

 ――俺の思考が延々と続く泥沼へと落ちて行った、そんな時だ。
 俺が、彼らと出会ったのは。

「――――どうするよ……やり過ぎだぜ、これ」
「どうするも何も、やっちまったもんはしょうがねぇだろ……」

 とある町で目にした、彼ら。
 全員が同じ顔をした彼らは、血に濡れた装束をまとった、幾人かのサンタだった。
 その目の前には、子供らしき人間の惨殺死体と、白目をむき、口から泡を吹いて倒れる一人の老婆。
 俺は、そんな惨劇の様子を見て、しかし不謹慎にも「これだ」と思った。

 ――――こいつらは、彼女に憑いていた物と同類なのだろう。
 以前に聞いた事があった。
 サンタの服の赤は返り血の赤……血濡れたサンタが、この世には存在すると。
 だから、俺は彼らがそれだとすぐに気付いた。
 ……結果として、それは間違いだったわけだが。

 とにもかくにも、俺は彼らと契約を交わした。
 その時からだ。
 ただ生きているだけだった俺の中に、新たな目標が一つ、出来上がったのは。

(……この力を使って、世界中の恋人達を別れさせてあげよう)

 俺達のような未来が待っている人間には、早めに気付かせてあげないと。
 俺達のような目に遭う前に、気づかせてあげないと。
 俺達みたいな目に遭っている人間が、今まさにいるかもしれない。
 俺は、そいつらを助けるんだ……!

 ――あの時の俺は、ろくに判断力も持たなかったのだ。
 あるのは、ただ漠然とした「逃げなきゃ」と言う思考。
 そして誰も俺達のような目に遭わせまいという、お門違いの使命感。

 俺は、そんな二つの思考だけを持って、なるべく都市伝説の多そうな町を探した。
 ちょっとした情報を頼りに、町から町を、私歩いた。
 そして、辿り着いたのが、この町。
 何の因果か、あのよく分からないパワーストーンを先輩が買った、この町。
 今、俺のいる、この町――――学校町。

*********************************************

 ドォン!と
 また一つ、大きな爆発音が空から響いた。
 その主は、新たに空の覇権をかけたこの戦いに参加した、あの女性の従える怪物の一体か。
 きっとまた、サンタが何体……いや、何十体がやられたのだろう。
 全く、ご苦労な事だ。
 幾らあんたらが殺しても、俺がサンタを生成する限り、この戦いは終わらないと言うのに。

(――――いや……終わりは、するのか……)

 繁華街の一角。
 時計台へと、目を向けた。
 現在時刻は、午後11時47分。
 後十数分で、今日は終わる。
 そして同時にクリスマスも、終わる。

 俺がこんな大人数のサンタを召喚できるのは、今日がクリスマスだから。
 もし普段なら、せいぜい十体が良い所だろう。
 クリスマスだけに力を発揮する、都市伝説。それが彼ら。
 ……全く、厄介な物と契約してしまったものだ。

(俺が、この町で行動を始めてから、もう二日……)

 周囲を見渡せば、そこにいるのは幸せそうに微笑む家族や、恋人。
 俺がこの二日頑張った事も、どうやら全くの徒労に終わったらしい。
 ――――報われないな、と思う。
 俺は、あんたらが未来に笑顔でいられるよう、頑張ってるんだというのに。
 何故、分からないのか。

(いや……分かるはずが、無いのか……)

 薄々と、俺は気付いていた。
 ……気づいて、しまっていた。
 彼らは今、この時を楽しんでいるのだ。
 この後どんな運命が待ち受けていようとも、今を楽しんでいるのだ。
 そんな彼らに、「この後良くない事になりますよ」なんて言った所で、無意味なのだろう。

 俺らだって、そうだった。
 もしあの時、今の俺のような人間が目の前に現れたとしたら?
 もしあの時、俺がそう言われていたとしたら?
 ……どうせ、そんな事露にも信じなかったに違いない。
 いや、仮に信じても、俺は彼女と付き合い続けたのだろう。
 確かに、あの時間は楽しかったから。
 今まで生きてきた平凡な人生中で、一番楽しかったから。一番、輝いていたから。

(何をやっているんだろうな、俺は……)

 彼女と共にいて、楽しかった時間は、事実。
 あんな事があっても、それは揺らがない、事実なのに。
 もし俺が彼女を助けられていれば、今も続いていたはずの「現実」だというのに。
 俺は一体、何をしていたのか。
 事実を疑念で歪めてまで、何をしていたのか。
 滑稽な話だ。

(彼女が生きていたら、こんな俺に向かって微笑んでくれたのか……?)

 でもそれは、叶わぬ願い。
 自分で閉ざした、あるはずだった未来の1ページ。
 俺はもう、それを取り戻すことはできない。

(しかし、俺が今、しているのは――――)

 ――――それを、他人から取り上げる事。
 何という、矛盾だろう。
 俺は彼らから、絶望に出会う前の幸せな一時すら、取り上げようとしていたのか。
 ――何が、正義だ。
 ――何が、「俺のような目に遭わせたくない」だ。
 結局、俺は彼らに嫉妬していたのか。
 俺にとって、過去のものとなってしまった時間を今、楽しんでいる彼らに。
 何て…………。
 何て、愚かなことだろう。

 本当に、滑稽な話だ。
 まるでピエロみたいじゃないか。
 自分の中で勝手に結論を出して、それを他人に押し付けて。
 他人から見れば、何と滑稽で空しい事を、俺はしているのか。
 ――――だが

「それももう、終わる……」

 時刻は、午後11時58分。
 今日という日が、終わる。
 クリスマスが、終わる。
 悪夢はここで、終わる。

「…………そういや、今年は誰にもプレゼント、渡してないな」

 クリスマスも、もう終わり。
 いつもなら誰かしらにあげていた、プレゼント。
 ……もっとも、ここ数年は彼女宛だったが。
 それも今年は誰にもあげていないことを、思い出した。
 と言って、今から誰かを探して、渡すような時間も、ない。
 そもそも、こんな何が出るかわからないプレゼントなど、渡せるわけがない。

「……なら、俺でいいか」

 俺から俺への、プレゼント。
 滑稽な俺にこそ、相応しい。
 馬鹿な俺への、罰にもなるだろう。

 念じれば、すぐに右手に現れる、白い袋。
 この中には、恐怖が詰まっている。
 俺のもっとも嫌いな物が、詰まっている。
 ――さてさて、何が出てくるのやら……。

 袋を縛っていた紐を、取り払う。
 能力の発動は、早い。
 すぐに、袋の中が光り輝き……「それ」は現れた。

「…………………え?」

 現れた、「それ」
 それは、現れては、いけないもの。
 現れるはずがない、もの。

「なぜ…………なぜだ…………」

 眠ったように目を閉じている、それ。
 しかしその顔には赤みがさし、生きている事が分かる。

「『死者』は、死んだ人間は、蘇らないはずだろう……?」

 ――――それは、紛れもない、彼女。
 俺を殺そうとし、そして俺が殺してしまった、彼女。
 今一番会いたくて、しかし今一番会いたくない、人間。
 その彼女が、一体何故、ここに現れたのか。
 呆気にとられる俺をよそに、彼女はゆっくりと、目を見開き

「あ……はるくん、おはよう」

 そういつものように、笑った。
 そのまま、少しむくれる。

「遅いなぁ……あれからずっと、呼び戻してくれるのを待ってたのに」

 ――待ってた、なんて言われても。
 俺には意味が、分からない。

「49日の期限が契約で伸びてたから良かったけど……あとちょっとで成仏する所だったんだよ?」

 分からない、分からない、が――――

「あれを追い払うのにも時間がかかって、おかげでちょっと霊体化しちゃってるし……」

 今、彼女がここにいる事。
 それは、紛れもない、事実。
 袋の見せる幻覚などではない、事実。

「ねぇ、聞いて――――」
「…………お帰り」

 だったら今を、楽しもう。
 悩むことなく、楽しもう。

「あ…………」

 何が起こったのかは、分からない。
 でも、今目の前に彼女がいるのは、現実。

「……うん、ただいま」

 だったらそれを、大切にしよう。
 もしその先に、絶望が待っていようとも。




【終】



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