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連載 - 同族殺しの口裂け女-04

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同族殺しの口裂け女 04


 暗く、深い血の池の中で。
 同族殺しの口裂け女は、小さく目を開いた。
 もう二度と、開かれる事がないと思っていた目がぼんやりと、赤く、そして暗い風景を捉える。
 同族殺しは、まだ生きていた。 

「何故、生きているの……?」

 亡者によって下へと引っ張られ続けながら、同族殺しは不思議そうに呟く。
 その深さは、既に生身の人間ならとっくに内臓が潰れる程の深さにまで到達しようとしていた。
 しかしそれでも、同族殺しは死ねなかった。
 酸欠で脳はくらくらするし、水圧で身体は万力に挟まれたかのような痛みを訴えているのに、彼女は死なず、下降していく。

「何故、私は死ねないの……?」

 痛みに顔をしかめる同族殺しは、知らない。
 無意識のうちに、勝手に発動した能力が、彼女の生命を僅かな所で生きながらえさせているという事実に、気付かない。
 それは、早々楽には殺さないという、今まで同族殺しが取りこんできた口裂け女の怨念のようにすら感じられる。

「私はまだ、死んではいけないの……?」

 そして、痛みは彼女の精神を蝕んでいく。
 そこから逃れるために、同族殺しは再び深い闇へとその精神を堕としていく。
 彼女の目にあるのは、絶望。
 安らかな死さえ享受する事の出来ない、絶望。

「あの、口裂け女……」

 絶望から、同族殺しは小さな勘違いをした。
 自分が死ねないのは、未練があるからだ、と。
 小さな未練が、彼女を死から救い、そして苦しめているのだ、と。

「もう一度、会わなければ、ならない」

 彼女の言葉は細切の泡となり、血の池を舞う。
 正常に戻った思考で、同族殺しは一人の口裂け女を想った。
 自分と対極とすら取れる生活をしている、あの口裂け女を。

「私が、眠るには、もう一度……!」

 決して逃れる事の出来ないはずの空間を前に、しかし同族殺しはひるまない。
 自分が死ねないのは運命だと、彼女は思っていた。
 そしてその運命は、あの口裂け女へ向けて一直線に伸びている。
 だから、同族殺しはひるまない。

「ねぇ――――」

 抜け出した先にあるのは、安息か、絶望か。
 今の彼女に、それを知る術はない。
 故に、彼女は言葉を紡ぐ。
 その先にある物を、その目で確かめるために。

「――――私、きれい?」

【終】









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