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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-39

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「よ~ぉ、元気かぁ?」
「あ、黒服さん」

 …明日 真が、ハーメルンの笛吹きとの戦いを終え、再び入院したその翌日 
 どこで知ったのか、彼の担当である黒服Hが、病室に彼を見舞いに来た
 普段は短いその髪は、途中でいい感じのナースの姿でも見たのかにょろり、若干伸びている

「あぁ、思ったよか元気そうだな。ほら、これ、お前さんたち二人で食べとけ」
「っとと……黒服さん、メロン投げ渡すのは危険。危ない」

 気軽に投げ渡された大玉のメロンを、真の看病をしていた恋路が慌ててキャッチした
 全く持って、投げ渡していいものじゃない
 人にぶつかったら危ないし、床に落ちて割れたら勿体無いではないか

「いや、悪い悪い」

 恋路の抗議に、黒服はくっく、と笑うだけだ
 本当に悪かったと思っているかどうか、も怪しい

 黒服Hは嘘吐きだ
 彼とそれなりの付き合いがある者ならば、よほどのお人好しでない限り…もしくは、彼がそう言った面を、その相手に見せないよう努力していない限り、すぐにわかる事実である
 常に、虚実入り混ぜて話してきて、どこまでが嘘で、どこまでが真実か悟らせない
 何を思ってそんな話し方をしてくるのか、それは誰も知らないし、知ろうともしない
 こいつはこう言う男なのだ、と皆、大抵そこで考える事を止めてしまう

「…で、お前さん、誰にやられたんだ?」
「あ……えぇと」

 正直に、答えるべきか、否か
 真は悩む
 黒服の前に、再び見舞いに来ていた担任教師に対しては、正直に答えられなかった
 当たり前だ
 恋人を救うために、殺人鬼と戦いにいってやられた、などと言って、信じてくれる者がいるかどうか
 ただ、それは、担任教師は都市伝説の存在を知らない……と、少なくとも真はそう思っている……からであって、この黒服ならば、そう真が言えば信じるだろう
 そして、その相手が誰なのか?
 即座に、認識してくるはずだ
 …それによって、黒服がどんな行動をとってくるか
 予測できず、真が答えに悩んでいると

「俺が予想するに、候補・1 野生の兄貴」
「違うからっ!?」

 思わず、突っ込み混じりに否定する
 違う!!
 っつか、野生の兄貴って何だ!?

「候補・2 バー「黄金の薔薇と髭」の店主」
「誰!?」

 今度は恋路が突っ込んできた
 何だ、知らないのか
 あそこの店主、その気になれば都市伝説に頼らなくても都市伝説相手に無双できるんだぞ

「ま、ここまでは冗談として、だ」

 くっく、と二人の反応を充分楽しんで、黒服は笑った
 三面鏡の少女相手の時もそうだが、相手の反応を見るのが楽しくて仕方ない
 これは、この黒服にとって、ちょっとした楽しみの一つでもあった

「候補・3 ハーメルンの笛吹き男」
「…………っ」

 真の反応を、見て
 あぁ、やっぱりな、と確信する
 まったく、何をやったのやら、あの男
 ただでさえ、真にとってハーメルンの笛吹き男は仇なのだ
 どんな事であれちょっかいをだせば、確実に真は激昂する
 己の危険も顧みずに、ハーメルンの笛吹き男と戦おうとするだろう
 …たとえ、怪我が完治していない状態だったとしても、だ

(…人の担当契約者に、ちょっかい出さないでほしいもんだ)

 つい最近、穀雨 吉静についての情報を流した時のことを思い出す
 あの時、ついでに上田には尻に気をつけろ的な忠告をしておいたが…しなくても良かっただろうか
 折角なので、自分の担当契約者を傷つけた仕返しとして、K-No.232にあいつの住所でも教えてやろうか
 そんな事を考える

 誤解されがちだが、この黒服は己の担当契約者に対しては優しい
 それが、女ではなかったとしても、関係ないのだ
 担当になったからには責任を持つ、という面が、こんな男でもない訳ではないのである


 それは、とある黒服を羨んで
 絶対に、あの男のようにはなれないだろう、と考えながらも
 しかし、それに近づきたいと願った、そのカケラでもあって


「ま、無茶するなよ?お前さんに死なれたらこっちも困るし…」

 ちらり
 黒服は、恋路に視線をやって、笑った

「それに、あれだ。お前さんが死んだら、この子俺がもらうぞ」
「!?」

 がばっ!!!
 黒服の言葉に、真は勢いよく上半身をあげて……痛みに、うめいている
 慌てて、恋路が真をそっとベッドに寝かせた
 くっくっく、と黒服はその反応に、また笑う

「黒服さん、冗談はやめてくださいね?」

 き、と恋路に睨まれ、黒服は肩をすくめて見せた
 半分冗談、半分本気だった訳だが
 いやぁ、いい反応だった

「悪い悪い……まぁ、正義の味方もほどほどに、な?悪いとは言わないが、正義の味方が死んじまったら、正義の味方の救いを待つ連中はどうなっちまうんだ」

 さて、と
 病室を後にしようとする黒服
 最後に…真に、告げる

「お前さんが死んで、泣いてくれるような奴がいるんだったら。死ぬような事はするなよ?」

 ……お前は、俺とは違うんだから

 小さく、そう付け加えて……黒服は、病室を後にした
 かつん、かつん、と廊下に革靴の音が響く

「……真以外にも、契約者の気配があるな……まぁ、学校町だし、おかしい事じゃねぇか…」

 病院に入った時と、病室から出る時
 無意識に、病院内の都市伝説と契約者の気配を感知した
 癖のようなものだ
 自分の身を護る為の

 …だが、それがこの黒服にとって、今は仇ともなってしまう
 都市伝説や契約者の気配を感知するのは、彼の「組織」の黒服としての能力だから

「………っ」

 体の内部に感じた痛み
 黒服は、すぐ傍の手洗い場に入った
 周りに、誰もいない
 それを確認して

「------っかは」

 洗面台の前で、げほげほと咳き込む
 その口から吐き出された血が、洗面台を赤く染め上げた
 ごぽごぽと、血は留まる事なく吐き出され続け、黒服は苦しげにうめいた
 体の内部が、ぐちゃぐちゃになっている感覚
 咳き込みながら、黒服はスーツの内側からピルケースを取り出した
 中から、ドス黒い錠剤を取り出し、口に放り込む
 げほ、とまだしばし吐血は続いたが………それでも、ようやく落ち着いた

「……あー………くそ」

 けは、と口元の血をぬぐう
 メンテナンスをサボっている影響が、最近強くなってきている
 それでも、こうやって錠剤を摂取する事で体は保たれているが…そろそろ、ヤバイだろうか
 お嬢さんに、内部に仕込んだ「切り札」について、ほんの少しでも放して、まともにメンテナンスを受けた方がいいのかもしれない

「…あぁ、でも…勝手にこんなもん仕込んだと知れたら、怒られるかね…」

 …「組織」の黒服としての力さえ、使わなければ、少しはマシなのだが…
 それでも、自分の体の内部の状態を把握し、黒服は小さく苦笑した

 自分の状態なのだ、自分が一番わかっている
 わかっているが、止める訳にはいかないのだ


 己の目的の為に
 己の復讐の為に


「せめて…あの子や、真の前で血ぃ吐かないよう、気をつけねぇとな…」

 洗面台の血を洗い流し、黒服はそこを後にした
 完全にはぬぐいきれぬ血の匂いを、かすかに残して





to be … ?


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