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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 三面鏡の少女-43

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三面鏡の少女 43


『……それじゃあ、間に合わねぇんだよ』

黒服の男にそう言われた事を、手塚星は嫌というほど理解している
以前、コークロアに支配された人間に襲われた時に、その無力さは痛感させられている
あの時は通りすがりの女性に助けられたお陰で助かったものの、その場に誰も来なかったらどうなっていたか
「好き勝手言いやがって……俺だって好きで遅く生まれたわけじゃないのに」
《そうだよなぁ、どうしようもない事をぐちぐちとうるせぇよなぁ? 嫉妬してんじゃねぇっての》
その声は聞こえてはいない、意識してはいない、だが確実に心を蝕んでいる

『お前さんも都市伝説契約者のようだが。攻撃的な能力でもないんだろ、それは? 彼女を護れるのか、お前は』

「俺の都市伝説を舐めるなよ……俺は、あんたなんかよりずっと強いんだ」
ずくん、と
星の内側で都市伝説の力が脈動する
《そうだ、お前の力は強いんだ。お前が抱えている都市伝説の力は強いんだ、確信し、言葉にし、それを現実のものとしろ》
「俺の持つ都市伝説能力は強い、強い、強い強い強い強い強い強い、最強だ」
彼の持つ『ファンタ・ゴールデンアップル』の『語られた言葉を現実にする』という力が
その能力を強め、更に強まった能力がより大きな力を生み出す
そして――たった今、憑いたばかり孵ったばかりの小さな囁きもまた、そこから溢れ出た力のおこぼれでより強力な存在へと変貌していく
「お姉ちゃんを守るのは俺だ、俺は誰よりも強くなるんだ」
《そうだとも、誰もお前の邪魔はできない。誰もお前の邪魔はさせない。お前が最強を語り続ける限り。さあそれを証明してやれ》
「ああ……強い人を倒し続けていけば、最強だって判るもんな。だから」
自分から歩むまでもなく、言葉にした力が全てを引き寄せる
「あの時助けてくれたお姉ちゃんより、俺は強い。今なら頼らなくてもカナお姉ちゃんを守ってみせる」
「お? いつぞやの少年やん、元気しとったかー?」
突然の再会に、にこやかな笑顔で手を振るのは、過去に佳奈美と星を助けた通りすがりの似非関西弁女、染桐葵
この再会が偶然だと思ったまま
この少年が異常だと思わぬまま
「俺の攻撃は一撃必殺、俺の攻撃は速い、絶対に避けられない」
「――っ!?」
その姿が消えたように見えるほどの速度で、懐に飛び込んできた星の蹴り
咄嗟に木刀の入ったバットケースでそれを受け止めるも、皮製の頑丈なケースごと木刀を真っ二つに引き裂いた
「なんや、ウチが気に障る事でもしたんかいな?」
あくまで冷静に、真っ二つになったバットケースと木刀を投げ捨てる葵
「避けられないはずだったんだけど」
《ああ、避けてないだろ? 言葉は具体的にすればするほど効果は確実になる。長いとその分隙もできるから気をつけろ》
「事情も判らんままに子供は斬れんなぁ……マッドはんやったら穏便に大人しくさせられるんやろけど」
拳で居合の構えを取り、葵は地面を蹴る
「ちょいと記憶を失って、大人しくしてもらうで!」
「その攻撃は当たらない、一発も当たらない、俺は全部避けてしまう」
「冗談は口だけに、しときっ!」
勢いを増して死角から放たれる裏拳
星はその見もせずに潜り抜けるようにかわし
「この一撃は岩をも砕く、避けたり防いだりは絶対にできない」
いくら懐に潜り込まれたとはいえ、子供の拳
普通の人間ならそう油断するであろうところだが、彼女の身内には幼女の姿で人狼の力を揮う者もいる
その経験が警戒心となり、思い切りのいい全力の逃げに走る事が出来た
だが
「ぐっ、ぅ、あっ!?」
胴体は辛うじて避けたものの、右腕を僅かに掠めてしまう
「なんやその威力……ちゃんと当たっとらんのに……骨イってるやろコレ」
《威力と当てる事に集中して何処に当てるかまで気が回ってないだろう。きっちり脳天か心臓ぶち抜いてやれ》
「俺は強い強い強い強い……次の攻撃で止めを」
《常に一対一だと思うな、来るぞ》
「俺には」
唐突に視界を真っ白に覆い尽くされる
霞む視界の中に、ガスマスク姿の人影がちらりと見えた
「ガスは効かない」
相手を無力化する睡眠効果があるガスが漂う中、少年は声を発するために躊躇無くガスと共に大きく息を吸い
「次の一撃で、仲間もろとも叩き潰す」
視界を遮るガスをあっさりと突っ切ると、そこには腕を押さえた葵とガスマスクの男、マッドガッサー
《携帯電話だ、爆発するぞ》
進路を遮るようにばら撒かれた携帯電話が、一斉に着信音を掻き鳴らす
「携帯電話の爆発は、起こらない」
ただ着信音を鳴らすだけの携帯電話を蹴散らし
「そこまでだ、ガキが」
横薙ぎに叩き込まれた一撃が、星の腕の骨と肋骨をへし折り砕き、その小さな身体を吹っ飛ばして塀に叩きつけた
「マリ、やり過ぎ!」
「死んじゃいねぇ。ジャッカロープの乳で治るだろ」
スパニッシュフライの契約者の叱責に、悪びれた様子も無く応えるマリ
「仲間に怪我させたんだ、あいこだろ?」
「こんな怪我、すぐ治る。痛くない、治る治る治る治る、治ってお前を殴り倒す」
「あぁ? 何言ってやがるこいつ……!?」
塀に叩きつけられた星がそう語ると、すぐにその痛みも怪我も消えて、何事も無かったかのように立ち上がる
《待て、今のお前じゃ数の多い相手は辛い。逃げるぞ》
「こんな強さじゃ満足できない。全員倒す、俺はもっと強く強く強く強く強く」
《強くなる前にやられちまったら意味が無いだろ。今は逃げてもっと強くなれ。そうすれば俺も強くなって色々アドバイスしてやれる》
星は舌打ちし、自分を取り囲むマッドガッサー一味を睨み付ける
「俺がもっともっともっともっともっと強くなって、強い奴は全部全部全部全部倒すんだ。だから今は姿を消す。俺の姿は誰にも見えない、誰も俺を追う事は出来ない」
言うなりその姿が一瞬で掻き消える
「消えた!? マリ!」
「ダメだ、気配どころか匂いも姿を消した場所で途絶えてる。ガキが言ったままの通り追えそうにない」
鼻と耳をひくつかせているマリだったが、周囲から怪しい気配は何も感じ取れず舌打ちする
「仕方ない、追撃を警戒しながらこっちも退くぞ……葵、あいつは何者だ?」
マッドガッサーの問いに、葵は僅かに首を傾げる
「前に会った時は普通の子供やったんけどなぁ……『悪魔の囁き』が騒動起こしてるらしいし、憑かれてるんちゃうかな」

―――

「負けない俺は強くなるどんどん強くなる誰にも負けない負けないこの町でこの世界で誰よりも強くなる」
ぶつぶつと呟きながら、その強さをどんどん膨らませ続けていく
《程々にしておけよ、呑まれちまったら意味がない。そろそろ使い方に習熟していった方がいいだろうさ。そこいらの雑魚を狩りながら慣れていこうや》
「倒す倒す倒す都市伝説を倒す俺はこの力を使いこなして」
その身長が、僅かに伸びている
身体つきが逞しくなっている
顔つきが大人びている
歩きながら目に見える速度でその身体は成長し、服もまたそれに合わせて姿形を変えていく
「カナお姉ちゃんは、俺が守るんだ」

手塚星という少年の捜索願が警察に届けられたのは、その日の夜の事だった


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