ドクター47
「貴様が何者かなど知った事か」
何処から取り出したのか、呂布の手に豪壮な弓が握られていた
「契約者が望みを託したのは俺の武だ。邪魔立てするならその全てを打ち払うのみよ」
瞬時に番えられた矢が、風切り音と共に放たれる
その矢を右手で打ち払う追撃者
方天画戟という大業物すら触れただけで消滅させたその手は、放たれた矢も容易く崩壊させる
「まず、俺が信じるのは俺自身の武のみ。次に、名乗られたころで貴様など俺は知らぬ。そして何より」
呂布の腕が、消えたように見えた
それほどの速さで次々と放たれた矢が追撃者の背後にあった電柱を貫き、瞬きをするほどの間に針鼠のように変えてしまった
「自らが俺よりも強いと信じるその目が気に食わん」
「その割に、矢をこちらに向けて撃ったのは一発だけなのね」
「こちらの技量を見せたのは、先刻の手加減の借りを返したまでだ」
改めて番えられた矢が、ぴたりと追撃者に向けられる
「初撃で貴様の動きは見切った。右手だけでは今のような連射は捌き切れまい」
「別に消滅させなくても矢は避けられるわよ?」
その余裕に対する返事とも言わんばかりに、放たれた矢がアスファルトを抉る
「その女給を守りながらでもか?」
「ちょ!? 俺ごと撃つ気!?」
涙目で暴れる犬耳メイドにも全く動じた様子もなく、新たな矢を番えた弓を一息で引き絞る
「選べ。その女給を盾に戦うか、その女給を捨てて戦うか」
「戦わない選択肢は無いのね。おねーさん悲しいわ」
「放たれた矢は止まらぬものよ!」
「ストーップ! お願いだから俺を挟んで喧嘩しないで、俺の為に争わないでー!?」
そんな悲鳴を無視して矢の初弾が放たれると同時に、犬耳メイドが空中に放り投げられる
「のわ―――――――――っ!?」
放たれた矢を次々と回避し、その身に迫るものを弾き落し、あるいは消し飛ばす
「流石に連射ができるような機関銃ほどの速度は無いよね!」
「あの男が使っていたような鉄礫を飛ばす武器の事か! 確かにな!」
だが回転や撓りを加えた矢は銃弾にはない動きで弾道を変化させ
更には合間合間に二本三本と同時に番えられた矢が、動きを先読みするかのように逃げ道を撃ち貫いていく
「だが、真っ直ぐにしか飛ばぬ小さな礫と一緒にするな!」
「うわっと、おおお? 器用ねー、おねーさん感心しちゃうなこれは」
「あんたら戦いに夢中なのは良いけどさ! 俺、この高さから落ちたら割と死んじゃう普通の人間なんですけど!?」
二階建ての住宅の屋根を見下ろす高さまで放り投げられた犬耳メイドが、眼下で人外の戦闘を繰り広げている二人に向かって叫び
僅かな浮遊感の直後に地面に向かって一直線に落下していった
「落ちる落ちる落ちる落ちる落ちる落ち、るっ!?」
「あ、一瞬忘れてた」
矢を避ける勢いついでに、落ちてきた犬耳メイドを片手でキャッチする追撃者
だがその瞬間、伸ばした腕目掛けて放たれた矢が、ギリギリ掠めて傷を付ける
痛みでも、傷を付けられた事でもなく、純粋に攻撃に対する反射でほんの僅かに身が強張ったその瞬間
「おぐぅっ!?」
腰の後ろにあるエプロンの結び目を貫いた矢が、その勢いで犬耳メイドを吹き飛ばして電柱に縫い付けた
「あああああ危ない状況は変わってないから!? 俺どうやって降りるのこれ!」
宙吊りになって喚く犬耳メイド
その眼前に何時の間にか、へし折った道路標識を手にした呂布の姿が迫っていた
「のおおおおおおおおおおおおおお!?」
道路標識が犬耳メイドのすぐ上と下をもの凄い勢いで振り抜かれ
「ふんっ!!!」
投げ槍のように投げつけられた道路標識が、犬耳メイドが縫い付けられていた電柱の一部を達磨落しのように吹き飛ばした
その勢いで電柱のコンクリートが砕け、突き刺さっていた矢から解放された犬耳メイドが呂布の腕に抱えられて地面に降ろされる
「も……もうやだこの人外決戦……」
すっかり腰が抜けてぐったりとした犬耳メイドを無視して睨み合う呂布と追撃者
「俺に与えられた目的は『この町の強き者と戦い打ち倒す事』だ。お前のような強者がいるのなら、益々以って止まる事はできんな」
月光を背に仁王立ちする呂布と、それに対峙する追撃者
「どっちが勝っても、結局俺って解放されないんだよね……」
犬耳メイドの呟きが、夜風に流されて消えていった
何処から取り出したのか、呂布の手に豪壮な弓が握られていた
「契約者が望みを託したのは俺の武だ。邪魔立てするならその全てを打ち払うのみよ」
瞬時に番えられた矢が、風切り音と共に放たれる
その矢を右手で打ち払う追撃者
方天画戟という大業物すら触れただけで消滅させたその手は、放たれた矢も容易く崩壊させる
「まず、俺が信じるのは俺自身の武のみ。次に、名乗られたころで貴様など俺は知らぬ。そして何より」
呂布の腕が、消えたように見えた
それほどの速さで次々と放たれた矢が追撃者の背後にあった電柱を貫き、瞬きをするほどの間に針鼠のように変えてしまった
「自らが俺よりも強いと信じるその目が気に食わん」
「その割に、矢をこちらに向けて撃ったのは一発だけなのね」
「こちらの技量を見せたのは、先刻の手加減の借りを返したまでだ」
改めて番えられた矢が、ぴたりと追撃者に向けられる
「初撃で貴様の動きは見切った。右手だけでは今のような連射は捌き切れまい」
「別に消滅させなくても矢は避けられるわよ?」
その余裕に対する返事とも言わんばかりに、放たれた矢がアスファルトを抉る
「その女給を守りながらでもか?」
「ちょ!? 俺ごと撃つ気!?」
涙目で暴れる犬耳メイドにも全く動じた様子もなく、新たな矢を番えた弓を一息で引き絞る
「選べ。その女給を盾に戦うか、その女給を捨てて戦うか」
「戦わない選択肢は無いのね。おねーさん悲しいわ」
「放たれた矢は止まらぬものよ!」
「ストーップ! お願いだから俺を挟んで喧嘩しないで、俺の為に争わないでー!?」
そんな悲鳴を無視して矢の初弾が放たれると同時に、犬耳メイドが空中に放り投げられる
「のわ―――――――――っ!?」
放たれた矢を次々と回避し、その身に迫るものを弾き落し、あるいは消し飛ばす
「流石に連射ができるような機関銃ほどの速度は無いよね!」
「あの男が使っていたような鉄礫を飛ばす武器の事か! 確かにな!」
だが回転や撓りを加えた矢は銃弾にはない動きで弾道を変化させ
更には合間合間に二本三本と同時に番えられた矢が、動きを先読みするかのように逃げ道を撃ち貫いていく
「だが、真っ直ぐにしか飛ばぬ小さな礫と一緒にするな!」
「うわっと、おおお? 器用ねー、おねーさん感心しちゃうなこれは」
「あんたら戦いに夢中なのは良いけどさ! 俺、この高さから落ちたら割と死んじゃう普通の人間なんですけど!?」
二階建ての住宅の屋根を見下ろす高さまで放り投げられた犬耳メイドが、眼下で人外の戦闘を繰り広げている二人に向かって叫び
僅かな浮遊感の直後に地面に向かって一直線に落下していった
「落ちる落ちる落ちる落ちる落ちる落ち、るっ!?」
「あ、一瞬忘れてた」
矢を避ける勢いついでに、落ちてきた犬耳メイドを片手でキャッチする追撃者
だがその瞬間、伸ばした腕目掛けて放たれた矢が、ギリギリ掠めて傷を付ける
痛みでも、傷を付けられた事でもなく、純粋に攻撃に対する反射でほんの僅かに身が強張ったその瞬間
「おぐぅっ!?」
腰の後ろにあるエプロンの結び目を貫いた矢が、その勢いで犬耳メイドを吹き飛ばして電柱に縫い付けた
「あああああ危ない状況は変わってないから!? 俺どうやって降りるのこれ!」
宙吊りになって喚く犬耳メイド
その眼前に何時の間にか、へし折った道路標識を手にした呂布の姿が迫っていた
「のおおおおおおおおおおおおおお!?」
道路標識が犬耳メイドのすぐ上と下をもの凄い勢いで振り抜かれ
「ふんっ!!!」
投げ槍のように投げつけられた道路標識が、犬耳メイドが縫い付けられていた電柱の一部を達磨落しのように吹き飛ばした
その勢いで電柱のコンクリートが砕け、突き刺さっていた矢から解放された犬耳メイドが呂布の腕に抱えられて地面に降ろされる
「も……もうやだこの人外決戦……」
すっかり腰が抜けてぐったりとした犬耳メイドを無視して睨み合う呂布と追撃者
「俺に与えられた目的は『この町の強き者と戦い打ち倒す事』だ。お前のような強者がいるのなら、益々以って止まる事はできんな」
月光を背に仁王立ちする呂布と、それに対峙する追撃者
「どっちが勝っても、結局俺って解放されないんだよね……」
犬耳メイドの呟きが、夜風に流されて消えていった