ドクター52
「こんにちは、犬メイドです」
セーフハウスのソファーの上で、下着姿でぐったりと横たわっている犬メイド
散々な戦闘に巻き込まれた事により薄汚れボロボロになった服で朝食やら昼食やらの支度も出来ず、とりあえず下着姿にエプロンという格好でメイドとしての仕事を果たしていた
新しい服の調達も現状ではままならず、出歩いてまた攫われても困るという事からメイド業に集中しているのだが
視線の先には、脱ぎ捨てられたボロボロになったメイド服の上に、ちょこんと鎮座した一体の悪霊
しかし一体と言っても、そのサイズは片手で包めるほどの小さなものだった
先日、部屋に戻って一息つき、服を脱いだ直後にスカートの裾から転がり落ちてきたのだが
小さくとも悪霊は悪霊、近付こうとすれば「おー」とも「あー」ともつかない声を出してしっかりと威嚇してくる
ちなみに現れた直後に噛み付こうとでもしたのか大口を開けて襲い掛かってきたのだが、傍にいた呂布の一睨みで自発的な攻撃はしないようになっていた
「ぶっちゃけどうすんだこれ……返しに行こうにも、あいつらには絶対関わりたくないし」
ソファーの上にうつ伏せになって尻尾をぱたぱたと振り、思案に耽る
「つーか、んな事より呂布の背後にいる奴についてだな。そっちを片付けないとマジでずっとこのままにされちまう」
犬メイドの目がすうっと細められ
その聴覚がもの凄い勢いで広範囲にばら撒かれていく
車の走行音、テレビ番組の音、学生達の雑談、独り者の恨み言、仕事中の愚痴、主婦達の井戸端会議、ゲームのBGM、犬の遠吠え、女の独り言、猫の喧嘩、雀の鳴き声
「ん?」
数百数千の音を感知しながら、それらを聞き分けて僅かに気になった声に意識を集中する
《――に気配は無し……この辺りだとは思ったんだが》
声に聞き覚えは無い
だが何かを探るように僅かながら警戒の色が混じった声
僅かな衣擦れと足音だけが聞こえる中、突然その動きが荒くなり、そして倒れる音が聞こえた
《『組織』の黒服か》
聞こえる無機質な男の声
そしてそれに続く複数の声
「こいつはまさか……って、痛ってええええええええええ!?」
何時の間にか近付いてきてがりがりと耳に噛り付いてきた小悪霊を、ぶんぶんと振り払おうとするが物理的に触れる事が出来ずに転げまわるだけしかできなかった
「呂布の野郎は普通に振り解いてなかったか!? こいつ、ちょ、離れやがれっ!」
どたばたと転げ回る犬メイド
「五月蝿いぞ。隣近所に迷惑だと思わんのか」
バスタオルを首に掛けて風呂場から出てきた呂布が、訝しげな視線を向けてくるが
「お前に言われたかねぇよ!? 痛っ、だだだだだ! 齧るな齧るな齧るな!」
涙目で怒鳴り返し、暴れ回る犬メイド
「黙れ。俺はこれから寝る、邪魔になるようなら斬り捨てるぞ」
その言葉に、小悪霊は噛む力を緩め、渋々といった感じで犬メイドから離れる
「ったく、お前のせいで俺が怒られて……つーか先刻の音の出所見失った!?」
慌てて能力で拡散させた聴覚に意識を向けるが、能力を気取られて耳を潰されたのか、既に事は収まってしまったのか、先程の声は既に聞こえなくなっていた
「ああくそ、手掛かりっぽかったのに」
ソファーの上で頭を抱え丸くなる犬メイド
「服も新調しなきゃいかんし、呂布にも武器の調達も頼まれてんだよな……つーか戟とか作ってるとこあんのかよ」
しばらく無言で考えた後
「……俺も寝よ」
犬メイドは考えるを止めて布団に潜り、様々な疲労ですぐに眠りに落ち
温もりを求めてか、精気を求めてか、はたまた別の理由か、その豊満な胸の間に潜り込んでいた小悪霊の存在に気付いて大騒ぎになるのは目を覚ましてからであった
セーフハウスのソファーの上で、下着姿でぐったりと横たわっている犬メイド
散々な戦闘に巻き込まれた事により薄汚れボロボロになった服で朝食やら昼食やらの支度も出来ず、とりあえず下着姿にエプロンという格好でメイドとしての仕事を果たしていた
新しい服の調達も現状ではままならず、出歩いてまた攫われても困るという事からメイド業に集中しているのだが
視線の先には、脱ぎ捨てられたボロボロになったメイド服の上に、ちょこんと鎮座した一体の悪霊
しかし一体と言っても、そのサイズは片手で包めるほどの小さなものだった
先日、部屋に戻って一息つき、服を脱いだ直後にスカートの裾から転がり落ちてきたのだが
小さくとも悪霊は悪霊、近付こうとすれば「おー」とも「あー」ともつかない声を出してしっかりと威嚇してくる
ちなみに現れた直後に噛み付こうとでもしたのか大口を開けて襲い掛かってきたのだが、傍にいた呂布の一睨みで自発的な攻撃はしないようになっていた
「ぶっちゃけどうすんだこれ……返しに行こうにも、あいつらには絶対関わりたくないし」
ソファーの上にうつ伏せになって尻尾をぱたぱたと振り、思案に耽る
「つーか、んな事より呂布の背後にいる奴についてだな。そっちを片付けないとマジでずっとこのままにされちまう」
犬メイドの目がすうっと細められ
その聴覚がもの凄い勢いで広範囲にばら撒かれていく
車の走行音、テレビ番組の音、学生達の雑談、独り者の恨み言、仕事中の愚痴、主婦達の井戸端会議、ゲームのBGM、犬の遠吠え、女の独り言、猫の喧嘩、雀の鳴き声
「ん?」
数百数千の音を感知しながら、それらを聞き分けて僅かに気になった声に意識を集中する
《――に気配は無し……この辺りだとは思ったんだが》
声に聞き覚えは無い
だが何かを探るように僅かながら警戒の色が混じった声
僅かな衣擦れと足音だけが聞こえる中、突然その動きが荒くなり、そして倒れる音が聞こえた
《『組織』の黒服か》
聞こえる無機質な男の声
そしてそれに続く複数の声
「こいつはまさか……って、痛ってええええええええええ!?」
何時の間にか近付いてきてがりがりと耳に噛り付いてきた小悪霊を、ぶんぶんと振り払おうとするが物理的に触れる事が出来ずに転げまわるだけしかできなかった
「呂布の野郎は普通に振り解いてなかったか!? こいつ、ちょ、離れやがれっ!」
どたばたと転げ回る犬メイド
「五月蝿いぞ。隣近所に迷惑だと思わんのか」
バスタオルを首に掛けて風呂場から出てきた呂布が、訝しげな視線を向けてくるが
「お前に言われたかねぇよ!? 痛っ、だだだだだ! 齧るな齧るな齧るな!」
涙目で怒鳴り返し、暴れ回る犬メイド
「黙れ。俺はこれから寝る、邪魔になるようなら斬り捨てるぞ」
その言葉に、小悪霊は噛む力を緩め、渋々といった感じで犬メイドから離れる
「ったく、お前のせいで俺が怒られて……つーか先刻の音の出所見失った!?」
慌てて能力で拡散させた聴覚に意識を向けるが、能力を気取られて耳を潰されたのか、既に事は収まってしまったのか、先程の声は既に聞こえなくなっていた
「ああくそ、手掛かりっぽかったのに」
ソファーの上で頭を抱え丸くなる犬メイド
「服も新調しなきゃいかんし、呂布にも武器の調達も頼まれてんだよな……つーか戟とか作ってるとこあんのかよ」
しばらく無言で考えた後
「……俺も寝よ」
犬メイドは考えるを止めて布団に潜り、様々な疲労ですぐに眠りに落ち
温もりを求めてか、精気を求めてか、はたまた別の理由か、その豊満な胸の間に潜り込んでいた小悪霊の存在に気付いて大騒ぎになるのは目を覚ましてからであった