喫茶ルーモア・隻腕のカシマ
物語りなき化け物
カシマが眠ったままの状態になり、数日が過ぎた
あれからずっと、レム睡眠が続いている
夢を見続けているのだろうか
目覚める時が本当に来るのだろうか
目覚めた時、残っているのはどちらの人格なのか
夢を見続けているのだろうか
目覚める時が本当に来るのだろうか
目覚めた時、残っているのはどちらの人格なのか
何も判らない
毎日、見舞いに行ったが変化は無い
今日もまた、カシマは目を覚ましてはいなかった
日が傾き、後ろ髪を引かれながらもサチの家を後にする
今日もまた、カシマは目を覚ましてはいなかった
日が傾き、後ろ髪を引かれながらもサチの家を後にする
輪は不安を隠せずにいた
戦いという事であれば、カシマは簡単には負けまい
だが、今回の件がもし……義弟を救う為の事であったなら……
カシマはもう戻って来ないかもしれない
義弟に体を差し出すかもしれない
戦いという事であれば、カシマは簡単には負けまい
だが、今回の件がもし……義弟を救う為の事であったなら……
カシマはもう戻って来ないかもしれない
義弟に体を差し出すかもしれない
そう思いながらも口には出さずにいた
ただ、帰ってきてくれる事を祈る
ただ、帰ってきてくれる事を祈る
ひとりでの帰り道は寂しいものだった
今までも朝稽古からの帰りはひとりだったが、こんな気持ちになる事はなかった
今までも朝稽古からの帰りはひとりだったが、こんな気持ちになる事はなかった
考え過ぎなのが自分の良い所でもあり、悪い所でもある
予知ではなく、起こり得る事を予測し、未来に備える
予知ではなく、起こり得る事を予測し、未来に備える
ボクサーの様に、もう少し楽観視できれば良いのか
ジャックの様に、現実を受け止められる心の強さが必要なのか
サチの様に、マスターの様に、ただ待つ事が出来る人達が羨ましかった
ジャックの様に、現実を受け止められる心の強さが必要なのか
サチの様に、マスターの様に、ただ待つ事が出来る人達が羨ましかった
そんな事を考えながらも、重い足を引き摺り、帰る
顔を上げ、前を見据える
夕暮れにはまだ早い時間帯
黒い影が、ゆらりと、揺れる
全身が、粟立つ
その瞬間、輪は走り出す
逃げなくては、捕まったら、やられる、確実に
路地を抜け、角を曲がり
何度も背を振り返りながら走る、ひたすらに走る
あの黒い影をひとりで相手にするなど、到底かなわない
「こっちじゃ!」
「!?」
「いいから、こっちじゃ!」
「!?」
「いいから、こっちじゃ!」
電柱から声がする
ひょいっと電柱の後ろから手が伸びて、おいでおいでと手招きする
いぶかしみながらも、電柱と壁の間を覗き込むと
何のことは無い
壁があると思ったそこには、細い通路があった
ひょいっと電柱の後ろから手が伸びて、おいでおいでと手招きする
いぶかしみながらも、電柱と壁の間を覗き込むと
何のことは無い
壁があると思ったそこには、細い通路があった
「ここにはな、電柱の影に隠れとるが道があるんじゃよ」
手招きしていた老紳士が、人懐っこそうな笑みを浮かべている
「なるほど……」
「早くするんじゃ!」
「……うん」
「早くするんじゃ!」
「……うん」
言われるがままに引き込まれ、道から姿を消す輪
追って来ていた黒い影が、標的を見失い立ち止まる
追って来ていた黒い影が、標的を見失い立ち止まる
「助かったよ……サンタのお爺さん」
「なぁ~に、こうなると分かっておったからの……」
「……もしかして、あの時からずっと見張ってたの?」
「そういうことじゃ……話しが早くて助かるのう」
「じゃあ、さっきの黒い影は……ひょっとして……」
「あの時の話に出ていた、融通の利かない黒服じゃよ」
「なぁ~に、こうなると分かっておったからの……」
「……もしかして、あの時からずっと見張ってたの?」
「そういうことじゃ……話しが早くて助かるのう」
「じゃあ、さっきの黒い影は……ひょっとして……」
「あの時の話に出ていた、融通の利かない黒服じゃよ」
「それにしても……この状況……」
「いささか因縁じみておるがの……じゃが、これが現実なのじゃから仕方あるまい」
「取り敢えず、電話してジャックを呼ぶよ……ボク達じゃ敵いそうにない」
「うむ、そうしてくれるとありがたい」
「集合場所は、やっぱり……」
「例の公園が分かり易くて、人目にも付かんじゃろ」
「了解」
「いささか因縁じみておるがの……じゃが、これが現実なのじゃから仕方あるまい」
「取り敢えず、電話してジャックを呼ぶよ……ボク達じゃ敵いそうにない」
「うむ、そうしてくれるとありがたい」
「集合場所は、やっぱり……」
「例の公園が分かり易くて、人目にも付かんじゃろ」
「了解」
ジャックに掛ける、しばらくして回線が繋がる
「ジャック?!今、例の通り魔に追われてるんだ!あの、ボートに乗れる池のある公園に来て!」
不意に回線が切れ、ツーツーとだけ音声が流れる
ちゃんと聞き取ってくれただろうか……不安が押し寄せる
サチに掛け、確認を取る
ちゃんと聞き取ってくれただろうか……不安が押し寄せる
サチに掛け、確認を取る
「サチ?……うん、ジャックはいる?……寝てるかもしれない?
そっか……カシマさんの様子をずっと記録してたんだもんね……
あ、うん……ちょっとマズい状況で、例の通り魔に出逢っちゃってね
大丈夫、今は組織の黒服さんと一緒に逃げてるから……うん、じゃあ、頼むね
ボートがある公園……そう、そこ……なるべく急いでくれると助かる……
分かってるよ……無理はしないで逃げ続けるから……じゃあまたね」
「どうじゃ?」
「ジャックはたぶん寝てる、疲れてるところで悪いけど、サチに頼んでおいたから」
「そうかね……ふむ……まぁ、疲れていても、3人で掛かればどうにかなるじゃろ」
「だといいんだけどね」
「いつまでもここに居るわけにもいかんからの……」
「じゃ、行こうか……」
そっか……カシマさんの様子をずっと記録してたんだもんね……
あ、うん……ちょっとマズい状況で、例の通り魔に出逢っちゃってね
大丈夫、今は組織の黒服さんと一緒に逃げてるから……うん、じゃあ、頼むね
ボートがある公園……そう、そこ……なるべく急いでくれると助かる……
分かってるよ……無理はしないで逃げ続けるから……じゃあまたね」
「どうじゃ?」
「ジャックはたぶん寝てる、疲れてるところで悪いけど、サチに頼んでおいたから」
「そうかね……ふむ……まぁ、疲れていても、3人で掛かればどうにかなるじゃろ」
「だといいんだけどね」
「いつまでもここに居るわけにもいかんからの……」
「じゃ、行こうか……」
*
サチの家───
サチは、カシマの眠る部屋へと急ぎ、向かう
ジャックは疲れから寝ているのだろう……申し訳ないと思いつつも
輪の命が掛かっている事を考えると、そうも言ってはいられなかった
ジャックは疲れから寝ているのだろう……申し訳ないと思いつつも
輪の命が掛かっている事を考えると、そうも言ってはいられなかった
襖を開けると、心地よい風が入ってくる
和室の縁側に面したガラス戸が開けられ、更に奥の廊下の戸も開いていた
カーテンが風に柔らかく揺れている
和室の縁側に面したガラス戸が開けられ、更に奥の廊下の戸も開いていた
カーテンが風に柔らかく揺れている
違和感
ジャックは予想通り、眠っていた……だが……
そこに寝ているはずのカシマの姿がない
「カシマさん?!……起きたの?……でも、どこに?……どうして?」
サチの驚いた声に、ジャックが目を覚ます
「ん……どうしたのですか?サチ?」
「カシマさんが……いないんです……」
「?!!……カシマ?!何処へ?!」
「カシマさんが……いないんです……」
「?!!……カシマ?!何処へ?!」
*
ふたりは走り出す、公園へ向けて
走りながら、会話する
走りながら、会話する
「どうして、あの黒服は少年の都市伝説を狙うの?」
「その昔、そういう指示が出ていたからじゃよ」
「昔?なんで昔の指示が今になって事件になる様な事になってるの?」
「おぬしのマスターがおぬしを助けた少し後に、当時のおぬしを始末する様に指示が出た」
「ボクを?!」
「あの時、死ぬはずだったからじゃよ」
「そうか……帳尻合わせの為に……ボクを……」
「しかし、見つからぬ内に……ヤツは、あの黒服は、上層部に使えない手駒として捨てられたのじゃ」
「捨てられた?!」
「もちろん外には出られぬ様に、拘束しておったさ……じゃが……」
「どうしたの?」
「憶えているかの?夢の国が事件を起こした秋祭りの時のこと……」
「うん、それが?何か関係あるの?」
「直接の関係は無い、じゃがあの日、組織ではもうひとつの事件が起こっていた」
「!!……暗部の?!」
「そうじゃ……暗部の地下施設が破壊された、あの事件じゃ」
「じゃあ、あの黒服が拘束されていたのは……」
「暗部の地下施設じゃよ……ヤツの受けた指示では、今のおぬしと顔も背格好も違う」
「そうか……それで最近になって通り魔事件が……」
「判別がつかん上に、既に正常な行動も出来なくなっておる様じゃったがの……」
「だから、いずれはボクのところへ来ると踏んで見張っていた……」
「悪かったの、本当の事を言わんで……あまりにも幸せそうじゃったからの……言えなかったわい」
「そっか……うん、ありがとね」
「いや、礼はいらんよ……これは、組織の過失じゃ……さて、公園が見えてきたの」
「あの時の公園……昔とほとんど、変わってないね」
「その昔、そういう指示が出ていたからじゃよ」
「昔?なんで昔の指示が今になって事件になる様な事になってるの?」
「おぬしのマスターがおぬしを助けた少し後に、当時のおぬしを始末する様に指示が出た」
「ボクを?!」
「あの時、死ぬはずだったからじゃよ」
「そうか……帳尻合わせの為に……ボクを……」
「しかし、見つからぬ内に……ヤツは、あの黒服は、上層部に使えない手駒として捨てられたのじゃ」
「捨てられた?!」
「もちろん外には出られぬ様に、拘束しておったさ……じゃが……」
「どうしたの?」
「憶えているかの?夢の国が事件を起こした秋祭りの時のこと……」
「うん、それが?何か関係あるの?」
「直接の関係は無い、じゃがあの日、組織ではもうひとつの事件が起こっていた」
「!!……暗部の?!」
「そうじゃ……暗部の地下施設が破壊された、あの事件じゃ」
「じゃあ、あの黒服が拘束されていたのは……」
「暗部の地下施設じゃよ……ヤツの受けた指示では、今のおぬしと顔も背格好も違う」
「そうか……それで最近になって通り魔事件が……」
「判別がつかん上に、既に正常な行動も出来なくなっておる様じゃったがの……」
「だから、いずれはボクのところへ来ると踏んで見張っていた……」
「悪かったの、本当の事を言わんで……あまりにも幸せそうじゃったからの……言えなかったわい」
「そっか……うん、ありがとね」
「いや、礼はいらんよ……これは、組織の過失じゃ……さて、公園が見えてきたの」
「あの時の公園……昔とほとんど、変わってないね」
鬱蒼と生い茂る木々
他の場所よりも薄暗く感じる空間
比較的大きい池に小さな手漕ぎボートがひとつだけぽつんと浮かんでいる
辺りを見回すと、公園に人気は無い
他の場所よりも薄暗く感じる空間
比較的大きい池に小さな手漕ぎボートがひとつだけぽつんと浮かんでいる
辺りを見回すと、公園に人気は無い
今回は、ボートに乗る者もいない
「よし、いけそうだね!」
「うむ、後はもう少し時間が稼げれば……」
「うむ、後はもう少し時間が稼げれば……」
黒い風が目の前を横切る
黒服がいた
所々破れた服は、到底黒服とは思えぬ様な、異様な雰囲気を放っている
黒服がいた
所々破れた服は、到底黒服とは思えぬ様な、異様な雰囲気を放っている
「もう、来ちゃったね……」
「参ったのう……やるしかないのかの……」
「参ったのう……やるしかないのかの……」
無言で対峙するのは、僅かの時間
放たれた矢の如く、動き出す黒
放たれた矢の如く、動き出す黒
瞬間、膨れ上がる白
引き絞られた黒の脚が、放たれる
ボフっと音を立てて、サンタの持つ袋が黒を遮る
「くぅ……老体には堪えるのう……」
「はっ!!」
すかさず、回り込んでいた輪の斬撃が鋭く、黒へと襲い掛かる
避けられ、そのまま、空を切り裂く
間合いをとる両者
避けられ、そのまま、空を切り裂く
間合いをとる両者
「速いっ!?」
「やはり、ふたりでも無理の様じゃの……」
「やはり、ふたりでも無理の様じゃの……」
黒服が再び、重心を落とし……爆ぜる!
展開されるサンタの袋
が、それを飛び越え、サンタの後ろへと着地する
そしてそのまま、独楽の様に回転し、サンタの腰へと黒服の脚がめり込む
「ぐぅっ!!」
うずくまる、老紳士
激流の様な黒が輪へと襲い掛かる
避けられない
そう、輪は思った
だが
黒の奔流を遮る様に、白き疾風が駆ける
ぶつかり合う黒と白
ぶつかり合う黒と白
黒服の腕は押さえ込まれ、すぐさま、弾ける様に距離をとる
立ちはだかるは、白き軍装の男
「カシマさんッ!?」
海軍の白い軍服に身を包み、立つ
装い違えどその顔、間違いなく隻腕のカシマ
装い違えどその顔、間違いなく隻腕のカシマ
瞬間、絶対的な安心感が生まれる
「輪、無事か?」
「うんッ!!」
「そちらの御仁は?……いや、詳しい話を聞いている時間は無い様だな、要旨を頼む」
「そやつは複数の都市伝説を純粋なエネルギーとして体に取り込んでおる
組織によって生み出された、己の意思を持たぬ黒服じゃ」
「ひとつの体に複数の都市伝説……か」
「うんッ!!」
「そちらの御仁は?……いや、詳しい話を聞いている時間は無い様だな、要旨を頼む」
「そやつは複数の都市伝説を純粋なエネルギーとして体に取り込んでおる
組織によって生み出された、己の意思を持たぬ黒服じゃ」
「ひとつの体に複数の都市伝説……か」
新手の出現に警戒を強めていく黒服
「都市伝説には付随する物語が必要不可欠、アレはもはや何も語られることのないモノ
あやつを開放してやってはくれぬか……」
「そうか、あれが……物語られることの無い……化け物……」
「開放……斬ればよいのか?」
「うむ」
「……承知」
あやつを開放してやってはくれぬか……」
「そうか、あれが……物語られることの無い……化け物……」
「開放……斬ればよいのか?」
「うむ」
「……承知」
ふう、と息を吐く軍装の男
「繋がろうとするも拒絶され、尚も混ざり合おうとする……
分かるよ……その苦しみ……
オレが開放してやる……その苦痛から……」
分かるよ……その苦しみ……
オレが開放してやる……その苦痛から……」
少年は、軍装の男の発した言葉に違和感を感じる
"ッ!?……オレ?……カシマさんじゃ……ない!?"
だが、問い質している暇はない
「オレの名はカシマ、同胞には隻腕のカシマと呼ばれている
意思無き黒服よ、お前にも還る場所は必ずある……平穏な場所が……」
意思無き黒服よ、お前にも還る場所は必ずある……平穏な場所が……」
黒服は既にボロキレの様になっているタイを、きゅっと締め直す
「還り支度は整ったか?……では……」
軍刀を抜き放つ、白き軍装の男
重心を落とし構える、黒服
重心を落とし構える、黒服
対峙する白と黒
「参るッ!」
カシマの言葉を合図にして両者が駆ける
勝負は一瞬
カシマの持つ軍刀の長さでは、決して届かない間合いからの一振り
だが
"ふつ"と何かが斬れる音が、確かに、耳ではなく、心に響いた
音無しの太刀
両断された体の上体がずるりと袈裟に落ちてゆく
桜の花びらが舞う───幻視
斬り口が見える暇も無く、断面から桜花がふわりと舞う
風に揺られ、ゆっくりと、ゆっくりと、舞う
静寂の中、薄紅色の花びらに魅入り、消えゆく黒服を見守る
桜花が消えると何も無く
そこにはただ、清涼な空気があるだけであった
*
鹿島神宮に、布都御魂剣(ふつのみたまのつるぎ)という国宝がある
日本刀の中では、古例の一つであり、また刃長の点では最大の作品とされている
柄・鞘を含めると全長2.71m、刃長2.24mの直刀である
また、"ふつ"とは物を断ち切る音を表すとされる
日本刀の中では、古例の一つであり、また刃長の点では最大の作品とされている
柄・鞘を含めると全長2.71m、刃長2.24mの直刀である
また、"ふつ"とは物を断ち切る音を表すとされる
*
間合いの外から振るわれたカシマの斬撃は
まるで長大な刀を振るったかの様にも見えた
まるで長大な刀を振るったかの様にも見えた
だが、カシマの持つ軍刀はただの軍刀だ
少なくとも国宝だとか霊刀、妖刀と呼ばれる類のものではない
他との違いがあるとすれば、それは
振るう者の想いが、カシマの想いが、平穏への祈りが込められている点くらいのものだ
少なくとも国宝だとか霊刀、妖刀と呼ばれる類のものではない
他との違いがあるとすれば、それは
振るう者の想いが、カシマの想いが、平穏への祈りが込められている点くらいのものだ
*
黒服の老紳士が口を開く
「さて、報告書をまとめねばならんでな……今日はこれでお別れじゃて」
「そっか、また助けてもらっちゃったね……ありがとう、サンタさん」
「ふぉっふぉっふぉっ、気にするでない、元々組織の過失じゃったからのう」
「ご助力、感謝致します」
「カシマ殿、頭を下げんで下され……頭を下げねばならんのはこちらの方なのじゃからのう」
「だが、組織の過失であって、貴方の過失ではない……この感謝は貴方個人へのものだ」
「そっか、また助けてもらっちゃったね……ありがとう、サンタさん」
「ふぉっふぉっふぉっ、気にするでない、元々組織の過失じゃったからのう」
「ご助力、感謝致します」
「カシマ殿、頭を下げんで下され……頭を下げねばならんのはこちらの方なのじゃからのう」
「だが、組織の過失であって、貴方の過失ではない……この感謝は貴方個人へのものだ」
困った様に受ける老人
「……参ったのう……君も何とか言ってくれぬかの?」
「う~ん……カシマさんはこういうヒトだからね、まぁ……諦めてよ」
「う~ん……カシマさんはこういうヒトだからね、まぁ……諦めてよ」
笑いながら輪
そして同時に気付く
カシマは以前のカシマのままで、何一つ変わってはいない
ワタシがオレに変わったところで、カシマの本質に変わりはないのだ
安堵する
カシマは以前のカシマのままで、何一つ変わってはいない
ワタシがオレに変わったところで、カシマの本質に変わりはないのだ
安堵する
*
サンタの黒服と別れると
「輪……考えたことはないか?」
カシマが、ふと思い付いた様に語る
この学校町と呼ばれる都市には、どうしてこんなにも都市伝説が集うのか、と
オレたちはこの学校町へと引き寄せられる様にして辿り着いた
そして、簡単には離れることが出来ないでいる
離れようと思えば離れることは出来るのだろう……だが、それをしようとは思わない
そして、簡単には離れることが出来ないでいる
離れようと思えば離れることは出来るのだろう……だが、それをしようとは思わない
最初は、この町が成す特殊な地形により出来る力に、引き寄せられたのだと考えていた
だが今は、力そのものに引き寄せられたのではなかった……と、そう思うのだ
だが今は、力そのものに引き寄せられたのではなかった……と、そう思うのだ
いや、この町の力が無くてはここへは来なかったのであろうが……
この町の地形は、力は……
一体どの様にして、また何に対して作用しているのか?
一体どの様にして、また何に対して作用しているのか?
例えば……
この力は、人々の想いを増幅する効果を持っているのではないか?
この力は、人々の想いを増幅する効果を持っているのではないか?
キミがマスターの想いに惹きつけられ、あの喫茶店に行った様に……
もちろんそこには、キミの意志も確かにあったのだろう
希望を掴み取ろうとする意志が……
もちろんそこには、キミの意志も確かにあったのだろう
希望を掴み取ろうとする意志が……
そして、オレや……弟もまた……
あの喫茶店に……あの店を営んでいた彼女への懐かしさに……
だからこそ
この町に惹き付けられ、この町で再会したのではないか、と
あの喫茶店に……あの店を営んでいた彼女への懐かしさに……
だからこそ
この町に惹き付けられ、この町で再会したのではないか、と
そう考えてしまうのだ
これは、そう……ただの感傷なのかもしれんがね
これは、そう……ただの感傷なのかもしれんがね
誰もが繋がりを求めて、この学校町へ集うのではないだろうか……
そう言って、カシマは締め括った
*
「さて、帰ろうか」
「うん、でも……帰るって?……サチの家?」
「オレ達が戦いを終えて帰る場所と言ったら、ひとつしかあるまい」
「うん!帰ろう!ルーモアへ!」
「ああ……帰ろう……ルーモアへ」
「うん、でも……帰るって?……サチの家?」
「オレ達が戦いを終えて帰る場所と言ったら、ひとつしかあるまい」
「うん!帰ろう!ルーモアへ!」
「ああ……帰ろう……ルーモアへ」
歩き出すふたり
「はぁ……これでやっと、日常が帰ってくるね」
「……迷惑をかけたな、すまない」
「ボクだけじゃなくてさ……カシマさんを待っていたのは、皆なんだよ」
「そうか……」
「あと、かけたのは迷惑じゃなくて心配ね」
「……うむ、以降気を付けよう……では、サチ殿へ連絡してルーモアへ来る様に伝えて欲しい」
「ジャックには?」
「……疲れが無ければ、来て欲しいと伝言を頼む」
「自分で話した方がいいんじゃない?」
「……携帯は苦手でな」
「あ!……そうか!あの時、ジャックが寝ていた時に携帯に出たのって……」
「オレだな……ジャックの眠りを妨げてはいけないと思ったのだが……」
「もう……一言ぐらいしゃべってくれないと!」
「……すまない……ボタンを押したら切れてしまってな」
「全く……今度、教えるから憶えてよ?」
「指導の程、宜しく頼む……」
「……迷惑をかけたな、すまない」
「ボクだけじゃなくてさ……カシマさんを待っていたのは、皆なんだよ」
「そうか……」
「あと、かけたのは迷惑じゃなくて心配ね」
「……うむ、以降気を付けよう……では、サチ殿へ連絡してルーモアへ来る様に伝えて欲しい」
「ジャックには?」
「……疲れが無ければ、来て欲しいと伝言を頼む」
「自分で話した方がいいんじゃない?」
「……携帯は苦手でな」
「あ!……そうか!あの時、ジャックが寝ていた時に携帯に出たのって……」
「オレだな……ジャックの眠りを妨げてはいけないと思ったのだが……」
「もう……一言ぐらいしゃべってくれないと!」
「……すまない……ボタンを押したら切れてしまってな」
「全く……今度、教えるから憶えてよ?」
「指導の程、宜しく頼む……」
溜息を吐きながら、カシマは笑った
輪は既に知っている
溜息を吐いても幸せは逃げないことを