秋祭り一日目の夕方、そろそろ晩飯でも食って帰ろうかという頃。
Tさんの携帯に電話がかかってきた。
Tさんは一度画面を見ると、通話ボタンを押す。
「黒服さん?」
どうも黒服さんからの電話のようだ。二、三言話すとちょっと待ってくれと言い、Tさんは神社の外れの森の中まで入って行った。当然俺もリカちゃんも付いて行く。
Tさんは携帯をスピーカーモードに入れると、車座になった俺たちの真ん中に(三人しかいないが、更に一人は人形だが)置く。
携帯からは最近耳になじむ程聞きなれた感のある黒服さんの声が聞こえる。
『まず、≪夢の国≫ですが』
ん、とTさんうなずき、
「どうも明日侵攻してくるらしいな」
『知っておられましたか』
エンジェルさんのおかげで、とTさん。
俺は未だにあのおっさんをエンジェルと呼称することに不満があるのだがまあそんなことはよろしい。
「そっちでも二日目に侵攻があると言っているということは、ほぼ確定情報ということでいいのか?」
『警戒するに越したことは無いでしょうが、おそらくそれで問題ないでしょう』
くそ、あのおっさん有能なのか。
「了解、≪夢の国≫への殴り込みの時だが、」
付き合ってくれるか? とやや窺うように言うTさん。
やっぱり無理難題を押し付けた引け目があるらしい。
『ええ、お付き合いいたしましょう』
「助かる」
安心したように息を吐く。
ん? 黒服さん、なにかスッキリしたような声だな。休憩でもがっつりとったのかな?
『それと……』
「?」
『私自身が都市伝説として他者と契約したため、私は今、以前自己防衛のために無意識に封じ込めていた過去のことを思い出しています。それをお話しいたしますので聞いてください』
内容はなんというか、衝撃的だった。
黒服さんは≪組織≫の黒服であり、また、≪夢の国の黒服≫であること。黒服さんは人間である時に≪夢の国の地下トンネル≫と≪夢の国の地下カジノ≫と契約していたこと。≪夢の国≫と戦った時に瀕死になった黒服さんを気遣って≪夢の国≫に呑まれていない地下カジノは契約を解除、黒服さんが≪夢の国≫に取り込まれることを防ぎ、代わりに≪組織≫の黒服になったこと。
更に契約によって少し便利パワーもアップしたらしい。
≪夢の国の地下トンネル≫へのタイムラグなしでの移動、夢の国の関係者であることを利用した≪夢の国≫に対する十秒程度の無敵性、≪夢の国≫の所持能力の把握。そして、
≪組織≫の管理下からの独立、つまりは≪組織≫という都市伝説の所有物ではなくなったということ。
それでも黒服さんは≪組織≫をまだ抜けてはいないらしい。話聞く限りじゃあ相当きな臭いところなのによくやるよ。
Tさんの携帯に電話がかかってきた。
Tさんは一度画面を見ると、通話ボタンを押す。
「黒服さん?」
どうも黒服さんからの電話のようだ。二、三言話すとちょっと待ってくれと言い、Tさんは神社の外れの森の中まで入って行った。当然俺もリカちゃんも付いて行く。
Tさんは携帯をスピーカーモードに入れると、車座になった俺たちの真ん中に(三人しかいないが、更に一人は人形だが)置く。
携帯からは最近耳になじむ程聞きなれた感のある黒服さんの声が聞こえる。
『まず、≪夢の国≫ですが』
ん、とTさんうなずき、
「どうも明日侵攻してくるらしいな」
『知っておられましたか』
エンジェルさんのおかげで、とTさん。
俺は未だにあのおっさんをエンジェルと呼称することに不満があるのだがまあそんなことはよろしい。
「そっちでも二日目に侵攻があると言っているということは、ほぼ確定情報ということでいいのか?」
『警戒するに越したことは無いでしょうが、おそらくそれで問題ないでしょう』
くそ、あのおっさん有能なのか。
「了解、≪夢の国≫への殴り込みの時だが、」
付き合ってくれるか? とやや窺うように言うTさん。
やっぱり無理難題を押し付けた引け目があるらしい。
『ええ、お付き合いいたしましょう』
「助かる」
安心したように息を吐く。
ん? 黒服さん、なにかスッキリしたような声だな。休憩でもがっつりとったのかな?
『それと……』
「?」
『私自身が都市伝説として他者と契約したため、私は今、以前自己防衛のために無意識に封じ込めていた過去のことを思い出しています。それをお話しいたしますので聞いてください』
内容はなんというか、衝撃的だった。
黒服さんは≪組織≫の黒服であり、また、≪夢の国の黒服≫であること。黒服さんは人間である時に≪夢の国の地下トンネル≫と≪夢の国の地下カジノ≫と契約していたこと。≪夢の国≫と戦った時に瀕死になった黒服さんを気遣って≪夢の国≫に呑まれていない地下カジノは契約を解除、黒服さんが≪夢の国≫に取り込まれることを防ぎ、代わりに≪組織≫の黒服になったこと。
更に契約によって少し便利パワーもアップしたらしい。
≪夢の国の地下トンネル≫へのタイムラグなしでの移動、夢の国の関係者であることを利用した≪夢の国≫に対する十秒程度の無敵性、≪夢の国≫の所持能力の把握。そして、
≪組織≫の管理下からの独立、つまりは≪組織≫という都市伝説の所有物ではなくなったということ。
それでも黒服さんは≪組織≫をまだ抜けてはいないらしい。話聞く限りじゃあ相当きな臭いところなのによくやるよ。
「――――――≪夢の国≫の黒服、か」
『ええ、なんとも因縁深いものです』
「今回Tさんにこき使われたのもそこら辺の縁かねえ?」
「……奇縁だな」
『まったくです』
若干気まずそうなTさんと軽く笑う黒服さん。
そういや、
「契約したって、誰と?」
気になるので訊いてみる。
『ええ、あなた方もあったことがあると思いますが、はないちもんめの契約者の少女と金髪の青年です』
「ほぅ」
「へー……」
あの嬢ちゃんと、禁断の人か!
「ふたりとも、なの?」
リカちゃんがナイスポイントをついた質問を入れる。
『ええ、多重契約のリスクを抑えるために』
黒服さんの言葉にえ? と思う。
「いくつもの都市伝説と契約するのって、危険なの?」
『ご存じないのですか?』
「言ってなかったか?」
おいおいTさんよ、
「聞いてね―」
あ、なんか電話の向こうからも呆れた雰囲気が伝わってくるぞ?
ま、いい、うん今俺が無事ならなんだかんだで気を使われていたと、そういうことなんだろう。きっと。
「あー、まあ契約者はまだ容量的には大丈夫だ。俺はそもそもそんなに要領を食わんし、リカちゃんも生まれたばかりで契約したからそれほど要領を食ってはいないはずだ」
「Tさんも食わないの?」
リカちゃんはともかく、あんたはトンデモ人間のくせに?
「ああ、元来≪寺生まれで霊感の強いTさん≫なんていうのは普通には噂になることもない、そもそも都市伝説ですらないような話でしかない。この力のほとんどはケサランパサラン由来だから、人間だった俺自身の容量は食われているが契約者の容量は大して食われていない」
黒服さんとの契約で、はないちもんめの契約者とチャラい兄ちゃんが負担したのは≪黒服≫さん一つ分の容量だが黒服さんは≪夢の国の地下トンネル≫を使えるのと同じだな。とTさん。
「へぇ~、よく分かんねえけど、つまり、エコなんだな」
「……まあ契約者の生態に優しいという意味では、たぶん」
Tさんは額に手を当てて頭が痛そうにしている。なんだ? 疲れてるのか?
とまれ、
「作戦だが…………」
携帯にTさんが話しだす。昨日急遽変更を加えた≪夢の国≫殴り込み作戦を、
『え? それは』
やっぱり心配するか~、でも、
「俺自ら志願したんだぜ!」
「……そういうことだ」
相も変わらず不満そうなTさん。
『それなら、お気をつけて』
「おう、じゃ!」
「また明日」
「ばいばいなの」
そうして携帯は切れた。Tさんはポケットに携帯をしまうと。
「さて、晩飯はやはり屋台のものなのか?」
訊いてきた。いろいろ言いたいことはあるのだろうがこっちも突っぱねることを分かってるんだろう。
読心術者じゃなかろうな、本当に……
「そうだな、さっき牛スジカレーの屋台を見つけたからそこ食いに行こうぜ!」
決戦は明日、まずは腹ごしらえだ。
『ええ、なんとも因縁深いものです』
「今回Tさんにこき使われたのもそこら辺の縁かねえ?」
「……奇縁だな」
『まったくです』
若干気まずそうなTさんと軽く笑う黒服さん。
そういや、
「契約したって、誰と?」
気になるので訊いてみる。
『ええ、あなた方もあったことがあると思いますが、はないちもんめの契約者の少女と金髪の青年です』
「ほぅ」
「へー……」
あの嬢ちゃんと、禁断の人か!
「ふたりとも、なの?」
リカちゃんがナイスポイントをついた質問を入れる。
『ええ、多重契約のリスクを抑えるために』
黒服さんの言葉にえ? と思う。
「いくつもの都市伝説と契約するのって、危険なの?」
『ご存じないのですか?』
「言ってなかったか?」
おいおいTさんよ、
「聞いてね―」
あ、なんか電話の向こうからも呆れた雰囲気が伝わってくるぞ?
ま、いい、うん今俺が無事ならなんだかんだで気を使われていたと、そういうことなんだろう。きっと。
「あー、まあ契約者はまだ容量的には大丈夫だ。俺はそもそもそんなに要領を食わんし、リカちゃんも生まれたばかりで契約したからそれほど要領を食ってはいないはずだ」
「Tさんも食わないの?」
リカちゃんはともかく、あんたはトンデモ人間のくせに?
「ああ、元来≪寺生まれで霊感の強いTさん≫なんていうのは普通には噂になることもない、そもそも都市伝説ですらないような話でしかない。この力のほとんどはケサランパサラン由来だから、人間だった俺自身の容量は食われているが契約者の容量は大して食われていない」
黒服さんとの契約で、はないちもんめの契約者とチャラい兄ちゃんが負担したのは≪黒服≫さん一つ分の容量だが黒服さんは≪夢の国の地下トンネル≫を使えるのと同じだな。とTさん。
「へぇ~、よく分かんねえけど、つまり、エコなんだな」
「……まあ契約者の生態に優しいという意味では、たぶん」
Tさんは額に手を当てて頭が痛そうにしている。なんだ? 疲れてるのか?
とまれ、
「作戦だが…………」
携帯にTさんが話しだす。昨日急遽変更を加えた≪夢の国≫殴り込み作戦を、
『え? それは』
やっぱり心配するか~、でも、
「俺自ら志願したんだぜ!」
「……そういうことだ」
相も変わらず不満そうなTさん。
『それなら、お気をつけて』
「おう、じゃ!」
「また明日」
「ばいばいなの」
そうして携帯は切れた。Tさんはポケットに携帯をしまうと。
「さて、晩飯はやはり屋台のものなのか?」
訊いてきた。いろいろ言いたいことはあるのだろうがこっちも突っぱねることを分かってるんだろう。
読心術者じゃなかろうな、本当に……
「そうだな、さっき牛スジカレーの屋台を見つけたからそこ食いに行こうぜ!」
決戦は明日、まずは腹ごしらえだ。
秋祭り一日目、すでに日は落ち、月がその顔を覗かせていた。