「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち・決戦編-21

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○月×日 23:32 中央高校屋上


 …マッドガッサー達を挟んで、向こう側
 そこに、五基のミサイルが設置されていた
 発射台らしきものから延びるケーブルは……マッドガッサーの傍に置かれている、ノートパソコンに繋がっていた
 恐らく、あのノートパソコンを捜査すれば…ミサイルを、発射できるのだろう
 恐らく、エンターキーでもぽん、と押してしまえば…ミサイルの、発射準備が始まってしまうのだ

「なぁ、携帯のにーちゃん…」
「……くけ……発射の、プログラム、は……あの、パソコンに、インプット……してる」

 人肉料理店契約者の少年(少女)の問いかけに、こくり、と頷く「爆発する携帯電話」の契約者
 …どうやら、読みは間違いなかったようで

 屋上に上がってきたメンバーと一緒にいる「爆発する携帯電話」の契約者と、「13階段」の契約者…広瀬 辰也、それにジャッカロープの姿を見ても、マッドガッサー達は動揺していない
 …彼らの傍にある、開かれたままの携帯電話
 恐らく、それか、もしくはノートパソコンか……はたまた、その両方かで、スーパーハカーが校内の映像をリアルタイムでマッドガッサー達に見せていたのだろう
 二人と一匹が説得側に回った事を、彼らは知っているのだ

 まだ、傷が完全に治りきっていないマリ・ヴェリテが、警戒体勢をとって一行を睨んでいる
 その背後に、弓を持ったスパニッシュフライの契約者を庇うような体勢だ
 刀を手にした女性…「頭を強打すると記憶を失う」の契約者、こちらは、マッドガッサーを庇うような位置に立っている
 彼らの立ち位置のせいで、ミサイル発射の肝であるノートパソコンを、なんらかの攻撃で直接狙うのは難しい体制だ
 …まぁ、屋上に集まった面子ならば、その気になればできなくもないだろうが

(…穏健にいきたいものだ)

 そう、考えたのは誰だったか
 とまれ…残りの一味である四人の説得が、始まろうとしていた

「…さぁて、お前達は、どうやって俺達の邪魔をしてくれるんだろうな?」

 どこか挑発的に、一行を見回してそう言って来たマッドガッサー
 その様子に……以前に、彼との遭遇経験がある者達は、表に出てか出ていないかに関わらず、首を傾げた
 ---以前遭遇した時とは、どこか印象が違う
 はっきりと断言はできないのだが、何か以前よりも…「頼りない」と言った感じの雰囲気が、薄らいでいるような
 そんな、印象

「………」

 その違和感に、思わず銀髪の青年はマッドガッサーを見つめた
 以前も読み取った、マッドガッサーの情報
 それが………以前と、少し、変化していた
 更新された情報が、彼の中に流れ込んでくる

「…契約者を得たのか」

 小さく、そう呟く
 契約者は…「頭を強打すると記憶を失う」の契約者
 すなわち、多重契約
 仲間思いのマッドガッサーが、多重契約などというリスクを仲間に負わせた?
 その疑問は……続けざま、入ってきた情報で、解決した

「…なるほど、そう言う仲か」
「随分と便利な能力持ってるみたいだが、これ以上は読まないでもらいたいもんだな」

 リーディングされているのを感じ取ったのだろうか
 小さく笑って、そう言って来たマッドガッサー
 ……っぽ、と、「頭を強打すると記憶を失う」と契約している女性が、ほんのりと頬を赤く染めた

「…けけ……マ、マッド……」
「恵」

 マッドガッサーを説得しようと、口を開こうとした「爆発する携帯電話」だったが
 本名を呼ばれ、ぴくり、言葉が止まる

「うまくやってやるさ。俺達なら、うまくやれる」
「…本気で、そう仰っているのですか?」

 黒服の言葉に、あぁ、と、マッドガッサーは頷いてきた
 ガスマスクのせいで、その真意ははっきりとは伝わってこない

「俺達全員が揃っていれば、やれる。この学校町から始まって…世界だって、相手にできるさ」
「…マッドガッサー、さん」

 ……す、と
 一歩、前に出たのは…女装少年
 たゆんっ、と、そのあまりにも豊か過ぎる胸元を揺らしながら…じっと、マッドガッサー達を、見詰めている

「街一つを丸々都市伝説の力の影響下に置くだなんて、ダメです。当然、それにはいろんな組織の人も巻き込まれますよね?」
「だろうな」

 あっさりと、女装少年の言葉を認めるマッドガッサー
 女装少年は、ゆっくりと、続ける

「こっちは組織とか、そういうことは詳しくありませんけど……そうなったらきっと、いろんな方面から目の敵にされちゃいます」
「そんな事、改めて言われなくとも……とっくに、その状態だぜ?」

 くっく、と笑ってそう言って来たのは…マリだ
 その獣の瞳は…どこか、自虐的ともとれる光を放っていた

「どうせ、何もしなくても、あちらこちらから目の敵にされてんだ。だったら……いっそ、派手な事をやってもいいだろ?」
「それに」

 すぅ、と
 小さく深呼吸して、スパニッシュフライの契約者が、マリの言葉に続く

「街一つを、丸々都市伝説の力の影響下に置くだなんて……って、言ったわね?でも、「そう言う状態にある」街が、都市が、世界中にいくつあると思っているのかしら?」

 …その言葉に、黒服がかすかに、表情を歪める
 彼女の言葉を、否定する事ができないのだ
 国内でも、都市伝説影響下に入ってしまっている村などがいくつかある事は確認済みであるし、世界的に見ると…確かに、そんな状態の街や都市も存在するのだ
 いっそ、街丸々都市伝説であると言う場所まで存在している
 ……ならば、今更そんな状態の街が一つ増えたところで、問題にならない
 そう、彼らは言いたいのかもしれない

「確かに、そう言う場所も、ある…だが、だからと言って、そんな場所を増やしていい理由には、ならないだろう」

 それを否定してきたのは、メイドちゃん
 スパニッシュフライの契約者を、どこか心配そうに見つめている

「そうですよ、それに、このまま進んでいったら……!」
「マリが言ったろ?とっくに、俺たちは敵がたっぷりいる状態なんだ。今更一つ二つ、三つ四つ増えようが対して変わらない」
「そうやで。せやから………うちらは、そいつらみぃんなと、やりあったるわ」

 「頭を強打すると記憶を失う」の契約者が、そっとマッドガッサーに寄り添いながら、彼の言葉に続けた

「…全員が、共に在り続けるために…これしか、方法がないんでな」


 護る為に
 大切な相手を護る為に
 もっと他にも方法はあるはずなのに、彼らはそれを知らない
 わからない
 どうせ、自分達は誰にも信じてもらえない
 そんな、自暴自棄も重なって
 だから、これしかないのだと
 そう、譲ろうとしないかのように


「…だ、めだ……きっと、他にも……方法はある、から…」

 …ぼそり、と
 それを否定したのは…「爆発する携帯電話」の契約者だった
 泣き出しそうなその声に、う、と、スパニッシュフライの契約者と「頭を強打すると記憶を失う」の契約者が、困ったような表情をする

「爆やん、そないな泣きそうな声、出さんといてや」
「そ、そうよ。今回の件がうまくいけば、私たち、ずぅっと一緒にいられるわよ?」
「………でも」

 ぎゅう、と
 ジャッカロープを抱きしめたまま……俯いたまま、ぼそぼそと、「爆発する携帯電話」の契約者は続ける

「……もう………誰にも、傷ついて欲しく……ない……」

 泣き出しそうな声
 心から、仲間を心配していて
 もう、誰にも…仲間以外すらも傷ついて欲しくないと、そう願う声
 その言葉が、マッドガッサー達に届かない訳がない
 「爆発する携帯電話」の隣に立つ辰也も、複雑そうな表情を浮かべている…説得側に回ったとは言え、彼の本心はどちらかと言うと、まだマッドガッサー達の主張に傾いたままなのだ

 相手が、押し黙った
 その隙を突くように…いや、恐らく、本人にそんな気はないのかもしれないが…女装少年は続ける

「…あなた達は、お互いのことをホントに大切に想ってるんでしょう?このまま止まらず進んでいったら、その大切な仲間も失くしちゃうかもしれないです」

 …失くさずに、すんだとしても
 その、大切な仲間の心に、大きな傷を残してしまう
 少なくとも…この、「爆発する携帯電話」の心は、酷く傷つくだろう
 …この「爆発する携帯電話」は、純粋すぎる
 その手を血で染めた経験すらあると言うのに、その心は一点も汚れちゃいない

「………大切な人を失った辛さって、どうやっても言葉で言い表す事なんてできません。だからもう、止めてください」
「…奇麗事を」

 マリが、小さく牙をむく
 わかっている
 わかりきっている
 だが、自分達には、これしか方法がないのだ

「奇麗事だって、なんだっていいです。でも…心の底から大事だと思う人たちと一緒にいられれば―――それでもう、十分じゃないですか?」
「こんなことをしなくとも」

 …こんな手段を使わなくとも
 ずっと、傍にいられるのなら

「最初から、そっちを選んでるさ」

 どこか、自虐的な、どこか、諦めた言葉を
 マッドガッサーは、ガスマスクの下で…はたして、どんな表情で、喋っているのだろうか?

「それが許されそうにもないから、こうやってるんだろう?」
「…あなた、たちは」

 …黒服が、口を開いた
 なにやら、合点がいったという表情で、マッドガッサー達を見つめた

「あなた達は、今まで、ずっと目立ちすぎないように行動していて…しかし、今回、こんなにも目立つ行動を行いましたね。その気になれば、水面下で動く事もできたでしょうに」

 ミサイルの発射とて、もっと密やかに行う事ができたはずだ
 だと言うのに、わざわざサンダーバードに乗って移動し、サンダーバードがミサイルを運ぶというあまりにも目立つ手段を使って
 こうやって立てこもって行動する、と言う、いかにも目立つ行動をとって
 それが、ずっと疑問だった
 だが、ようやく合点が行った
 黒服と同じような疑問を抱いていたTさん赤い靴も、それに気づく

「…止めて、欲しかったのか?自分達がしようとしている事を」

 気づいたその事実を、赤い靴が口にした
 きょとん、と赤い靴の契約者が、赤い靴を見つめる

「お前さんたち、自分達がしていることをとめられるとわかっていて…その上で目立つ行動をした。止めてほしかったんじゃないのか?」
「…………」

 ---マッドガッサー達は、答えない
 ただ、小さく俯いてくる


 これしか方法を知らない
 他に方法なんて知らない
 だが、これでは間違っているとわかっている
 だが、これ以外、どうすればいいのかもわからなくて
 なら、どうすればいい?


「そんな手段を、使わなくとも。あなた達がともにあり続ける方法は、あります」
「……辰也に言っていた方法か」

 スーパーハカーが、全てリアルタイムで伝えてきていたから
 だから、あの説得は知っている

「ですから、どうか……そのミサイルを発射する事を、止めてください。あなた達も、それでは駄目だとわかっているのなら、尚更です」

 黒服が、静かにマッドガッサー達を見つめた

 ……冷たい風が、彼らの間を通り過ぎる
 これしか方法がないと
 他の方法では駄目なのだと、そう信じ切っていた

 だが他にも方法があるのなら
 それが、実現可能ならば……


「………全く」

 マッドガッサーが、小さくため息をついた
 ざ、と他の三人の前に、出る

「マ、マッドはん…」
「……本当に、お前達は、俺たちを…いや、こいつらを、害さないか?」

 自分はどうでもいいが、周りは
 そうとでも言うような、マッドガッサーの言葉

 黒服が、まるで一同を代表するかのように、ひどく慈悲深い表情で、言い切る

「約束します」


 ……あぁ、まったく


「…この、お人好し共が」

 ガスマスクの下で、マッドガッサーは苦笑したようだった

「いっそ、力付くで止めてきてくれた方が、どれだけ楽だったか」

 呟くようにそう言って、天を仰ぐ


 ……もう
 マッドガッサーには、ミサイルを発射するという気は………とっくの昔に、失せていた





○月×日 23:45 マッドガッサー一味 ミサイル発射放棄







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