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連載 - ケモノツキ-06

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ケモノツキ_06_黒服の名前


 繁華街から帰宅した悠司。帰るや否や、自分の部屋に入り、ベッドに腰掛ける。
 うなだれ、顔を手で覆い、目を閉じる。脳裏に浮かぶのは、三人の黒服。
 D-No.962こと、大門 大樹。H-No.360こと、広瀬 宏也。
 そして、自分の担当、A-No.218。

 予想はしていたし、少し期待もしていた。だが、出来れば目を背けていたかった。
 あの元・人間の黒服たちは、名前を持っているという事実。
 それと同時に突きつけられた、自分の担当黒服には、名前が無いという事実。

「……だけど…もしかしたら…。」

 悠司はポケットから携帯電話を取り出す。
 思い出すのは、黒服Hの言葉。

 ――――ナンバーで名乗る訳にもいかねぇだろ?だから、ちゃんと人間としての名前も用意されてんだよ。
 ――――ま、俺の場合、偽名だがね。人間の頃の名前は忘れちまったから。

 あの言葉通りならば、自分の担当黒服にも、人間としての名前があるのかもしれない。
 たとえ偽名だとしても、呼ぶべき名前が。そう信じて、悠司は黒服に電話をかける。

「橘野悠司、どうしました?」
「あ、あの…。今、時間…いいですか?」
「かまいません。どうしました?」

 どう切り出すべきか、一瞬悩む。

「あの、今日…広瀬 宏也さんと、大門 大樹さんに会いました。」

 悩んだ末、人間としての名前を口にした。

「…H-No.360と、D-No.962ですね。彼らに何かされたのですか?」
「い、いえ!そういうわけじゃないんです。」

 あわてて、それを否定する。
 …尤も、あのときの黒服Hの心中を考えれば、何かされたと言っても過言ではないかもしれないが。

「それで…広瀬さんが言ってたんです。身分証明とかのために、人間としての名前があるって。」
「はい。「組織」には彼らのように、人間としての名前や戸籍を持っている黒服も居ます。」

 『黒服”も”居る』。その言葉に少し不安を覚えたが、言葉を続ける。

「…黒服さんにも、そういう名前があるんじゃないですか?」
「私はあまり現場に出ないので、その必要性がありません。ですので、私に名前は与えられておりません。」

 かすかな希望が、打ち砕かれる。
 ショックを受ける悠司に対し、黒服は更に言葉を続ける。

「それに、私たちは人間ではなく、「組織」の黒服という都市伝説です。基本的に名前は不要です。」

 『人間ではない』。その言葉が深く、悠司の心に突き刺さる。
 なぜ、そんな悲しいことを平然と言ってのけるのか。
 なぜ、そんな簡単に自分の人間性を否定するのか。
 なぜ、あなたが人間であると認めさせてくれないのか。

「…黒服さん…っ。」

 自らの担当黒服を、”黒服さん”と呼ぶ。そう呼ぶしかない。そうとしか呼べない。
 確かに相手を認識してるのに、相手の”個”を否定しているような錯覚を覚える。
 名前を呼べないというのは、こんなにも不安で、もどかしく、苦しいものなのか。

「私には、A-No.218というナンバーがあります。それでは不十分ですか?」

 人を番号で呼ぶことなど、できるわけがない。
 人を人と思わずに扱うなど、できるわけがない。
 そんな悠司の心を、この黒服はわかってくれない。

「番号で…呼ぶなんて……。」

 声を絞り出す。
 その声は震えていたかもしれない。

「あなたが私をどう呼ぼうと、何の問題もありません。もうよろしいでしょうか。」
「……はい。」
「何かあれば連絡してください。失礼します。」

 プツン、と電話が切れ、部屋が静寂に包まれる。

*



 自分の担当として最も長く付き合ってきた、この黒服。
 それに対して、つい最近、数回出会っただけの、黒服Dと、黒服H。
 なのに、なぜこんなにも、黒服Dと黒服Hは近く、この黒服は遠く感じるのだろうか。

 都市伝説は、人間ではないのか?
 黒服は、人間ではないのか?
 黒服は、人の形をした”何か”に過ぎないのか?


 人の形をした、人間ではない”何か”。
 人間でないなら、それは…”化け物”なのか?


 ぞくり。
 背筋に悪寒が走り、悠司はその恐ろしい考えを振り捨てる。
 違う。黒服は人間だ。黒服が”化け物”だなんて、ばかげている。

 そんな考えに至った自分を責め、悔やみ、嫌悪する。
 震える唇をぎゅっとかみ締め、自分に言い聞かせるように、言葉を搾り出す。

「…黒服は…人間だ……っ!」

 口の中に、血の味が広がった。



ケモノツキ_06_黒服の名前】    終

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