喫茶ルーモア・隻腕のカシマ
相談者
=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=
着物がはだけ、胸元が露になり
ほどけた長い黒髪は、扇の様に広がり布団の上で艶めいている
若い女だ
濡れた瞳が扇情的に揺れる
「お願いです……後生ですからっ……」
聞いているこちらが切なくなる様な、すがり付く様な哀願
「すまないが……キミの願いを叶える事はできかねる」
女の上に跨る様にして、両肩を押さえつけながら男が言う
「お願いですから……おねがい、です……から……」
涙が頬を伝い、滑る様に落ち、布団を濡らす
「……すまない」
その男の顔は───
=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=
*
"くっ……っ……はぁ……はぁ……"
かかっていた毛布を跳ね除ける様にして起き上がる
"なんだ?今のは?!……夢?!……いや、あれは……ワタシの……記憶なのか?"
汗が首筋を濡らし、不快な感覚が全身に広がる
"一体……いつの?……どこで?"
抑えきれない焦燥感が心を絡めとっていく
"アレは……あの女性は……誰だ?"
カシマは記憶の糸を手繰る
"ワタシは……ワタシは何をしていた?"
だが、在るべきはずの記憶が……過去が……思い出せない
"ワタシは……一体……誰だ?"
*
「おい、お前さぁ……ちょっと聞いてくれよぉ、ついこのあいだの話なんだけどよぉ」
輪は唐突に話し掛けてきた馬鹿の馬鹿そうな話し方に
きっと馬鹿な内容の話なのだろうと、心の中で溜息を吐きながら応じる
きっと馬鹿な内容の話なのだろうと、心の中で溜息を吐きながら応じる
「何、ボクサーさん……稽古中なんだから、くだらない話なら後にしてよ」
以前は朝から昼過ぎ、もしくは夕方まで稽古をしていたが
ルーモアの営業を再開することになり、稽古は早朝だけ行うことになっていた
そして、いつの間にか……
カシマさんとの朝稽古にボクサーも来る様になっていたのである
ルーモアの営業を再開することになり、稽古は早朝だけ行うことになっていた
そして、いつの間にか……
カシマさんとの朝稽古にボクサーも来る様になっていたのである
「お前さぁ、俺の話はくだらないって決め付けてるだろぉ」
「うん」
「たはぁあぁぁぁぁぁ、これだよっ!真剣に悩んでるのにこれだよっ!!」
「真剣に……ねぇ……」
「これだから子供は……カシマさんならちゃんと聞いてくれるんだけどなぁ」
「そうだね、カシマさんも大変だね」
「カシマさんはなぁ、俺のボケにもちゃんとツッコんでくれるんだぞっ!」
「それはね、ボクサーさんの間違いを正しているだけでしょ」
「……お前、冷たい」
「それとね、今日はカシマさん、寝過ごしたとかで遅れて来るって連絡あったよ」
「……」
「珍しいよね、カシマさんが寝過ごして稽古に遅れるなんて初めてだし」
「……俺、悲しい」
「……」
「……」
「はぁ……わかったよ、ボクが聞くよ、聞きます、是非、話してください」
「おぅ!そんでなっ!この前なっ!」
「立ち直り早ッ!」
「うん」
「たはぁあぁぁぁぁぁ、これだよっ!真剣に悩んでるのにこれだよっ!!」
「真剣に……ねぇ……」
「これだから子供は……カシマさんならちゃんと聞いてくれるんだけどなぁ」
「そうだね、カシマさんも大変だね」
「カシマさんはなぁ、俺のボケにもちゃんとツッコんでくれるんだぞっ!」
「それはね、ボクサーさんの間違いを正しているだけでしょ」
「……お前、冷たい」
「それとね、今日はカシマさん、寝過ごしたとかで遅れて来るって連絡あったよ」
「……」
「珍しいよね、カシマさんが寝過ごして稽古に遅れるなんて初めてだし」
「……俺、悲しい」
「……」
「……」
「はぁ……わかったよ、ボクが聞くよ、聞きます、是非、話してください」
「おぅ!そんでなっ!この前なっ!」
「立ち直り早ッ!」
*
ボクサーが新しいトレーニンングウェアを買いに行った時のことだ
サチがいた、偶然会えたのが嬉しくなって
いや、もうこれは運命だなぁ……ほら、アレだ……この町って
惹かれ合う二人は必ず出逢えるっていうかだな……何かあるだろ?そういう不思議なこと
まぁ、そんな事をだな……思いながら声を掛けようとしたら
黒いスーツをきっちり着たイケメン(綺麗な顔だったのは認める)が来て
サチに声を掛けやがったんだよぉ
そしたら、普通に二言三言の挨拶交わして一緒に歩き出しやがったんだよぉ
いやもう気になってさぁ、お前も気になるだろぉ?仕方ないよなぁ
まぁ、俺もストーカーとかそういうのはダメだって思ってる
で、後をつけるとかはしないでだな
俺も買い物の続きをだな
そしたら偶然にもだ、同じフロアにサチ達も買い物に来ていてだな
え?……だから違うって、偶然だ、いや、運命か
ああ、それでな
何件か服のショップ見てまわって、ランジェリーショップに入ったんで
これは!と思ってだな、俺も何故か隣にあったエロ下着屋に入ってだな
そしたら話し声が聞こえてきてだな
うんまぁ、俺は下着自体には興味ないんだ
え?……これはホントにな、大体だな、サチに余計な飾りはいらねぇのさ
何を身に着けていようが、中身は何も変わらねぇ……
だってよ、どうせ脱がせば一緒だろ?
ん?……なんだ?一瞬見直しかけたけど、やっぱ違った?
お前も色々ツッコミが大変だな
途中、エロ下着の説明を受けつつだな
ここにスリットが入っていて、下着付けたまま出来るぅぇっ!!
痛っ?!!舌噛んだぞっ!!
何すんだっ!このガキっ!!……って何だっけ
どこまで話したっけ……ああ、そうな、サチ達の下着選んでる時の会話な
いや、もうこれは運命だなぁ……ほら、アレだ……この町って
惹かれ合う二人は必ず出逢えるっていうかだな……何かあるだろ?そういう不思議なこと
まぁ、そんな事をだな……思いながら声を掛けようとしたら
黒いスーツをきっちり着たイケメン(綺麗な顔だったのは認める)が来て
サチに声を掛けやがったんだよぉ
そしたら、普通に二言三言の挨拶交わして一緒に歩き出しやがったんだよぉ
いやもう気になってさぁ、お前も気になるだろぉ?仕方ないよなぁ
まぁ、俺もストーカーとかそういうのはダメだって思ってる
で、後をつけるとかはしないでだな
俺も買い物の続きをだな
そしたら偶然にもだ、同じフロアにサチ達も買い物に来ていてだな
え?……だから違うって、偶然だ、いや、運命か
ああ、それでな
何件か服のショップ見てまわって、ランジェリーショップに入ったんで
これは!と思ってだな、俺も何故か隣にあったエロ下着屋に入ってだな
そしたら話し声が聞こえてきてだな
うんまぁ、俺は下着自体には興味ないんだ
え?……これはホントにな、大体だな、サチに余計な飾りはいらねぇのさ
何を身に着けていようが、中身は何も変わらねぇ……
だってよ、どうせ脱がせば一緒だろ?
ん?……なんだ?一瞬見直しかけたけど、やっぱ違った?
お前も色々ツッコミが大変だな
途中、エロ下着の説明を受けつつだな
ここにスリットが入っていて、下着付けたまま出来るぅぇっ!!
痛っ?!!舌噛んだぞっ!!
何すんだっ!このガキっ!!……って何だっけ
どこまで話したっけ……ああ、そうな、サチ達の下着選んでる時の会話な
*
池面「これは……下着としての意味があるのですか?」
サチ「ぇぇ……まぁ……透けてますけど……一応は」
池面「今回の目的としては……アリでしょうか」
サチ「ぇぇとですね……まぁその、最終的には好みの問題だとは思いますね」
池面「確かに……ですが、防御力がかなり低そうな感じがします」
サチ「ぼ、防御力、ですか……確かに、そう、ですね……でも……」
池面「でも?」
サチ「ある意味……こ、攻撃力は相当なものかと……」
池面「なるほど……確かに攻撃力は高そうです」
サチ「やっぱり、その……あっちの方のものにしませんか?」
池面「こういうランジェリー、サチは嫌いなのですか?」
サチ「ぇぇと……わたしにはまだ経験がありませんので、何とも……」
池面「そうですか……分かりました、あちらの方が無難そうですね」
サチ「色はどうしますか?わたしはパステル系が好きなんですが」
池面「好きな色ですか?……やはり、黒でしょうか」
サチ「黒……ですか……まぁ、そうですよね……ぅ~ん……どうかなぁ」
池面「……何色が好きでしょうか……ああ、そう……私は純白も好きですね」
サチ「そうですか……うん、白なら間違いありません」
池面「白は……この辺りですか……たくさんありますね」
サチ「これなんてどうでしょうか?レース使いも綺麗で、尚且つ清楚です」
池面「確かに清楚さを演出してくれそうですね」
サチ「これなら防御力も高そうですよ!」
池面「攻撃力はどうでしょうか?」
サチ「かなりのものかと……恐らく、これは聖属性……聖属性には弱いと思います!」
池面「なるほど……では、先ほどまで見ていたのは闇属性だったというわけですね?」
サチ「はいッ!闇属性の場合、相性が悪い可能性もありますから」
池面「流石ですサチ、素晴らしい解説ですね」
サチ「恐れ入ります……わたしも解説役としての責務を果たせて良かったです」
池面「これに決めました、これを買いましょう!」
サチ「良い買い物だと思います!……ってアレ?何かおかしい?かも?」
*
「っていう話なんだけどよぉ……なぁ、これってどう思う?」
「……なにそのコピペから、男が実はボーイッシュな女の子でしたという萌え要素を抜いちゃった様な話」
「……なにそのコピペから、男が実はボーイッシュな女の子でしたという萌え要素を抜いちゃった様な話」
頭痛をこらえる様に顔をしかめながら、こめかみに指を添える
「……っていうかカシマさんにこの話をしようとしてたの?」
「え?……ダメだった?」
「駄目じゃないけど、困るんじゃないかな……」
「そうか……そうかもなぁ」
「あと、声色マネてるつもりかもしれないけど……」
「あ、やっぱ似てなかった?」
「似てない……でも問題はそこじゃない」
「何だよ、どこが問題なんだよぉ?」
「もの凄く……とてつもなく……これ以上ないほどに……キモイ」
「な!!……キモイ?!……いや、そうだよな……キモかったよな、スマン」
「いや……判ってくれればいいんだ、判ってくれればさ……」
「お前に話しといて良かった……また、話聞いてくれよな……」
「全力でお断りします!!……で、話を戻すけど……この話のどこを悩んでるのさ」
「おぅ?!……っと、中々イイ仕切りだな、やるじゃんお前!」
「はいはい、どうも、話、続けて」
「最初はサチに男が出来たのかと思って焦ったんだけどよぉ」
「ん~、それは無いと思うよ」
「だよな、やっぱお前もそう思うよなぁ……ということは、だ」
「下着選びの相談みたいに聞こえるよね」
「だよな……じゃあアレか、あのイケメンが女性モノの下着つけるのか?」
「う~ん、そう感じるんだけど……いま流行の男の娘ってことかな?」
「男の娘?……乙男とは違うのか?」
「オトメンとはちょっと違うかな?……でも、女の子みたいな要素のある男っていうカテゴリーとしては同じかも」
「ややこしいなぁ」
「男性目線が男の娘、女性目線が乙男……かな?よくは知らないけど」
「難しいなぁ……正直、意味がわからん」
「まぁそれは置いといて、話を戻すけどね……スーツ着てるし女装趣味では無い様な」
「お前ホント、話の筋の修正うまいな……で、どう考える?」
「妹の下着を買う相談とか……どうかな?」
「何だと?!じゃあ、母ちゃんが死んじまって父と兄が、幼い妹を一生懸命育てています的な?!」
「……そこまでは言ってないよ」
「幼かった妹のつぼみの様だった胸が花開き始めました、どうしたら良いですか?的な?!」
「あの、ちょっと……」
「あのイケメン、スーツ着て、金髪で、ホストか何かやってる様なヤツだと思ったのに!!」
「ボクサーさん?」
「うぉおぉぉぉぉぉ!イイハナシダナー!!」
「いや、だからね……ボクサーさん?話聞いてる?」
「え?……ダメだった?」
「駄目じゃないけど、困るんじゃないかな……」
「そうか……そうかもなぁ」
「あと、声色マネてるつもりかもしれないけど……」
「あ、やっぱ似てなかった?」
「似てない……でも問題はそこじゃない」
「何だよ、どこが問題なんだよぉ?」
「もの凄く……とてつもなく……これ以上ないほどに……キモイ」
「な!!……キモイ?!……いや、そうだよな……キモかったよな、スマン」
「いや……判ってくれればいいんだ、判ってくれればさ……」
「お前に話しといて良かった……また、話聞いてくれよな……」
「全力でお断りします!!……で、話を戻すけど……この話のどこを悩んでるのさ」
「おぅ?!……っと、中々イイ仕切りだな、やるじゃんお前!」
「はいはい、どうも、話、続けて」
「最初はサチに男が出来たのかと思って焦ったんだけどよぉ」
「ん~、それは無いと思うよ」
「だよな、やっぱお前もそう思うよなぁ……ということは、だ」
「下着選びの相談みたいに聞こえるよね」
「だよな……じゃあアレか、あのイケメンが女性モノの下着つけるのか?」
「う~ん、そう感じるんだけど……いま流行の男の娘ってことかな?」
「男の娘?……乙男とは違うのか?」
「オトメンとはちょっと違うかな?……でも、女の子みたいな要素のある男っていうカテゴリーとしては同じかも」
「ややこしいなぁ」
「男性目線が男の娘、女性目線が乙男……かな?よくは知らないけど」
「難しいなぁ……正直、意味がわからん」
「まぁそれは置いといて、話を戻すけどね……スーツ着てるし女装趣味では無い様な」
「お前ホント、話の筋の修正うまいな……で、どう考える?」
「妹の下着を買う相談とか……どうかな?」
「何だと?!じゃあ、母ちゃんが死んじまって父と兄が、幼い妹を一生懸命育てています的な?!」
「……そこまでは言ってないよ」
「幼かった妹のつぼみの様だった胸が花開き始めました、どうしたら良いですか?的な?!」
「あの、ちょっと……」
「あのイケメン、スーツ着て、金髪で、ホストか何かやってる様なヤツだと思ったのに!!」
「ボクサーさん?」
「うぉおぉぉぉぉぉ!イイハナシダナー!!」
「いや、だからね……ボクサーさん?話聞いてる?」
*
「駄目だ、話を修正できない……でも、なんかこういう展開、前にもあった様な……」
下着選び、サチ、黒いスーツで金髪のホスト、暴走するボクサー
「う~ん、記憶が……でも、下着は憶えが無い……服だったかな……」
服選び、サチ、黒いスーツで金髪のホスト、暴走するボクサー
「確か……サチは関係なかった様な……でも話し相手が暴走して……」
服選び、黒いスーツで金髪のホスト、暴走する話相手
「金髪で……男の……そうだ、あれは……」
服選び、男装の金髪、暴走する話相手
「ヒキコさんの時の……ジャック!!」
そういえば最近、ジャックはサチのことを気にしなくなっていた
カシマさんとの仲が進展した様な気もするし
誤解が解けて仲良くなったのかな……いや、でも……
うん、あり得るかも……
という事は、ジャックが自分で着る為の(勝負?)下着を買っていた、と
カシマさんが聖属性に弱くて、闇属性は好みではない可能性あり、か
なるほど、そういう事か……
カシマさんとの仲が進展した様な気もするし
誤解が解けて仲良くなったのかな……いや、でも……
うん、あり得るかも……
という事は、ジャックが自分で着る為の(勝負?)下着を買っていた、と
カシマさんが聖属性に弱くて、闇属性は好みではない可能性あり、か
なるほど、そういう事か……
さて、どうしよう……ボクサーに言うべきか……
「ボクサーさ~ん!」
あ、駄目っぽいな……興奮して、猛烈にシャドウしてるし、聞こえてなさそう
「おい!この馬鹿!!ボクの話を聞けぇえぇぇぇぇ!!!」
あ、やっぱり聞こえてないな
「この変態ストーカー野郎ぉおぉぉぉ!!でも、きらいじゃない!!ふしぎ!!」
自身の行いに、自身が呆れながらも
輪はただ、過ぎ行く時を楽しんでいた
輪はただ、過ぎ行く時を楽しんでいた
愚かで微笑ましい日常
そしてそれは、いつまでも色あせずに輝き続ける記憶
そしてそれは、いつまでも色あせずに輝き続ける記憶
大切なものとは、いつでも日常の中に隠されている
だが、それに気付ける者は少ない
だが、それに気付ける者は少ない