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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 喫茶ルーモア・隻腕のカシマ-54a

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喫茶ルーモア・隻腕のカシマ


真相


*


♪ZERO GRAVITY (試験運用中)

*



「かつて、隻腕の鹿島と呼ばれる都市伝説がいた」
「かつて?」
「昔の事だ……我々がこの学校町に滞在していた時……隻腕の鹿島に遭遇した」

副官が語り始める

当時の鹿島は手をつけられぬ程に荒れていた
我々艦隊もヤツを止めようとしたのだが、相手も手練であったからな
拘束した時には、我々も相当の痛手を負っていたよ
誰も命を落とさなかったのが不思議ですらあった

鹿島の処遇については、粛清すべきという意見が大半を占めた
だが、それに真っ向から反対した者がいる
この都市伝説の存在を消してはいけない、と
戦争の記憶を、凄惨な過去を人はもっと知るべきだ、そう利用すべきだ、と
そう言って、その男は皆を説き伏せて回った
元々、人望のある男だったからな
皆の意見をまとめるのには、そう時間は掛からなかったよ
もちろん、私は最後まで反対したがね
だが、彼らの意思は強かった
結果、過半数の賛同を得たことで、鹿島の鎮静をもって放免する事と決まった

残された問題は、どの様にして鹿島の心を鎮めるか、だった
鹿島は暴れ、牙をむき、錯乱していた様に見えた
長い時間を掛けたが、心を閉ざし、ついに誰にも開こうとはしなかった

そして、考え付いた方法が
我々の内から、ひとりを鹿島と同化させる
というものだった

そんな事が可能なのか
誰もが疑問に思った
そして、誰が犠牲となるのか

その方法を考えたのも、それに志願したのも、あの男
粛清に反対し、存在を護る事に導いた、あの男だった

これには誰もが反対した、私を除いてな
だが、私はその男がやるべきだと思った
他の誰かを犠牲にしては、その男が納得するはずも無かっただろうからな

代案が見つからない以上、その方法を行うしかない
実行したよ

簡単に言うと、方法はこうだ

鹿島の意識を奪い、その間に例の男が隻腕の鹿島に成りすます

そんな方法で同化できるのか?

まぁ、聞け
我々、都市伝説は情報を核とする存在だ
故に、ネットで工作する事で、存在を知らしめ、力を増幅する事も出来るだろう?

だから、我々は
例の男を隻腕の鹿島として見立てる事
現代の言葉で例えるならば、そう……ミラーサーバーを設けたのだ

メインサーバーがダウンしている間は、誰もがミラーサーバーにアクセスする
そうして、長い時間をかけ、ミラーを馴染ませていく
やがて人は皆、ダウンしているメインには見向きもしなくなり
ミラーは、メインとして認識され、利用される事となる

メインサーバー、つまりは隻腕の鹿島が活動を停止している間
例の男を隻腕の鹿島とほぼ同じ姿に変え、ミラーサーバーとした

陸軍の軍服に着替え
本来あった、左腕を……切断した

ほぼ同じ姿に変えるとは、そういう事だ

だが、そこまでしても
同一視されるには至らなかった

その男自身が、隻腕の鹿島という存在を演じきる事が、成りきる事が出来なかったからだ
アレは……嘘をつけぬ男だったからな……

左腕を犠牲にしてまで行った策は、徒労に終わろうとしていた

そこで考えた

障害となり得る隻腕の鹿島との出来事に関する記憶を消し去り
自身が元から隻腕の鹿島であったと思い込ませる

つまり、暗示をかけたのだ
我ながら、冷酷な事を思い付くものだと思ったよ

成功した時には、隻腕の鹿島の体は無く
隻腕のカシマの体、ただひとつが残っていた

こうして生み出されたのが "隻腕のカシマ" という存在だ

行動原理は "今の日本は平和か" のままに、都市伝説としての能力は "傷痍軍人の鹿島"

あの男は、そういう存在なのだ

これが "傷痍軍人の鹿島" と "今の日本は平和か" という本来は別々の都市伝説が
ひとつの都市伝説として融合し、存在しているという理由だ


今回の様に、人為的に話を融合させられたモノ
基本の話を元に、拡大解釈され新たに話が追加されたモノ
別個の話であったものが、その共通性から自然と同一視される様に変化したモノ

いずれにせよ……それぞれの都市伝説ごとに相応しい物語があるものだ

もし、納得できる様な物語りなき都市伝説がいるとするならば
それは最早、都市伝説などではなく、ただの……化け物だろうな

*



「そうですか……何だか納得してしまいました」

ふぅ……と、サチが息を吐き、静かに語る

わたし……幸が薄いというか、不幸体質というか……そういう感じだから
カシマさんの様な善意から生まれた都市伝説と契約出来るなんて……
おかしいなって……でも、隻腕の鹿島さんがヒトに迷惑を掛ける様な
都市伝説だったことを聞いて、何だか納得してしまいました

それでね、わたしが契約していたのは隻腕の鹿島さんで
その鹿島さんを押さえ込んでいたのがカシマさんだったんだっていうなら
本当にそうだったんだなって……すごく納得出来るなって……

そう言って、サチは寂しそうに笑った

*



「では何故、この男はそこまでする事が出来たのか……答えはこの記録に書かれている」

再び、副官は語る

この記録は、隻腕のカシマとなった男の過去を綴ったものだ

記憶を改竄するにあたって、私が聴取し記録した
我々の技術では、記憶全てを書き換える事は不可能だった
故に、記憶を部分的に改竄する事で、信じ込ませる事にした

その為に聴取したものだったが……疑問の答えとなる事が全て書かれている

*



時間をかけ、読んでいく

長い、長い物語だった……それは、とても幸せな過去だった

こんなに大切な記憶を失ってまで
カシマは、鹿島という都市伝説の存在を護ろうとした

「じゃあ……ボクらが知っているカシマさんは……本当は、この香取さんで……」

輪が、うめく様に言葉を漏らす

「つまり、隻腕の鹿島とは本来……カシマの、香取の義弟のこと」

ジャックが、感情を押し殺した声で言う

「そう、カシマは……香取は……鹿島家に婿養子として入り、鹿島という姓を得たのだ
 だからこそ、あの男は……カシマは、自分がカシマと呼ばれる事に疑問すら抱かなかったのだよ」

副官が言葉を添える

「そうか……鹿島流の跡を継ぐ為に……ってことかぁ……」

ボクサーが、眉根にしわを寄せてつぶやく

「だから……都市伝説の……義弟さんの存在を護る為に……自分の腕と……記憶を……」

サチが、まつ毛を震わせながら言う



皆が沈鬱な表情を浮かべる中

「変わりありませんよ」

不意に、ジャックが言う、はっきりとした意思をもって言う

「カシマに、過去が在ろうと無かろうと、変わりありません……
 いつだって、カシマはカシマらしく行動してきた……この記録、過去でも……
 香取の行動には……カシマらしさ……カシマの強さや優しさが感じられる
 それは、私達と行動した、現在でも……何も、変わりは無い……カシマはカシマです」

ジャックの言葉に、皆が頷く
そして、もうひとつ問題がある事にも気付いてしまう

「……ジャック……その……なんていうか……」
「気を使わなくても良いですよ、輪」
「カシマさんが既婚者だったなんて……知らなくて、勝手に煽ったりして……」
「目覚めてもカシマはきっと何も変わらない……仮に記憶を取り戻していたとして……
 カシマの心に、妻に対する想いがまだあるというならば……私は……」
「諦めるっていうの?……嫌だよ、そんなの……」

静かに首を振る

「いいえ……私は、カシマのその想いも含めて……全てを含めて愛しますよ」
「ジャック……」
「例え、義弟に体を渡そうとも……カシマが望んだ事なら、仕方ありませんし、恨みもしません
 私も今までと変わらない……ただ、それだけの事です」
「ジャックさん……」

この時のジャックの表情は、輪とサチの脳裡に深く刻まれている

後にこの事件を振り返る時……

"あの時のジャックは普段に増して格好良く
 そして、あまりにも美しい存在だと思った"

と、彼らは必ず口を揃えて言う事となる

「さて、これで全てを話した事になるな」
「カシマの弟は、どうなったのです?既に消えてしまっているという事ですか?」
「それは私にも判らん……だが、恐らく……」
「カシマさんならきっと……義弟さんの事を心のどこかに迎え入れていたんじゃないかしら……」
「そうだよなぁ……都市伝説を消さない為というよりは、義弟を消さない為の方がカシマさんらしいぜ」
「きっとそうだよ……想いに嘘はなかったんだろうけど、他にもそういう理由があったんだと思う」

「全く……貴様等は本当におめでたいヤツらだな……」

副官があきれた様に口をはさむ

「カシマさんを信じるのが、わたしの、契約者としての唯一、出来ることですから」
「そうだね、ボクも信じてるよ、弟子として」
「俺も信じてるぜぇ、カシマさんは恩人だからな」
「言わずもがな……ですね」

「ふたりともを救う方法はないの?」
「仮にふたつの意識があったとして……
 残念ながら、体はひとつだけしかない……今となっては分離は不可能だろう」
「じゃあ、どちらかが消えるしかないって事なの?」
「最悪、どちらの存在も消える可能性もある」

カシマを信じて待つ

結局、これが今の彼らにとって唯一、出来る事であった



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