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連載 - 正義の鉄槌-03

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正義の鉄槌 日常編 03



 正義の味方の朝は、早い。
 こんな風に言うと格好いいかもしれませんが、そうでもないのが実情というもの。

「ね、眠い……」

 昨日も何体か都市伝説を倒した関係で、睡眠時間が極端に短くなってしまいました。
 睡眠時間は昨夜21時から今朝5時まで。
 他人から見れば8時間は寝てるんじゃないかと言う話になると思いますが、その内5、6時間は力の代償としての睡眠時間になるので、正直寝た気がしません。
 普段ならもっとちゃんと睡眠時間を取れるのですが……。
 まぁ、この町に都市伝説が多い以上、それは仕方のない事かも知れませんね。

「…………おはよう」

 リビングへと入ると、既に起きていたのかアリスが出迎えてくれます。
 俺と違い、能力の使用に制限がない彼女にとっては昨夜の8時間はまるまる睡眠時間。
 何だか小ざっぱりした顔をしているのは、その関係でしょう。
 正直ちょっと羨ましいです。

*********************************************

 アリスと一緒に朝食を食べてから、外へ。
 大体5時40分くらいでしょうか。
 この時間から、俺たちの仕事……と言うより、ボランティアが始まります。

 基本的に行うのは、二手に分かれての地域の見回り。
 どんな都市伝説が、どんな時間に活動するのかを俺たちは把握していませんし、またこの町の都市伝説全員となると把握しようがありません。
 ですから、必然的に行う事になるのはただ闇雲にあたりを歩くだけ。
 それでも毎日のように都市伝説と遭遇できるのですから、この町は本当に奇妙な所だと思います。

 また、その中でも俺にしかできない仕事も一つ。
 そこでは俺の契約したリミッター以外のもう一つの都市伝説が必要になります。
 ただ、凡庸性はあるものの使用回数に制限があるせいであまり使う機会がない事も事実ですが。
 …………と。

「……おや、おや。今日は遭遇が早いですね」

 見上げると、あるマンションの屋上に影が一つ。
 都市伝説の気配はありません。
 つまり、彼は普通の一般人と言う事になりますが……。

「……わざわざフェンスの外側に立つ一般人となると、ねぇ」

 彼が立っているのは、安全用に設けられたフェンスの「外」
 つまり一歩でも外へと踏み出せばそのまま真っ逆さまになる事間違いなし。
 言葉そのまま地獄への一歩と言った所でしょうか。
 別に覚悟の上の自殺ならば俺も気にしませんが……一度助けて見ない事には分かりませんね。

 ……さて、この場合俺に出来る事は二つ。
 一つは、「人間にはリミッターがかけられている」を使用して彼を助ける事。
 もう一つは、俺の契約しているもう片方の都市伝説で彼を助ける事。
 どの道助ける事になるのは変わりませんが、その代償を考えると後者の方がこの場合は適任でしょう。
 今にも飛び降りそうな男を見て、小さく呟きます。

「…………『九死に一生』」

 その言葉が終わった途端、彼は飛び降りました。
 落ちて、落ちて、落ちて。
 物の数秒で、彼は地面へと激突しました。
 普通なら、18禁にでも指定されそうなスプラッタなシーンが展開される事でしょう。

「…………?」

 しかし、男は首をかしげて起き上がりました。
 ……その身に傷一つ負わずに。

 ――――九死に一生。
 ありとあらゆる「生命の危機」からその人を救ってくれる都市伝説。
 例えば、救急車の中で。
 例えば、交通事故の最中で。 
 一度使うと「リミッター」以上に精神を削られる、なんて代償こそありますが、その力はいかなる危機にも対応し、その命を助ける事が出来ます。
 例えば、この男性のように。

(さて……どうしますか)

 起き上がり、自分の身体を探っている男を見て、少しの思案をします。
 命を大切にしろ、と説教でもするか、はたまた神が助けてくれたんだと嘯くか。
 しばし悩んで……しかし、その必要はないようでした。
 マンションの玄関ホールから出てきた、一人の女性。
 血相を抱えて何かの入った封筒を握っている所を見ると、先程の男性の細君か、はたまた恋人か。

 うろたえる男性を見て、その女性を見て、俺はその場を後にしました。
 いかなる理由で命を捨てたのかは知りませんが、遺書だけ残して死ぬのは卑怯と言うものでしょう。
 あの後きっちり話し合って、それでもその結論が死であれば、俺も干渉する事はできません。
 いかに俺が命を助けようと、いくらでも死ぬ方法はあるのですから。

 今日の朝の仕事はこれくらいでしょうか。
 一度「九死に一生」を使った以上、一度家に帰るのが妥当と言うものです。
 家に帰ろうとして、ふっと、今日もあのサンタが来なかったな、と思い当りました。

 12月24日と25日の二日間。
 九死に一生を使う度、なぜかサンタクロースが現れました。
 例えば、車に轢かれかけたおばあさんの場合。
 例えば、火事に巻き込まれた少女の場合。
 結果として彼女たちはサンタが代わりに轢かれたり、焼かれたりする事で助かったわけですが、あれは一体何だったのでしょうか。
 クリスマスが終わってからもう一週間ほど経ちますが、25日を境にサンタが現れる事はなくなりました。
 ……クリスマス限定イベント、でしょうか?

 アリスが何だか会いたがっていたので出てきて欲しくはありますが……まぁ、答えの出ない問題を深く考えても仕方がありません。
 俺は携帯電話を取り出して、アリスに報告を始めました。
 今日もあのサンタはでませんでしたよ、と。

【終】




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