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連載 - 三面鏡の少女-42

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三面鏡の少女 42


3月14日、ホワイトデーである
逢瀬佳奈美は先月のバレンタインデーに、縁のある男性数名にチョコレートを贈っているのだが
『組織』での彼女の担当黒服であるHと、近所の公園でよく遊んでいる手塚星
年齢の差はあれど、二人とも出会えば何かとセクハラ行為に及ぶ困った男性である
かといって縁を切りたいほど悪い人間ではなく、セクハラ以外の面ではむしろ良い人であるのが更に困った存在なのだ
そんな二人はタイミングもあってか今まで顔を合わせる事は無かったのだが

―――

「あれ、カナお姉ちゃん何やってんの?」
「はわっ!? せ、星くん!?」
年上の男性に頭を撫でられている状況を知り合いに見られて、びくんと身体を竦ませる佳奈美
「ん、知り合いか?」
「う、うん、近所に住んでる子! どうしたのかな星くん!?」
わたわたと慌てふためき上擦った声を上げる佳奈美
「……誰、その人?」
とびっきりに胡散臭いものを見る目と、警戒心ありありの低い声で訪ねる星
「あ、怪しいけど怪しい人じゃないよ? 怪しいけどあたしのバイト先の人でね、怪しいけどすっごくお世話になってる人なんだよ?」
「どんだけ怪しいんだよ俺」
「黒ずくめの人は一般人の感覚だと怪しいよ?」
親しげに話す二人の様子を見てもなお、星は訝しげにHを睨み付ける
「お姉ちゃん、これホワイトデーのお返し」
小さい紙包みに入ったそれを押し付けるように渡し
「帰ってから開けろよ! そいつの前では開けるなよ!」
「へ? 何で?」
「いいから! それじゃ俺は用事あるから!」
そう言って駆け出す星だが、途中でぴたりと足を止めていきなり叫ぶ
「お姉ちゃんは俺んだからな!」
「ちょ、星くん!?」
言うだけ言っていなくなった星に、佳奈美は困ったなーといった表情で頬を掻く
「マジで許婚とかなのか?」
「ご近所付き合いで仲は良いけどそんな事ないよ!? よくスカートめくられたりするぐらいで!」
「そこまで全力で否定せんでもいいだろ、可哀想に」
「むう……でもあたしみたいなのに拘ってちゃダメだと思うんだよね。将来有望だと思うし、もっと良い人に出会えると思うんだよね、あの子なら」
「お前な、自分を卑下するのは悪い癖だぞ?」
「そうは言われてなー、綺麗とか可愛いとかそういう芸風じゃないし、身体だって女らしさってのが……って何言わせるのー!?」
「いや今のは俺のせいじゃないだろ。最近ノリツッコミ多いぞ」
そう言って笑いながら佳奈美の頭を撫でるH
「お前は自分で言うほど魅力が無い訳じゃない。もう少し自信を持っていいと思うがね」
「自信かぁ……一番苦手な分野かもしんない」
「大丈夫だよ、気長にやってけ。さて……俺もそろそろ帰るかね」
「あ、うん。騒がせてごめんね。あと」
ホワイトデーのプレゼントを片手で抱え、不安げな顔でHの腕に縋りつく佳奈美
「ちゃんと休んでね? 無理しちゃダメだよ?」
「心配すんな、俺はそんなに仕事熱心じゃないっての」

『詳しくは言えないんだけどさー』

ある日、鏡の中の自分の一人が言った事

『Hさんいなくなったら、あたしの生存率50%切るかんね?』

今までどれだけ助けられてきたかを思い出すだけで、その数字はむしろ過剰ですらあると理解できる
何故それを鏡の中の自分が告げてくるのかを考えると、黒服Hの身に何かがある可能性が高い
「あんまり行った事ないけど、『組織』に行って聞いてみたら何か判るかなぁ」


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