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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん-告白-01

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 日もそろそろ沈もうかという時刻、学校町内のとある小学校の女子トイレに青年の姿があった。
 トイレ内部が無人であることを確認した彼は、土足のまま個室の内の一つの前に立ち、呼びかける。
「≪赤マント≫、≪赤いはんてん≫。いるか? 寺生まれのTだが……」
 返事は男の声で為された。
「居るとも」
 声と共に先程までは誰もいなかったはずの個室の扉が開く。
 中にはそれぞれの名の通り、真っ赤なマントの若い男と、その膝の上に座った赤いはんてんの少女がいた。
 青年は現れた二人を見て「会えた会えた」とほっとした顔で呟く。
「住所が女子トイレなのはいいが詳細な場所は知らないとの話だったのでな、学校中の女子トイレをしらみつぶしに確かめなければならないかと思った」
「≪夢の国の地下トンネル≫から君が来るという話は聞いていたからね」
 呼びかけられたならばトイレ間の移動でそこに行けばいい。と≪赤マント≫。
 なるほど。と青年が思っていると≪赤いはんてん≫が首を傾げて話しかけてきた。
「あぅ……それで、なんの用なのですか?」
「ん、ああ、既に知っていることとは思うが」
 一瞬、何か言葉を選ぶような間があり、
「数日前、≪さっちゃんの歌の四番目≫が死んだ」
 結局青年はストレートに言い放った。
 直後、それぞれの思いに沈みこむかのような、あるいは黙祷を捧げるかのような沈黙が降りた。しかし青年が来た理由は二人とも薄々感付いていたのかそれほどの衝撃が走った様子もない。
 数秒後、動きが止まっていた≪赤マント≫が青年に訊ねた。
「なぜ、わざわざ君が私たちの所へその報告をしに来るのだね?」
「そうなのですよ。もう地下トンネルから私たちは話を聞いているのですよ?」
「それは君も承知しているのではないのかね?」
 そう、もう浅井たちの復讐の件は二人に話したと、この会見のアポとりのための電話で青年は黒服本人から聞いている。
 だから青年は「ん」と頷き。そして、
「しかしあの人はあやふやに情報を伝えそうだからな」
 彼の人柄を思い、困ったように笑う。
「彼女は……≪さっちゃんの歌の四番目≫は彼の新しい契約者が契約していた都市伝説の影響で契約者と共に逝ったが」
 一息、笑いを収め、
「その引き金を引いたのは俺だ」
 感情を殺した声で言った。
「……それは」
 ≪赤マント≫の言葉に青年は軽く相槌を打つ。
「俺が彼女の契約者が契約していた他の都市伝説を砕いたことで彼の崩壊は確定的になった」
 おそらくそれをしなければ浅井は、それがどんな形であれ、その身体の命が尽きる事は無かっただろう。しかし契約都市伝説が砕かれた事で構造を異形へと変異させた彼の身体の器官は崩壊した。そしてそれは、
「さっちゃんの崩壊にも繋がった」
 浅井の都市伝説は彼自身の思惑を超え、その力で呪力を上昇させていたさっちゃんをも巻き込んだ。つまり、
「あの子を殺したのは、俺だ」
「……フム」
 ≪赤マント≫は分かった。と言うように頷くと、
「どうも心配させているようだね」
 む、と青年が眉を微かに動かすのに微笑し、
「あいまいな情報では、もしかしたらあの子を殺したのは≪夢の国≫だと思われかねないとでも思ったのだろう?」
 まったく心配性だと笑い、
「この期に及んでまだあの≪夢の国≫に逆恨みをする気は無いよ」
「一応言っておくがさっちゃんの死は本当に俺が引き金を引いたようなものだ。あの子を庇って言ったわけではないぞ?」「本当に心配性のようだね、君は」
 愉快そうに笑い、「それに」と≪赤いはんてん≫の肩を軽く叩く。促されるように≪赤いはんてん≫は口を開けた。いろんな思いが錯綜しているであろう胸中で、しかし出てきたのは、
「≪さっちゃんの歌の四番目≫が、またあの≪夢の国≫を歪ませるようなことをしなくてよかったのですよ」
 どこか穏やかな言葉だった。
「……よかった、か」
「まあ契約者の男の方には文句の一つも言いたいところだがね」
 ロリに優しくない都市伝説と契約しおって、と呟く≪赤マント≫に、
「まったくだ」
 青年は苦笑して頷いた。
 と、スリッパを履く音が聞こえた。
 青年が視線を向けると、そこには生徒であろう女の子が青年と扉の開いたトイレへを見て目を丸くして動きを止めていた。
「……」
「……」
「……」
 場が無言に支配される。
 やがて女の子の凍結が解除されようとする。何故か女子トイレに居る大人の男を見て目を丸くし、大声を上げるために息を大きく吸う。そして「き」と声が発されようとした瞬間、
「待て、少女」
 そう言いながら青年はおもむろに工具を取り出した。
 レンチ、ドライバーと次々に工具が取りだされる様を見て不可解そうに首をかしげる女の子。青年は一つ深く頷き、
「トイレの修理中でな。悪いが他をあたってもらいたい」
 妙な説得力をもった笑顔で言った。
 その言葉に女の子は警戒顔から一転、納得顔で頷くとトイレを出て行った。
「素直で助かるな」
 女の子の気配が遠のくのを確認し、工具をしまいながら青年は言う。
「あぅ、周到な用意にこっちのほうがびっくりなのですよ」
 ≪赤いはんてん≫の言をさらりと流して、
「さて、流石に大人に来られるわけにもいかん。俺はこれで帰ろう」
 いらん事を言いに来て悪かった。お節介とでも思ってくれ。
 そう言いながらトイレから出る。そのまま校庭まで昇降口から堂々と出た所で、背後から声をかけられた。
「待ちたまえ」
 青年が振り向くと≪赤マント≫が一人で青年を追いかけて来ていた。
「? どうした?」
 青年が用向きを訊ねると≪赤マント≫は一つ咳払いし、
「≪さっちゃんの歌の四番目≫の件、押しつけたようになってしまってすまない」
 きまずそうに言った。
「秋祭りの時、君に≪さっちゃんの四番目≫について話したのは私なのだからね。変に気を揉ませたのではないかと……な」
 頭を掻きながら目を逸らし気味に言う≪赤マント≫へと青年は苦笑し、
「おかげで彼らの正体が掴みやすかった。感謝している」
「そうか、それならばいいのだが……」
「心配症は人の事を言えんな」
 青年は笑みで言う。「ほっといてくれ」と顔を背ける≪赤マント≫を見ながら青年は口惜しげに小さく言った。
「……こちらも、できれば消滅しない方法で決着をつけたかった」
 しかしそれにはあまりにも浅井が契約していた都市伝説は人に害が有り過ぎた。放っておけば、彼は人格を食われ、そして人を喰らう異形になるところだった。
「重ねて言うが、あまり気に病まないでくれたまえ」
 気遣うような≪赤マント≫の声に青年は「ああ」と応える。
「俺は大丈夫だ。死も、血も、慣れている」
「だが好きなわけでもあるまい」
「まあ、そうだな……」
 言って歩きだす。互いにこのまま謝り合戦になっても詮無いことだ。
「今度は暇な時にでも来たまえ」
 歓迎しようという言葉に後ろ手に手を振って青年は応え、小学校を後にした。
 校門を出た所でポツリと呟く。
「血は好きではないが……」
 それでも、やはり慣れている。そういう人生を送って来たのだから。
 だが、
「……嫌われるのは存外、堪えるものだ」
 寂しげに笑んだ。

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