恐怖のサンタ クリスマス編 10
あの事件の後、俺は町から町へと彷徨っていた。
ただ行くあてもなく、ぶらり、ぶらりと。
幸い俺の顔が事件の前と比べて大分やつれ、尚且つ髭や髪が伸び切っていた関係で、道中誰も俺が俺である事に気づかれることはなかった。
ただ行くあてもなく、ぶらり、ぶらりと。
幸い俺の顔が事件の前と比べて大分やつれ、尚且つ髭や髪が伸び切っていた関係で、道中誰も俺が俺である事に気づかれることはなかった。
道すがら、俺は何度も考えた。
考えずには、いられなかったのだ。
俺のしたことは、果たして正しかったのか。
彼女を殺した事は、果たして正しかったのか。
何度も考えて、考えて、考えて
その度に、結論は出なかった。
出るはずもない。
あの時の彼女が正気だったのかどうかなど、俺に分かるはずもないのだから。
だから、俺の思考は結論が出ないまま、ただただ深く掘り進んでいく。
考えずには、いられなかったのだ。
俺のしたことは、果たして正しかったのか。
彼女を殺した事は、果たして正しかったのか。
何度も考えて、考えて、考えて
その度に、結論は出なかった。
出るはずもない。
あの時の彼女が正気だったのかどうかなど、俺に分かるはずもないのだから。
だから、俺の思考は結論が出ないまま、ただただ深く掘り進んでいく。
――――彼女は、いつから憑かれていたのか。
それは、俺には分からない。
――――彼女は、付き合ってすぐい憑かれたのか。
そうかも、しれない。
――――彼女は、付き合う前から、憑かれていたのか。
そうかも……しれない……。
それは、俺には分からない。
――――彼女は、付き合ってすぐい憑かれたのか。
そうかも、しれない。
――――彼女は、付き合う前から、憑かれていたのか。
そうかも……しれない……。
段々と、深くなる疑念。
段々と、猜疑で一杯になる心。
何を、信じればよいのか。
何を、信じるべきなのか。
俺には何も、分からなかった。
……そしてその内、その思考はある一つの点に……決して触れてはならない点にまで、到達した。
段々と、猜疑で一杯になる心。
何を、信じればよいのか。
何を、信じるべきなのか。
俺には何も、分からなかった。
……そしてその内、その思考はある一つの点に……決して触れてはならない点にまで、到達した。
――――彼女が俺を好きになったのは、本心か? 憑かれたからか?
俺に、その答えは出せない。
出せるはずが、ないのだ……。
出せるはずが、ないのだ……。
*********************************************
――俺の思考が延々と続く泥沼へと落ちて行った、そんな時だ。
俺が、彼らと出会ったのは。
俺が、彼らと出会ったのは。
「――――どうするよ……やり過ぎだぜ、これ」
「どうするも何も、やっちまったもんはしょうがねぇだろ……」
「どうするも何も、やっちまったもんはしょうがねぇだろ……」
とある町で目にした、彼ら。
全員が同じ顔をした彼らは、血に濡れた装束をまとった、幾人かのサンタだった。
その目の前には、子供らしき人間の惨殺死体と、白目をむき、口から泡を吹いて倒れる一人の老婆。
俺は、そんな惨劇の様子を見て、しかし不謹慎にも「これだ」と思った。
全員が同じ顔をした彼らは、血に濡れた装束をまとった、幾人かのサンタだった。
その目の前には、子供らしき人間の惨殺死体と、白目をむき、口から泡を吹いて倒れる一人の老婆。
俺は、そんな惨劇の様子を見て、しかし不謹慎にも「これだ」と思った。
――――こいつらは、彼女に憑いていた物と同類なのだろう。
以前に聞いた事があった。
サンタの服の赤は返り血の赤……血濡れたサンタが、この世には存在すると。
だから、俺は彼らがそれだとすぐに気付いた。
……結果として、それは間違いだったわけだが。
以前に聞いた事があった。
サンタの服の赤は返り血の赤……血濡れたサンタが、この世には存在すると。
だから、俺は彼らがそれだとすぐに気付いた。
……結果として、それは間違いだったわけだが。
とにもかくにも、俺は彼らと契約を交わした。
その時からだ。
ただ生きているだけだった俺の中に、新たな目標が一つ、出来上がったのは。
その時からだ。
ただ生きているだけだった俺の中に、新たな目標が一つ、出来上がったのは。
(……この力を使って、世界中の恋人達を別れさせてあげよう)
俺達のような未来が待っている人間には、早めに気付かせてあげないと。
俺達のような目に遭う前に、気づかせてあげないと。
俺達みたいな目に遭っている人間が、今まさにいるかもしれない。
俺は、そいつらを助けるんだ……!
俺達のような目に遭う前に、気づかせてあげないと。
俺達みたいな目に遭っている人間が、今まさにいるかもしれない。
俺は、そいつらを助けるんだ……!
――あの時の俺は、ろくに判断力も持たなかったのだ。
あるのは、ただ漠然とした「逃げなきゃ」と言う思考。
そして誰も俺達のような目に遭わせまいという、お門違いの使命感。
あるのは、ただ漠然とした「逃げなきゃ」と言う思考。
そして誰も俺達のような目に遭わせまいという、お門違いの使命感。
俺は、そんな二つの思考だけを持って、なるべく都市伝説の多そうな町を探した。
ちょっとした情報を頼りに、町から町を、私歩いた。
そして、辿り着いたのが、この町。
何の因果か、あのよく分からないパワーストーンを先輩が買った、この町。
今、俺のいる、この町――――学校町。
ちょっとした情報を頼りに、町から町を、私歩いた。
そして、辿り着いたのが、この町。
何の因果か、あのよく分からないパワーストーンを先輩が買った、この町。
今、俺のいる、この町――――学校町。
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ドォン!と
また一つ、大きな爆発音が空から響いた。
その主は、新たに空の覇権をかけたこの戦いに参加した、あの女性の従える怪物の一体か。
きっとまた、サンタが何体……いや、何十体がやられたのだろう。
全く、ご苦労な事だ。
幾らあんたらが殺しても、俺がサンタを生成する限り、この戦いは終わらないと言うのに。
また一つ、大きな爆発音が空から響いた。
その主は、新たに空の覇権をかけたこの戦いに参加した、あの女性の従える怪物の一体か。
きっとまた、サンタが何体……いや、何十体がやられたのだろう。
全く、ご苦労な事だ。
幾らあんたらが殺しても、俺がサンタを生成する限り、この戦いは終わらないと言うのに。
(――――いや……終わりは、するのか……)
繁華街の一角。
時計台へと、目を向けた。
現在時刻は、午後11時47分。
後十数分で、今日は終わる。
そして同時にクリスマスも、終わる。
時計台へと、目を向けた。
現在時刻は、午後11時47分。
後十数分で、今日は終わる。
そして同時にクリスマスも、終わる。
俺がこんな大人数のサンタを召喚できるのは、今日がクリスマスだから。
もし普段なら、せいぜい十体が良い所だろう。
クリスマスだけに力を発揮する、都市伝説。それが彼ら。
……全く、厄介な物と契約してしまったものだ。
もし普段なら、せいぜい十体が良い所だろう。
クリスマスだけに力を発揮する、都市伝説。それが彼ら。
……全く、厄介な物と契約してしまったものだ。
(俺が、この町で行動を始めてから、もう二日……)
周囲を見渡せば、そこにいるのは幸せそうに微笑む家族や、恋人。
俺がこの二日頑張った事も、どうやら全くの徒労に終わったらしい。
――――報われないな、と思う。
俺は、あんたらが未来に笑顔でいられるよう、頑張ってるんだというのに。
何故、分からないのか。
俺がこの二日頑張った事も、どうやら全くの徒労に終わったらしい。
――――報われないな、と思う。
俺は、あんたらが未来に笑顔でいられるよう、頑張ってるんだというのに。
何故、分からないのか。
(いや……分かるはずが、無いのか……)
薄々と、俺は気付いていた。
……気づいて、しまっていた。
彼らは今、この時を楽しんでいるのだ。
この後どんな運命が待ち受けていようとも、今を楽しんでいるのだ。
そんな彼らに、「この後良くない事になりますよ」なんて言った所で、無意味なのだろう。
……気づいて、しまっていた。
彼らは今、この時を楽しんでいるのだ。
この後どんな運命が待ち受けていようとも、今を楽しんでいるのだ。
そんな彼らに、「この後良くない事になりますよ」なんて言った所で、無意味なのだろう。
俺らだって、そうだった。
もしあの時、今の俺のような人間が目の前に現れたとしたら?
もしあの時、俺がそう言われていたとしたら?
……どうせ、そんな事露にも信じなかったに違いない。
いや、仮に信じても、俺は彼女と付き合い続けたのだろう。
確かに、あの時間は楽しかったから。
今まで生きてきた平凡な人生中で、一番楽しかったから。一番、輝いていたから。
もしあの時、今の俺のような人間が目の前に現れたとしたら?
もしあの時、俺がそう言われていたとしたら?
……どうせ、そんな事露にも信じなかったに違いない。
いや、仮に信じても、俺は彼女と付き合い続けたのだろう。
確かに、あの時間は楽しかったから。
今まで生きてきた平凡な人生中で、一番楽しかったから。一番、輝いていたから。
(何をやっているんだろうな、俺は……)
彼女と共にいて、楽しかった時間は、事実。
あんな事があっても、それは揺らがない、事実なのに。
もし俺が彼女を助けられていれば、今も続いていたはずの「現実」だというのに。
俺は一体、何をしていたのか。
事実を疑念で歪めてまで、何をしていたのか。
滑稽な話だ。
あんな事があっても、それは揺らがない、事実なのに。
もし俺が彼女を助けられていれば、今も続いていたはずの「現実」だというのに。
俺は一体、何をしていたのか。
事実を疑念で歪めてまで、何をしていたのか。
滑稽な話だ。
(彼女が生きていたら、こんな俺に向かって微笑んでくれたのか……?)
でもそれは、叶わぬ願い。
自分で閉ざした、あるはずだった未来の1ページ。
俺はもう、それを取り戻すことはできない。
自分で閉ざした、あるはずだった未来の1ページ。
俺はもう、それを取り戻すことはできない。
(しかし、俺が今、しているのは――――)
――――それを、他人から取り上げる事。
何という、矛盾だろう。
俺は彼らから、絶望に出会う前の幸せな一時すら、取り上げようとしていたのか。
――何が、正義だ。
――何が、「俺のような目に遭わせたくない」だ。
結局、俺は彼らに嫉妬していたのか。
俺にとって、過去のものとなってしまった時間を今、楽しんでいる彼らに。
何て…………。
何て、愚かなことだろう。
何という、矛盾だろう。
俺は彼らから、絶望に出会う前の幸せな一時すら、取り上げようとしていたのか。
――何が、正義だ。
――何が、「俺のような目に遭わせたくない」だ。
結局、俺は彼らに嫉妬していたのか。
俺にとって、過去のものとなってしまった時間を今、楽しんでいる彼らに。
何て…………。
何て、愚かなことだろう。
本当に、滑稽な話だ。
まるでピエロみたいじゃないか。
自分の中で勝手に結論を出して、それを他人に押し付けて。
他人から見れば、何と滑稽で空しい事を、俺はしているのか。
――――だが
まるでピエロみたいじゃないか。
自分の中で勝手に結論を出して、それを他人に押し付けて。
他人から見れば、何と滑稽で空しい事を、俺はしているのか。
――――だが
「それももう、終わる……」
時刻は、午後11時58分。
今日という日が、終わる。
クリスマスが、終わる。
悪夢はここで、終わる。
今日という日が、終わる。
クリスマスが、終わる。
悪夢はここで、終わる。
「…………そういや、今年は誰にもプレゼント、渡してないな」
クリスマスも、もう終わり。
いつもなら誰かしらにあげていた、プレゼント。
……もっとも、ここ数年は彼女宛だったが。
それも今年は誰にもあげていないことを、思い出した。
と言って、今から誰かを探して、渡すような時間も、ない。
そもそも、こんな何が出るかわからないプレゼントなど、渡せるわけがない。
いつもなら誰かしらにあげていた、プレゼント。
……もっとも、ここ数年は彼女宛だったが。
それも今年は誰にもあげていないことを、思い出した。
と言って、今から誰かを探して、渡すような時間も、ない。
そもそも、こんな何が出るかわからないプレゼントなど、渡せるわけがない。
「……なら、俺でいいか」
俺から俺への、プレゼント。
滑稽な俺にこそ、相応しい。
馬鹿な俺への、罰にもなるだろう。
滑稽な俺にこそ、相応しい。
馬鹿な俺への、罰にもなるだろう。
念じれば、すぐに右手に現れる、白い袋。
この中には、恐怖が詰まっている。
俺のもっとも嫌いな物が、詰まっている。
――さてさて、何が出てくるのやら……。
この中には、恐怖が詰まっている。
俺のもっとも嫌いな物が、詰まっている。
――さてさて、何が出てくるのやら……。
袋を縛っていた紐を、取り払う。
能力の発動は、早い。
すぐに、袋の中が光り輝き……「それ」は現れた。
能力の発動は、早い。
すぐに、袋の中が光り輝き……「それ」は現れた。
「…………………え?」
現れた、「それ」
それは、現れては、いけないもの。
現れるはずがない、もの。
それは、現れては、いけないもの。
現れるはずがない、もの。
「なぜ…………なぜだ…………」
眠ったように目を閉じている、それ。
しかしその顔には赤みがさし、生きている事が分かる。
しかしその顔には赤みがさし、生きている事が分かる。
「『死者』は、死んだ人間は、蘇らないはずだろう……?」
――――それは、紛れもない、彼女。
俺を殺そうとし、そして俺が殺してしまった、彼女。
今一番会いたくて、しかし今一番会いたくない、人間。
その彼女が、一体何故、ここに現れたのか。
呆気にとられる俺をよそに、彼女はゆっくりと、目を見開き
俺を殺そうとし、そして俺が殺してしまった、彼女。
今一番会いたくて、しかし今一番会いたくない、人間。
その彼女が、一体何故、ここに現れたのか。
呆気にとられる俺をよそに、彼女はゆっくりと、目を見開き
「あ……はるくん、おはよう」
そういつものように、笑った。
そのまま、少しむくれる。
そのまま、少しむくれる。
「遅いなぁ……あれからずっと、呼び戻してくれるのを待ってたのに」
――待ってた、なんて言われても。
俺には意味が、分からない。
俺には意味が、分からない。
「49日の期限が契約で伸びてたから良かったけど……あとちょっとで成仏する所だったんだよ?」
分からない、分からない、が――――
「あれを追い払うのにも時間がかかって、おかげでちょっと霊体化しちゃってるし……」
今、彼女がここにいる事。
それは、紛れもない、事実。
袋の見せる幻覚などではない、事実。
それは、紛れもない、事実。
袋の見せる幻覚などではない、事実。
「ねぇ、聞いて――――」
「…………お帰り」
「…………お帰り」
だったら今を、楽しもう。
悩むことなく、楽しもう。
悩むことなく、楽しもう。
「あ…………」
何が起こったのかは、分からない。
でも、今目の前に彼女がいるのは、現実。
でも、今目の前に彼女がいるのは、現実。
「……うん、ただいま」
だったらそれを、大切にしよう。
もしその先に、絶望が待っていようとも。
もしその先に、絶望が待っていようとも。
【終】