闇子さん 01
「はい、そうです。その廃校舎です」
いつものように連絡をすます。
といっても、相手先がどこなのか、詳しいことは知らない。
といっても、相手先がどこなのか、詳しいことは知らない。
「早く…早く帰りましょう…」
うさぎちゃんの、この台詞もいつものことだ。
うさぎちゃんは泣いても可愛い。
うさぎちゃんは泣いても可愛い。
「そうだね。お腹空いたし」
今日の晩御飯は何だろうか?
うさぎちゃんの手料理に期待しつつ、帰路についた。
うさぎちゃんの手料理に期待しつつ、帰路についた。
「あ、はい、わかりました。すぐに向かいます」
仕事が来た。なんでも近くの廃校になった学校に、「都市伝説」が生まれそうらしいのだ。
それの調査と、場合によっては退治が僕らの仕事だ。
それの調査と、場合によっては退治が僕らの仕事だ。
「まったく…最近の小学生は携帯電話なんて物をもってるのね」
「だって、お母さんが最近物騒だから持ってなさいって」
「一昔前なんて、サラリーマンくらいしか持ってなかったものよ」
隣でぐちぐちと言っているのは闇子さん。僕のパートナー。
見た目は僕と同じくらいなのに、随分と大人っぽい雰囲気がする。
実際、僕の何倍も生きてる(?)のだから当たり前だろう。
見た目は僕と同じくらいなのに、随分と大人っぽい雰囲気がする。
実際、僕の何倍も生きてる(?)のだから当たり前だろう。
「だいたい、その仕事ってのはどこから来てるのよ」
「んー…なんでも、いろんな都市伝説との契約者を集めて、
この町の都市伝説を管理する組織なんていうのらしいんだけど」
この町の都市伝説を管理する組織なんていうのらしいんだけど」
正直なところ、詳しくは僕も知らない。
闇子さんと出会ってすぐのころ、急に電話がかかってきて仕事が来て………
それで今にいたるわけだ。
闇子さんと出会ってすぐのころ、急に電話がかかってきて仕事が来て………
それで今にいたるわけだ。
「なによそれ、いい迷惑ね。
だいたい、こんな危ないことを、私達小学生に任せること自体がおかしいのよ」
だいたい、こんな危ないことを、私達小学生に任せること自体がおかしいのよ」
「えー…と、闇子さんまだ小学生なの?」
「ずっと小学校のトイレにいたのよ。小学生でいいじゃない」
「……ここかぁ」
「ずいぶんとボロっちぃのね」
「廃校なんだから仕方ないと思うけど」
「とりあえず中に入りましょう」
「とりあえず中に入りましょう」
「そ…そうだね…」
さっそく、僕達は校舎への侵入を試みる。
割れてる窓がけっこうあり、案外あっさりと入ることができた。
割れてる窓がけっこうあり、案外あっさりと入ることができた。
「…うわぁ」
なんというか…暗い…
明暗ではなく、雰囲気が暗い。
明暗ではなく、雰囲気が暗い。
「さっさと探して帰りましょ」
そんななか、闇子さんは、なんてことないようにスタスタと歩いていく。
「闇子さん、怖くないの…」
「怖いわけないじゃない。あなたこそ何を怖がってるのよ」
「………お化け?」
「私だって同じようなものよ」
「だって闇子さんは…」
「私は?」
「な…なんというか……」
「何か言いなさいよ」
「もういいわ。さっさと終わらせましょ」
闇子さんはそう言うと再び歩きはじめた。
ああもう…僕の意気地無し…
ああもう…僕の意気地無し…
「それにしても、いくらなんでも多過ぎると思わない?」
「なにが?」
「仕事よ仕事。いくらこの町の都市伝説が多いからって、こんなにすぐ見つけ出せるものかしら」
「なんでも凄腕の探し屋がいるらしいよ」
これも詳しくは知らないが、
とある契約者コンビが次から次へと都市伝説を見つけだしているらしい。
とある契約者コンビが次から次へと都市伝説を見つけだしているらしい。
「ふーん…」
「何かいる」
先に見つけたのは僕だった。
「アレね」
闇子さんもすぐに見つけたみたいだ。
「……で、アレ何?」
「さぁ?」
なんとも形容しづらいものだった。
何かの塊。特に何かの形をしているわけではない。ただの塊。
何かの塊。特に何かの形をしているわけではない。ただの塊。
「都市伝説に、まだなりきってないものみたいね。
おそらくは、噂としても何かがいる、としか広まってないんでしょう」
おそらくは、噂としても何かがいる、としか広まってないんでしょう」
「あ、こっちに来たよ」
何かはわからない。ただ、良いものではないということはわかる……気がする
「人を襲ってはいるようね。まだ自身も定まってないというのに生意気」
「闇子さん、なに落ち着いてるの!逃げないと」
闇子さんは、はっきり言って強い都市伝説ではない。
今もなお有名な花子さんと違い、今ではマイナーな怪談のひとつでしかないからだ。
今もなお有名な花子さんと違い、今ではマイナーな怪談のひとつでしかないからだ。
「そうね」
「ほら、がんばりなさい」
「…ぜぇ…だって…ぜぇ…かけっこは…にが…ぜぇ…苦手なんだもん」
僕達が今向かっているのは女子トイレ。
闇子さんの力を一番に発揮できる場所だ。
闇子さんの力を一番に発揮できる場所だ。
「もぅ、シャキッとしなさい」
そう言い、闇子さんは僕の手を掴んだ。
あっ、凄いドキドキする。走ってるとかそういうのじゃなくて。
なんだか力がわいてきた。
あっ、凄いドキドキする。走ってるとかそういうのじゃなくて。
なんだか力がわいてきた。
たぶん好きな子に手を握られてるからだろう。
「ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…」
息も絶え絶え、汗はダラダラだが、なんとか間に合うことができた。
「ふふっ、がんばったわね」
そんな僕の頭を闇子さんが優しく撫でてくれた。
がんばってよかったと切に思う。
がんばってよかったと切に思う。
ドンッ ドンッ
「何か」が女子トイレの入口を叩いている。
おそらく、闇子さんがドアを開けられなくしたせいで、入ってこれないのだろう。
おそらく、闇子さんがドアを開けられなくしたせいで、入ってこれないのだろう。
「ここで一休み、といきたいところだけど…
そうもいかないわ。今の私の力、弱いもの」
そうもいかないわ。今の私の力、弱いもの」
闇子さんがそう言い終わるのと同時に、
バキッ という音をたて女子トイレのドアが壊れた。
バキッ という音をたて女子トイレのドアが壊れた。
「ドアを壊しちゃって、わるい子ね。
先生に言っちゃうわよ」
先生に言っちゃうわよ」
そんな状況でも闇子さんは冷静だった。
何故なら、トイレは闇子さんの力が一番に発揮できるところだからだ。
何故なら、トイレは闇子さんの力が一番に発揮できるところだからだ。
「花子さんには負ける、悔しいわ」と言っていたが
「何か」は、呻き声をあげて近づいてくる。
なんとも形容しづらい呻き声だ。
なんとも形容しづらい呻き声だ。
「それにしても、あなた醜いわね。まさに汚物よ」
女子トイレの個室のドアが次々と開いていく。
「本当は便所紙以外は流しちゃいけないんだけど、今日は特別大サービスよ」
すると、「何か」は細々と分割され、便器に吸い込まれていった。
「はぁ…怖かった…」
「だから、何が怖いのよ。私だって同じようなものよ」
「だって闇子さんは…」
「私は…?」
「僕の友達だもん」
「そっ……そう」
プイッと顔を背け、そっけなさそうに返す闇子さんだが、
顔が真っ赤なので、照れているのが、まるわかりである。
顔が真っ赤なので、照れているのが、まるわかりである。
そう、闇子さんはさみしがりやの女の子なのだ。
僕が初めて闇子さんと出会ったとき、
学校の友達と肝試しをしに、夜の学校の女子トイレに忍び込んだとき……
学校の友達と肝試しをしに、夜の学校の女子トイレに忍び込んだとき……
他のみんなはすぐに逃げ出してしまったが、僕は怖くもなんともなかった。
だってそこにいたのは、
さみしそうに膝を抱えて座っている一人の女の子がいただけだったからだ。
さみしそうに膝を抱えて座っている一人の女の子がいただけだったからだ。