○月×日 23:52 中央高校屋上
笑いの渦が、ようやく治まろうとしていた頃
「…あれだ。焦りすぎてて、ガスマスクはすぐ手元に戻せる事忘れてた」
「っち、卑怯な」
「舌打ちするなっ!?」
「っち、卑怯な」
「舌打ちするなっ!?」
ぶーぶー不満を述べるTさんの契約者に、ガスマスクを再び装着したマッドガッサーが盛大に突っ込んだ
どうやら、帽子は手元に戻せないようで、その艶やかな銀髪は露になったままだが
どうやら、帽子は手元に戻せないようで、その艶やかな銀髪は露になったままだが
……と
っふ、と、上空にさした影
っふ、と、上空にさした影
-----どさっ!!と
何者かが、上空から降ってきた
殴られた痕があり、きゅう、と気を失っているそれは…バイトちゃんには、見覚えがありすぎる男
…彼(彼女)の旧友だった
何者かが、上空から降ってきた
殴られた痕があり、きゅう、と気を失っているそれは…バイトちゃんには、見覚えがありすぎる男
…彼(彼女)の旧友だった
「ひっひっひぃ!怪しい動きをしていたから、とりあえず気絶させておいたよぉ?」
「死んでないから大丈夫だろ、多分」
「死んでないから大丈夫だろ、多分」
ふわり
魔女の一撃が主を箒に乗せてゆっくりと降りてきた
たん、と屋上に降り立った魔女の一撃の契約者は…ややふらつきながらも、しっかりとした足取りをしている
…一瞬、彼は「日焼けマシン」の契約者に視線をやって…酷く、申し訳無さそうな顔をした
その表情に、「日焼けマシン」の契約者が、複雑そうな表情を浮かべる
魔女の一撃が主を箒に乗せてゆっくりと降りてきた
たん、と屋上に降り立った魔女の一撃の契約者は…ややふらつきながらも、しっかりとした足取りをしている
…一瞬、彼は「日焼けマシン」の契約者に視線をやって…酷く、申し訳無さそうな顔をした
その表情に、「日焼けマシン」の契約者が、複雑そうな表情を浮かべる
「そいつの傍、怪しい影はなかったか?……俺達のような、黒服の姿は」
「いいやぁ?なかったよぉ?」
「いいやぁ?なかったよぉ?」
黒服Hの言葉に、即答する魔女の一撃
ふむ、と黒服Hは、やや難しそうな顔をする
ふむ、と黒服Hは、やや難しそうな顔をする
「「アメリカ政府の陰謀論」が、先ほどの件に絡んでいると?」
「…どーも、それっぽい気配がするんだよ」
「…どーも、それっぽい気配がするんだよ」
バイトちゃんの言葉に、黒服Hは面倒くさそうに答えた
ガスマスクが外れた直後のマッドガッサーの罵声を聞くに、どうやら彼の兄……彼の片割れたるマッドガッサーは、死亡したらしい
確か、あれは「アメリカ政府の陰謀論」に目をつけられていた
その片割れが死んで、目標がこちらのマッドガッサーに移ってもおかしくはないのだ
マッドガッサー自身も、それをわかっているからこそ、あの罵声が出たのだろう
ガスマスクが外れた直後のマッドガッサーの罵声を聞くに、どうやら彼の兄……彼の片割れたるマッドガッサーは、死亡したらしい
確か、あれは「アメリカ政府の陰謀論」に目をつけられていた
その片割れが死んで、目標がこちらのマッドガッサーに移ってもおかしくはないのだ
マッドガッサー自身も、それをわかっているからこそ、あの罵声が出たのだろう
マッドガッサーも、魔女の一撃とその契約者から話を聞いて…考え込んでいるようだ
「喉から手が出る」の作動が、そちらの陰謀だったとしたら……それが失敗したならば、別の手段をとってくる可能性もある
今、この状況とて、見張られているかもしれない……
「喉から手が出る」の作動が、そちらの陰謀だったとしたら……それが失敗したならば、別の手段をとってくる可能性もある
今、この状況とて、見張られているかもしれない……
……と
マッドガッサーが、何やら「爆発する携帯電話」に、ぼそぼそと耳打ちを始めた
「爆発する携帯電話」は、一瞬、悩んだ表情を浮かべたが……こくり、小さく頷く
マッドガッサーが、何やら「爆発する携帯電話」に、ぼそぼそと耳打ちを始めた
「爆発する携帯電話」は、一瞬、悩んだ表情を浮かべたが……こくり、小さく頷く
「…悪いが、厄介な連中にたった今、狙われているらしいんで…こっちは、退散させてもらうぜ」
す、と
マッドガッサー一味が…一箇所に、集まりだした
気のせいか?
マッドガッサー一味が、一行に申し訳なさそうな表情や、ニヤニヤ笑いを向けてきているような…
マッドガッサー一味が…一箇所に、集まりだした
気のせいか?
マッドガッサー一味が、一行に申し訳なさそうな表情や、ニヤニヤ笑いを向けてきているような…
「………で。申し訳ないんだが、相談が。っつか、むしろ答えを聞かずに実行させてもらうんだが」
「…嫌な予感しかしないな」
「…嫌な予感しかしないな」
銀髪の青年が、Tさんが…警戒しだす
この期に及んで、彼らが問題を起こす事はないだろう
ただ……今、彼らは「アメリカ政府の陰謀論」を振り払う為に、何かをしようとしていて
この期に及んで、彼らが問題を起こす事はないだろう
ただ……今、彼らは「アメリカ政府の陰謀論」を振り払う為に、何かをしようとしていて
それに、一行を巻き込もうとしているのは、確実だった
「アレだ、あとで解毒剤は順番に渡していくんで……勘弁してくれ」
---ピピピピピピピピピピピピピピピピ
じりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりり
トゥルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル………!
じりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりり
トゥルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル………!
響き渡る、電話の着信音
はっとして視線をやれば…何時の間にか、「爆発する携帯電話」が、しっかりと携帯電話を握り緊めていた
はっとして視線をやれば…何時の間にか、「爆発する携帯電話」が、しっかりと携帯電話を握り緊めていた
「ッ爆風でも起こして逃げる気か!?」
「ですが、どの携帯電話を……?」
「ですが、どの携帯電話を……?」
一行の携帯は、何の音も発していない
音は、どこかくぐもった感じで、どこからともなく響いていて
音は、どこかくぐもった感じで、どこからともなく響いていて
……ちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅ!?と
はないちもんめの少女の鎖に絡まっている鼠が、何かを感じたようにじたばたと、逃げ出そうとしだす
はないちもんめの少女の鎖に絡まっている鼠が、何かを感じたようにじたばたと、逃げ出そうとしだす
「……っ、あ、あそこ!あの、ミサイルの中です!!」
銀髪の青年の契約者たる少女が、透視によって、それを見つけた
マッドガッサーが精製したガスが詰まった、ミサイルの、中
その中に、どうやって設置したのか……携帯電話が、貼り付けられていて
五基のミサイル全ての中に設置されたそれらが、光を発し、今にも爆発しそうになっていた
その中に、どうやって設置したのか……携帯電話が、貼り付けられていて
五基のミサイル全ての中に設置されたそれらが、光を発し、今にも爆発しそうになっていた
ガスがたまったミサイル
それが爆破されたら…………どうなる?
それが爆破されたら…………どうなる?
「逃げるのはいいが、こちらを巻き込むのは勘弁してもらいたい……!」
「リカちゃん!」
「わかったの」
「リカちゃん!」
「わかったの」
銀髪の青年が、ミサイル内に設置された携帯電話に干渉しようとする
Tさんもまた、リカちゃんに頼んで携帯の主導権を握ってもらおうとして…………
Tさんもまた、リカちゃんに頼んで携帯の主導権を握ってもらおうとして…………
「-------っ!?」
「あれ???」
「あれ???」
銀髪の青年が、驚愕に目を見開き
リカちゃんが、きょとん、と首をかしげる
リカちゃんが、きょとん、と首をかしげる
「ど、どうしたんですか?」
「…あの携帯電話に…干渉、できない」
「リカちゃん、どうした!?」
「しゅどーけんをにぎれないの」
「…あの携帯電話に…干渉、できない」
「リカちゃん、どうした!?」
「しゅどーけんをにぎれないの」
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ
携帯電話は、光り続けていて……
携帯電話は、光り続けていて……
『-------ヒャッハハハハハハハハハハハハ!!!』
その音に混じって、響いた声
ハっとして、Tさんが己の携帯電話を取り出すと…その、画面に
見覚えのない、デジタル画像の男性が現れていて、ケタケタと笑っていた
ハっとして、Tさんが己の携帯電話を取り出すと…その、画面に
見覚えのない、デジタル画像の男性が現れていて、ケタケタと笑っていた
『ザァンネン!!しゅどうけんヲにぎルのうりょくハ、オジョーチャンヨリモおれさまノほうガうえダッタミテェダナァ!!』
「----ッスーパーハカーか!?」
「----ッスーパーハカーか!?」
ミサイルの中の携帯電話の主導権は、スーパーハカーが握っている
既に他の都市伝説が干渉しているがゆえに、占い師の能力で干渉できず
主導権を握るその能力は、まだ幼いリカちゃんよりも、スーパーハカーの方が上で……
既に他の都市伝説が干渉しているがゆえに、占い師の能力で干渉できず
主導権を握るその能力は、まだ幼いリカちゃんよりも、スーパーハカーの方が上で……
「----BOM」
どこか、おどけた声がした、その直後
ミサイルの中に設置された携帯電話が、一斉に爆発して
ミサイルの中に設置された携帯電話が、一斉に爆発して
ミサイル内に充満していた女体化のガスが、中央高校屋上と、校舎三階の一部を、一瞬で包み込んだ
…我ながら、よく間に合ったものだと思う
赤い靴は、自らを自画自賛したい気分だった
ガスの炸裂の瞬間…彼は、確かにTさんとの約束を守った
彼の契約者とリカちゃんを、己の作り出した異空間内へと、ガスを吸い込むよりも前に引っ張り込んだのだ
そこには、己の契約者と…もう一人、姿を見かけたナイスロリータを異空間に隔離させた
これで、彼女たちはガスを吸わずにすんでいるはずだ
赤い靴は、自らを自画自賛したい気分だった
ガスの炸裂の瞬間…彼は、確かにTさんとの約束を守った
彼の契約者とリカちゃんを、己の作り出した異空間内へと、ガスを吸い込むよりも前に引っ張り込んだのだ
そこには、己の契約者と…もう一人、姿を見かけたナイスロリータを異空間に隔離させた
これで、彼女たちはガスを吸わずにすんでいるはずだ
「……うん、頑張ったぞ、俺……!」
ぐら、と思考が揺れる
女体化のガスは、女性相手には強烈な媚薬効果を持っている
女体化している赤い靴には、このガスは強烈な媚薬の効果を表していた
ぐらぐらと揺れる思考を、必死に抑える
が、体を支えきれずに、ガックリと膝をついた
女体化のガスは、女性相手には強烈な媚薬効果を持っている
女体化している赤い靴には、このガスは強烈な媚薬の効果を表していた
ぐらぐらと揺れる思考を、必死に抑える
が、体を支えきれずに、ガックリと膝をついた
…ロリが助かったなら、それでいい
そう考えながら、赤い靴は己の状態を制御しようと、必死なのだった
そう考えながら、赤い靴は己の状態を制御しようと、必死なのだった
視界が、ショッキングピンクのガスで覆われている
けほ、と少しガスを吸い込んでしまい、黒服Dは咳き込んだ
…パワーストーンの結界を発動させるのが、間に合わなかった
自分は、今回の任務につくさいに、既に「征露丸」を飲んでいるから大丈夫だが、他の者達は……
せめて、はないちもんめの少女にも「征露丸」を飲ませたかったのだが、手元にあったのは一錠のみ
彼女に飲ませたかったのだが、彼女は「黒服が飲んで」と聞かず、自分が飲むしかなかった
けほ、と少しガスを吸い込んでしまい、黒服Dは咳き込んだ
…パワーストーンの結界を発動させるのが、間に合わなかった
自分は、今回の任務につくさいに、既に「征露丸」を飲んでいるから大丈夫だが、他の者達は……
せめて、はないちもんめの少女にも「征露丸」を飲ませたかったのだが、手元にあったのは一錠のみ
彼女に飲ませたかったのだが、彼女は「黒服が飲んで」と聞かず、自分が飲むしかなかった
……つまり
はないちもんめの少女も、無防備な状態で、このガスを吸ってしまっている訳……で……
はないちもんめの少女も、無防備な状態で、このガスを吸ってしまっている訳……で……
がし、と
己の足に、誰かがしがみ付いてきた事に、黒服Dは気づき…それが、はないちもんめの少女である事も、すぐに気づいた
己の足に、誰かがしがみ付いてきた事に、黒服Dは気づき…それが、はないちもんめの少女である事も、すぐに気づいた
「…くろ、ふく」
じっと
己を見上げてくる眼差しは、熱が篭っていて…
己を見上げてくる眼差しは、熱が篭っていて…
「っお、落ち着いてください。その効果は一時的なもののはずですから、すぐに消え……っ!?」
がし、と
反対側から腕にしがみ付いてきた、誰か
反対側から腕にしがみ付いてきた、誰か
「…黒服ぅ」
じっと、己を見上げてきているのは…「日焼けマシン」の契約者
…女体化しているから、その身に及んでいる効果は、当然媚薬で……!?
…女体化しているから、その身に及んでいる効果は、当然媚薬で……!?
「っふ、二人とも、落ち着いてください!冷静になって!?」
「…冷静よ、私たちは。誰よりもね…!」
「っつ、翼!あなたは元々男なのですから…っ」
「……お前、相手なら……いい……」
「…冷静よ、私たちは。誰よりもね…!」
「っつ、翼!あなたは元々男なのですから…っ」
「……お前、相手なら……いい……」
----この、混沌とした状況の中、彼らの会話は誰の耳にも届く事はなく
黒服Dがどうなったのかも、この濃すぎるガスのせいで、誰にも見えない
黒服Dがどうなったのかも、この濃すぎるガスのせいで、誰にも見えない
「今ほど、透視能力が欲しいと思った瞬間はねぇな」」
まピンクのガスの中
その効果を受けていない、黒服H
黒服Hは、マッドガッサー達が今までの被害者達を放置していたビルに乗り込む際に「征露丸」を飲んでいたのだ
混沌とした状況の中、それ故に彼は冷静だった
その効果を受けていない、黒服H
黒服Hは、マッドガッサー達が今までの被害者達を放置していたビルに乗り込む際に「征露丸」を飲んでいたのだ
混沌とした状況の中、それ故に彼は冷静だった
聞こえてくる、大きな鳥がはばたく音
恐らく、サンダーバードが降りて来て、一行を回収しているのだろう
サンダーバードのはばたきによって、ガスはある程度流されているはずなのだが…それでも視界は晴れない
一体、どれだけの量がここに充満しているのか
恐らく、サンダーバードが降りて来て、一行を回収しているのだろう
サンダーバードのはばたきによって、ガスはある程度流されているはずなのだが…それでも視界は晴れない
一体、どれだけの量がここに充満しているのか
「よーし、しっかり逃げろよー。「組織」も、某マッスル禿の事後処理で、少なくとも今はお前さん達を追いかける余裕はないからな」
聞こえてはいないだろう
そうわかっていながら、黒服Hは続ける
そうわかっていながら、黒服Hは続ける
「…しっかり生きろよ、辰也。お前さんが生き延びてくれんなら、とりあえず俺は満足だ」
はばたく音が遠ざかっていく
視界が効かない中、黒服Hはくっくっく、となんとも上機嫌に笑い続けていたのだった
視界が効かない中、黒服Hはくっくっく、となんとも上機嫌に笑い続けていたのだった
…この、混沌とした状況より、数分後
マッドガッサーのガスの解毒剤を持ったゲデが、屋上に到達した訳だが
彼は、解毒剤をばら撒くよりも前に…そのカオスな現状を見下ろし、ぐ!と親指をたてて
マッドガッサーのガスの解毒剤を持ったゲデが、屋上に到達した訳だが
彼は、解毒剤をばら撒くよりも前に…そのカオスな現状を見下ろし、ぐ!と親指をたてて
「グッジョォオオオブ!であるよ!か~~~っらからからからからからからから!!!」
と、愉快に笑ったのだそうな
なお、余談だが
意図して連れて行かれたのか、それとも、サンダーバードの足にでも引っかかったのか
「壁に耳あり」の契約者の姿がない事に誰かが気づくのは、大分後になってからだったと言う
意図して連れて行かれたのか、それとも、サンダーバードの足にでも引っかかったのか
「壁に耳あり」の契約者の姿がない事に誰かが気づくのは、大分後になってからだったと言う
to be … ?