三面鏡の少女 40
逢瀬佳奈美の分身Aは困っていた
『悪魔の囁き』に唆されて鏡の外に出てしまった事はまあ良しとする、楽しいし
本体を差し置いて黒服Hとデート三昧なのも良しとする、楽しいし
セクハラが割とツッコミ待ちで止まるのを前提としてるのは少々物足りないが良しとする、楽しいし
一番の問題は、『悪魔の囁き』が代弁してくれた分身の欲求不満解消のために、積極的に付き合ってくれているところである
よほど本体が大事なのか、早急かつ親身に扱ってくれるお陰で大事な事を言い出せないままなのである
その大事な事とは
『悪魔の囁き』が余りにも問答無用に駆除されてしまったせいで、本来ならそこで使うはずだった交渉材料が問答無用にさっくりと消滅してしまった事だった
実は分身そのものには本体をどうこうする力なんかこれっぽっちも無いのである
『悪魔の囁き』が契約都市伝説である『合わせ鏡に自分の死に顔が見える』、つまり分身に憑いた
そこから本体に干渉する形で力が底上げされるように暗示を掛けたお陰で、本体は鏡に入る事ができたし分身は外に出る事が出来たのだ
つまり、『悪魔の囁き』がいない今の彼女では、いくら満足しようと本体を鏡の世界から出す事は出来ないのである
(あーホントどうしようかなー、あたしが時間潰してるうちに本体のあたしがこうどかーんと成長して自力で出てきてくんないかなー)
黒服Hに奢ってもらった鯛焼きをはむはむと食べながら、分身Aは一つの結論を出す
『悪魔の囁き』に唆されて鏡の外に出てしまった事はまあ良しとする、楽しいし
本体を差し置いて黒服Hとデート三昧なのも良しとする、楽しいし
セクハラが割とツッコミ待ちで止まるのを前提としてるのは少々物足りないが良しとする、楽しいし
一番の問題は、『悪魔の囁き』が代弁してくれた分身の欲求不満解消のために、積極的に付き合ってくれているところである
よほど本体が大事なのか、早急かつ親身に扱ってくれるお陰で大事な事を言い出せないままなのである
その大事な事とは
『悪魔の囁き』が余りにも問答無用に駆除されてしまったせいで、本来ならそこで使うはずだった交渉材料が問答無用にさっくりと消滅してしまった事だった
実は分身そのものには本体をどうこうする力なんかこれっぽっちも無いのである
『悪魔の囁き』が契約都市伝説である『合わせ鏡に自分の死に顔が見える』、つまり分身に憑いた
そこから本体に干渉する形で力が底上げされるように暗示を掛けたお陰で、本体は鏡に入る事ができたし分身は外に出る事が出来たのだ
つまり、『悪魔の囁き』がいない今の彼女では、いくら満足しようと本体を鏡の世界から出す事は出来ないのである
(あーホントどうしようかなー、あたしが時間潰してるうちに本体のあたしがこうどかーんと成長して自力で出てきてくんないかなー)
黒服Hに奢ってもらった鯛焼きをはむはむと食べながら、分身Aは一つの結論を出す
なるようにしかなんない! 頑張れ本体、応援しかできないけど!
(それにしても、歌手のおねーさんの事はどう思ってるんだろうなぁHさん……おねーさんからはどう見てもラブだよね、うん)
「どうした?」
「んー…こうしてるとこ、歌手のおねーさんに見付かったら悪いかなー、って」
「そうか?」
「そうだよ」
(ホントにこの人は考えてる事よくわかんないなー。セクハラメインで恋愛感情に鈍いってわけでもなさそうだし……おねーさんは絶対Hさんラブラブだよなー、気付かないはずないよねー)
うーんと唸りながら首を捻る分身A
「まいっか」
あっさりと思考を切り替える分身A
悩むのは本体の仕事であって、分身の仕事じゃないのだから
「Hさん、ラブなホテルとかだめー? 初体験ー」
「お前、それでよく見つかったらどうとか、セクハラがどうとか言えるよな」
「それは本体と、人前でのお話。分身……っていうかあたし本体の深層心理は割とエロエロだよー?」
「援助交際に見られるつもりも無いし、実際にするつもりも無いっての。つーか俺の見てないとこでしたりするなよ、本体の評判に影響あるだからな」
「ちぇー」
「どうした?」
「んー…こうしてるとこ、歌手のおねーさんに見付かったら悪いかなー、って」
「そうか?」
「そうだよ」
(ホントにこの人は考えてる事よくわかんないなー。セクハラメインで恋愛感情に鈍いってわけでもなさそうだし……おねーさんは絶対Hさんラブラブだよなー、気付かないはずないよねー)
うーんと唸りながら首を捻る分身A
「まいっか」
あっさりと思考を切り替える分身A
悩むのは本体の仕事であって、分身の仕事じゃないのだから
「Hさん、ラブなホテルとかだめー? 初体験ー」
「お前、それでよく見つかったらどうとか、セクハラがどうとか言えるよな」
「それは本体と、人前でのお話。分身……っていうかあたし本体の深層心理は割とエロエロだよー?」
「援助交際に見られるつもりも無いし、実際にするつもりも無いっての。つーか俺の見てないとこでしたりするなよ、本体の評判に影響あるだからな」
「ちぇー」