ケモノツキ_07_オトコの世界
満月の夜。月明かりに照らされた学校町を、橘野悠司は歩いていた。
これは散歩というわけではなく、「組織」の任務でもない。いわばパトロールだ。
『満月の夜には犯罪率があがる』という都市伝説があるように、こんな夜は都市伝説が悪さをしやすい。
せめて、自分の周りの人たちだけでも守れるようにと、積極的にこのようなことを行っているのだ。
通学路を通り、工場群を抜け、住宅地を回るのがいつもの道のりだが、ここ数日は任務も無く、体の調子は良好だ。
これは散歩というわけではなく、「組織」の任務でもない。いわばパトロールだ。
『満月の夜には犯罪率があがる』という都市伝説があるように、こんな夜は都市伝説が悪さをしやすい。
せめて、自分の周りの人たちだけでも守れるようにと、積極的にこのようなことを行っているのだ。
通学路を通り、工場群を抜け、住宅地を回るのがいつもの道のりだが、ここ数日は任務も無く、体の調子は良好だ。
「今日は体調もいいし、いつもと違う道を行こうと思うんだけど、どうかな?」
『さんせーい!夜道の散歩っていいよねー。』
『別に俺はかまわねぇ。』
『天気もいいですし、私も良いと思いますよ。』
『さんせーい!夜道の散歩っていいよねー。』
『別に俺はかまわねぇ。』
『天気もいいですし、私も良いと思いますよ。』
満場一致で可決。工場群を抜けた後、いつものルートから外れ、遠回りをして帰ることにした。
普段通らない道なので、道に迷わないように辺りを見回しながら歩いていると、正面に公園が見えた。
普段通らない道なので、道に迷わないように辺りを見回しながら歩いていると、正面に公園が見えた。
「あ、こんなところに公園があったんだ。」
『ちょっと遊んでくー?』
「いや、遊びはしないけど、一応中を見回ってみようか。」
『ちょっと遊んでくー?』
「いや、遊びはしないけど、一応中を見回ってみようか。」
公園の中にあったのは、ブランコやシーソー、滑り台などの定番遊具に加え、グローブジャングル、回旋塔、そして、ド○えもんに出てくるような土管。
絶滅危惧種のそれらが当然のように設置されているのは、学校町だからこそだろうか。
絶滅危惧種のそれらが当然のように設置されているのは、学校町だからこそだろうか。
そんな中、灰色のコンクリートで覆われた、一つの建造物を発見する。
「この中も、一応確認した方がいいよね。」
そんなわけで、西区にある公園のトイレにやってきたのだ。
*
窓から月明かりが差し込む男子トイレ。足を踏み入れた直後、悠司は警戒心を強める。
トイレにある四つのドアのうち、一番奥の扉が閉まっているのを見てとったからだ。
もし、花子さんや赤マントなど、トイレをテリトリーとする都市伝説がいた場合、こちらが圧倒的に不利である。
だが、人を襲いかねない都市伝説を放置するわけにはいかない。
トイレにある四つのドアのうち、一番奥の扉が閉まっているのを見てとったからだ。
もし、花子さんや赤マントなど、トイレをテリトリーとする都市伝説がいた場合、こちらが圧倒的に不利である。
だが、人を襲いかねない都市伝説を放置するわけにはいかない。
手前から順に覗いて、中を確認する。
一つ目…何もない。二つ目…何もない。三つ目…何もない。
そして、扉が閉まった四つ目のドアの前で立ち止まり、深呼吸した後、手を伸ばす。
一つ目…何もない。二つ目…何もない。三つ目…何もない。
そして、扉が閉まった四つ目のドアの前で立ち止まり、深呼吸した後、手を伸ばす。
コン、コン。
「どうぞ。」
中から聞こえたのは、男の声。
キィィ、と蝶番が軋む音を立てながら、ドアがゆっくりと開く。
キィィ、と蝶番が軋む音を立てながら、ドアがゆっくりと開く。
「ほう…これはずいぶんと珍しい客じゃないか。」
そこから出てきたのは、つなぎを着た男。
「ようこそ、俺のハッテン場へ。」
「あ…あなたは?」
「俺かい?俺は『いいおとこ』さ。」
「『いいおとこ』…?。あなたも…都市伝説なんですか?」
「ああ。ということは、少年は契約者か?」
「は…はい。」
「あ…あなたは?」
「俺かい?俺は『いいおとこ』さ。」
「『いいおとこ』…?。あなたも…都市伝説なんですか?」
「ああ。ということは、少年は契約者か?」
「は…はい。」
自らを都市伝説だと名乗った『いいおとこ』、そしてハッテン場。
聞き覚えの無いそれらの言葉に、悠司は首をかしげる。
だが、彼との会話から悪い都市伝説という感じはせず、悠司は緊張を解いて息を吐いた。
聞き覚えの無いそれらの言葉に、悠司は首をかしげる。
だが、彼との会話から悪い都市伝説という感じはせず、悠司は緊張を解いて息を吐いた。
「ふむ…よく見ると、なかなか可愛いらしい顔つきをしてるな。」
「…え、えっ?」
「…え、えっ?」
唐突に呟き、悠司の顔をしげしげと見つめる『いいおとこ』。
その予想外の行動に、悠司はうろたえる。
その予想外の行動に、悠司はうろたえる。
「ここで会ったのも何かの縁だ。…少年。」
「はい?」
「はい?」
『いいおとこ』が、つなぎのファスナーに手を伸ばす。
「や ら な い か 。」
「え、何を…」
「え、何を…」
悠司が言葉を言い終わる前に、悠司の意識が内側に引きずり込まれた。
「男は度胸!なんでも試して…」
「黙れ。」
「黙れ。」
ファスナーを下ろした『いいおとこ』の目を睨みながら言い放つ悠司…否、タマモ。
直後、『いいおとこ』の体がその場に崩れ落ちた。
直後、『いいおとこ』の体がその場に崩れ落ちた。
『た…タマモ、いきなりどうし…』
「主、こいつは敵です。」
『え?だってまだ何も…』
「敵です。主、今日はもう帰りましょう。」
「主、こいつは敵です。」
『え?だってまだ何も…』
「敵です。主、今日はもう帰りましょう。」
そう言うと、足元に転がっている物に目をやる。
時折、ビクン、ビクンと痙攣するそれを憎憎しげに見やると、タマモはトイレを後にした。
時折、ビクン、ビクンと痙攣するそれを憎憎しげに見やると、タマモはトイレを後にした。
*
・
・
・
・
・
公園から出て、自宅へ向けて歩くタマモ。
その顔には、強い不快感と怒りをにじませている。
その顔には、強い不快感と怒りをにじませている。
「…あの…下種が…っ!」
『タマモ…?怒って…る?』
「当たり前です!あいつは主に…っ!」
『タマモ…?怒って…る?』
「当たり前です!あいつは主に…っ!」
タマモはそこで言葉を言いよどむ。あの男が悠司に何をしようとしたのかなど、言える訳が無い。
「…すみません、少し冷静さを欠いてました。…主、体をお返しします。」
悠司の意識が体に戻る。直後、激しい頭痛が悠司を襲う。
悠司は近くの塀にもたれかかり、割れるような頭の痛みに耐える。
悠司は近くの塀にもたれかかり、割れるような頭の痛みに耐える。
『主…申し訳ありません…。』
「くぅ…っ。大丈夫…僕を守るためにやったんだよね。…ありがとう、タマモ。」
「くぅ…っ。大丈夫…僕を守るためにやったんだよね。…ありがとう、タマモ。」
何度か深呼吸をしたのち、もたれていた塀から離れ、体の感覚を確かめるようにして立つ。
「…ところでタマモ。あの人は僕に何をしようと…」
『主は知らなくていいことです!それと、あの公園には絶対に近づかないでください!』
「う、うん、わかったよ…。」
『主は知らなくていいことです!それと、あの公園には絶対に近づかないでください!』
「う、うん、わかったよ…。」
タマモの剣幕に圧され、言葉を詰まらせる悠司。
それ以上聞くのを諦め、ふらつきながらも自宅へ向けて歩き出した。
それ以上聞くのを諦め、ふらつきながらも自宅へ向けて歩き出した。
*
そのころ、公園のトイレでは――――
「…うん?俺はいったい何を…?」
トイレの床に倒れていた『いいおとこ』が、むくりと起き上がる。
「確か…可愛らしい少年を喰ってやろうとしたら、トイレからガチムチの兄貴が出てきて俺の尻を…。」
自分の体を確認する。つなぎのファスナーは下りているが、事後特有の尻への感覚は無い。
『いいおとこ』が体験したのは、タマモの能力による幻覚である。
悠司を掘ろうとした彼はタマモの怒りに触れ、逆に自身が掘られる幻覚を見せられていた。
悠司を掘ろうとした彼はタマモの怒りに触れ、逆に自身が掘られる幻覚を見せられていた。
「夢…か。…なかなかいい夢だった。どうせならあの少年を喰っちまいたかったな…。」
もっとも、『いいおとこ』にとってそれはご褒美でしかなかったわけだが。
彼は名残惜しそうにため息をつくと、ファスナーを上げ、トイレの個室へ入って扉を閉める。
そして、夢で再び少年と会えるよう願いながら、『いいおとこ』は静かに目を閉じた。
そして、夢で再び少年と会えるよう願いながら、『いいおとこ』は静かに目を閉じた。
【ケモノツキ_07_オトコの世界】 終